水槽でお魚を飼育されている方の中には、水槽の中に非常に小さな糸くずのような生物が舞っているのを見たことがあるのではないでしょうか?
糸くずではなく、水中でくねくね動いている生物です。
その生物ですが、アクアリウムでは「水ミミズ (ミズミミズ)」 と呼ばれています。
糸ミミズが水中を漂っている姿はあまり綺麗ではないですし、何か寄生虫を連想させるような姿をしているので、何とかして抑制したい・対策したいと思う方が多いかと思います。
水ミミズが発生する原因は、基本的には糸ミミズが定着する場所があること、そして水ミミズの栄養分となる物がそこにあるからです。
糸ミミズが食べるものとしては、魚の糞や残餌等が該当します。
では、水ミミズを発生させないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?
この記事では、水ミミズが増殖する原因や水ミミズが住みやすい場所、そして私が実施している水ミミズの対策なども御紹介したいと思います。
【注意】この記事は筆者の経験を元にして作成したものとなります。必ず効果がある方法とは言えない可能性があります。あくまでも参考事例としてお考えいただけましたら幸いです。
水ミミズの住み着く場所について
皆さんが水ミミズを水槽内で発見する時、どのような状態の水ミミズを発見することが多いですか?
水中を漂っている場合もありますし、水槽のガラス面を這っている場合もあるかと思います。
しかし、多くの場合、水槽の底に敷いているアクアリウム用のソイルの中や水草の根元付近、そしてフィルターの中などが水ミミズの住処となります。
水中に漂っている水ミミズは、それらの住処から運悪く水中に放出されてしまった水ミミズ達だと考えられます。
フィルターの中から水ミミズが出てくるのが見える場合には、フィルターの中にも水ミミズが発生している証拠になります。
水槽やフィルターの中の水ミミズの絶対数が多くなると、それに伴って水中を舞う水ミミズの量も多くなります。
水ミミズは、人の目でも確認できるくらいの大きさがあるため、水槽内を舞っている姿があると、どうしてもアクアリウムの美観を崩してしまいます。
水ミミズの発生原因について
また、水ミミズがどこからやってくるのか?という点ですが、様々な原因が考えられます。
水槽を立ち上げた当初は、水ミミズって見られないですよね?
最も有力なのは、アクアリウムショップで購入した水草に付着していることや、生体を購入した際のショップの飼育水の中に混入していることなどが挙げられます。
アクアリウムを楽しむためには生体や水草を購入しなければならないので、水ミミズの侵入経路は防ぎたくても防ぐのが難しいです。
外部からの水ミミズの侵入を100%防ぐことは不可能に近いと考えられます。
私達ができることは、水ミミズが異常発生しないように水槽環境を立ち上げることだと思います。
水ミミズは魚やシュリンプに無害な存在です
水ミミズは見た目は悪いのですが、実は魚たちにとっては餌になります。
水槽の中に漂う水ミミズを、熱帯魚が食べている姿を見たことがあるのではないでしょうか?
私自身も、水中を漂っている水ミミズをモーリーやネオンテトラが食べているのを何度か見ています。
魚にとっては、糸ミミズは有害な生物ではなく、食べ物という認識なのです。
飼育している魚が水ミミズを食べてしまっても、その魚の健康状態に何ら影響はありません。
魚が自らの判断で水ミミズを食べていますし、水ミミズが水中を舞うと食べるのに争奪戦になるくらい食いつきが良いので、魚にとっては「嫌いな餌」ではないことは確かです。
魚たちが食べてくれれば、水槽内の水ミミズの数が減るので一石二鳥ではあるかと思います。
水ミミズが増えてしまう理由とは?
では、水ミミズが増えてしまう原因・理由は何なのでしょうか?
まず最初に、水ミミズが増えてしまう環境や、水ミミズの発生を助長するような管理方法について記載していきます。
①水槽の底に敷くソイルの中に住み着く
最近のアクアリウムは、魚の飼育だけでなく、水草の栽培・育成も楽しむことが一つのジャンルとして確立されています。
そのため、水草を植えるためにアクアリウム用の土 (ソイル) を使用されている方が多いと思います。
陸上で土の中に住み着くミミズと同じように、水ミミズもソイルの中に住み着きます。
水ミミズにとってはソイルの中は水流も無いですし、外敵が来ないですし、魚の糞も供給されるので、非常に住み着きやすいパラダイスのような場所なんですね。
それに対して、レイアウト素材の入っていないベアタンクだったり、底に薄く砂が敷いてあるような水槽レイアウトの場合には、水ミミズが住みにくい環境と言えます。
水槽の底に厚くソイルが敷かれていない水槽では、水ミミズは水中へ放出されてしまう確率が高くなるので、魚の餌になったりして自ずと水ミミズの数が増えにくい状況であると言えます。
②水槽の底に糞や残餌が溜まっている
水ミミズの餌は、基本的に有機物だと言われています。
土の中に生息するミミズが落ち葉などを食べて分解してくれるのと同じように、水ミミズは水槽内の有機物を食べてくれるという良い働きをしてくれます。
つまり、魚の糞や食べ残した餌がソイルの中などに溜まっている環境ほど、水ミミズがどんどん増殖していく環境にあると考えられます。
その意味で、ソイルの中というのは、水草が生えていて掃除しにくい場所になるので、水ミミズが増殖しやすい場所と言えるのです。
実際に、ソイルをつついてみたり、少しほじくってみて下さい。
水槽環境が整っていない水槽の場合には、水ミミズがいっぱい出てくると思います。
異なる視点で考えると、ソイルの中に大量の水ミミズが発生しているのは、水槽の底やソイルの中を清掃できていないという証拠でもあるのです。
③フィルター掃除をしていない・フィルターが立ち上がっていない
水ミミズが住み着くのは、水槽の中だけではありません。
フィルターの「濾材」の中にも住み着いています。
フィルターの中で水ミミズが異常発生していると、フィルターから給水される水の中に水ミミズが混入していることが多々見受けられます。
フィルターのろ材中にも魚の糞や食べ残した餌は溜まっているので、水ミミズにとっては餌が豊富で住みやすい環境になります。
フィルターは清掃しすぎると中に住み着いているバクテリアに悪影響があるため、毎週のように掃除はできませんが、1カ月か2カ月に1度くらいは軽く洗ってあげると水ミミズの増殖を抑制することが必要です。
私自身、各フィルターは2カ月に1度は必ず清掃するように心掛けていますが、フィルターの中に水ミミズが異常発生することは抑えられています。
また、下でも紹介しますが、フィルターの中に生物濾過を担うバクテリアが定着していないことも水ミミズ発生の原因になると考えられます。そのため、水槽を立ち上げた当初に水ミミズが発生してしまうのは、フィルターが立ち上がっていないことが原因である場合が多いです。
水槽内の水ミミズの役割って何?
地球上の全ての生き物には必ず役割があります。
水ミミズにも役割があって地球上に存在しています。
土の中に生息するミミズは、上で書いたように落ち葉を食べて分解し、土の中の微生物が分解しやすいように処理をしてくれています。
水ミミズも、それと同じ働きを持っています。
魚が出した糞や食べ残した餌を食べて分解し、バクテリア達が生物濾過をしやすいように手助けをしてくれていると言えます。
言い換えると、水槽を管理している私たちが、水替えの際に除去してあげられなかった糞などを、私たちに代わって処理してくれる働き者と言えるのです。
もちろん、フィルターや水槽の中の生物濾過が十分に機能すれば水ミミズの役割は減るかと思いますが、水ミミズは単なる見た目の悪い生物と言うわけでもないのです。
水ミミズが大量発生しているか確認する方法は?
水ミミズが大量に発生しているか否かを確認する簡単な方法があります。
下の写真の矢印に示すように、水槽のガラス面 (アクリル水槽ならアクリル面) とソイルの間を確認してください。この部分に白い糸のようなものがたくさん存在していたら、水ミミズが大量発生している証拠になります。
この部分に目視できるレベルで水ミミズが大量に発生していたら、ソイル及びフィルターの中に水ミミズが大量発生していると考えて良い状態です。
ちなみに下の写真は、実際の水ミミズではありません。水ミミズが大量発生している様子を載せるのは気が引けたので、ソイルの写真に手書きで水ミミズを描いてみました。
大量発生した水ミミズを減らす方法はあるの?
水槽内に大量に発生した水ミミズを、簡単に短期間で減らすことはできません。
しかし、時間をかけて水槽内の環境を改善すれば、確実に水ミミズは減ります。
これは事実です。
水ミミズを減らすには、次の2つのステップをクリアしていくことが重要になります。
まず最初に、水槽内に存在している水ミミズの絶対数を減らすこと、そして次に水槽・フィルター等の飼育環境をしっかりと立ち上げることです。
まず最初に発生している水ミミズを水槽から追い出しましょう
水槽内に発生している水ミミズについては、フィルターやソイル内の掃除で水槽内から追い出すしかありません。
フィルターの中にあるリング濾材や球状濾材は軽く飼育水で水洗いして、ウール濾材は頻度を上げて交換していくことで水ミミズの数が減ります。
次に、水ミミズの住処となっているソイルの中を頻度よく清掃して、水ミミズを地道に取り除いていきましょう。
目に見えている水ミミズについては、水ミミズが増殖するスピードよりも、掃除で水槽の外に出す数を増やしていくしかないです。
これは短期的な応急対策として重要な作業ですが、長期的に考えた恒久決策にはなりません。
恒久対策は以下で説明するフィルターや水槽内の生物濾過を立ち上げることです。
フィルターや水槽を安定稼働させること
長期的に水ミミズを抑制するのに必要な事は、水槽の生態系を安定させることです。
ここで「生態系」を安定させる役割があるのが、フィルターや水槽内のバクテリアによる「生物濾過」です。
私の管理する水槽にも、新規に水槽を立ち上げた時は水ミミズがいました。しかし、現在は管理する多くの水槽に水ミミズがいません。
事実として、水ミミズが水槽の中を舞っている姿を1年くらい見たことがありません。(この記事を投稿した日から遡って1年くらい)
フィルターを掃除しても大量に水ミミズが出てくることはありませんし、ソイルの中を清掃しても水ミミズの姿は見られません。
水ミミズのいない水槽の環境・管理で共通していることは、水槽の稼働期間が長くフィルターの生物濾過がしっかりと立ち上がり、定期的にフィルターのメンテナンスを行っているということです。
フィルターが立ち上がってバクテリアが定着すれば、バクテリアが有機物の分解をしてくれますので、水ミミズの出番が無くなります。魚の糞をバクテリアたちが分解してくれると、水ミミズたちはいつの間にか水槽から数が減っていきます。
例え魚の糞がソイルの中にあったとしても、ソイルの中にバクテリアが定着すれば、それらをバクテリアが分解してくれます。
私自身も、上記の通り、水槽の立上げ当初に水ミミズの発生に悩んでいた時がありました。しかし、水槽の稼働期間が長くなるにつれて水槽環境が安定し、水ミミズを見なくなったのが事実です。
実際に、水槽内の清掃とフィルターの安定稼働以外に、水ミミズ抑制のためにやったことはありません。
いつの間にか水ミミズが消えていたというのが実際のところです。
この事実から言えることは、水ミミズの抑制には水槽やフィルター内の「バクテリアの定着が最も重要」ということになるのかと思います。
バクテリアについては、水槽の稼働期間が長くなると勝手に定着してくれます。
ただ、一刻も早くバクテリアをフィルターや水槽内に定着させるためには、バクテリアの素を水槽に投入することです。
私が使用しているバクテリアは「スーパーバイコム」です。信頼と実績の高い商品で、水ミミズの発生を抑制するためのフィルターの立上げにはこれが一番です!
この記事の最後に
水ミミズは、水槽を立ち上げた当初は高い確率で発生してしまう生物だと思います。
しかし、水ミミズ自体は悪い生物ではなく、魚にも害を与えることはありませんし、バクテリアの生物濾過を助けてくれる良きパートナーでもあります。
しかし、水槽の中に水ミミズが舞っている姿を見ると、せっかく頑張って立ち上げた水槽も「美しいアクアリウム」とは言えませんよね。
水ミミズは水槽やフィルターの中に必要な存在ではありますが、過剰に発生しないようにするには日々のメンテナンスや清掃に加えて、フィルター内にバクテリアを定着させることが一番の近道です。
水ミミズが大量に発生している状況は、言い換えれば水槽管理の方法を改善すべきサイン (バロメータ) なのかと思います。
「フィルターが立ち上がっていない」または「水質管理ができていない」といった、管理不足が原因だと言えます。
水ミミズの発生を防ぐには「フィルターでの生物濾過の確立」「定期的な水槽内の清掃」そして「毎週の水替え」が必須の作業だと言えます。これらを行うことで、水ミミズの発生しにくい環境が自ずと整います。
ただし、その環境は1日や2日では実現ができません。少なくとも2ヵ月以上の時間をかけて立ち上げていくものなのだということは覚えておいていただきたいです。
この記事の内容が、水ミミズにお悩みの方にとって有益な情報になりましたら幸いです。