水草が酸素の気泡を発生させる条件とは?実験で探索!

水草レイアウトを楽しんでいる方にとっては、水草が酸素の気泡を発生する環境作りが一つの目標だったりするのではないでしょうか?

水草達が元気に光合成を行い、葉から酸素の気泡を出している姿を見ると、自分の水槽の中に一つの生態系が完成しつつあることに喜びを感じるかと思います。

しかしながら、水草に酸素の気泡を発生させるのは、容易な事ではありません。

設備を充実させ、水草の栽培環境を整備した方が到達できる、ある意味「至極の水景」の一つでもあるかと思っています。

この記事では、私が水草に酸素の気泡を発生させるまでに行った実験の内容を詳細に御紹介したいと思います。

水槽の環境によっては結果は異なるかもしれませんが、一つの例として、御参考になれば幸いです。


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この実験を行うきっかけについて

美しい水草レイアウトの水槽は、アクアリストの誰もが憧れる水槽の一つだと思います。

水草レイアウト水槽を作るためには、それなりの知識と作業量を要しますが、自然の川の中や湖の中の一場面を切り取ったような水槽が完成した瞬間は至福の一時です。

私もアクアリウムに復帰した時、アクアリウムショップで水草レイアウト水槽を観賞し、その素晴らしさに魅かれてレイアウト水槽の立上げを行ったことを今でも覚えています。

特に、水槽内の水草が光合成を行い、葉に酸素の気泡が発生している環境に心を奪われ、自分の水槽でも水草に酸素の気泡を発生させたいと思っていました。

しかし、実際に本格的に水草水槽を始めてみると、水草に気泡が全く発生しません。水草達は健全に育っているのですが、酸素の気泡が発生する雰囲気が無かったのです。つまり、水草は成長しているが酸素を大量に発生するほどの勢いがないということなのだと思います。

そして、水草に気泡が発生しないまま時だけが過ぎることになりました。

しかし、せっかく水草水槽を始めたのだから、一度は酸素の発生している水草を見てみたいと強く思うようになりました。

水草に酸素の気泡が発生しない状況を打破するために、アクアリウムショップの店員さんのアドバイスを受けながら様々な条件で実験を行うこととしました。理系の自分のスイッチが入ってしまい、何としてでも水草に酸素の気泡を出させてやろうと奮闘するに至るわけです。

そして、LEDライトの追加や二酸化炭素の設備も揃える事となりました。

この記事では、私の水槽の水草達が酸素の気泡を発生するに至った実験の内容と結果を紹介していきたいと思います。

実験を行う水槽設備と水草の種類

今回実験を行った水槽は、私の管理している60cm規格の水槽になります。

フィルターは、外部フィルターの「エーハイム 2213」を使用しています。

水温は25℃設定です。

水槽用ライトは「GEX製 CLEAR LED POWER III」と「Aqullo製 Triangle LED Bright」の2つを使用します。1日当たりの点灯時間は基本的には9~10時間です。

二酸化炭素の添加システムは、ADA製のアドバンスフォレストで、肥料は液肥を換水時に適量添加しています。

生体は小型カラシン科の魚 (ネオンテトラやカージナルテトラ) が約30匹泳いでいます。また、コケ取りとしてヤマトヌマエビを4匹投入しています。

水草については、「アヌビアス・ナナ」「ミクロソリウム・プテロプス」「クリプトコリネ・ウェンティ・ブラウン」「ハイグロフィラ・ピンナティスフィダ」「ショートヘアーグラス」「ブセファランドラ」「ロタラ・ベトナム Hra」などを植栽しています。


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実験の条件について (何を変えて実験するのか?)

今回の実験ですが、二酸化炭素の添加量とライトの強度を変化させて、水草に酸素の気泡が発生するか確認してみたいと思います。

具体的な実験の条件は下の表にまとめた通りです。

GEX製ライトAqullo製ライトGEX製ライト+Aqullo製ライト
二酸化炭素: 4~5秒に1滴条件①条件③条件⑤
二酸化炭素: 1~2秒に1滴条件②条件④条件⑥

条件は上の表に示す①~⑥の6つとなります。

ライトの強さを変更して、さらに二酸化炭素の添加量も変化させているので、どの条件が酸素の気泡発生の境界かを見極めることができるかと思います。

各条件について、1日ずつ朝から晩まで実験を行い、夕方の時点で酸素の気泡が発生しているか否かを確認します。

そのため、この実験自体は、6日あれば完了することができます。

実験の結果を紹介

では、早速ですが実験を行った結果を下の表にまとめさせていただきます。

×印は全くが酸素の気泡が出ない条件、△は数個の気泡が見られた条件、〇はしっかりと気泡が出てきた条件となります。そして、最も気泡が見られた条件は◎を付けています。

GEX製ライトAqullo製ライトGEX製ライト+Aqullo製ライト
二酸化炭素: 4~5秒に1滴××
二酸化炭素: 1~2秒に1滴×

何となくですが、実験をする前から推測は付いていたんですよね。

多分、強いライトと二酸化炭素の添加量は多くしなければならないだろうと…。

全くその通りの結果になりました。

GEX製のライトは、水草の育成が可能であると言われているライトですが、光合成によって水草に酸素の気泡を発生させるまでには至りませんでした。二酸化炭素が多ければ、気泡が出るかもしれないという期待はあったのですが、それでも駄目でした。

Aqullo製のライトは、GEX製のライトよりもワット数が2倍以上の36.6Wあります。そのため、見た目で明るさの違いがわかり、光合成の効率と言う観点では確実に有利になります。しかし、二酸化炭素の量が少ないと気泡は全く発生しませんでした。つまり、二酸化炭素の添加量が多いことが必要であることがわかります。

また、GEX製のライトとAqullo製のライトを組み合わせた場合には、二酸化炭素の添加量が少ない場合でも少しだけ気泡が発生していました。これは少ない二酸化炭素量でも、ライトの明るさのお陰で光合成が活発になった結果なのかと思います。

そして、二酸化炭素を1~2秒に1滴、そしてライトを2つ使用する条件とすると、大量の酸素の気泡が確認出来ました (条件⑥)。この条件では、実験をスタートさせた2時間後くらいには多くの気泡が発生し始めていました。明らかに他の条件とは様相が違うことが目で見てわかりました。

つまり、結果としては当たり前なのかもしれませんが、水草に酸素の気泡を発生させるためには、強いライトと二酸化炭素の添加量を多くすることが必要であるといことになります。

60cm水槽であれば、上記の条件⑥のレベルの環境を作ることで、水草に酸素の気泡を発生させる環境を構築できます。ただし、水草の量などによっても条件は異なるので、皆様の管理する水槽で最適な条件を見つけることは必要です。


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酸素の気泡が出ている水草の写真を紹介

では、ここからは実際に酸素の気泡が発生した水草の写真を紹介していきたいと思います。上の条件表の条件⑥で気泡が発生した時の様子になります。

水槽内の写真は、スマホでは少し撮影が難しいので、少し見にくいかもしれませんがお許しください。

最初の写真は「ロタラ ベトナム H’ra」ですね。赤くなるロタラの代表格と言えるものですが、特に成長が活発な頂点部分に多くの気泡が発生していることが分かります。

次の写真は前景草としてソイルに植えている「ショートヘアーグラス」となります。少し見にくいですが所々に丸い気泡が見えます。

ショートヘアーグラスは、強い光が無いと上手く成長しないと言われています。しかし、今回の様にLEDライトを2灯用意したことで、光合成がかなり活発になった証拠だと思います。

次の写真は「ハイグロフィラ・ピンナティスフィダ」となります。この水草は、あまり気泡を出すというイメージが無いのですが、周りの水草と同様に気泡を発生しています。ハイグロフィラ・ピンナティスフィダの場合には、葉の裏側に主に気泡が見られました。これは、葉の裏に気孔があり、そこから酸素が出てきているためでは無いかと思います。

最後の写真は、酸素の気泡は出ないと思っていたブセファランドラになります。(成長が遅いので、酸素の気泡を出すような光合成はしないのではないかと思っていました。)

しかし、葉に大量に気泡が発生しています。これだけ酸素を出していれば、もっと成長が速くても良いのに…と思ってしまうほどでした。

酸素の気泡が発生しなかった水草について

今回の実験では、上で紹介した通り、多くの水草が酸素の気泡を発生させてくれました。

しかしながら、全く酸素の気泡を発生させなかった水草があります。

アヌビアス・ナナとミクロソリウム・プテロプスの2種類については、酸素の気泡が全く発生しませんでした。

ブセファランドラが気泡を出したので、全ての水草が酸素の気泡を出すのではないかと思われましたが、この2種については沈黙のままでした。

アクアリウムショップでアヌビアス・ナナを見ても、気泡が付いているイメージも無いので、あまり気泡が出て来ないものなのかもしれません。

もしかしたら、水温や水質がマッチすれば、酸素の気泡を発生するのかもしれませんが…もし、好ましい条件を御存じであれば、コメント欄で教えていただけましたら幸いです。

この記事の終わりに

この記事では、水槽の中で栽培している水草が酸素の気泡を発生させる条件を実験的に探索してみた結果を紹介させていただきました。

基本的には、一般的に言われている通りで、強いライトと二酸化炭素の量を増やすことの2つの管理項目がポイントになります。

二酸化炭素はとりあえず添加するのではなく、1秒に1滴程度の比較的多い添加量が必要になります。ただし、二酸化炭素の添加量が多くなるので、二酸化炭素ボンベの交換頻度が上がるという点に注意が必要です。

また、LEDライトも1つでは無く、2つを用いて合計で50Wクラスの光量を用意すると良いかと思います。水槽用LEDライトの中には、1つで50W級のものもありますので、そちらを検討しても良いかと思います。

しかし、二酸化炭素やライトの強度以外にも、酸素の気泡発生に影響を与えるパラメータはあると思われます。例えば、飼育水の硬度や水温です。

グロッソスティグマのように成長が硬度の影響を受ける植物もありますし、植物は水温が適正であることで成長が促進されます。

水槽内の環境整備は本当に多くの管理項目があるため、お世話をするのが大変になります。しかし、一つの目標を持って管理をしていくと、そこまで苦は無く着手できます。

皆様も、是非ご自身の水槽で実験してみて下さいね!