ブラックモーリーでは油膜と苔の対策は出来ない!?

水槽の飼育水の上に浮かぶ油膜は、見栄えも悪いし除去するのも面倒臭いですよね。油膜にお悩みの方は、検索エンジンで「油膜 対策」と検索をしたことが必ずあるかと思います。

その中で「ブラックモーリーやプラティの仲間が油膜や苔を食べてくれます」という記事を見たり聞いたりした事がありませんか?

私もそんな話を信じた一人でした。そして、実際にブラックモーリーを、油膜と苔で悩んでいる水槽に導入してみました。

結果としては、ブラックモーリーは苔を食べることは無く、油膜についてもほとんど食べることはありませんでした。そのため、ブラックモーリーを苔や油膜を食べてくれる魚としては考えない方が良いというのが私の答えです。

この記事では、簡単にブラックモーリーの紹介をした後に、実際にブラックモーリーを導入した際の様子を御紹介したいと思います。

この記事は、ブラックモーリーの販売・不買を促進するための記事ではありません。飼育検討者の方にお伝えしておきたいことを経験者視点で情報発信をする記事になります。

また、あくまでも筆者が管理する水槽での結果であり、皆様の管理されている水槽で同様の結果となるとは限りません。その点は御留意いただけましたら幸いです。


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ブラックモーリーってどんな魚?

まずは、ブラックモーリーという熱帯魚に詳しくない方もいるかと思いますので、ブラックモーリーについて簡単に御紹介しておきたいと思います。

ブラックモーリーの概要

ブラックモーリーは、プラティと同じメダカの仲間で、南米原産の熱帯魚になります。

プラティを飼育されていたことがある方は、イメージが付きやすいと思いますが、まさにプラティを真っ黒にした外観を持っています。目や尻尾の形、ぷっくりとした体形など、まさに「真っ黒なプラティ」です。

ブラックモーリーは雌がお腹の中で卵を保護し、幼魚を産むという卵胎生の魚になります。そのため、飼育環境下では繁殖速度が速いことも特徴して挙げられます。

飼育環境下での寿命は短く、1年半~2年程度です。3年生きるものもいると聞きますが、それは稀です。寿命が短い分、繁殖で子孫を残していく魚です。

プラティとモーリーの違いは何かあるかと聞かれると、大きさがモーリーの方が少し大きいことくらいです。食べるものや泳ぎ方など、ほぼほぼ同じです。どちらも大食漢で、食いしん坊です。

モーリーには、ブラックモーリーの他に色の白いシルバーモーリーや、ヒレの長いライヤーテールモーリー等の種類がいます。下の写真はシルバーモーリーです。

シルバーモーリーの写真

飼育環境は特に気をつかう必要は無い

ブラックモーリーの飼育環境は、一般的な熱帯魚の飼育環境で問題なく飼育できますので、特段気にすることはありません。ネオンテトラやグッピーなどと同じ環境で飼育が可能です。

原産地での水質は中性から若干アルカリ性に傾くくらいの所に生息していますが、弱酸性の飼育水で問題無く飼育可能です。淡水水槽では、フィルターを回していると常に弱酸性になるはずなので、熱帯魚ショップでも弱酸性で管理されているはずです。

水温は25℃前後が適温です。硬度については、週に1度程度の換水をしていれば、気にする必要は無いです。

モーリーは何でも食べる!

モーリーは何でも食べます!

人口飼料、赤虫、イトミミズなど、口に入る食べ物なら何でも食べます。ですので、飼料の種類に困ることはありません。

食べすぎてお腹がパンパンになり、消化不良などを起こしていないか、心配になるくらいです。

食べすぎた時に、消化不良を起こして病気になったり、体調不良になることもあったので、餌の上げすぎには本当に注意してください。

モーリーは繁殖力が非常に強い

ブラックモーリーは、先に述べたように卵胎生の繁殖をするため、繁殖力が非常に強いです。5匹程度水槽に入れておくと、知らぬ間に増えています。プラティと同じですね。

一度に数匹から十匹くらいの赤ちゃんを産みます。しかも、産むスパンが短く、水槽の中では年中繁殖期ですよ。

ただし、赤ちゃんが成魚に食べられてしまうことも多々あるので、繁殖させたいという強い意志がある方は、卵を持った雌を別の水槽に隔離してあげることが必要です。

また、繁殖させたくない方は、雄だけを飼育する、雌だけを飼育するというスタイルにしてください。ただし、雌を購入してくると、ショップで受精した卵を持ってくる可能性もあるので、雄だけにした方が数が増えてしまうリスクは低いです。

ブラックモーリーの写真

油膜・苔取りとして活躍するのか?実際に導入して検証

「本当にブラックモーリーが苔や油膜を食べてくれるのか?」

皆様が御興味があるのはこの点ですよね。

私は油膜を取ってくれるというネット情報を信じて、私の管理している既存の水槽にブラックモーリーを導入しました。

導入した水槽は60cm水槽で、ブラックモーリーの数は雄を2匹です。

ブラックモーリーに繁殖されてしまうと困るので、敢えて雄を2匹選びました。

以下で、各項目に分けて結果を御紹介します。

そもそも、他の魚と混泳可能?

ブラックモーリーを油膜や苔を食べてくれる魚として飼育するということは、既に皆様の家に水槽があり、何かの魚を飼育されているということかと思います。

そのため、まずはブラックモーリーが他の魚と混泳が可能か?という点について、私の飼育経験から記載したいと思います。

ブラックモーリーは、一応、他の魚と混泳は可能です。私は、ネオンテトラやコリドラスといった人気の熱帯魚と混泳をさせていました。

ただし、餌の時間になると、他の魚にちょっかいを出すことが多々あります。熱帯魚なのでどうしても餌の時間は餌の奪い合いになりますし、餌場の奪い合いでのいざこざが生じます。

私の飼育環境では、餌の時間にコリドラスを突っついて、餌場から追い払うようなことを頻繁にしていました。また、頻度は低いですが、ネオンテトラの体の側面を口で突っつくような仕草も見受けられました。

ただ、コリドラスやネオンテトラが怪我をするようなことは無かったので、私は放置していました。

ですので、少しのいざこざを気にしなければ、他の魚との混泳は可能だと考えます。つまり、苔や油膜を食べてくれるメンテナンスフィッシュとして、他の魚と混泳が出来るということです。

ブラックモーリーは苔を食べるのか?

ブラックモーリーが苔を食べるか?という観点ですが、確かにブラックモーリーは苔を口で突いています。

特に黒髭苔や髭状藻 (アオミドロ) のような口に入れやすいものをつついている場面を何度も見ています。

ただし、完全に苔を除去するまで食べるのではなく、少しつついて終わる程度です。そのため、私の飼育寒け用では、苔を完全に食べてくれるところまではいきませんでした。

ブラックモーリーの口の力では、少し大きくなった黒髭苔に太刀打ちできませんし、茶苔の様に石にへばりついている苔は完全無視で、口でつつきもしません。

したがって、苔取りとしての性能は、本当に限定的です。期待してはいけないと思います。

「餅は餅屋」で、コケ取りはオトシンやヤマトヌマエビに任せるべきです。その方が確実です。

水槽を泳ぐブラックモーリー

ブラックモーリーは油膜を食べるのか?

ブラックモーリーは、確かに水面付近で口をパクパクさせて、油膜を口の中に含むような行動をしています。

そのため、少なくとも油膜を食べるということは事実なのだと思います。

ただし、積極的に油膜を食べるというよりも、餌の無い時に気分で食べているという印象の方が強く、その表現の方が合っているのかもしれません。

しかしながら、常に油膜を食べ続けるか?というと、私の飼育環境では、そんなことはありません。

上で記載しましたが、私は60cm水槽に2匹のブラックモーリーを導入しましたが、油膜の状態は導入前後でほとんど変わりませんでした。

はっきり言うと、辛辣な言い方ですが、「期待外れ」でした。

油膜を食べるよりも、餌の時間に人口飼料を食べる量の方がはるかに多いです。コリドラスやネオンテトラと混泳させていましたが、コリドラス専用の餌 (コリドラスタブレット) をコリドラスから奪って食べるという有様です。

ブラックモーリーの個体差もあるかと思いますが、油膜で覆われた水面を綺麗にしてくれるレベルの仕事はしてくれませんでした。

なぜ、筆者の水槽ではブラックモーリーが油膜を積極的に食べてくれなかったのか?

この点については、私自身も色々と考えていました。

アクアリウムショップの店員さんにも「ブラックモーリーは油膜を取ってくれる生体として知られていますよ」と言われ、インターネットでも「ブラックモーリーを入れたら油膜が出にくくなった」という情報を見ました。

では、なぜ筆者の水槽ではブラックモーリーが油膜を積極的に食べなかったのでしょうか?

その理由として、私自身は2つの原因があるのではないかと考えています。

一つは、生まれがながらにして持つ遺伝によって油膜を積極的に食べないブラックモーリーを購入していたかもしれないということです。

ブラックモーリーも生きている魚ですので、人間と同じように好きな餌と食べにくい餌があるのだと思います。人間も同じで、日本ではお米を主食として欧州ではパン (小麦) が主食ですよね…。

言い換えれば「個体差」というものです。

ブラックモーリーの中にも油膜を積極的に食べる個体もあれば、積極的に食べない個体があっても不思議では無いと思います。

もう一つは、食生活の違いが影響しているのではないか?ということです。

生まれながらにして、ずっと人口飼料を空腹感なく与えられ続けてきた個体 (ブリード個体) は、油膜を食べる必要は無く成長することが出来ます。言い換えると、油膜を食べる習慣が無く育った個体と言うことですね。

また、朝晩の人口飼料をたくさん食べて満腹感を得られたブラックモーリーも油膜を食べなくなる可能性もあります。事実として、私の水槽でブラックモーリーが油膜をつついていたのは、下記の通り、餌の時間が終わってしばらく経ってからの時間帯になります。

ブラックモーリーが油膜取りで活躍する環境はあるのか?

単純にブラックモーリーを導入しただけでは油膜が無くならなかったので、どうしたらブラックモーリーが油膜を食べてくれるようになるのかを考えたことがあります。

ブラックモーリーが油膜をつついている時間というのは、基本的に餌の時間の合間の時間帯であることが多かったのです。言い換えると、ブラックモーリーはお腹が空いた状態で、他に何も食べるものが無いという状況になると油膜を食べ始めるというものなのかもしれません。

つまり、ブラックモーリーを油膜を除去してくれるメンテナンスフィッシュとして機能させるためには、常にお腹を空かせて飼育することが必要なのでは無いか?ということです。

ブラックモーリーの餌の量を減らすということは、混泳させている熱帯魚の餌も減らさなければならりません。しかし、ブラックモーリーが餌を食べるスピードはかなり速く、他の魚の餌も全て奪ってしまうことは確実です。したがって、餌の量を減らすわけにもいかないのが現状かと思います。

そのため、餌は朝晩の2回として、餌の量も必要最低限の量とすれば油膜取りとしてブラックモーリーが活躍するのかもしれません。

また、ブラックモーリーを60cm水槽に5匹くらい入れれば油膜取りとしての効果が発揮される可能性もあります。しかし、5匹入れるとなるとメンテナンスフィッシュではなく、メインフィッシュになってしまうんですよね。

そのため、どう考えても、ブラックモーリーを油膜を除去してくれる魚として機能させることは難しいのではないかと感じるところが強いです。


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この記事の結論

最後に、今回の記事の話をまとめておきます。

ブラックモーリーが水槽の油膜取り、苔取りのメンテナンスフィッシュとして有用か?という疑問への答えですが…

① ブラックモーリーのメンテナンスフィッシュとしての性能は限定的だと思います。

② ブラックモーリーを2匹導入しただけでは、私の管理する60cm水槽の油膜 / 苔は解決しませんでした。

③ ブラックモーリーにメンテナンスフィッシュとしての役割を果たさせるためには、人口飼料の量を減らし、60cm水槽で5匹程度導入することが必要なのかもしれない。ただし、5匹以上入れるとメンテナンスフィッシュではなくメインフィッシュになり、繁殖力により数が増え続けるリスクが大きい。

④ ブラックモーリーにも個体差があり、油膜を食べる個体と油膜を食べにくい個体があるのではないか?そのため、ブラックモーリーを導入すれば油膜が100%無くなるということは言えない。

というのが私の考え方です。つまり、メンテナンスフィッシュとしての利用は個体差と環境による影響を受ける可能性が高いというのが私の現時点での結論です。

ブラックモーリーを飼育したいという気持ちがあり、観賞用の「熱帯魚」として複数匹飼育するのであれば、その副産物として油膜取りとコケ取りの性能が付いてくるというくらいのものかなぁ…と考えています。

別の言葉で言い換えると、「ブラックモーリーに油膜・コケ取りを依存する」のではなく、「ブラックモーリーを飼育していたら油膜・苔を食べてくれて得をした気分になれる」という性能であるということかと。

ブラックモーリーにメンテナンスフィッシュとしての性能を期待して導入するのは、一旦立ち止まって考えてからにしましょう。油膜・コケ取りとして働かなくても、水槽内の熱帯魚の一員と考えてあげられるのであれば、導入しても問題ないと思います。