水槽のコケや藻の発生原因は水道水の硬度が一因

アクアリウムを楽しむ方であれば、水槽内に発生するコケに一度は悩んだことがあるのではないでしょうか?

レイアウトに使用している石に発生する茶ゴケや、水草に発生する黒髭苔…

せっかく綺麗に仕上げたレイアウトでも、コケが生えただけで美観が一気に下がってしまいます。実は、そのコケの原因は皆さんが使用している水道水にあるかもしれないということを御存じですか?

コケの栄養分になるミネラルが多いこと、言い換えれば硬度が高いことは、コケを発生させやすい原因になるのです。

この記事では、その詳細をお伝えしたいと思います。


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ミネラル成分はコケの原因

アクアリウムで呼ばれるコケとは、実は苔と藻の両方を総称してコケと呼んでいます。本来は分けるべきなのですが、アクアリストの村言葉として、簡単に使えるコケという言葉を用いています。

水槽内に生えてくるコケで有名なのが珪藻 (茶ゴケ)、黒髭苔、糸状藻 (アオミドロのような藻) がありますが、基本的に栄養分は水草や植物と同じです。

三大肥料要素であるカリウム・窒素・リンと共に、水と光によって光合成を行いながら成長していきます。

コケは、その三大肥料要素以外にも、成長にミネラル分を使います。例えば、硬度の指標となるマグネシウムやカルシウムも吸収されてコケの成長を助けます。

例を挙げると、茶ゴケは珪藻という藻になるのですが、珪藻の「珪」は珪素から来ています。茶ゴケは珪酸と呼ばれる殻を持つコケになり、珪酸は化学式で書くと Si(OH)4 となります。つまり、シリコン (Si)を含みます。茶ゴケの養分となるシリコンが含まれるような石には茶ゴケが発生しやすいです。例えば、アクアリウムで人気の龍王石などは、白っぽい石なので珪素やカルシウム分を多く含む石になるのです。

したがって、水に含まれるミネラル分がコケの発生に大きく影響していることになり、この記事のタイトルである「コケの発生は水道水が原因かも?」というテーマに繋がるのです。

ミネラル成分の多さを示す硬度

では、ミネラル成分の量を表す指標は何なのでしょうか?

皆様の生活の中でも見る機会があると思いますが「硬度」です。

硬度を一番目にするのは、ペットボトルで販売されているミネラルウォーターかと思います。軟水と硬水で大別されて販売されていますが、ミネラル分が多いのが硬水となり、飲むと少し癖のある味がします。その癖のある味の原因がミネラル分を多く含む証拠になるのです。

上で記載しましたが、ミネラル分がコケの栄養になるので、硬度が高い水の方がコケが発生しやすく、硬度が低い方がコケが発生しにくい水になります。

もちろん、コケの生えやすさは硬度だけでなく水槽で使用しているライトの強さや、水槽に入れている水草の量などにも関係します。しかし、単純に考えて、硬度の高い水道水はコケが発生しやすいというのは間違いではないのです。

下の写真は、黒髭苔がびっしりと成長してしまったミクロソリウムの葉です。ここまで成長してしまうと、手でこすってもなかなか除去できない厄介者になります。

ミクロソリウムに生えた黒髭苔

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各地の水道局ごとに硬度は異なる

私も最初は少し戸惑ってしまったのですが、実はお住まいの地域によって、水道水の硬度は大きく違うんです。

これはその地域の水源となる場所や水源までの距離に大きく依存しております。硬度については、水道局が発表している水質検査の結果を見ると硬度を確認することができます。

硬度が上がりやすい地域の特徴

まず、硬度の上がりやすい地域の特徴ですが、以下に当てはまる地域になります。

①雨水が岩盤を通過する時間が長い地域

ミネラル成分というのは岩盤・石から水中に溶け出す成分です。

つまり、水が岩盤に触れている時間が長ければ長いほど、硬度は上がりやすいです。

一番わかりやすいのは、ヨーロッパの国々です。

ヨーロッパで生産されたミネラルウォーターは硬水である場合が多いですよね。ヨーロッパは非常に高い山脈が多く、その山脈の雪解け水が川の水源になっている場合が多いです。そのため、岩盤を雪解け水が通過する時間が長いため、自然と硬水になっていくのです。

国内では石灰岩の地層が多い沖縄県の地下水は、硬度が高くなっております。実は、沖縄県は高い山脈は無いのに、地質の影響で国内で最も硬度が高い水道水になっています。

②河川の長さが長い地域

河川の長さが長い地域というのは、水が土や石に接している時間が長くなります。

そのため、①と同じ理由でミネラル分が水中へ溶け込みやすく硬度が上がる傾向になります。

河川の長さが理由で硬度が上がっている地域は、例として千葉県ですね。利根川水系の長さによって、硬度が国内でもトップクラスに高くなっています。

下でも紹介しますが、千葉県の硬度は私の住む関西に比べて2倍の硬度を有しています。

水道水の硬度の確認方法

では、水道水の硬度を確認するにはどうすればよいのでしょうか?

自分で硬度計を使って測定することもできますが、お住まいの地域を管轄する水道局の水質調査レポートを見るのが一番簡単かと思います。

基本的に各御家庭の水道水の硬度は、各水道局の水質調査レポートと同じになるので、水質調査レポートを確認すれば問題ないはずです。

ただし、飼育水に井戸水を使用している場合には、各自で井戸水の硬度を調べる必要があります。

水質調査レポートの見方ですが、各水道局のHPに掲載されている「カルシウム・マグネシウム等」という欄を見ればOKです。

例えば大阪市の水道局のHPで令和2年5月の水質レポートをみると、下の画像の通り柴島浄水場の硬度は42mg/Lとなっています。

令和2年5月大阪市の水質レポート

また、硬度が高いことで有名な千葉市の平川水系の調査レポートをみると、令和元年12月の硬度は100mg/Lとなっております。

大阪市と比べると千葉県は2倍以上の硬度を持っているのです。

私自身、千葉県の方に出張に行くこともあるのですが、ホテルの水道水を口に含んだ時に、確かに関西圏とは味が違うことに気付きます。

硬度というのは人間の味覚でも判断ができるレベルになるので、水槽内のコケからの生え方に違いが生まれても、何も不思議なことではないのです。

コケ抑制目的で硬度を下げる方法

では、硬度が高い地域にお住いのアクアリストの方からすると、硬度を下げるのにはどうすれば良いのか?という疑問が残りますよね。

一応、硬度を下げる方法は、限定的ではありますが存在します。以下で2つのパターンで紹介します。

ろ材による吸着除去

フィルターの中に入れる濾材の中には、実は硬度を下げてくれる作用を持ったものが販売されています。

ウォーターエンジニアリングさんという会社から販売されているRebirthというシリーズのろ材になりますが、硬度を調整してくれる代物です。

また同じ会社さんからコケ抑制剤も販売されているので、本当にコケにお悩みの方は試してみる価値はあるかもしれません。

RO水や硬度調整フィルターの使用

まず、RO水についてですが、ROとはReverse Osmosisの略で非常に微細なフィルターで不純物だけではなくミネラルまで除去した水になります。

今ではアクアリウムショップでも入手可能な水になり、聞いたことがある方もいるかと思います。水中のミネラルが無いということで、コケの発生を効果的に抑制できる水になります。

ただし、このRO水は水の中に不純物が無くなるため、様々な不純物を溶かし出すハングリーウォーターになります。簡単に言うと、魚の粘膜も溶かしうる可能性があります。そのため、使用する際には少しだけ水道水を混ぜるなどの処理をして、ハングリーウォーターになり過ぎない状態で使用することをお勧めします。

また、水道水の蛇口に取り付けるフィルタータイプの硬度降下剤も販売されています。これは水道の取り換えが必要になったりする可能性もあるので、使用頻度やアクアリウム維持の御自身のお考えで取捨選択いただければと思います。


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この記事の最後に

この記事では、水槽内に発生するコケの一因となり得る、水道水の硬度について御紹介をさせていただきました。

水道水に含まれるマグネシウム、カルシウムと言ったミネラルは、コケの成長を助ける成分であり、硬度が高いほどコケが発生しやすくなるのは間違いありません。

国内の水道水の硬度についても、高い地域と低い地域で約2倍以上の差があります。つまり、日本国内であっても、水槽内のコケに悩まされる地域もあれば、コケに悩まされにくい地域もあるということなのです。

ご自身のお住まいの地域を管轄する水道局の水質レポートを見て、一度飼育水に使っている水道水の水質を調べてみるのも良いかと思います。

水道水の硬度を知り、対策を打つことができれば、コケの生えにくい美しい水槽になるかもしれません。

また、コケの発生を薬の力を借りて抑制する方法もあります。「Bio コケクリア」という商品を使用した例ですが、下のリンクで詳細を紹介しています。御参考になれば幸いです。