【詳細解説】アクアリウムで考慮すべき水質 -硬度・pH・カルキ-

この記事は少し長くなるので、御興味がある部分のみ読んでいただけましたら幸いです。

熱帯魚や金魚を飼育する上で、欠かすことが出来ないのが「水」です。

アクアリウムを維持する上で必ず覚えておかねばならないのが「硬度」「pH」「カルキ」です。

それぞれがどのような指標なのか?魚の生活にどのようにかかわってくるのか?

硬度・pH・カルキについて、それぞれ私の言葉でなるべくわかりやすく、豆知識的な内容も含めて記載していきたいと思います。


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硬度について -鉱物の濃度を表す指標-

硬度とは?

最近では、飲料の中でミネラルウォーターが確固たる地位を築いているので「硬度」という単語自体は広く知られている単語かと思います。

ミネラルという言葉は、人体にすごく良いイメージがありますが、アクアリウムで言う硬度は水に含まれているマグネシウムとカルシウムの濃度のことを示します。

マグネシウムもカルシウムも鉱物の一つですが、これらが多く含まれる水を硬水、少ない水を軟水と言います。

世界保健機関 (WHO) の定める基準では、硬度0~120mg/Lの水を軟水、それ以上に含まれている水を硬水としています。

アクアリウムでも、この硬度が重要になり、魚の飼育環境だけではなく、植物の育成にも影響を与える指標になります。

熱帯魚の故郷と言えるアマゾン川は、私が調べたところ、スコールが多いため鉱物濃度が減りやすく軟水です。つまり、アマゾン川出身の熱帯魚は軟水で飼育することが望ましくなります。

私の住む地域の水道局では、70 ~ 100 mg/Lの軟水となっていますが、お住いの地域によっては水道水が軟水ではない地域もあります。一度、お住いの水道局の水質調査報告書を確認してみてください。

鉱物の泉

硬度は国や地域によって異なる

日本の水道水は、一部の地域を除き、多くの地域で軟水です。

しかし、ヨーロッパに行くと硬水になる傾向があります。ヨーロッパの地盤・地殻にはカルシウム分が多く含まれており、高い山脈に降り積もった雪が地下水として流れる過程で、水中にカルシウム成分が多く含まれるようになります。

日本は島国であり、山と海の距離が近いため、降った雨水があっという間に海まで到達します。そのため、鉱物が水中に溶け出す時間・距離が短いため軟水になりやすいです。

しかしながら、日本国内でも硬度は異なります。

最も硬度が高いのは沖縄県の中部以南です。理由は、沖縄の地下には石灰層があるため、カルシウムが多く溶け出しやすい地盤になるためです。

同じ理由で山口県の秋吉台周辺も石灰岩の影響で硬度が上がりやすいです。各地域の地盤の違いは水道水にも表れ、硬度が高くなりやすい地域の水道水は硬度が上がります。

したがって、各地域によって「硬度」の管理は異なるのです。そのため、例えば北海道での飼育・管理方法が沖縄県で通用するか?というと、通用しない場面が多々見られます。

カルスト台地

硬度は高すぎても低すぎても弊害が生まれる

熱帯魚を飼育するには軟水が良いことはわかりましたが、硬度0mg/Lの軟水や硬度300mg/L以上の硬水は実は弊害が生まれます。

硬度0mg/Lということは水中に鉱物が無い状況になるので、水としては安定するために鉱物を欲しがります。いわゆるハングリーウォーター的な状態となり、金属を取り込む性質を持ちます。

つまり、金属配管や金属製品が触れると腐食されるようなことがあります。

また、硬度が高すぎると含まれるカルシウム分が結晶化し、水槽に白い粉が付きやすくなり美観的に悪い印象を与えます。もちろん魚にとっても住めない水になります。

基本的に日本の水道水であれば、きちんと換水をしていれば、硬度が問題になるようなことは少ないかと思います。しかし、水槽内のコケの生え方や水草の育成には影響があるので完全に無視はできない指標です。

アクアリウムにおけるRO水について

硬度についてお話しする際に一応触れておきたいのがRO水です。

ROとはReverse Osmosisの略で非常に微細なフィルターで不純物だけではなくミネラルまで除去した水になります。

今ではアクアリウムショップでも入手可能な水になり、聞いたことがある方もいるかと思います。水中のミネラルが無いということで、上記の通り、水がミネラルを欲するような状態になります。

このため、熱帯魚は自らミネラルを受け取ることができず、その理由で体調を崩してしまう魚もいます。しかし、コケの栄養素となるミネラル分がなくなるので、コケが生えにくい水槽を作り上げることができるというメリットもあります。

そのため、熱帯魚水槽に使用するのであれば、適量のミネラル分を補給して使用するということも必要かと思います。

この性質を知った上で、常に水質を自分好みに管理できると自信のある方であれば、使うのも良いかと思います。RO水を売るためにメリットが先行しているHPやブログもありますが、私個人としては、ネガティブキャンペーンを張るわけではないですが、ちょっと扱いにくい水に思えており、あまり触れたくは無い商品です。まぁ…水道水を適切に処理すれば問題ないですし、必要は無いかなぁ…と。

美しい夕日の湖

pHについて -酸・アルカリの指標-

pHとは?化学授業のおさらい

pHは水の水素イオン濃度を表した指標で、下図1の通り、0に近づくほど強い酸性になり、7の時に中性、14に近づくほど強いアルカリ性になります。化学の授業などで一度は目にしたことがある指標かと思います。

pHの図解
図1: 酸性とアルカリ性のpH値

強酸性と言えば、硫酸や塩酸、強アルカリといえば水酸化ナトリウムが代表的な例です。当たり前ですが、強酸性・強アルカリ性の中で生物は生きてはいけません。

熱帯魚に最適なpHは6~7となり、弱酸性の水質になります。アマゾン川は、腐食した落ち葉などの影響で酸性に傾きやすく、スコールが多いため弱酸性になっています。

pHについて詳しく知りたい方は、pH測定器を製造されているメーカーさんのHPを参考にされることをお勧めします。より正確で簡潔に確かな情報を提供してくれます。

水槽内のpHはどちらに傾くの?

pH=7で中性の状態は理想的にはあり得るかもしれませんが、多くの場合、必ずどちらかに傾いています。

水槽の中の水について言えば、飼育する方の管理方法やバクテリアの定着度合いで変わります。

別の記事で紹介していますが、バクテリアが定着していない立ち上げ初期の水槽に生体を入れると、アルカリ性に傾く傾向があります(排泄物や食べ残しの影響)。

バクテリアが定着して生物濾過が機能すると弱酸性になります (濾過についても別記事で説明予定です) 。立ち上げから時間が経った水槽で濾過が安定していれば、ほぼ弱酸性になっているものと思われます。もし気になる方はpH測定の試験紙が売られているので、1カ月に1回くらいのチェックをしても良いかと思います。

大自然の写真

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カルキについて -魚には危険な要素-

カルキとは?

カルキは水道水の殺菌のために使われる「次亜塩素酸ナトリウム」「次亜塩素酸カルシウム」「液化塩素」のことを指しています。

語源はオランダ語「kalk」から来ています。

一般的には、単純に「塩素」と表現されることも多いかと思います。カルキのことを話すと、必ず小学校のプールの匂いが話題として出てきますが、同じようにプールの消毒に塩素が使われています。

次亜塩素酸ナトリウムは消毒の性能が高く、かつ残留性も高いので水道水に混ぜることで、私たちの生活水として使われるまで、消毒効果を持続できる特徴もあります。

日本の水道水には、外国に比べてカルキが多く含まれています。

これには背景があり、水道法が厳しく大腸菌を水道水に残してはいけないという規則があるがあるためです。

また、日本の水源は湖や河川のため、バクテリアや細菌が多く、それらを死滅させるためにカルキ量が多いという理由もあります。ヨーロッパは水源が地下水であることが多いため、細菌の繁殖が少なくカルキの量が少なくて済むようです。

また、夏は水道水の水温が高くなるため、蛇口から出てくる水道水に含まれるカルキの量が少なくなります。

ペットボトルとグラス

熱帯魚に対するカルキの影響については、皆さんご存じの通りです。カルキが魚のエラに入り込むと、繊細なエラの細胞を破壊し、酸素を取り込む機能が失われて死に至ってしまいます。

人間にとっても塩素は毒です。塩素系の漂白剤には換気を良くして使うことが注意書きとしてあると思います。人間の肺の細胞にとっても刺激が強く悪影響にななります。

ですので、水道水を水槽に入れる前には必ずカルキ抜きを使用しましょう!市販のカルキ抜きであれば、どれも問題なく使えると思います。バケツで水道水とカルキ抜き規定量混ぜ、30秒~1分放置すればカルキはほぼ抜けてくれます。

カルキはバクテリアも死滅させます

カルキは細菌を死滅させるために使われます。

したがって、バクテリアも死滅させてしまいます。せっかく水槽内・フィルター内にバクテリアが定着してくれても、カルキ抜きしていない水をいれるとバクテリアは死滅してしまいます。こうなっては、また1からバクテリアの立ち上げが必要になります。

ですので、フィルターの掃除は飼育水の一部を抜き取って行いましょう。インターネットやYoutubeでアクアリストが紹介していますので、参考にしてみてください。

美しい湖の写真

純水と蒸留水は魚にとって危険な水

純水について

「純水」と聞くと良いイメージがありませんか?

不純物が入ってなく、本当に綺麗な水というイメージです。しかし、それは間違ったイメージです。

水というのは、ミネラルやイオンなどの不純物が溶け込んで安定な状態になります。しかし、純水は工業的に作り上げられた水で、それらの不純物を含まないため、ものを溶解させる力が強い状態になります。

純水よりもさらに不純物の少ない水は超純水と呼ばれ、工業的に精密な機械や半導体を洗浄するために使われる特殊な水です。

純水や超純水は前述の通り、物質を溶解させる力が強いため、魚を入れると魚の体表から様々なものを奪い取ります。エラに入れば細胞を溶かし始めるでしょう。ですので、純水は飼育水として導入しないでくださいね。

蒸留水について

蒸留水は、水を沸騰させ水蒸気を集め、それを再び冷やすことで得られた不純物の少ない純水のことです。つまり、上記の純水と同じような性質を持っています。

純度にも依存しますが、純度の高い水になればなるほど、魚には悪影響があります。自然界の水には様々なミネラルや不純物が含まれており、魚はその中で生活しています。不純物が少ない水というのはアクアリウムでは良い水ではなく、不純物やミネラルが適度に含まれる水が良い水なのです。

カエルと虫の写真

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この記事の終わりに

この記事では、アクアリウムとは切っても切り離せない「水質」のお話をさせていただきました。

何となく頭の中には入っている知識だけど、改めて考えてみると難しい内容もあったのではないでしょうか?

水質を正確に把握することで、魚がストレスなく水槽の中で暮らせたり、コケを防止することができるようになったり…様々な良いことがあります。

皆様も、もう一度水質を理解して、一段上のアクアリウム管理を目指してみてはいかがでしょうか?