ハチェットフィッシュの飼育方法 -実例と注意点を紹介-

熱帯魚と言えば、赤色、青色、そして黄色などの様々な体色を持つ魚種が多く、その体の美しさで鑑賞性を語られることが多いと思います。

熱帯魚を美しい色に仕上げる「色揚げ」や「飼い込む」等の専門用語も、元はと言えば熱帯魚の色や発色を改善するところから来ている言葉ですね。

しかし、熱帯魚は体色や模様だけでは無く、体の見た目の特徴にも素晴らしい鑑賞性があります。

コリドラスの様に可愛らしいヒゲを持つ魚、エンゼルフィッシュの様に長く優雅なヒレを持つ魚、オトシンクルスの様に口が吸盤状になっている魚…

アクアリストの方であれば、それぞれの熱帯魚の特徴を取り上げると、その特徴一つ一つを語ってしまい、それを愛してしまう事もあるのではないでしょうか?

そんな見た目に特徴がある熱帯魚の一つに「ハチェットフィッシュ」という熱帯魚がいます。

ベテランの方であれば何度もお店で見たことがあるかと思いますが、街のホームセンターでの取り扱いは少ないように思いますので、初心者の方は馴染みの無い方が多いかもしれません。

この記事では、筆者のハチェットフィッシュの飼育経験から、ハチェットフィッシュの魅力をお伝えできればと思います。

また、実際に飼育した上での注意点なども紹介できればと思います。


Advertisement

ハチェットフィッシュってどんな魚?

ハチェットフィッシュの原産地や体の特徴・名前の由来

ハチェットフィッシュは、南米のアマゾン川流域が原産の熱帯魚になります。

小型カラシン目の魚に分類されており、実はネオンテトラやカージナルテトラなどの有名なテトラ達の仲間なんですね!

見た目は全く違いますが、生物学上は同じカラシン目の魚になります。

特徴的なのは、その名前にもなっている体の形です。次の写真を参照ください。

「ハチェット」とは、英語で書くと「Hatchet」となりますが、これは「小型の斧」を意味する言葉になります。

ハチェットフィッシュの体は、お腹の部分が下方向に張り出し、まさに「斧」を彷彿するかのような特徴があり、これが名前の由来になっています。

お腹の部分は大きいのですが、体の幅はほとんど無く、とてもスマートな魚体を持っています。身体の幅で言えば、ネオンテトラ達とあまり変わりません。

また、もう一つの体の特徴は胸鰭がとても長い事です。

他の多くの小型カラシン目の魚たちは短い胸鰭を持っていますが、ハチェットフィッシュはその進化の過程で長い胸鰭を持つようになったようです。水面で外敵から身を守る時に、水面から少し飛び出すように逃げることがあり、この時に長い胸鰭が役立つのだそうです。

ただし、水槽の中ではその長い胸鰭の見た目はとても優雅であり、普段の飼育の中では、胸鰭の動かし方などはとても愛嬌がある泳ぎ方をしてくれます。

charm楽天市場店 ハチェットフィッシュ

水槽内でのハチェットフィッシュの生活圏は水面

上の写真をご覧になってわかる通りですが、ハチェットフィッシュの生活圏は基本的に水面付近になります。

ネオンテトラやカージナルテトラは水槽内で中層から底のあたりを生活圏にしていますが、ハチェットフィッシュは基本的に水面に浮かんでおり、水面に落ちて来た餌を探すような生活スタイルになります。

そのため、以下でも記載しますが、水槽内を泳ぐ他の魚に全く干渉しません。

たまに水面から落下していく餌を追いかけて中層に泳いでいくこともありますが、それは稀な事で基本的に水面からは離れようとしません。

ハチェットフィッシュはこんな方におススメです!

・管理している水槽の水面付近にも熱帯魚を泳がせたい方

・珍しい熱帯魚を飼育してみたい方

・今までに飼育したことが無い魚を飼育してみたい方

ハチェットフィッシュの飼育設備と混泳させている熱帯魚 (筆者の実例)

では、以下では筆者が飼育しているハチェットフィッシュについて、実際に使用している飼育設備の詳細や管理方法、そして実際に混泳させた経験のある熱帯魚について記載していきます。

筆者が実際に使用している水槽設備の例と管理方法

まず最初に、ハチェットフィッシュの最大体長ですが、大きく育っても5cmくらいです。

私がアクアリウムショップで購入した際には、体長が3cm程度の小さなハチェットフィッシュ (マーブルハチェット) を選んだのですが、それから約1年経って少しだけ大きくなった程度です。

ですので、飼育する数にも依りますが、5匹程度であれば水槽のサイズとしては45cm水槽程度があれば問題ありません。ハチェットフィッシュとその他の熱帯魚を少量飼育するだけなら、30cm水槽でもOKなくらいです。

私自身はマーブルハチェットを他の魚とも混泳させているので60cm水槽を使用していますが、ハチェットフィッシュは4匹だけの飼育になるので、60cm水槽だと少しハチェットフィッシュの数が少なく感じることもあります。

フィルターは、外部フィルターのエーハイム2213を使用しており、水温は年間を通じて25℃~26℃で管理しています。エアレーションはフィルターによる水流のみを利用しています。

夏場にクーラーが切れて30℃の水温になってしまったり、冬場にヒーターが切れて水温20℃を下回ったこともありましたが、無事に生き延びてくれています。

ハチェットフィッシュは緩やかな水流が好きな魚でもありますので、エーハイム2213の給水口にはナチュラルフローパイプを装着して使っています。(ナチュラルフローパイプは以下のリンクで詳細を紹介しています。)

水質については、ネオンテトラやカージナルテトラが飼育できる一般的な水槽環境で問題無いと言えます。

週一回の換水で、pH=6.0-7.0で管理してあげれば大丈夫です。

上の写真には写っていませんが、水草をレイアウトした水槽での飼育となります。

ライトの点灯時間は1日8時間から9時間、水草育成のための二酸化炭素添加も行っている水槽です。

特にハチェットフィッシュのために気を付けて管理いている項目は無いので、初心者の方でも問題無く飼育が可能な熱帯魚だと言い切れるかと思っています。

ハチェットフィッシュと混泳させて問題が無かった熱帯魚

ハチェットフィッシュだけを水槽で飼育される方もいらっしゃるかと思いますが、多くの方は他の熱帯魚との混泳を楽しまれるかと思います。

ここでは、筆者が実際にハチェットフィッシュと混泳をさせてみて、問題が無かった魚や少しトラブルのあった魚も記載しておきたいと思います。

ただし、あくまでも筆者の管理している水槽の結果になるので、あくまでも御参考ということでお考え下さい。

以下が、ハチェットフィッシュと混泳させて全く問題が起こらなかった熱帯魚たちです。

ネオンテトラ、カージナルテトラ、グローライトテトラ、レッドテトラ、レッドファントムテトラ、アフリカンランプアイ、オトシンクルス、ミナミヌマエビ、ヤマトヌマエビ 等

一般的に知られている有名な小型カラシン目の熱帯魚と混泳させましたが、どれも全く問題がありませんでした。

生活圏が水面付近に近いアフリカンランプアイとも喧嘩することはありません。

ハチェットフィッシュと混泳させて少しトラブルのあった熱帯魚

次に、ハチェットフィッシュと混泳させて少しトラブルの見られた熱帯魚を2匹紹介しておきます。

1匹目はブルーリボンテトラです。

ブルーリボンテトラはハチェットフィッシュ同様に小型カラシン目の魚になるのですが、少し気性の荒い小型カラシン目の魚になります。

ブルーリボンテトラは、ハチェットフィッシュだけでは無く他の魚にもちょっかいを出す魚なので、ハチェットフィッシュも運悪くターゲットになってしまった場面が何度か見られました。

ブルーリボンテトラの気性がかなり荒かったので、ブルーリボンテトラを別の水槽に移して解消した経緯もあります。

2匹目はコケ取り生体のサイアミーズ・フライングフォックスです。

サイアミーズ・フライングフォックスは体が小さな時は、あまり他な魚を追うような行為はしないのですが、体が大きくなってくると縄張りを主張するように他の魚を追う場面が見られるようになります。

ハチェットフィッシュは水面付近にいるので、あまり被害を受けてはいませんが、サイアミーズ・フライングフォックスが水槽内を勢いよく泳いだ時に、それに驚いてしまうような事がちょくちょく見られました。

直接攻撃を受けているわけでは無いので放置して管理していますが、気になる方は気になってしまうかもしれません。


Advertisement

ハチェットフィッシュの飼育で注意すべき点

ここまでは、ハチェットフィッシュの特徴や飼育方法などについて紹介をしてきましたが、ここからは実際にハチェットフィッシュを飼育してみて注意してあげるべきだと思う点を私なりの目線で記載していきたいと思います。

一般的に言われている事もありますが、実際に飼育経験して分かってきたこともあるので、御参考になれば幸いです。

① 複数匹で飼育する事 (群泳する魚なので安心感を与える)

アマゾン川などに生息するハチェットフィッシュは、自然界では仲間と群れを成して生活している熱帯魚になります。

基本的に小型カラシン目の魚は、仲間と群泳して生活をしていますが、ハチェットフィッシュも同じです。

そのため、複数匹で飼育すると常に仲間同士で近くにまとまっていますし、1匹が動き始めるとそれを追うようにして他の魚が追従するくらいです。

1匹だけで単独で飼育すると一種の不安を与えてしまう事になりかねないので、安心感を与えてあげるためにも少なくとも4匹くらいを同一水槽で飼育してあげて下さい。

ハチェットフィッシュは複数匹が泳いでいる方が「鑑賞性」が確実に高いです。ハチェットフィッシュ同士で見せる自然でコミカルなコミュニケーションも見ることができます。

また、ハチェットフィッシュ自体はそこまで高価な熱帯魚では無いので、複数匹の導入の敷居も低いと思います。

charm楽天市場店 ハチェットフィッシュ (マーブルハチェット)

② 臆病なので驚かさないこと (水槽から飛び出す原因)

これは熱帯魚全体に言えることですが、水槽内での飼育は魚にとってはストレスが付き物で、小さな物音や物陰で驚いてしまう事が多々あります。

グッピーやプラティ等は少し鈍感な部分はありますが、特に小型カラシン目の魚たちは「超」が付くほど臆病です。

筆者の家では、子供がハチェットフィッシュの泳ぐ水槽の前を走り過ぎたりするのですが、その度にハチェットフィッシュは水槽の奥の方へ逃げていきます。

飼育期間が半年以上経っても、物音や物陰に慣れることは無く、常に臆病な状態が続いています。

そんな中、一度だけハチェットフィッシュの水槽からの飛び出しが起こりました。

床に物を落とした時に、大きな物音が経ってしまったのですが、そのタイミングでハチェットフィッシュの1匹が水槽から飛び出てきました。

水槽上部にガラス蓋はしていたのですが、ガラス蓋にも隙間が一部あり、その隙間を通過して飛び出してしまいました。

幸い筆者が直ぐに気付いたので飛び出したハチェットフィッシュは救助できたのですが、「人間の生活」と「熱帯魚にとって平穏な環境」を両立するのは難しいなぁ…と感じる瞬間ですね。

③ 水槽ギリギリまで水を張るのは避ける (飛び出しの防止)

水槽の中の水量をどこにセッティングするか?

これはアクアリスト一人一人の考え方があると思います。

「水槽の上部まで一杯に水を張った方が水槽が美しく見えて好きである」という方もいますし、「地震などに備えて水を満杯に入れない方が良い」という方もいらっしゃいます。

何に着目するかによって、この考え方の最適解は変わってくるのだと思いますが、ハチェットフィッシュを安全に飼育するという観点では、水槽上部ギリギリまで水を張るのは避けた方が良いように思います。

上でも紹介した通りですが「飛び出し防止」の観点で考えると、ハチェットフィッシュは他の小型カラシン目の魚よりも飛び出しやすい体の特徴を持ち、飛び出しやすい行動 (水面付近を高速移動する等) をします。

そのため、飛び出しを抑制するためには、水槽ギリギリまで水を張らず水槽上部より水面を5cmくらい下げて置いてあげたほうが安心だと感じます。

④ 餌を与える量はしっかりと管理すること

餌の量に関しては、私が飼育していて少し気を付けていた事でもあるので、ここに記載しておきたいと思います。

ハチェットフィッシュを他の熱帯魚を混泳させる時、どのような餌やりを心掛けるべきなのか?

ハチェットフィッシュは基本的に水面に浮かんでいる餌を好んで食べており、沈下した餌を拾いに行ったりすることはほぼありません。

それに対して、混泳させているネオンテトラやカージナルテトラは沈下性の餌の方が好きで、落ちてくる餌を待っている場合が多いです。

そのため、浮上性の餌だけを与えるとハチェットフィッシュが大量に餌を食べてしまい、逆に沈下性の餌だけを与えるとハチェットフィッシュが餌をしっかりと食べれないという状況になりました(ハチェットフィッシュの飼育を開始した初期の頃)。

そのため、沈下性の餌と浮上性の餌を2種類用意して、ハチェットフィッシュとネオンテトラ達の両方がしっかりと餌を食べてるような飼育方法で管理を進めるようにしています。

どちらかに統一してしまえば楽なのですが、餌の量というのは熱帯魚の健康状態を大きく左右する原因になります。長く健康的に飼育を続けてあげるためにも、餌やりの点も気を付けてあげると良いと思います。

その甲斐あってか、約1年の飼育期間で1匹も病気をすることなく、お星様になることもなく飼育が継続できています。

水槽に慣れたら若干体色が濃くなりました (マーブルハチェットの例)

熱帯魚の飼育には「飼い込む」という用語があります。

「飼い込む」というのは、熱帯魚を水槽にお迎えした後に水槽の環境に慣れさせてあげることで、その熱帯魚が本来持っている美しい体色を最大限発揮させてあげるという行為を言います。

私が飼育しているハチェットフィッシュですが、上でも写真を掲載している通り、白と黒がマーブル色に配色された「マーブルハチェット」という品種になりますが、このマーブルハチェットも飼育期間が長くなるにつれて、黒色が明確に鮮明になっていきました。

購入した初期の頃は、まだ体が小さかったことや、水槽環境の変更でストレスを感じていたこともあり、あまり綺麗なマーブル色とは言い難い状態だったのが事実です。

しかし、購入から1カ月くらい経つと、明確にお腹のマーブル色が濃くなり、鑑賞性が上がったのを覚えています。

鮮やかな色を持っていないマーブルハチェットですが、もしハチェットフィッシュを飼育する事になったら、色の濃さの点に着目して飼育を開始すると飼育の楽しみが増えるかもしれませんよ!


Advertisement

この記事の終わりに

この記事では、少し珍しい熱帯魚として「ハチェットフィッシュ」の飼育実例や、飼育時の注意点を筆者の経験から紹介をさせていただきました。

水槽の表面に浮かび餌を探す姿や、長い胸鰭を使ってコミカルに泳ぎ回る姿、そして仲間と一緒に群泳する姿は可愛らしく、水槽に入れたら間違いなく長く愛してしまうような熱帯魚で間違いは無いと思います。

難しい飼育方法・管理方法は無く、ネオンテトラ等を飼育する一般的な水槽で飼育が出来るので、初心者でも安心して飼育ができると言えます。

また、混泳させる魚たちとの干渉も少ないので、水槽内での魚同士のけんかなどのトラブルも抑制可能だと言えます。

管理されている水槽の水面付近にも熱帯魚を泳がせたい方、珍しい魚を飼育してみたい方、ハチェットフィッシュを水槽にお迎えしてみてはいかがでしょうか?

では!