水槽内の茶苔・黒髭苔・糸状藻の原因と対策

アクアリウム・水槽を立ち上げて2週間くらい経つと、だんだん水槽内に藻が生えてきます。藻は生態系の中で必要な存在なのですが、アクアリウムの世界では美観を損なう存在であり増殖を抑制する対策が必要になってきます。

藻にも種類があり、それぞれ対策が異なりますし、お住いの地域での水質により対策が変わるのです。アクアリウムの用語では藻の事を苔と呼ぶことが多々ありますが、正しくは苔ではなく藻です。

私の住む関西は、藻は適度に発生しますがアクアリウム維持に大問題になるほどではありません。しかし、関東に住む友人は藻に本当に悩まされいます。これは、水道水の硬度も影響しており、記事内で詳しく説明していきたいと思います。

「コケ取りの魚やエビを導入して食べてもらいましょう!」「コケ防止剤を使いましょう!」という情報もありますが、私としては生体をそう安々と購入することが嫌いですし、なるべく薬は使いたくないので、視点を少し変えて苔対策を考えてみたいと思います。


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水槽内に生える藻 (苔) の種類

珪藻 (茶苔) について

珪藻 (茶苔) って何?

珪藻はアクアリウムの世界では茶色い見た目をしていることから茶苔と呼ばれています。主に酢層内の石に生えてくることが多いです。石に茶苔が生え始めると、本当に見栄えが悪くなります。

何故、珪藻の色が茶色かというと…植物は緑色の光を反射して緑色に見えるのですが、茶苔は緑色の光も吸収するため、茶色が反射され茶色く目に映るのです。

お住いの近くを流れる川で、水が流れている川底の石が茶色になっているのを見たことがありませんか?それが珪藻です。

珪藻の図
図1:(a) 水槽のガラス面の珪藻 (b) 石に付いた珪藻 (c)珪藻の拡大図

珪藻 (茶苔) の栄養源

珪藻は、顕微鏡で見ると「珪酸 (Si(OH)4)」と呼ばれる固い物質の殻で覆われています。これが珪藻と呼ばれる由来です。

植物の肥料となる窒素やリンも栄養素となりますが、珪酸の原料である珪素 (Si: Silicon) が含まれる水槽内で増えやすい傾向にあります。

「珪素がどこからやって来るのか?」

勘の良い方はわかるかと思いますが、レイアウトに使っている「石」に含まれているのです。

石は、ミネラル分を多く含むので、珪素を多く含む白っぽい石には珪藻が発生しやすいのです。例えば、アクアリウムで大人気の龍王石は珪素を多く含むので茶苔被害に合いやすいです。

茶色い珪藻の写真

珪藻 (茶苔) を抑制する方法

コケ防止剤を使う以外の方法を考えてみます。

珪素の原因 (石) を取り除くことが良い方法なのですが、そうなるとレイアウトの石が使えなくなってしまいます。

しかし、石にも様々な種類がありますので、珪素を比較的含みにくい石 (例えば木化石や溶岩石) を選ぶことも一つの手だと思います。

また、有名なコケ取り要員であるオトシン・クルスやヤマトヌマエビは珪藻を食べてくれるので、珪藻が蔓延する前の予防策として一つの方策になります。

もしも石に珪藻 (茶苔) が生えてしまったら

石に生えてしまった珪藻は、洗えば取れます。

使い終わった歯ブラシでゴシゴシと擦れば除去でき、石本来の美しさを取り戻すことができます。

除去したら綺麗に水洗いして、水槽内に再投入しましょう。

髭状藻 (黒髭苔) について

髭状藻 (黒髭苔) って何?

アクアリウムの世界では黒髭苔と呼ばれていますが、これも藻の一種ですので、正しくは髭状藻と呼ぶことが良いかと思います。

名前が表すように、黒くて細い髭状の藻になります。何故、黒色なのかというと、様々な色の光を吸収して光合成に利用しているためです。植物は緑色の光を反射するため緑色に見えるのですが、黒髭苔の場合、ほぼ全ての色の光を吸収してしまうので黒く見えるのです。

そのため、光合成による成長力も非常に早く、一度増え始めると歯止めが利かないことが多いです。見つけたら小さいうちに除去することを心掛けてください。髭状藻は上記の茶苔よりも、大きく長く成長していきますので存在感が大きく、美観を損なう主な原因の藻になります。

黒髭苔の写真

髭状藻 (黒髭苔) の栄養源

髭状藻は、基本的に植物の3台栄養素である窒素・リン・カリウムに加えて硬度の源であるカルシウムやマグネシウムなどの微量元素も取り込みながら成長をしていきます。

これは水草に必要な栄養素と同じ成分になります。

そのため、水草を育てようとすると必然的に黒髭苔が生えやすい環境を作り上げてしまいます。

髭状藻 (黒髭苔) を抑制する方法

ここでは、「コケ防止剤の使用」以外の対策を記載したいと思います。

上記の通り水草と同じ栄養素で成長するので、それらを遮断すれば抑制は可能です。しかし、水草の栽培にも必要な栄養素ですので、水草を栽培されている方は、栄養を断ち切ることは不可能です。そのため、水草育成のために肥料を与えている方は、必要最低限の量に改善することが髭状藻抑制に有効になり得ます。

水草の肥料を液肥として与えている方も多いと思いますが、液肥というのは固形肥料よりも植物や藻に吸収されやすいです。そのため、量を間違えると爆発的に藻が増えていくことに直結します。用量には注意して使用しましょう。

また、飼育水は一般的に水道水をカルキ抜きして使用するかと思いますが、その地域ごとに硬度が異なるので、その点を考えていかなければなりません。硬度の源はマグネシウム、カルシウムでありこれらは植物の育成に必要な微量元素になります。

つまり、硬度が高い地域では藻が増えやすい傾向なのです。

硬度の低い地域ではそこまで神経質になる必要は無いですが、関東など一部地域では硬度が高くなっています。水道水を軟水化するための家庭用浄水器もありますので、それらをうまく利用することも対策の一つです。

完全に硬度をゼロにしてしまうのは生体に悪影響があるので、例えば水槽の半分は水道水、残りは軟水化した水道水を入れるなどの方法です。硬度を下げて髭状藻が減ったという報告は良く効くので有効な手段かと思います。

もしも髭状藻 (黒髭苔) が生えてしまったら

黒髭苔を食べる魚にサイアミーズフライングフォックスという魚がいますが、巨大化した黒髭苔は食べてくれません。

あくまでも黒髭苔が小さい段階、および予防としてのメンテナンスフィッシュになります。また、フライングフォックスは大きくなります。約10cmくらいになるので水槽内で大きな存在になってしまいます。とてもメンテナンスフィッシュとは言えず、水槽の主役になってしまうのです。

そのため、私はフライングフォックスをお勧めしません。

他にもアルジイーターという魚がコケ取りとして存在しますが、黒髭苔はあまり食べませんし、成長すると20cmくらいに巨大化します。

さらに、コケ取りで有名なオトシンクルスやヤマトヌマエビは黒髭苔を食べてくれません。

コケ取りとして貝類もありますが、私としては見た目の観点で推奨しません。

ということで、黒髭苔に対する生体を使った対応はほぼ無いと私は考えています。私は黒髭苔が出てしまったら、手で除去したりコケクロスという製品で頑張って除去しています。少し大変ですが、それが一番手っ取り早いです。

糸状藻について

藻の写真

糸状藻は緑色の細長い藻で水槽の内壁面や水草に定着します。

アオミドロという名前で呼ばれることもあります。糸状藻の被害を受けたことが無い方も、池や田園地帯で緑色の藻が大量に繁殖しているのは見たことがあるかもしれません。

アオミドロも増殖能力が高く、増え始めるとどんどん増えていきます。ですので、初期の段階で抑制することが求められます。水槽内に多く生えると魚が泳ぐスペースもなくなってしまいます。

糸状藻の基本的な性質や抑制方法は髭状藻と同じですので、ここでは割愛します。コケ取りとしては、発生初期段階ではヤマトヌマエビが有効です。しかし、増殖しすぎるとヤマトヌマエビでも太刀打ちできませんので、これも初期の段階で対処することをお勧めします。

藻・苔を抑制するための対策

水道水局の水質調査書を確認しましょう

藻 (苔) の成長には、上で紹介したように水中に含まれる微量元素が必要です。

この微量元素には硬度の源であるカルシウムやマグネシウムが含まれています。
そのため、硬度が高い地域では藻が生えやすく、硬度が低い地域では藻が生えにくいです。

冒頭で、私の住む関西では藻による大きな被害は無く、関東に住む友人は髭状藻の被害に困っていると記載しました。これは硬度による違いが主要因だと思っています。全国の水道水の硬度一覧を見てもらうとわかりますが、関東(東京~千葉)は硬度が非常に高いのです。差が大きなところでは、関西と関東首都圏で硬度が2倍も違います。

そのため、お住いの地域で藻・苔に対する硬度対策は変わってきます。

一度、お住いの地域を管轄する水道局が公開しているレポートを確認して、地域の水質を確認してみるのも良いかと思います。アクアリウムをやっていると、普段見ることのない水質調査レポートを確認する機会になりますね。

藻が繁殖した池の写真

水草用肥料は固形肥料を使う

液体肥料はそれ自身が液体ですので、水草に吸収されやすく効き目も早くやってきます。しかし、それは藻にとっても同じなんですね。

ですので、液肥は藻を一気に増殖させてしまう起爆剤になり得るのです。そのため、液肥よりもゆっくり効く固形肥料をソイルに埋め込む方が良いと考えます。

コケ取り導入は早めに

藻・苔が蔓延してしまうとコケ取りの魚・エビも食べきれませんし、食べる量よりも藻が増える量の方が多いくなってしまいます。

コケ取りはあくまでも「予防策」として考えましょう。過度な期待は禁物です。水槽を立ち上げたら、なるべく早めに適切な数を入れてあげましょう。

水草に発生したコケや藻を確実に除去する方法

水槽のガラス面のコケや藻であれば、布やワイパーで擦れば除去が可能です。

しかし、水草に発生してしまったコケや藻は除去が非常に難しいです。少し力を入れると水草の葉や茎を傷つけてしまう原因になります。

もし、水草を水槽の外に出せる環境であれば、下の記事で紹介するZenith Waterを使用したコケ除去が有効です。頑固な黒髭苔も一気に撃退できる代物です。


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藻対策のまとめ

藻・苔が発生するのには必ず理由があります。

その原因を突き止めて、原因を元から無くす、または原因を減らすことをしないとコケに悩まされる日々が終わることはありません。

私の管理する水槽では、管轄している水道局の水質調査の結果を確認して、硬度等を適切に管理できるようにしています。水質やレイアウトから原因を考えることで、何かしらの原因は必ず見えてきます。

それを考えるのも趣味としてのアクアリウム維持なのかもしれません。

また、コケ取りとしての生体を導入する際には、立ち上げ初期の頃から入れて苔が増殖する前に処理してもらえるようにしましょう。水槽内でコケが大きく育つと、コケ取りのエビや魚ではどうしようもない状態になってしまいます。

この記事が皆様のコケ対策に有益な情報になりましたら幸いです。

大量の藻