アメリカザリガニが特定外来生物指定に!その経緯を時系列で解説

子供の頃、近くの池や川でたくさん捕まえて飼育していたアメリカザリガニ。

友達とザリガニ釣りを行って、大きさを競い合った小学校時代がとても懐かしく思えます。

あれから時が経ち、2020年11月にはアメリカザリガニを除く、海外から輸入される多くのザリガニ (ミステリークレイフィッシュ等) が特定外来生物に指定されました。

アメリカザリガニは、飼育している方も多く、急に特定外来生物に指定すると混乱 (無責任な放出や殺処分) を招く恐れがあることから、2020年11月の指定からは除外されました。

しかし、アメリカザリガニにも新たな規制を作って飼育や販売などに制限をかけるべきと言う議論が続き、環境省が主体となりその法整備を進めてきました。

この記事では、アメリカザリガニの特定外来生物指定の経緯も含め、「今後の飼育が可能なのか?」「野外への放流ができるのか?」などについて詳しく見ていきたいと思います。

【注意】この記事は、2022年5月1日の時点でアメリカザリガニがまだ特定外来生物に正式指定される前の記事です。2022年5月1日までに、アメリカザリガニに関して決まったことを紹介します。また、アメリカザリガニが正式に特定外来生物に指定されることとなれば、記事をアップデートしていきます。


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2021年7月6日に報道されたアメリカザリガニの特定外来生物指定は誤報

「アメリカザリガニの特定外来生物指定」の報道を見たのは2021年7月6日の事でした。

何気なくYahoo!ニュースを見ていたら「アメリカザリガニとミドリガメが特定外来生物の指定へ」の文字が…。

2020年11月にアメリカザリガニとニホンザリガニを除く輸入ザリガニが特定外来生物に指定されたことは記憶に新しかったのですが、それから1年もしないうちにアメリカザリガニの特定外来生物指定される…。

「そんなに早くにザリガニに関する外来生物法が変わるの!?」と正直疑問に思いました。

そこで、環境省のHPを調べてみると、実はこの2021年7月6日の報道が誤報であることがわかりました。

当時、環境省のHPを探しても、どこにもアメリカザリガニを特定外来生物に指定するという資料や議事録が出てきませんでした。

下に2021年8月6日に開催された「第5回外来生物対策のあり方検討会」の議事録のリンクを用意しておきます。

環境省リンク → 第5回外来生物対策のあり方検討会 議事録

この議事録を御確認いただければわかると思いますが、7ページ目に環境省のコメントとして「御指摘のとおり、アメリカザリガニとかアカミミガメを今の特定外来生物にそのまま指定するということは考えてございません。その点は報道が誤りだということになります。」と明記されています。

2021年7月6日の報道が間違いであったことを環境省が認めているのです。その後、環境省のHP等でも説明を追加しているとのことです。

報道されたことが全て正しいということでは無く、「正確な情報を自ら確認すべきと」言う良い例になりました。

また、上の環境省のコメントに続けて「今の特定外来生物にまさに指定をすると飼育規制がかかって大量の飼育個体の遺棄、野外への放出が懸念されるということで、そうした弊害が生じないような形での規制の枠組みの検討とか対策が必要である」というコメントもあります。

つまり、2021年7月6日の段階では、アメリカザリガニは特定外来生物にそのまま指定するのではなく、何かしらの枠組みを作って規制を検討している段階だったということですね。

【2022年1月11日】環境省がアメリカザリガニに対して新たな枠組みを設ける方針を明言

上記のアメリカザリガニの特定外来生物指定の誤報から約半年後になりますが、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について」の審議が行われました。

その議事録が下のリンクになります。

環境省リンク → 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について (答申)

この資料の中で、15ページ目の終わりの部分になりますが、以下の措置が必要であることが明記されています。

「アカミミガメやアメリカザリガニのように、我が国の生態系等に大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、飼養等を規制することによって、大量に遺棄される等の深刻な弊害が想定される侵略的外来種については、一律に飼養等や譲渡し等を規制するのではなく、輸入、放出並びに販売又は頒布を目的とした飼養等及び譲渡し等を主に規制する等の新たな規制の仕組みの構築や、各種対策を進める必要がある。」

アメリカザリガニを単純に特定外来生物に指定してしまうと、国内で様々な混乱が起こるため、それを防ぐために新たな枠組みを設けて規制していく方針ということですね。

確かに、いきなり特定外来生物に指定されてしまったら、飼育しているザリガニを河川や池に放流する方が出てくるでしょうし、最悪の場合にはザリガニが大量に殺処分されてしまう可能性も十分に考えられますからね。


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【2022年3月1日】種ごとに決められた一部の規制を適用する法律案が閣議決定

2022年1月11日の環境省の発言から約2カ月、アメリカザリガニの外来生物指定が正式決定していませんが、これ以上の被害を防止するために法律の一部を改正することを閣議決定しました。

環境省のHPはこちら → 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について」

アメリカザリガニやアカミミガメ (ミドリガメ) は飼育している家庭が多く、法律で規制してしまうと、自然界に大量に放たれてしまう懸念や大量の殺処分が起こる懸念があります。

そのため、当分の間は、種ごとで決められた一部の規制 (輸入・販売・放出等) のみを適用することを法律改正で可能にしたのです。

ちなみに、アメリカザリガニは2022年4月の時点で約65万世帯で約540万匹が飼育され、アカミミガメは約110万世帯で約160万匹が飼育されているとのことです。

また、この時点でアメリカザリガニの規制の対象外とされている行為が、

①個人の販売目的ではない飼育

②個人間の無償譲渡

とのことです。

つまり、御家庭で飼育されているアメリカザリガニは、飼育に関する届け出は不要で飼育を継続できるということです。また、個人間での譲渡 (友達に譲ること) も許可されるようです。

逆に、川や池への放出は規制されるだろうということになります。「飼育するのなら、最後まで飼育しましょう!」ということですね。

アメリカザリガニについては、日本に古くから住んでいる外来生物のため、指定に向けては長い議論が重ねられてきました。

しかし、この法律の改正によって、アメリカザリガニの特定外来生物への指定、そして規制が始まることが一歩前進したことになります。

アメリカザリガニの特定外来生物の指定が正式決定し規制が始まったら、日本の自然環境がどのように変わるのか…。

日本固有種の個体数増加や、水草などの被害軽減へ向けて、この決定が良い方向へ向かって欲しいと願うばかりです。

【2022年4月15日】アメリカザリガニ対策関係資料を環境省が公開

上記の法律改正の発表から約1か月半後の2022年4月15日、環境省は今後のアメリカザリガニの飼育に関する手引きや学校教材を公開しました。

環境省HP → アメリカザリガニ対策関係資料(手引き、教材、動画)の公表について

2022年4月15日の時点では、今国会でアメリカザリガニを特定外来生物に指定する法案が提出されるため、それに向けて国民へ向けての情報展開と言うことになりますね。

公開されたのは3つの資料で「アメリカザリガニ対策の手引き」「学校教育用教材」「普及啓発用動画」となります。

「アメリカザリガニ対策の手引き」については、地方公共団体や民間団体などによる各地での本来の水辺の生態系の保全・再生を促進させていくことを目的に準備されたもの。

「学校教育用教材」は、学校でアメリカザリガニの教育を行う際に使用することを目的とするもの。これは、アメリカザリガニの飼育者は小学生が最も多いために用意されたものとのことです。(我が家でも息子がアメリカザリガニを飼育しています。)

「普及啓発用動画」は、アメリカザリガニが日本本来の水辺の生態系に大きな影響を与えていることを広く認識いただくために用意されたものとのことです。

ザリガニを飼育されている方であれば、この3つの使用に一度は目を通し、動画を視聴しておくことをお勧めします。


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【更新予定】アメリカザリガニの特定外来生物指定が近い将来決定される

上の項目で取り上げた環境省によるアメリカザリガニの教育資料公開の発表では、そのページの中で「今国会にアメリカザリガニを規制対象とするための外来生物法改正案が提出されています。」と明言されています。

また、2022年3月1日の閣議決定で法律改正が行われたことから、アメリカザリガニの特定外来生物指定に向けた法律の環境も揃ったことになります。

つまり、これまでの経緯を考えると、国会でアメリカザリガニの特定外来生物が決定される可能性が高く、近い将来から規制が始める事になります。

本記事でも、アメリカザリガニの特定外来生物指定が決定されたら、記事を更新して報告していきたいと思います。

この記事の終わりに

本記事では、アメリカザリガニの特定外来生物に向けた環境省の活動を時系列で紹介させていただきました。

アメリカザリガニは、日本人にとってとても身近な水辺の生き物であることは間違いありません。

しかし、その反面、日本古来の環境を破壊してしまっている存在であることも間違いありません。

無責任な放出を規制し、これ以上のアメリカザリガニの被害を防ぐには法で規制するしかないのだと思います。

また、これまでは特定外来生物に指定されると一律に様々な規制がかかっていました。

しかし、アメリカザリガニの特定外来生物指定に向けた活動の中で、特定外来生物に一律の規制を設けるのではなく、種ごとに規制内容を決定するという法律に変わりました。

この点も、認識しておくべき事項ですね。

アメリカザリガニの特定外来生物指定が、日本古来の自然環境を守るために良い方向へ向かって欲しいと心から思います。

それでは!