メダカの品種が多過ぎることの課題

私が小学生の時、メダカというと日本古来のメダカやオレンジ色のヒメダカしか見たことがありませんでした。

自分が飼育していたメダカも普通の灰色のメダカでした。

しかし今では色とりどり複色のメダカ、ヒレの長いメダカ、ラメが入ってギラギラ輝くメダカ等、品種が多すぎてとても全て覚えられるものではありません…。

アクアリウムにおいてメダカの美しさを追及する意味では、品種改良は良いことだと思います。ある意味、メダカと言うジャンルが発展していっている証拠であり、アクアリストとして嬉しい一面でもあります。

しかし、私が技術系サラリーマンとして、一般消費者向けのモノづくりに携わる身からすると、その品種の多さには課題もあるのではないかと考えています。

皆さんはメダカの品種名を全て覚えられますか?

高価過ぎるメダカに手を出せますか?

私は、そこにメダカ業界の抱える一つの疑問が残ります。


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自然界のメダカは絶滅危惧種

アクアリウムショップで数多くのメダカが泳いでいる所を見ると、この見出しの事実には疑問が出る方も多いのではないでしょうか?

実は、メダカは1999年に環境省によって絶滅危惧II種のレッドリストに加えられました。そして、その4年後の2003年にはII種ではなく、絶滅危惧種として正式に指定されたのです。

日本ではメダカは身近な魚で、田園地帯の水路や池や沼にも生息していた魚です。

しかし、農業用の農薬使用に加えて、外来魚の分布拡大によって生息域が狭められ、今ではメダカが生息している池を探す方が難しいくらいです。

絶滅危惧種に指定された後、日本でも保護活動が広がり自然の中だけでなく市街地に作られたビオトープでの繁殖が進められています。

その活動の成果もあり、現在では様々な場所でメダカを見れるようになりました。

繁殖力が強いこともメダカを絶滅から救った一つの要因ですし、繁殖が容易なこともメダカの品種改良が進んだ一因です。

品種改良メダカは古来のメダカとは別物

アクアリウムショップで販売されているメダカは、日本に古来から住んでいる種類ではありません。

様々な魚との交配などによって生まれてきた人工的な魚なのです。

つまり、環境省が指定している日本古来のメダカとは別物だと考えるべきです。

先日、子供と訪れた小さな川に、品種改良のメダカが泳いでいました。誰かが買えなくなって放流したものだと思いますが、本当に悲しい事実です。

同じメダカでも、人間が交配させている点で、既に自然の中で生まれた魚ではありません。しかも、メダカなので日本の四季を生き抜きます。自然の生態系の形が崩れる風景を見た瞬間だと感じました。


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メダカに人気が出たのは何故?

品種改良のメダカが人気になったのは2000年前半くらいからです。オレンジ色の楊貴妃や丸い体型の達磨メダカの発表が人気の火付け役です。私も大学生時代に下宿先で楊貴妃を小さな容器で飼育していたことがあります。

メダカは日本古来の魚で、日本の四季を生き抜く力があり、バケツや鉢の中でも生きていくことができる強い魚です。

また繁殖力も強く、品種改良も容易なことから、国内でもブリーダーが次々と増えて新品種も次々に発表されてきました。

メダカと言う日本人に馴染みの深い魚で品種改良された美しい個体が現れたら、人気が出ることは間違いないですよね!

2020年現在では、その品種数は数えることが難しく、700種類程度あると言われております。今年も新しい品種が発表されて、メダカ愛好家の楽しみを増やしてくれています。

品種改良メダカの名前

現在発表されているメダカは品種が多すぎるので、見た目の呼び方も非常に難しいものがあります。

初心者からするとその名前の一部が何を指しているのかわからないと思います。簡単ですが品種名に使われる名前の種類を記しておきたいと思います。

以下のものは代表的なものであり、一部でしかありません。まだ他にもありますし、品種改良が行われれば、更に増えていく可能性もあります。

輝く「ラメ」

ラメ系という呼び方は、光り輝くメダカの事を指します。

メダカは上から見る美しさも評価されるため、上から見た時に背中がキラキラと美しく光るような品種が多く存在します。

背中だけではなく、胸ヒレも輝く品種も生まれており、ラメ系は今後もメダカ界を牽引する見た目であることに間違いは無いです。

身体が透ける「シースルー」

熱帯魚の中にも体が透けて見える魚がいますが、メダカにも体が透けて骨が見えるシースルー系のものが存在します。

熱帯魚の場合にはちょっとオシャレに「グラス」という言葉が名前に使われていることが多いですね。グラスブラッドフィンやグラスキャットなど。

メダカもシースルーは人気で、特に屋外ではなく、お部屋で楽しむメダカとして人気があります。水槽の側面から見えるので、上から見るよりも美しさを堪能することができます。

身体が白い「アルビノ」

アルビノというのは熱帯魚でも使われる言葉で、全身が真っ白で目が少し赤みを持つような品種です。

突然変異によって生まれる場合が多く、真っ白なコリドラスは赤コリドラスの徒然変異で生まれてきました。

アルビノというのは、どんな魚でも人気が出ますね!

優雅な姿の「ロングフィン」

ロングフィンと言われて、ちょっと聞きなれない名前かと思いますが、ヒレが長い種類の事です。メダカも背びれや尾びれがありますが、このヒレが長いものがロングフィンとなります。

ロングフィンになると、見た目がゴージャスになります。

熱帯魚でもロングフィンのテトラやコリドラスがいますが、通常のヒレの長さよりも人気や希少性が高くなります。

背中に輝く光「体外光」

メダカの背中で輝く光のことを示します。メダカは上から見る環境性も重要であることを記載しましたが、上から見た時にその輝きには様々な種類・色があります。

品種によって、その輝かせ方が全違うため、上から見た時の美しさを競う上では重要な見た目になってきます。


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品種が多い事には弊害が多い

品種改良が進み、メダカ業界が活気付くことは非常に良いことです。

しかし、その品種の多さ、名前の難しさというのはマニアの方には良いのですが、一般消費者からすると複雑すぎて…

私はその点が、今後のメダカ業界の大きな課題ではないかと強く感じます。

品種を全て覚えられない

この記事の筆者である私自身、全く持って覚えられません。

楊貴妃やヒメダカ、白メダカは分かります。

また、有名なメダカの「オロチ」や「幹之」は知っています。

しかし、それ以外のメダカはとてもじゃないですが全て覚えられません。

しかも同じような見た目で、若干一部の部位が違うだけで名前が違ったりすると、その品種を生み出した方や一部のマニアしかわからないという弊害が生まれます。

もしかしたら、その品種を作ったかたも見分けが付かなかったりすることがあるかもしれませんね…。

そもそも雑誌に掲載されている品種が売っていない

これは、本当に課題だと思います。

アクアリム雑誌でも、新しく生まれた品種を表紙や紙面の前半で取り上げていますが、入手すること自体が難しい。

雑誌で紹介されているメダカを気に入って、アクアリウムショップを訪れても、その品種を取り扱っていない。または入荷に2カ月かかります…と言う場合が多いです。

ショップに行って打ってなかったら、その時点で、そのメダカを求めている方の購買意欲が下がりますよね…。

「え!?雑誌で紹介されている品種なのに使ってないの!?」

普通、そう思いますよね。

ファッション誌に掲載されている服は、そのブランドを扱っているお店に行けば、そのシーズン中は必ず販売されていますよね。

さらに、一般の方はインターネットで魚を購入するという行為に慣れていません。「え?ネットっで命を購入するの?」という購買に対する障壁があるのは確かな事です。

扱う店舗の少ない、または取り寄せが困難な商品を雑誌で紹介しても…

これ以上は記載しないでおきましょう。私の愚痴になってしまいますね(笑)

初心者に対する敷居を上げる

メダカを飼ってみようかと思いアクアリウムショップを訪れた家族連れがいたとします。

そのアクアリウムショップで扱っているメダカのラベルに、

「●●・▲▲・ロングフィン」

「××・ラメ」

と記載してあったら、どう思うでしょうか?

店員さんに「メダカですよね?これ?」と伺うと、店員さんからは「はい、品種改良のメダカです。〇〇というメダカと▽▽というメダカの交配で作られて、この点が特徴で…」と話されたらどうでしょう?

その時点で、その家族連れのメダカに対する敷居が一気に上がるでしょう…。

「この目だは楊貴妃という品種で、オレンジ色が人気のメダカです。初心者でも通常のメダカと同じ飼育方法で育てられますよ。」と言われたら、購買意欲が湧きますよね!

生産者からしたら生み出した自分の品種にいろんな名前を付けたいことはわかります。しかし、品種の多さはマニア以外の購入者のことを考えていない場合が多いと感じます。

価格が高くてマニアしか手を出さない

過去に1匹1万円のメダカが盗難されてニュースになったことがあります。

私はこのニュースを聞いた時に「え!?メダカ1匹1万円!?」と正直に驚きました。

メダカと言うと「ホームセンターで1匹100円くらいで売られている魚」というイメージが強かったからです。

実際、アクアリウム専門店に行くと、1匹1,000円以上で売られているメダカがずらりと並びます。熱帯魚より高価ですよ。

正直なところ、アクアリウム初心者からすると高すぎる価格設定なのです。

確かに希少性が高く珍しいと言ことは、その市場に置いて価値を生み出します。

しかし、その価値を共有できるのは一部のメダカマニアだけであり、子供と一緒に楽しもうという方からすると高すぎる価格設定です。

店に一匹1,000円以上のメダカしかいなかったら、購入する方は限られてしまうことは必至です。

メダカ業界の発展を阻害する可能性がある

私自身、上の見出しで説明した「初心者に対する敷居」と「価格の問題」は、メダカ業界の今後の発展に弊害になると考えています。

アクアリウムショップでも頻繁に品種改良メダカのコーナーが組まれていたりしますが、その背景にはメダカの品種改良という活動が活発になっているという背景とメダカ人気の背景があります。

25年前のアクアリウム業界では考えられなかったことですね…。

私が子供の頃に父親と行っていた熱帯店にはアロワナやディスカスがたくさん泳いでいました。時代の変化を感じる場面です。

市場規模・アクアリウムの人気を盛り上げていく上で大切にしなければならないのは、アクアリムに対してそこまで深く精通していない一般消費者の皆様の存在です。

日本を代表する産業である車産業。最も売れている車種は軽自動車や排気量の少ない小型の車、そして家族用のミニバンです。日本の多くの方が求める、これらの車種が日本の車産業を支えている大きな原動力です。珍しい車だけど値段が高いものは一部の方にしか売れないですよね…。

メダカに関しても同じだと思います。

品種改良で珍しい品種が現れ、一部の方の間で高値で取引されて、人気が出なかったら品種自体が消えていく…こうなってはメダカ業界の将来は暗雲立ち込める状態です。

せっかく人気に火のついている市場です。今のアクアリウム業界で大きな役割を担うメダカを衰退させないため、ブリーダーの皆様や業界として何か手を打つ必要があるのではないかと感じます。

「いやいや、品種改良メダカはマニアの楽しみだよ」と言われたら、それまでなのですが…。

この記事の最後に

現代のメダカ業界は、非常に多くの品種が次々と作出され、一種のメダブームが続いている状態になります。

それはメダカ以外の熱帯魚を楽しむアクアリストも認識している事実であり、アクアリウムの中で「メダカ」というのが一つの地位を確立している事実であります。

そんな活況の市場だからこそ、初心者が楽しみやすいメダカ市場を作り上げて欲しい、そのような指針を付くべきではないかと感じます。

作出者の方からすると、自分が作出した自慢のメダカなので自分が好きな名前を付けて世に出したいというのは、私も理解できることなのですが、あまりにも種類や難しい名前が多すぎる!

しかも、あまり人気にならなかった品種は、手に入らないメダカも多く、いつの間にか品種自体が消えていってしまう可能性も高い。

メダカ業界というのを、新しくアクアリウムを始める方にとっても入りやすい市場にするために、これから考えていくべきことが多いのだと思います。

「1匹1万円のメダカ」はごく一部のマニアだけが興味があり、ニッチな市場化と衰退を招くものではないかと感じることがしばしばあります。

このテーマの課題については、ここではこれ以上は深堀りはしません。昔から10年、20年と愛され続けアクアリウムショップ・熱帯魚市場から消えることの無い熱帯魚がいますよね?その熱帯魚には、市場を確立し、市場を長生きさせるそれなりの理由があるのだと感じます。