アクアリウムの維持に欠かすことのできない存在 … それが「濾過バクテリア」です。
水槽の飼育水の透明度を保ったり、有害なアンモニアなどを分解してくれる濾過バクテリアは、アクアリストにとっては非常に重要な存在になります。
水槽を立ち上げた当初はフィルターや水槽内に濾過バクテリアが定着していないため、飼育水が白濁りをしてしまう事がほとんどですが、時間が経って濾過バクテリアが定着すると透明度の高い美しい飼育水に変化していきます。
そんなアクアリウムに欠かせない濾過バクテリアですが、とてもデリケートな特徴も持っており、少しの環境変化で生物濾過の性能が落ちてしまう事があります。
この記事では、筆者の経験した濾過バクテリアの濾過性能低下の一例について、その原因と考察を紹介したいと思います。
水槽の飼育水が突然白く濁り始めた方や、なかなか飼育水の白濁りが改善しない方に、少しでも参考になりましたら幸いです。
急に飼育水の白濁りが発生した水槽について
まず最初に、急に飼育水の白濁りが発生してしまった水槽について記載します。
下の写真に掲載する45cm規格の水槽になります。
この水槽は、私がコリドラスを飼育している水槽なのですが、2022年7月1日に公開した記事で濾過バクテリアがカルキによるダメージを受けたことを紹介した水槽です。(その時のことは、下のリンクで紹介しています。)
2022年5月中旬の換水の際にカルキ抜きの使用を忘れていたが故に、濾過バクテリアがダメージを受けたのですが、2022年6月の中旬には回復して透明な飼育水に復帰した水槽でした。
その後、この水槽は特に問題無く管理が出来ていたのですが、2022年7月10日に急に水の濁りが強くなり、濾過バクテリアによる生物濾過がしっかりと行われていないと考えられる状態になりました。
その当時の状況が次の写真ですが、少し分かりにくいかもしれませんが、黄色の矢印で示した流木の辺りは白濁りが分かりやすいかと思います。
水替えの際にはカルキ抜きはしっかりとしていましたし、水槽の管理方法を大きく変えたことも有りませんでした。
そのため、何が原因で飼育水の白濁りが発生しているのかが全くわかりませんでした…。
とりあえず、原因が分からないなりに、色々と試して回復を目指して見ることにしました。
原因考察① 餌の与えすぎ
まず最初に疑ったのは、餌の与え過ぎです。
餌の量はずっと変えていなかったので、飼育水の白濁りの原因とは考えにくいですが、とりあえず餌の量を減らしてみました。
朝と晩に与えていた餌を、朝だけにしてみたのです。つまり、餌の量が1/2になったということです。
しかし、3~4日経過しても水槽の飼育水には何の変化も起こらず、白濁りは発生したままでした。
原因考察② 水替え頻度 -夏は水温上昇で飼育水が傷みやすい?-
次に考えたのは、夏場の高水温で飼育水が傷みやすい状況になっているのではないか?ということです。
水槽のある部屋は、基本的にエアコンを入れており、水温は28℃以下になるような管理状況でした。
そのため、高水温によって飼育水が急激に傷んでしまうということは無いと思いますが、とりあえず水替えの頻度を2日に1度にしてみました (換水量は水槽の1/3~1/2の水量) 。
すると、水替えを行った直後は新鮮な水が入るので飼育水の透明度が上がるのですが、半日程度経過すると白濁りが元通りになってしまうのです。
つまり、飼育水が傷んで白濁りを発生しているというのも考えにくい状況でした。
エアレーションを強くしたら1日で飼育水の透明度が上がった!
白濁りが回復しない状態で解決策が見出せず、かなり悶々とした時間が過ぎました。
しかし、ある時、咄嗟に思い出したのです!
「エアレーションを強くして見よう!」と … 。
「単純に溶存酸素が足りないんじゃないか?」と … 。
今回の水槽では、GEX社製の壁掛けフィルターを用いているのですが、壁掛けフィルターは水槽の水位によってエアレーションの強度が変わります。
下の写真の様に、壁掛けフィルターの注ぎ口の先端が水面に近い所にあると、エアレーションが最大になります。
このエアレーションのセッティングにすると、次の写真の様に、水面の水流が最も強くなります。
つまり、最も酸素が水中へ溶け込みやすい状態になるわけです。
そして、エアレーションを最も強い状態にすると、何と徐々に白濁りが改善していくではないですか!!
エアレーションを強くしてから約1日経過すると、飼育水の透明度が元の状態に戻りました … 。
今回のトラブルの解決策は飼育水中の「溶存酸素」だったんですね!
それでは、その理由を以下で詳細に説明していきたいと思います。
濾過バクテリアの生物濾過には溶存酸素が必要!
私の過去の記事になりますが、生物濾過の過程について詳細に説明をした記事があります。(下のリンクになります。)
この記事の中で、生物濾過の過程を説明しているのですが、濾過バクテリアがアンモニアや亜硝酸を分解していくためには、水中にある溶存酸素が必須となるのです。
魚が排出したアンモニア (NH3) を亜硝酸 (NO2) に変えるのには酸素 (O2) が必要になりますし、亜硝酸 (NO2) を硝酸 (NO3) に変えるためにも酸素が必須となります。
しかし、夏場になって水温が徐々に上がると、飼育水の中の溶存酸素濃度が低下してしまします。(溶存酸素の特徴についても、以下の記事で説明しております。)
したがって、「飼育水の水温が高くなり溶存酸素量が減ったために、濾過バクテリアの生物濾過が十分に行われなかった。その結果、飼育水が白濁りした。」というのが今回のトラブルの原因・経緯だと結論付けられるかと思います。
エアレーションによって酸素供給量を増加してあげたら、直ぐに飼育水の透明度が上がったことを考えても、この解析で間違いは無いのかと思います。
また、飼育水の透明度が直ぐに上がったことを考えると、フィルターや水槽内の濾過バクテリアは死滅しておらず、酸素が欠乏して思うように活動 (生物濾過) が出来ていない状態だったと考えられます。
何はともあれ、飼育水の白濁りの原因がわかり、状態が改善したので良かったです。
この記事の終わりに
この記事では、水槽のエアレーション (酸素供給) が足りないことが原因で、濾過バクテリアによる生物濾過が十分に行われなくなってしまった実例を紹介させていただきました。
生物濾過の不足により飼育水が白濁りしてしまうという状態となりましたが、エアレーションを強化して水中の溶存酸素を確保したことで飼育水の透明度は明確に改善しました。
夏場になって水温が数℃上がったという小さな環境変化が一因ではありますが、水槽環境や濾過バクテリアにとっては大きな環境変化なのだと言えます。
夏は水槽用クーラーを使用しないと、飼育水の水温が上がる傾向となります。飼育水の水温が上がれば、溶存酸素濃度が減るため、生物濾過に必要な酸素量を供給できない状況になります。
室内のアクアリウムと言えど、皆様も水温の変化と溶存酸素量には注意してあげて下さいね!
特に室温が30℃を越える部屋の場合、本記事で紹介した様なトラブルが起きる可能性が高くなるかと予想されます。
「夏になったら、急に飼育水が白濁りしてしまった!」という方は、エアレーション (酸素供給) を改善してみると良いかもしれません。
また、水槽に必要な溶存酸素量は、飼育している魚や水草の量によっても変化します。そのため、最適なエアレーション環境を見つけていくことが、我々アクアリストに与えられた課題なのだと、あらためて考えさせられた一件でした。
それでは!!