これからアクアリウムを始める方に事前に知っておいて欲しい事

水族館やアクアリウムショップの美しい水槽を見た時に「こんな水槽が家に合ったら良いなぁ」と感じたことがある方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?

実際に、美しい水槽の中を泳ぐ熱帯魚を見て、アクアリウムを始めてみようと決心された方も多くいらっしゃるかと思います。

また、熱帯魚だけではなく金魚やメダカなどの日本古来の魚でアクアリウムを始める方もいますし、自分で川や池で採取した魚を飼育し始める方も多いかと思います。

水槽の購入を決心し、確認不十分のままに急に水槽や魚を購入してしまうと、必ず何か失敗してしまうことが起こります。

「水槽の購入なんて止めておけばよかった…」と思うことが無いように、魚を購入する前に必ず確認すべきこと、行っておくべきことを私の経験から詳しく紹介させていただきたいと思います。


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水槽を置くのに好ましい場所

まず、水槽を購入する前に必ず確認しておきたいのが、どこに水槽を置くか?という点です。

水槽は一度水を入れると重くて動かせませんので、あらかじめ水槽を設置する場所を検討しておくことが必要です。

電源コンセントが近くにあること

現代のアクアリウムは電気エネルギーの上に成り立っていると言っても過言ではありません。

フィルター、水槽用ライト、ヒーターなどのアクアリウム維持に必要な機器は全て電気を必要とします。

そのため、近くに電源コンセントが無いと、遠くの位置から延長ケーブルを使って電源をひかなければいけません。

水槽は水漏れの可能性もあるため、漏電を防ぐという意味でも、タコ足配線や無駄な延長ケーブルは使用したくないですよね。

また、水漏れと言う最悪の事態を想定して、延長ケーブルは床の上に置かず、ラックの上につるして置いたり、水のかからない状態で使用できることも考えておくべき配線接続です。

水槽の各種機器はドライヤーの様に大きな電力を使うものは無いので、延長ケーブルの許容電流量はあまり気にすることは無いですが、漏電にだけは気を遣っておいてください。

換水の観点で水道に近い部屋が良い

水槽の維持管理で最も大変な日常作業が、飼育水の水替え作業です。

水槽のサイズやフィルターの性能によっても換水頻度は変わりますが、基本的には週に1回または2回の水替えが好ましいです。

多い時は3日に1度くらいの水替え作業になるため、水替え作業をしやすい環境が日々の作業を楽にしてくれます。

最近の住宅はホースが取り付けられるような蛇口になっていない場合がほとんどです。マンションを購入されても、浄水器が組み込まれた蛇口等が多いため、ホースを蛇口に直接取り付けることはできません。また、水替えの際の排水処理もホースで排水が出来る環境に無い場合が多いのです。

つまり、現代の一般的な住宅は水槽の水替えに適した構造ではないのです。

そのため、マンション・戸建て住宅ともに、水替え作業はバケツで行わなければならない場合がほとんどだと言えます。

バケツを使って古い飼育水を排水して、その後で新しい水をバケツで運んでくるという重労働になります。バケツ一杯で10Lくらいは入るので、10kgの重さのバケツを複数回運ぶことになります。

また、戸建ての場合、2階に水槽を設置すると大変なことになる場合があります。2階に水道蛇口があればよいですが、無い場合にはバケツを持って階段を何往復もしなければなりません。

したがって、日常のメンテナンス性を考えると、1階部分の水道に近い場所というのが水槽の設置場所として最適な場所になります。

水槽の重さに対して床の耐荷重があること

これも重要なポイントになります。

水槽の重さって計算されたことがありますか?

60cm幅の水槽では、水だけでも50kg前後は入ります。また、水槽の中に石などを使ってレイアウトを作ると、その分の重量が加わります。

さらに、水槽台やフィルターの重さなども加わることになるので、100kg近い重さが床にかかることになるのです。

新しい住宅であれば問題は無いと思いますが、少し古い住宅になってくると建具の強度の確認も必要な項目になります。

日本は地震が多い国でもあるので、建物の強度と言う観点は「もしも」の事を考えても、しっかりと事前に調べておくべきだと思います。

直射日光が当たらないこと

これは少し盲点になる項目かもしれませんが、直射日光が当たらないことは「設備の劣化の防止」と「水槽内のコケの発生防止」のために必要な条件です。

水槽のガラスを接合している部分には強度の強い接着ゴムが使われていますが、これは直射日光に含まれる紫外線によって劣化します。また、フィルターのプラスチック部材も直射日光で色褪せたり変形してしまう原因になります。

また、日光が水槽内に直接差し込むと、コケが光合成をし始めるので、水槽内にコケや藻が異常に発生してしまう原因になり得るのです。

そのため、水槽は設備を含めて直射日光が当たらないようにすることが必要になります。窓際に水槽を置く場合には、カーテンを使って日光を遮るようにすれば設備の劣化を防止することができます。

実はリビングは水槽設置に適した部屋

これは私の個人的な考えですが、リビングは水槽の設置に適した場所だと思います。

リビングはお客さんが来る部屋で、アクアリウムがインテリアの一部になるので、お客さんにも見ていただくにはリビングが最も最適な場所になります。

また、リビングは基本的に家族が一番集まって最も使われる部屋にもなります。そのため、夏はクーラー、冬は暖房が最も稼働する部屋になり、水槽の水温の維持の観点でも良い効果があります。

さらに、魚が水槽から飛び出してしまうこともあるのですが、リビングに誰かがいればその事態に気付いて魚を助けることもできます。

水槽 (サイズやフィルター) を選ぶときに考慮すべき事項

実際にアクアリウムを自宅に導入する決心をして、設置場所も決まれば次に待つのは水槽のサイズやフィルターをどうするか?という選択です。

ここからは、水槽を選ぶときに考えておくべき項目を紹介していきます。

どんな魚を何匹飼育する可能性があるか?

水槽の大きさを決めるのは、飼育する熱帯魚の数または熱帯魚の大きさですね。

最も注意が必要なのは、大きく育ってしまう熱帯魚を飼育してしまう場合。

例えば、エンゼルフィッシュやプレコといった魚です。熱帯魚ショップで販売されている時には5cmくらいの小さな魚体ですが、数年経つと非常に大きな魚になります。

熱帯魚ショップは基本的に若い魚を仕入れて販売するので、どのくらいの大きさに育つのかをきちんと確認することが絶対に必要です。

よくニュースで聞くのが、日本の川に大きな熱帯魚が泳いで問題になるという事件ですね。近所の池にアリゲーターガーが泳いでいる…凶暴なワニガメがいる…本当に悲しい事態ですよね。

アクアリウムを始めるに当たっては、飼育する者として最後まで責任を持った行動をして欲しいと思うばかりです。

できるだけ大きな水槽を購入したほうが良い!

初心者の方は「最初は大きな巣層だと大変だから、机に置けるような小さな水槽から始めようかな。」と思われるのではないでしょうか?

しかし、熱帯魚の飼育は大きな水槽の方が水質の管理が楽なんです。

水槽が小さいと、その中に入る水の量が少ないので水温の変化や水質の変化が起こりやすいのが現実です。

また、熱帯魚の飼育を始めると、多くの方が「あの熱帯魚も飼育してみたい」という欲求を持つようになり、水槽の中に熱帯魚を増やしてしまう傾向にあります。実際に私もそうでしたから…。

そうなった時、水槽の数を増やすのは敷居が高いのですが、初めから大きめの水槽を用意しておけば、少し熱帯魚の数が増えても許容してくれる能力があります。

私のお勧めとしては、60cm水槽がベストだと思います。60cm水槽は、各種アクセサリーも最も充実しているので、設備の増強なども考えると、最もカスタマイズに優れた水槽の規格サイズです。

60cm水槽であれば、ネオンテトラを20匹、コリドラスを5匹、グラミー等の中型魚を3匹くらい入れても問題無く飼育できる水槽になります。

ガラス水槽を選ぶことをお勧めします

水槽の材質としては、アクリルとガラスの2種類があります。また、簡単な水槽としてはプラスチック製のものもあります。

熱帯魚を飼育し始めると、数か月で終わるのではなく年単位で楽しむ趣味になるので、水槽や各種設備の耐久性も重要な指標になります。

アクアリウムの重要なポイントの一つは、美しい水景を楽しむということです。

その美しい水槽を楽しむのに、水槽に傷が入っていたらいかがでしょうか?

それだけでも美しさは半減してしまいますよね。

耐久性や傷つきやすさの観点で考えると、プラスチックが最も弱く、その次にアクリル、最も強いのがガラスです。ガラスは割れるという心配はありますが、衝撃を与えたり落としたりしなければ割れることはありません。

プラスチックは日光によっても傷つきますし、スポンジなどで擦っても傷が入ります。また、アクリルは透明度が高いのですが、紫外線に弱く経年劣化によって透明度が下がる心配もあります。

ガラスは3つの材料の中で化学的に最も安定な材料になりますので、ガラス面の清掃や紫外線によって透明度が落ちるようなことも無いです。

45cmから60cmのサイズの水槽で長くアクアリウムを楽しむのであれば、ガラス一択だと思います。

ただし、60cmを超える水槽 (90cm水槽や120cm水槽) になると、重量が相当重くなるので、軽さを活かしたアクリルも選択肢に入ります。

フィルターは外部フィルターにしておきましょう

フィルターは飼育水の中のゴミを濾過して除去するだけではなく、濾材の中にバクテリアを定着させて生物濾過を得るための手段になります。

この生物濾過性能が最も高いのが外部フィルターと呼ばれるフィルターです。

その次に性能が良いのが上部フィルター、そして最後に金魚水槽でもおなじみのブクブクになります。

上で60cm水槽が最もお勧めであるということを記載しましたが、60cm水槽になると水槽の中の水の量が50Lくらいはありますので、外部フィルターで効率よく生物濾過を回すことをお勧めしたいです。

少し熱帯魚の数が増えたとしても、外部フィルターの能力があれば、ある程度は対応してくれる性能を持っています。

水槽用のラックは必ず水槽に適合した製品を選ぶこと

水槽を設置する場所には、多くの場合、水槽を置くためのラックも用意することになると思います。

そのラックですが、何でも良いというわけではありません。

上でも記載しましたが、60cm水槽クラスの大きさになると、水槽と飼育水、そしてレイアウト素材の重量で80kg程度になります。

80kgという重量は、大きなテレビよりも重いですよ。

そのため、ホームセンターで販売しているテレビ台などでは重量オーバーになる場合がほとんどです。例え載せることが出来たとしても、経年劣化でラックが歪んでしまう場合があります。

水槽は重いですし倒れたり、水槽にひびが入ることは危険なので、ラックは安心できるものを選びましょう。私個人としては、水槽メーカーが販売しているアクアリウム用のラックを選ぶのが一番安心できると思います。

餅は餅屋です。専門のメーカーさんが作っているラックを選んで、安心できるアクアリウムライフを楽しみましょう!


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魚を購入する前に水槽を立ち上げてフィルターを稼働しましょう

「さぁ、水槽もフィルターも用意できたので、あとは魚を選ぶだけ!」と思われるかと思いますが、ちょっと待ってください。事前に水槽やフィルターを立ち上げるのに2週間程度はかけていきましょう。

水槽を飼ったらすぐに魚を飼育できると思うのが初心者の皆様だと思うのですが、実際はそうではありません。その理由を説明します。

バクテリアが立ち上がるまで約2週間は必要です

上で紹介した外部フィルター等のフィルター類ですが、フィルターの中の濾材の中にバクテリアを定着させて、飼育水の生物濾過を確実に行えるような状態にしなければなりません。

生物濾過が行われないと魚の糞や食べ残しによって飼育水の中にアンモニアや亜硝酸が溜まっていき、それらが毒となり魚が命を落とす危険性が高まります。

そのため、水槽の中に水を入れてフィルターを稼働したら、バクテリアの元を入れてから約2週間くらいは魚がいない状態で運転させましょう。

2週間経つとフィルターの中や水槽のレイアウト素材等の中に、バクテリアが概ね住み着き、生物濾過が立ち上がります。

アクアリウムを始めて一番最初にやってしまいがちな失敗が、この生物濾過が立ち上がらない状態で魚を飼育し始めてしまうことです。

魚を購入する前にフィルターと水槽を立ち上げるということは忘れないでくださいね。

パイロットフィッシュを選んで数日飼育する

パイロットフィッシュと言う言葉を御存じでしょうか?

水槽を立ち上げた時に、一番最初に水槽に入れる魚の事をパイロットフィッシュと言います。

その水槽で魚が飼育できるのか?フィルターが立ち上がっているのか?というのをチェックさせる魚になります。

そのため、プラティや赤ヒレなどの比較的水質変化に強い魚がパイロットフィッシュとして選ばれます。

しかし、注意してほしいのは、パイロットフィッシュもずっと家族の一員として飼育をする義務があるということです。

パイロットフィッシュを使って水槽が立ち上がっていることを確認したら、パイロットフィッシュをどこかに放流してしまうというようなことは、あってはなりません。

そのため、パイロットフィッシュを選ぶときには、ずっと一緒に飼育できるような魚を少数だけ選ぶようにしてくださいね。

熱帯魚の寿命は平均的に考えて2年から3年くらいはあります。その寿命の間、飼育してあげることができる熱帯魚の中からパイロットフィッシュに最適なものを選びましょう。

魚の飼育は手間のかかる趣味ということは忘れないで欲しい

熱帯魚の飼育を始めようとしている方に、このような事を記載するのは少し気が引けるところはあるのですが、命を飼育するという観点で考えると、魚の飼育は大変だということもお伝えしておきたいと思います。

実際に、水槽を維持管理していて大変だと感じる事を列挙したいと思います。

途中で投げ出さないためにも、以下の様な面倒な作業や大変だと思うことを知った上で水槽の購入を決心してもらえればと思います。

日々の水替え作業は本当に面倒

正直なところ、水替え作業は面倒です。

水槽の大きさに対して飼育する熱帯魚の数が多くなると、それだけ水替えの頻度は多くなります。

ある意味、水替え作業は日常的に行うルーティン作業になるので、それが出来ない・受け入れられない方は熱帯魚飼育をするべきではないです。

水替えが面倒臭いから1カ月くらい水替えをしない状況となると、魚たちは毒性の強い劣悪な環境の中で生活しなければなりません。

水質の悪い飼育水では病気の発生の原因にもなりますので、水替え作業は面倒だけど必ず実施してあげるようにしてあげてください。

水槽を綺麗に保つためにコケの除去などが面倒

美しい水槽を作り上げるには、フィルターの立上げも重要ですが、水槽のガラス面に付着する藻や水草に発生するコケなどを除去するという作業が必須です。

条件にも依りますが、硬度の高い地域の水槽では、あっという間に水槽の中にコケが生えてくる場合があります。

放っておくとあっという間に藻がびっしりと生えた水槽になってしまうので、そのような状態にならないためにも、先手先手で対策をしていく必要があります。

この対策も頭を悩ますことになります。

外部フィルターの掃除も時間がかかる作業

外部フィルターの掃除は、所持記したくないですね…。

水槽からフィルターを外すのも面倒ですし、糞が詰まったフィルターの濾材を清掃するのも気が良いものでは無いです。

しかし、犬や猫の室内トイレを清掃するのと同じように、1カ月か2カ月に1度はフィルターを清掃したり、中の濾材をメンテナンスする必要があります。

半年間放置する方もいらっしゃると聞きますが、好ましい状況では無いです。

やはり2カ月に1度くらいは、フィルターの中をサッと水洗いしてあげることは必須だと思います。

設備・魚・水草など高価なものが多い

アクアリウムって、お金のかかる趣味の様に思われますが、実際のところもある程度お金がかかる趣味です。

ゴルフや乗馬などの趣味に比べれば費用は少ないですが、それでも高価な設備や高価な生体・水草もあるので、集め始めるとあっという間にお小遣いが無くなってしまいます。

水槽も海外から輸入するような水草や成長が遅くて量産できないものは効果になる傾向があります。手のひらサイズの植物が、一株3,000円くらいするようなものも一般的です。

水槽内のレイアウトに凝ってしまうと、それに伴って出費も増えるので、ある程度お小遣いと相談しながら進めなければならない趣味だと思ってください。

私も今までにどれだけ費用をかけたのだろう…と計算するのも怖いです。

旅行に行ったりするのにも気を遣う

最後は、家を留守にするときの問題です。

犬や猫はペットホテルを利用することが出来るので、大きな心配は要りません。

しかしながら、熱帯魚のペットホテルは無いと思いますので、自分で旅行中のことも対策をしてあげなければなりません。

例えば、1週間くらいの長期の旅行になると、水の量が減ってしまって水質が悪化したり、熱帯魚がやせ細ってしまうこともあります。

何かの不具合でフィルターが止まってしまったりすると、酸素の供給もできなくなるので致命的な問題になり得ます。

このようなに、熱帯魚飼育者は長期の留守に対する対策もあらかじめ考えながら飼育をしていく必要があります。

普段の管理の中で、水が減る量などをメモしたりしておくと、旅行中の水槽の中の変化が予想出来て良いかと思います。


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【最後に】手が掛かることを忘れるくらい楽しいのがアクアリウムです

アクアリウムを始めようとしている方に向けて、色々と長く記事を書いてしまいました。

美しいアクアリウムの水槽を実現するには、その裏には大変な努力があることは知っておいてもらいたいですし、アクアリウムを始める前に事前知識として知っておくべきこともたくさんあります。

私自身、アクアリウムに復帰する前には、様々な情報を集めて万全の体制を整えて再スタートさせました。その甲斐あって、今ではアクアリウムを趣味としていることに後悔は微塵もないですし、家族で楽しめる趣味になっています。

アクアリウム維持管理の大変なポイントについても記載してしまいましたが、総合的に考えるとその苦労を受け入れられるくらい楽しいのが魚の飼育です。

日本では犬や猫がペットとして最もメジャーな存在ですが、アクアリウムもそれに負けないくらいの楽しさを与えてくれます。

さぁ、今週末、水槽を買いにいってみてはいかがでしょうか!?