日本淡水魚「カワムツ」の飼育方法と注意点

日本の淡水魚の一般的なイメージは、色が銀色や灰色で華やかさが無いというイメージではないでしょうか?

確かに、南米から輸入されたカラフルな熱帯魚に比べると、華やかさは無いかもしれません。

しかし、日本の淡水魚の中にも美しい体色を持ち、水槽での飼育が楽しめる淡水魚が数多くいます。

オイカワ、タナゴ、カワムツ等がその代表格です。

しかも、日本に生息する魚であれば、河川や池などで自分で採取しそれらを飼育できるという醍醐味もあります。また、日本の四季を耐える生態を持つので、水槽での飼育ではヒーターが不要になります (夏はクーラーが必要になるケースもあります) 。

この記事では、上記の日本淡水魚の中で、日本に広く分布している「カワムツ」を紹介し、私の飼育経験から飼育方法や注意点などをお伝えできればと思います。


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カワムツの入手方法について

まず最初に、カワムツの入手方法について、御紹介しておきます。

カワムツは日本の川に生息する淡水魚ですが、実は生息している川は限られています。また、アクアリウムショップでも常に販売されているわけではありません。

そのため、お住まいに地域によっては入手自体が困難な場合もあります。

カワムツは川に自分で捕まえにいこう!

日本淡水魚の図鑑でカワムツを見たり、水族館の日本の淡水魚コーナーでカワムツを見て「この魚を飼育してみたいな!」と思われることがあるかもしれません。

ただし、実際にカワムツを飼育しようと思っても、店頭での販売がされていないことがほとんどです。

アクアリウムショップに行くと、グッピーやプラティ、ネオンテトラ等の熱帯魚は販売されているのですが、日本の淡水魚を販売しているお店は実は限られてきます。そのため、確実に早く入手するためには、インターネットでの販売が近道です。

また、カワムツは自分で川に捕まえに行くことも可能ですし、飼育している多くの方は自分で採取したものがほとんどだと思います。

「え?川で捕まえるのは難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、実はカワムツは簡単に捕まえられます。

膝下くらいの水深がある川に入り、魚とり網を使って水草の中などをガサガサと探ると、下の写真の様に多くのカワムツが採取できます。この写真はカワムツの幼魚やヨシノボリになりますが、1日探せばかなりの量を採取することができます。

また、人が少ない川の上流に行ってみると、次の写真の様に15cmクラスの大きなカワムツも採取することが可能です。このカワムツは私が2020年の夏に神戸の六甲山系で採取したカワムツです。

大きなサイズのカワムツになれば、さし虫を餌にして釣り上げることも可能です。

大きなサイズになると少し採取難易度が上がりますが、これだけ大きなカワムツが飼育出来れば、見ごたえ十分になることは間違いありません。

カワムツが生息している川については、地域の博物館や自然資料館などに問い合わせると、飼育している場所を教えていただけることがあります。

資料館などによっては「○○市に生息する生き物」という感じでカワムツが展示されている所もあるので、そのような場所には必ずカワムツがいます。

カワムツは基本的に西日本にのみ分布している魚です

カワムツは日本全土に分布している魚だと思われがちなのですが、実は西日本が主な生息域となります。

太平洋側では静岡県、日本海側では富山県より西のエリアがカワムツの主な分布エリアとなります。

関東周辺でも、カワムツが一部生息している河川があるということですが、西日本に比べると個体数は少ないと思われます。

そのため、関東や東北の方が河川に採取に出掛けても、カワムツに出会うことが困難であるかもしれません。

東日本にお住まいの方は、アクアリウムショップで探すか、インターネットで販売している業者さんを探す方が確実な入手方法です。

西日本にお住まいの方であれば、少し山に入った清流に行けば、高確率でカワムツに出会うことができるかと思います。私自身、関西に住んでいますが、夏に子供と川遊びに行くと、必ずカワムツは網で捕まえられます。

市街地を流れている川であっても、カワムツが生息していることが多いので、実はとても身近な場所に生息している魚と言えます。

カワムツの飼育水槽立ち上げの注意点

では次に、私が以前にカワムツを飼育した時の知見を基に、カワムツの水槽を立ち上げる上で必要な知識を紹介します。

カワムツを飼育するのであれば、カワムツの習性を知ってあげて、適切な飼育方法や設備を揃えてあげて下さい。

水流は強くしすぎないこと

まず最初に、カワムツは川魚なので水槽にも水流を作ってあげることが好ましいと思われる方がほとんどだと思います。

しかし、カワムツは川の中でも比較的水流が緩やかな場所を好んで生息している魚になります。

いわゆる「激流」と呼ばれる様な場所には住み着きにくく、流れが淀んでいる場所や淵になっているような場所を好んで生息しています。

そのため、水槽を立ち上げる際には、水槽内に過度な水流を作らないようにします。特に外部フィルターの強い水流が水槽内を駆け巡るような水槽は好みません。

水流が強すぎると、カワムツにとってはストレスが与えられたような状態になってしまいますので、フィルター選びとセッティングは注意してあげて下さい。

水草は水槽に入れない方が良い -カワムツは草食性がある魚-

近年は、水槽の中で水草を育てる「水草水槽」がアクアリウムの人気ジャンルになっています。

アクアリウムに興味がある方であれば、自然の川の中を切り取ったような美しいレイアウト水槽を見たことがあるかと思います。

しかし、カワムツは虫の他に植物も食べる習性を持っています。

実はカワムツはコイ科に属する魚です。コイと言えば、かなりの雑食性があることは皆さんご存じの通りだと思います。

カワムツは、そのコイと同じような食性を持つ魚になるため、虫だけでは無く水草やコケなども食べる習性を持っているのです。

水槽の中に水草があり、カワムツのお腹が空いているような状態になれば、葉の柔らかい水草であればカワムツの食害に合うことがあります。

具体的にはロタラやカボンバなどの葉が柔らかい水草は注意が必要です。逆に、アヌビアス・ナナのような葉の硬い水草は食害を受けることは稀です。

私が飼育していた際も、与えていた赤虫だけではお腹が空いていたのだと思いますが、ロタラをつついて食べてしまうようなことがありました。

そのため、カワムツを飼育する水槽であれば、水草はなるべく入れない方が良いです。食害に合っても問題無いのであれば水草を導入して良いと思いますが、食べられては困る水草であれば、カワムツの水槽には入れない方が無難です。

日本の渓流を再現したようなレイアウトであれば、流木と石で組んだレイアウトがシンプルでお勧めです。

水槽からの飛び出しに注意すること

カワムツの飼育で注意したいのが水槽からの飛び出しです。

カワムツに限らず、川魚全般に言えることですが、泳ぎが得意で泳ぐスピードが早い魚が多いため、何かの拍子で水槽から勢いよく飛び出してしまうことがあります。

私がカワムツを飼育していた際も、少し大きな物音が立った時に水槽で暴れて飛び出してしまったことがありました。

そのため、水槽にはガラス蓋をしっかりと設置しておくことが必要です。

水槽用のLEDライトを点灯させるだけでもカワムツは相当驚いて水槽の中を高速で泳ぎ回っていました。

驚かさないように飼育する事は基本ですが、もしものためにも飛び出し防止の措置はしておいてあげてください。


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カワムツの飼育水槽と設備について

次にカワムツを飼育する際の水槽設備選び、その準備について記載しておきます。

カワムツは日本の河川に生息する川魚であることも考慮して水槽設備を準備していきましょう!

水槽は60cm水槽を推奨します

まず最初に、飼育水槽のサイズについてです。

カワムツは河川で簡単に採取できるものは、10cm未満の幼魚である場合が多いですが、大きく成長すると20cm近くまで成長します。

したがって、30cm水槽程度の小さな水槽では成長に伴って水槽が小さくなってしまいます。小型の水槽では水深が無いため、何かの拍子で水槽からカワムツが飛び出してしまう危険性も出てきます。

また、体が大きくなるにつれて、飼育水が汚れる速度も速くなりますので、水量が40L以上入るような水槽が安心して飼育ができます。

そのため、水槽サイズとしては60cm規格の水槽が最適です。御家庭に設置する際にも大きすぎることはありませんし、水替えやメンテナンスの負荷も許容できるレベルになります。

複数のカワムツを飼育する場合も、60cm規格の水槽であれば3匹くらいは飼育が可能です。

水替えの頻度については、川魚になるので出来れば3日か4日に1度の頻度で行いたいところです。1回の換水量は1/3程度でも構わないので、頻度よく換水することを推奨します。

理由としては、カワムツは川魚になり、常に新鮮な水が流れてくる場所に生息しています。そのため、水槽飼育の場合でも、なるべく新しい水を入れてあげる方が健康的に育ってくれると思われます。

水槽用ヒーターは無くても大丈夫

次に水槽用ヒーターです。

水槽用のヒーターは基本的に熱帯魚を国内で飼育するための設備になります。

そのため、日本の河川に生息するカワムツの飼育では、水槽用ヒーターは不要です。

カワムツは日本の四季に適合した生態を持っているので、逆に日本の四季を感じられるヒーター無しの水槽の方が健康的に育ちます。

また、カワムツを複数匹で飼育すると産卵期にオスが婚姻色を出してくれます。日本の川魚の中では、オイカワ、カワムツ、ウグイの婚姻色は美しさに定評があります。

水槽の中でカワムツの婚姻色を楽しむためには、カワムツに四季の移ろいを感じさせ、産卵期であることを認識させなければなりません。そのためにも、ヒーターは不要と考えて問題無いです。

フィルターは上部フィルターがお勧め

水槽用のフィルターとしては、外部フィルター、壁掛けフィルター、上部フィルターのいずれかを選ぶことになります。

この中でも特に川魚におすすめなのが上部フィルターです。

上部フィルターは、飼育水が空気と触れる時間が長い事に加え、濾過された飼育水が上から水槽に落ちるので溶存酸素が確保されやすいです。

河川は常に水の流れがあり、所々に急流が存在することで、水中の溶存酸素が飽和しているような状態になります。

そのような河川の中で生息するカワムツですので、溶存酸素の確保は熱帯魚以上に気を遣う必要性があります。

その観点で考えても、上部フィルターがお勧めです。

また、上部フィルターは上から下へ飼育水を落下させる機構を持つため、水槽の中に速い水流が生まれにくいです。河川の淀みの環境に近い状態になるので、カワムツにとってはストレスが少ない環境になると言えます。

川で捕まえたカワムツ飼育の最初の難関は「餌やり」

上記の通り、カワムツは河川で採取することが基本的な入手方法となります。

しかしながら、自然の中で採取したカワムツは水槽と言う飼育環境下に慣らせることが最初の難関です。

特に一番最初に困るのが「餌やり」です。

当たり前ですが、自然の中で生活していたカワムツは「人口飼料」という存在を知りません。そのため、人口飼料を水槽の中に落としても、食べ物であるとは認識せず、全く反応してくれません。

この餌やりの課題を解決するためには、次のステップで人口飼料に慣れさせることです。

① まずは冷凍赤虫やミミズなどを与えてみて、人の手から与えられた食べ物に慣れさせること。

② 冷凍赤虫の餌やりに慣れてきたら、冷凍赤虫と同時に人口飼料も与えてみて、カワムツが反応するか確認する。

③ 人口飼料を口にするようになったら、徐々に人口飼料をメインの餌やりに移行する。

私の経験上ですが、川魚の餌やりは焦っても上手くいきません。ゆっくりと時間をかけて慣らせてあげることが大事です。

私が川魚を飼育した時は、自分の部屋の中に侵入してきたハエや蚊などを水槽に落としていたこともありました。(水面に浮かぶハエや蚊は餌として認識してくれて、食べてくれることが多かったです。)


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カワムツの婚姻色を出すために必要な管理方法とは?

上でも少し記載をしましたが、カワムツの雄は産卵期間が近くなると体の色が「婚姻色」と呼ばれる美しい色に染め上がります。

下の写真のオレンジ色の部分が、より濃いオレンジ色や赤い色に変化していきます。

カワムツの雄を飼育する上では、この体色の変化を見るのも、飼育の楽しみの一つになります。

しかし、水槽飼育と言う限られた環境になるので、なかなか色が濃くならないことも多々あるようです。

カワムツの雄の婚姻色を上手く出すためには、例えば、春夏秋冬を感じさせることができる水槽管理をすること (ヒーターを使わない) や、雄と雌を混泳させて繁殖を促すような環境を作ることが大事だと思います。

この記事の終わりに

この記事では、日本の河川に広く分布している「カワムツ」の飼育方法について、私の過去の飼育経験から注意点やおすすめの飼育方法を紹介させていただきました。

西日本にお住まいの方であれば、近くの河川に網を持って出かければカワムツは比較的簡単に捕まえることができる魚です。

そして、20cmクラスまで成長するとともに、オイカワやタナゴに肩を並べるような美しい魚体を持っているので、水槽の中で飼育しても見ごたえのある日本淡水魚となります。

川魚ですので餌やりに慣れさせるのが最初の難関となりますが、慣れてくれれば長い期間、飼育が楽しめる魚です。

夏にお子さんと川遊びに行った際、カワムツを捕まえたら、水槽で飼育してみてはいかがでしょうか?

自分で捕まえた魚を飼育するのは、アクアリウムショップで購入した熱帯魚を飼育するよりも、思い入れが格段に違うものです。