アクアリウム用ソイルを敷く厚さと生物濾過性能の関係

水槽の立ち上げる時、多くの方が水槽の底にアクアリウム用のソイルや砂利を敷いているかと思います。

水草を植えて育てる場合にはアクアリウム用のソイルが必要ですし、金魚水槽には大きめの砂利を敷くと相性が良かったり、飼育する魚種や水草に合わせて選ぶことになります。

そんなアクアリウム用のソイルですが、形が丸っこくて水槽の底に敷くと隙間もできるので、バクテリアの住処となり生物濾過を一部担うことも知られています。

生物濾過が安定している方が熱帯魚の飼育環境も改善するので、アクアリウム用のソイルは暑く敷いたほうが良いのでは?と単純に思ってしまいます。しかし、限度もあるので、どのくらい敷くと良いのか?と言う点を考えてみたいと思います。


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アクアリウム用のソイルについて

アクアリウム用のソイルは、土を細かく砕き、それを小さな球状に焼き固めて作られた土になります。

水槽に水草を植え付ける際に、一般的な園芸用の土は軽く小さいため水中に沈まず、ゴミの様に水中を浮遊してしまいます。そのため、アクアリウム用のソイルは重量を持たせて崩れにくく改良された土となっています。

近年の淡水アクアリウムは、さまざまな水草を水槽の中に植えたり、流木や石を使って組み立てる「レイアウト水槽」が人気を集めているので、水草を水槽に導入する方は必ず扱うことになるアイテムです。

使用しているとだんだんと粒が崩れてしまいますが、寿命は比較的長く1年半から2年くらいは使用することができます。粒が崩れてきたら交換ですが、ソイルの持つ肥料分も枯渇しているので、1年半くらいで交換する方が水草の育成が良くなります。(もちろん、肥料を入れれば水草の生育は改善はします。)

アクアリウム用ソイルがバクテリアの住処になる

アクアリウムでのバクテリアと言うと、フィルターの中の濾材の中に多く住み着いているというイメージがあるかと思います。

いかし、バクテリアは様々なものに付着しているため、水槽の中にある流木や水草、そして石のすき間などにも住み着いていることになります。

アクアリウム用のソイルについても同じことが言えて、1mm以上の大きさがある粒状のため、その隙間にバクテリアが入り込み定着すれば、ソイルの中でも生物濾過を行うことができます。

水槽の底全面にソイルを敷く場合には、相当な量のソイルを入れることになりますので、それだけバクテリアの住み着く表面積が増えることになります。

しかしながら、下で説明をしますが、アクアリウムソイルだけでは生物濾過は間に合いませんし、厚く敷いても効果は限定的です。


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ソイルを厚く敷いても生物濾過の性能はあまり変わらない

水槽の水流が影響する厚みのみ生物濾過に貢献する

私個人的には、ソイルを2cmくらい敷いた場合と5cm以上に厚く敷いた場合では、ソイルの持つ生物濾過性能はあまり変わらないと考えています。

それは、ソイルの中に水流が無いからです。

外部フィルターや壁掛けフィルター等の水槽用フィルターには必ず水流があります。水槽の中からモーターで飼育水を取水して、フィルターの中にある濾材に水を通すことで生物濾過を行っています。

しかし、下の図に示すように、アクアリウム用ソイルの中を考えてみて下さい。

表面に近い方は魚の行き来も有ったりするので、水流が少しは生まれて生物濾過に寄与すると言えます。

しかし、ソイルの表面から水槽の底に向かうにつれて、ほとんど水流が起こりません。

そのため、ソイルの奥深くに住み着いたバクテリアが綺麗にした水は、水槽の中に効率的に出ていくことが出来ません。

そのため、例え2cmのソイルを敷いても5cmのソイルを敷いても、ソイルによる生物濾過の効果はあまり変わらないと言えます。

ソイル内の汚れの濃度拡散と言う観点は?

上では水流がソイルの表面付近にしか当たらないので、ソイルの奥深くにあるところでは生物濾過による水質改善効果が現敵的になると紹介しました。

しかし、水は液体なので濃度が異なるものがあれば、濃度の拡散によって汚れが水槽内全体に拡散していくのでは?という考え方もできます。

少し文章で説明するのが難しいので図を使うと、下の図に示すように、例えば熱帯魚の出したアンモニア濃度が水中で高く、ソイル内ではバクテリアの生物濾過でアンモニア濃度が低くなっているとします。

この時、アンモニア分子の濃度が高い水槽中から、アンモニア分子の少ないソイルの中に、赤矢印で示すように濃度拡散によってアンモニアが拡散しようとします。

そのため、濃度拡散によってどんどんアンモニア分子が入っていくかのように思いますが、実は少し異なります。

濃度や温度などの物理量は、基本的に指数関数と呼ばれる関数で説明される変化を起こすことが一般的です。

つまり、次の図に示すように、ソイルの中にはアンモニア分子が十分に拡散せず、表面付近の生物濾過のみで濾過が賄われてしまうことになります。

したがって、「ソイルの中に水流が無い」という観点と「アンモニアや亜硝酸などがソイルの中に拡散しにくい」という観点から、あまり厚くソイルを敷いても生物濾過の性能に違いは出にくいのです。

つまり、生物濾過を目的としたソイルの大量導入は、ソイルの量に比例して効果が得られにくいということになります。

底面フィルターを導入すればソイルの生物濾過効果は絶大

上ではソイル内のバクテリアによる生物濾過がソイルの厚さにあまり影響されないことを説明させていただきました。

しかし、底面フィルターと言うソイルの下に敷くフィルターを導入する場合には状況が一気に変わります。

底面フィルターは下の図に示すように、ソイルの下に空間を作り、その空間から飼育水をモーターで取水する機構になるのですが、この場合にはソイルの中に白い矢印の様な水流が生まれます。

そのため、ソイルの中を常に水が通過していく状況になるので、ソイル内に定着したバクテリアによって、外部フィルターと同じ原理で生物濾過を得ることができます。

底面フィルターを使えば、非常に広い面積で濾過を得ることができるので、場合にも依りますが、外部フィルターに負けないような生物濾過を得ることも可能になるかもしれません。


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アクアリウム用ソイルを敷く厚さは何で決める?

上で紹介したように、底面フィルターを使用しない場合には、アクアリウム用ソイルによる生物濾過は限定的な性能になります。

そのため、何も考えなければ2cm程度敷いておけば十分だろうという考えになってしまうかもしれません。

しかし、ソイルを敷くのは水草を植えることを目的にしている場合がほとんどだと思いますので、考えるべきは水草の根がどのくらい伸びるか?という観点です。

水草は、長いものでは20cmから30cmくらいの根を伸ばすものもありますので、2cm程度のソイルを敷いたでは少なすぎる場合もあります。

そのため、根の長さを想定したソイルの厚さを使うことに気を付ければ、ソイルを敷く厚さの問題は起こらないかと思います。

私の経験上ですが、一般的には5㎝くらい敷けば、どんな水草でも概ね問題ない厚さになるかと考えています。

この記事のまとめ

この記事では、アクアリウム用sのソイルを敷く厚さが、ソイル内での生物濾過に影響を与えるのか?と言う観点で説明をさせていただきました。

私の個人的な考えもありますが、底面フィルターの様にソイルの中に水流が生まれる場合を除き、あまり厚く敷いてもソイル内の生物濾過は限定的だと考えています。

ソイルは生物濾過を行うものであるという考え方ではなく、確実に水草が育成する厚さを敷くということを意識すれば全く問題無いと思います。

生物濾過を目的にソイルを多く敷いてしまっている方には、少し申し訳ない記事ではありますが、水槽立ち上げの御参考になりましたら幸いです。