二酸化炭素添加が無くても水草は赤く染まる!?-ロタラ・ベトナムの例-

水草レイアウト水槽の中で、一際目立つ存在と言えるのが葉が赤く変色する「赤色系水草」です。

水草と言うと、アヌビアス・ナナやボルビティスのような緑色の水草を想像される方が多いかと思いますが、水草の中には葉が真っ赤に染まる品種があります。

代表的なところでは、「ルドヴィジア・スーパーレッド」や「ロタラ sp. Hra」、そして本記事で紹介する「ロタラ sp. ベトナム (本記事ではロタラ・ベトナムと略します) 」等があります。

アクアリウムショップで見かけたことがある方も多いかと思いますが、赤く染まった水草があると、水槽の中の景色が一気に華やかになるだけではなく、レイアウトのレベルが一段上がるような印象を受けます。

しかし、赤色系の水草は育成が難しいと言われることもあり、アクアリウム初心者では管理が難しく、中級者以上のレベルが必要と言われることもあります。

また、真っ赤に染めるためには水槽への二酸化炭素の添加が必要であるという情報もあり、赤色系の水草に対する敷居が上がっているようにも思うこともありますね。

ただ、私自身が赤色系の水草を育ててみて分かった事実として、水槽の環境次第では二酸化炭素の添加は必須では無いのではないか?ということです。

今回は、ロタラ・ベトナムを例に取り、二酸化炭素の添加をしない場合にも葉が赤く染まるのか?を実験してみたので御紹介させていただきます。

ただし、水槽の環境は水槽ごとに異なるので、あくまでも一例として御紹介させていただきます。


Advertisement

赤色の水草を育てるために一般的に言われている事について

赤色系の水草を育てるのに必要な知識として、一般的に言われていることは次の3つかと思います。

① 二酸化炭素の添加を行う事

② 水槽用LEDライトの光量を上げる事

③ 液肥を適切に使用すること

どの項目を取っても、確かに水草を健全に育てるために必要な項目に思えてきます。

しかし、水草を赤く染めるということに特化した場合には、上記の①②③の項目は本当に必要なのでしょうか?

赤色に染まる水草達は、条件が揃えば赤くなりますが、条件が揃わなければ緑色の水草になります。つまり、人工的に葉を赤く染めているということになります。

私自身のアクアリウム管理の経験からすると、②は非常に重要な事だと思いますが、①③については必須なのか否かが疑問に思うことがありました。

実は、二酸化炭素ボンベが空になってしまった状態で数日水草水槽を放置していましたが、ロタラ・ベトナムは赤色が完全に抜けて緑色になることは無かったのです。

その事実を受けて疑問に思ったことが一つあります。

「二酸化炭素の添加を全く行わずにロタラ・ベトナムを育てたら、赤く染まるのだろうか?」ということです。

今回は、ロタラ・ベトナムをトリミングした直後から二酸化炭素を使わずに育ててみたので、その実験過程と結果を御紹介したいと思います。

実験に用いるロタラ・ベトナムの紹介

今回の実験に用いるのは、上記の通り、赤色に染まる水草として有名な「ロタラ・ベトナム」です。

私の管理する60cm水槽の中で育てている水草になります。

下の写真は、二酸化炭素の添加も行っている状態で育てたものです。

葉が赤くなっているだけではなく、光沢を帯びたように輝く葉となっており、熱帯魚とのコントラストも良く、水景をより一層美しいものにしてくれる存在であることはお分かりいただけるかと思います。

このロタラ・ベトナムを使って、今回の実験を行います。


Advertisement

実験の方法について

では、実際に行った実験の手順を以下で紹介します。

今回実験に用いる水槽は60cm規格の水槽で、後景草としてロタラ・ベトナムやルドヴィジア・グランデュローサ、前景草にヘアーグラスを植栽しています。

あまり凝ったレイアウトでは無く、水草の量も一般的な水草水槽レイアウトです。

手順① ロタラ・ベトナムのトリミングを実施

まず、最初にロタラ・ベトナムをリセットするために、全ての葉をトリミングして茎だけの状態にします。

既に赤い葉が残っていたら、効果が明確にわからないので、全ての葉を切り取ってしまいます。

実際に、トリミングした直後の写真が次の写真となります。

流木の向こう側にロタラ・ベトナムの茎が見えていますが、赤色の葉を全て除去していることがお分かりいただけるかと思います。

手順② 二酸化炭素の添加をせずに管理

トリミングを行う前までは二酸化炭素を5秒に1滴程度の添加量で管理していましたが、トリミング後は二酸化炭素の添加を完全にストップして管理します。

二酸化炭素の添加については、基本的にエアレーションで空気中から水中へ溶け込む分のみとなります。

トリミングを行ってから約1ヵ月経つと、新しい葉が展開してくるので、それまで二酸化炭素の添加以外は通常の管理を行っていきます。

ちなみに、水温は年間を通じて25℃で一定、飼育している魚は小型カラシン科の魚が約20匹となります。

液肥の添加は、2週間に1度のペースで規定量を与えています。

使用しているLEDライトはAqullo製のTriangle LED

今回の実験水槽では、水槽用ライトとしてAqullo製のTriangle LED Brightを使用しています。

この製品は水草の育成に必要十分な光量を確保できるもので、下の記事では、その効果についても詳細に説明しています。

個人的にはコスパがかなり良く、とてもお勧めのLEDライトです。

また、サブライトとしてGEX製のCLEAR LED POWER IIIも併用しています。

二酸化炭素添加無しでのロタラ・ベトナムの育成結果

では、二酸化炭素添加を行わずに管理した場合に、ロタラ・ベトナムがどのような成長を遂げたかを紹介したいと思います。

また、今回の結果が得られた考察も少し記載してみました。

二酸化炭素無しでもロタラ・ベトナムは赤く染まります!

まず最初に、ロタラ・ベトナムをトリミングしてから2週間後の様子が次の写真となります。

トリミングを行った茎の先端付近から、若い新芽が葉を伴いながら伸びてきていますね。

この時点で、既に葉が赤くなってきていることがわかります。

一部、緑色の葉も見られてはいますが、8割から9割は葉の色が赤みを帯びていると言えます。

そして、更に月日が経ちトリミングから3週間が経過した時の状態が次の写真となります。

ロタラは有茎草ですので、茎の成長が活発になると一気に成長速度が上がってきます。

そして、2週間目の時に比べると葉の赤い色が鮮明な状態になり、光沢を帯びたような葉に変貌を遂げています。

最後に、トリミングから1カ月後の様子が次の写真になります。

いかがでしょうか?

鮮やかな赤みを帯びたロタラ・ベトナムがしっかりと成長しています。

正直なところ、ここまで赤くなれば、満足のいくロタラの育成ができたと感じます。

つまり、今回の私の実験結果としては、二酸化炭素の添加が無くてもロタラ・ベトナムは赤く染めることができるという結論です。もちろん、水槽環境にも依存しますが、強度のあるLEDライトがあればロタラ・ベトナムは赤くなるようです。

ただし、この結論の中でもう一つ重要な事は、今回は葉が赤くなることにだけ着目し、ロタラの成長速度については焦点を当てていないということです。二酸化炭素の有無により成長速度には影響がでると思いますので、その点は御留意ください。

空気中から供給される二酸化炭素でもロタラは赤くなる -エアレーションは必須-

今回の結果では、ロタラ・ベトナムは二酸化炭素の添加が無くても赤く染まることがわかりました。

しかしながら、ロタラに限らず、水草が成長するには水中の二酸化炭素は必要です。

水草も光合成をしながら成長をしていく植物ですので、二酸化炭素の供給が無ければ光合成ができません。

では、必要な二酸化炭素はどこから供給されるのでしょうか?

答えは、酸素と同様に空気中から水中へ溶け込む二酸化炭素になります。特にエアレーションをすると水面が波打ちますので、二酸化炭素の取り込み量も上がってきます。

エアレーションは、フィルターの水流やブクブク (投げ込み式フィルター) を用いて、水槽の水面を動かすことを指しますが、水面が揺れ動くことで酸素や二酸化炭素が水中へ取り込まれます。

取り込まれる酸素や二酸化炭素の濃度には限界 (飽和濃度) がありますが、水草が光合成を行って飼育水中の二酸化炭素濃度が下がれば、再びエアレーションによって空気中から水中へ二酸化炭素が供給されるようになります。

つまり、水槽の環境次第では二酸化炭素を添加しなくても、ロタラが赤くなるのに必要な二酸化炭素は供給されているというのが今回の結果の事実なのでは無いかと思います。

ちなみに、今回使用したフィルターはエーハイムの2213で、フィルターによって生まれる水流を用いてエアレーションを行っていました (昼夜でエアレーションの強度を変化させてはいません)。

ただし、ロタラの数が多かったり他の水草の数も多い場合には、エアレーションだけでは二酸化炭素の供給が不足し、水草が育成不良に陥ることも考えられます。

そのような場合には、二酸化炭素ボンベを用いた二酸化炭素の添加が大きな役割を果たしてくれるかと思います。

ライトを弱くしたらロタラ・ベトナムは緑色になりました

今回の実験では、上述の通り、十分なLEDライト強度があれば、ロタラ・ベトナムは赤くなるという結論を記載しました。

その確証をもう一つ得るために、LEDライトを30時間ほど点灯させずに管理してみました。もちろん、二酸化炭素の添加も行っていない状態です。

すると、下の写真のように、新しく生えて来たロタラ・ベトナムの葉は黄緑色に変化していました。ロタラ・ベトナムの頂点部分が最も新しい葉になるのですが、赤色では無く黄緑色をしていることが分かるかと思います。

この状態で、再度LEDライトをオンにして管理していくと、黄緑色の部分も赤く染まってくれました。

つまり、この追加実験からも、ロタラ・ベトナムを赤く染めるのに必要なのは「光量の強いLEDライト」であると言えるかと思います。


Advertisement

ルドヴィジア・グランデュローサも二酸化炭素無しで赤く染まりました

上で紹介したロタラ・ベトナムの同じ水槽に、同じように葉が赤く染まるルドヴィジア・グランデュローサを植えていたのですが、実はこちらも二酸化炭素の添加無しでも赤く染まりました。

そのルドヴィジア・グランデュローサが次の写真となります。

ルドヴィジア・グランデュローサは、条件が整わないと葉の色が黄緑色になります。

今回の実験では、二酸化炭素を添加せずに高強度のLEDライトだけを使いましたが、それでも赤く染まった状態を維持していることを確認できました。

この記事の終わりに

本記事では、赤色に染まる水草としてロタラ・ベトナムを例に取り、二酸化炭素の添加が無くても赤く染めることが出来るのか?を実験を行いました。

結果としては、二酸化炭素の添加が無くてもロタラ・ベトナムは美しい赤色に染まりました。

また、ロタラ・ベトナムだけではなく、一緒に水槽内に植栽していたルドヴィジア・グランデュローサも同様に赤色の状態を維持してくれました。

さらに、ロタラ・ベトナムにLEDライトの強い光を照射しなかったところ、新しく生えてきた葉は黄緑色に変化したことから、ロタラ・ベトナムを赤色に染めるのはLEDライトの強度の効果が強いと言えそうです。

しかしながら、水草の成長には水槽内に溶け込んだ十分な二酸化炭素が必要不可欠です。

そのため、水草の量が極端に多い場合には、エアレーションによる水中への二酸化炭素供給が追い付かず、水草の育成に弊害が出てしまう事も想像されます。

もし、水草の量が多い水槽を管理されている方や、エアレーションが弱い水槽で水草水槽を楽しんでおられる方は、二酸化炭素の添加を行った方が良い可能性もあります。

また、今回は水草の葉を赤くすることにだけ注目していますが、二酸化炭素の有無で水草の成長速度には差が出ることは容易に想像できます。ですので、水草の成長速度や葉の大きさ・数なども気にされる方は、二酸化炭素の添加を行った方が健全な育成ができると思われます。今後、そのような実験もしてみたいと思っています。

最後になりますが、今回の記事は、あくまでも筆者である私の管理する水槽での結果です。

皆様の水槽で同じことが起こるか否かは、実際に実験をしてみないとわかりません。

ですので、本記事はあくまでも参考データとお考えいただき、実際に皆様の水槽でも実験をされてみることをお勧めします。