淡水水槽のコケ取り生体として最も有名な魚は、誰もが認めるオトシンクルスです。
もちろん、ヤマトヌマエビやミナミヌマエビもいますが、個人的にはそれらを抑えてトップになる存在だと思います。
オトシンクルスは、それほど高価な魚ではないですし、熱帯魚ショップの多くで取り扱っているので、入手に困ることはありません。
しかし、誰もが気軽に水槽に導入してしまう半面、実は水質変化に弱いという一面もあります。
今回は、オトシンクルスの飼育環境や繁殖も見据えたオトシン飼育について紹介したいと思います。
オトシンクルスについて
オトシンクルスとは?
オトシンクルスは、アマゾン川を原産地としたナマズの仲間です。
口が吸盤上になっており、その口で水槽内の藻や苔を吸い取りながら食べるため、水槽内のコケ取り屋さんとして古くから親しまれている熱帯魚です。
全長も5cm程度小さいため、オトシンクルス自体が水槽内で存在を主張することなく、完全にメンテナンスフィッシュとして飼育することができます。
性格もおとなしく、他の魚を襲うことはありませんが、口が吸盤上になっているため、大きな魚に吸い付いてしまうことがあります。私の水槽では、エンゼルフィッシュの体の側面に吸い付いていたことがあります。
オトシンクルスが好んで食べる苔
私の飼育環境下での話ですが、オトシンは茶苔と緑色の糸状藻を食べてくれています。しかし、黒髭苔は食べてくれませんでした。
アクアリウムショップの水槽にもオトシンクルスが入っているところが多いですが、その水槽にも黒髭苔は生えているのでオトシンクルスは黒髭苔があまり好きではない、または食べないのだと思います。
黒髭苔は、比較的サイズが大きく、水草にこびりついてしまっているので食べにくいのかもしれません。ですので、黒髭苔対策でオトシンクルスを導入することは、期待薄と言って良いでしょう。
苔取りとしてのオトシンクルス導入数
一般的に言われているところもありますが、45cm水槽で3匹、60cm水槽で5匹, 90cm水槽で10匹程度入れておくと苔を発生初期の段階で抑え込んでくれます。
ただし、注意してほしいのは苔がびっしりと生えてしまった水槽にオトシンを入れても苔を全て食べてくれることはありません。
オトシンがコケを食べる速度が、コケの増殖する速度に勝ることが出来なければ苔は増える一方です。
そのため、コケを確実に抑制するのであれば、水槽立ち上げの初期の段階から水槽に導入するようにしましょう。
実はオトシンは水質に敏感!
実は、オトシンクルスは水質に敏感です。
アクアリウムショップでは元気に泳いでいたのに、家に持って帰ってくると元気を無くして数日で残念な結果になってしまうことも多々あります。
私も、初めてオトシンクルスを導入した時は水合わせが十分でなかったのか、そもそも水質が合わなかったのか、5匹中3匹を残念な結果にしてしまいました。
苔抑制の観点では、水槽立ち上げの初期から導入すべきですが、フィルターをきちんと立ち上げて、水合わせもじっくり行ってあげることを推奨します。
「ナマズの仲間だから強いだろう」という考えは持たないほうが良いかと思います。同じナマズの仲間のコリドラスは水質変化に比較的強いですが、オトシンはコリドラスの様に強くは無いという認識です。
一度水槽の環境に慣れると、その後は問題なく飼育できますので安心してください。pHについては、私の水槽の飼育水は6.5くらいです。
繁殖を見据えたオトシン飼育方法
水槽内の環境と飼育数
オトシンクルスは上で記載の通り、ナマズの仲間で吸盤上の口を持っています。そして、その吸盤で水槽のガラス面などに張り付いていたり、底層でじっとしていることが多いです。
そのため、底には細かな砂を敷いてあげるか、またはベアタンクが適します。砂を敷く場合には、それほど厚く敷くのではなく、1cm程度に薄く敷く程度でOKです。底層に棲むため、ゴミや糞が溜まると病気になりやすくなりますので、定期的に砂の中を掃除してあげてください。
ナマズの仲間は水流を好みます。コリドラスもそうですが、適度に水流がある方が運動をしますし、健全な体を維持するためにも必要なものです。あまりにも強すぎるものは逆にかわいそうなので、流されたり泳ぐのが大変にならない適度な水流をフィルターからの水で作ってあげると良いかと。
また、水草も入れてあげてください。比較的大きな葉を持つ水草を入れることで、産卵をする場所になってくれます。隠れ家的な存在にもなり、より産卵をしやすい環境を用意してあげることが大事です。
繁殖を狙う場合には、60cm水槽に対して6匹くらいのオトシンクルスを導入します。できれば雄が2匹、メスを4匹くらいの比率がペアを作りやすいと思います。オスを多く入れると、私の経験上は少し上手くいかない感じがしています。
オトシンクルスの好む水温
オトシンクルスの最適水温は25℃±2℃です。
春と秋は25℃、夏には26~27℃、冬は23~24℃と管理するくらいでちょうど良いかと思います。
なるべく、原産地の自然環境に近い水温変化を再現してあげることを心がけてください。原産地に近い環境の方が産卵の促進になります。
適した餌と与え方
基本的に人口飼料を食べてくれます。
沈下性の顆粒状飼料でもいいですし、コリドラスのタブレットでもOKです。
イトミミズや赤虫も食べてくれます。
コケ取りだから苔が餌になる、という考えだと栄養が十分ではなくやせ細っていく場合が多いです (私も何度も餌を食べなくなったオトシンを見ています)。水槽内で他の魚と混泳させることになるかと思いますが、飼料をきちんと食べているか?確認してあげてくださいね。
飼育の注意点と産卵のトリガー
上で記載の通り、少し水質の変化に弱い面があると感じています。ですので、極端な水質の変化はなくすようにしてあげたほうが良いです。水替えも1/4を3日に一度くらいのペースが水質を極端に変化させることが無く、安心かと考えています。排泄物による硝酸の増加も、良い影響は与えないので、こまめな換水をしてあげてください。
ただし、産卵を狙う場合、水質の変化が重要と言われています。原産地ではナマズの仲間は雨期の水質変化が産卵のトリガーになるといわれておりますので、敢えて換水量を増やすことで産卵を誘発できる可能性が あります。
他の魚との混泳はしないこと
繁殖を望む場合、できれば他の魚との混泳は避けて下さい。
せっかく産卵しても卵や稚魚が食べられてしまいます。私はネオンテトラと混泳させていましたが、これはお勧めではありません。
ネオンテトラは自分の卵でさえも食べてしまうので、オトシンの卵も餌食になってしまうでしょう。基本的に、熱帯魚は雑食で、様々なものを食べます。生きた赤虫等が大好物の様に、魚の卵はそれと同じ餌の部類になってしまいます。
産卵したらサテライトに移動
卵を確認したら安全なサテライトに移動させて、孵化を待ちます。
できれば飼育水をサテライトに供給して、後のpHショックなどを防ぐようにします。孵化後は、稚魚にブラインシュリンプを与えて育てましょう。
オトシンの子供は、用意したサテライトから出てしまうこともあるので注意が必要です。吸盤を持つ魚は、吸盤の力によってさまざまな所に移動していくので、飛び出さないための対策は必ずしておきましょう。成魚もたまに飛び出してしまうことがあります。
オトシンの仲間の紹介
オトシンネグロ
オトシンクルスに次いで、国内で流通量の多いオトシンです。オトシンクルスよりも体が一回り小さく、茶色の体を持っています。食べるコケについては、茶苔を好んで食べてくれるので、水槽内で強い味方です。また、繁殖については少し難しい部類に入ります。オトシンクルスよりも気難しく、気が小さい魚です。
ゼブラオトシン
オトシンクルスの柄をゼブラ柄にした人気のオトシンです。全てのアクアリウムショップで扱っているわけではなく、少し手に入りにくいですし、価格も一気に上がります。柄が綺麗なので繁殖を狙いたいのですが、私は成功したことがありません。何が繁殖のトリガーになるのか?も理解できておらず…成功した方は方法を教えてください。ゼブラオトシンは、模様が綺麗なので、オトシンクルスよりも水槽内を彩る存在になってくれます。
マラリアオトシン
オレンジ色の体に茶色の斑点が体中に入っている美しいオトシンです。その柄の美しさで人気のオトシンですが、入手が困難です。私も販売しているのを1度しか見たことがありません。入手にはインターネット販売が一般的なのかもしれませんが、個体の状態については疑問があります。購入される際には、ショップで注文したり、電話で販売元に状態を確認することをお勧めします。
パトロシンクルス・スピロソーマ
パトロシンを見ると、オトシンはプレコはと同じナマズの仲間だとあらためて感じさせられます。見た目はプレコにそっくりのオトシンの仲間です。入手が困難で価格もそれなりにするため、私は飼育経験がありません。ナマズ好きとしては一度は自分の水槽に入れてみたいと願うばかりです。
バンパイア・オトシン
バンパイア・オトシンも人気の熱帯魚で、クリーム色の体に黒い斑模様が入ります。また、目が赤っぽい色をしている点も、まさにバンパイアのようなイメージを持たせます。
最後に
オトシンクルスは、淡水のアクアリストであれば必ず一度は飼育すると言われるほど、人気のコケ取り屋さんです。
コケを食べてくれる魚ですが、コケが大繁殖した水槽ではコケ対策は不可能です。水槽の立ち上げ初期段階で、コケの予防という観点で導入を検討するようにしてください。
また、水質には少しうるさい所もあります。飼育環境に慣れれば良いのですが、ショップの環境から自宅の水槽への環境変化が致命的になる場合もあるので、特に水合わせは気を遣いましょう。
あまり繁殖を狙うアクアリストの方はいないのかもしれませんが、オトシンクルス自体は、飼育環境を整えることで、繁殖もしてくれる魚です。気付かないうちに散乱していたということもあるので、卵を発見したら隔離して育ててみて下さいね。