水槽の中に水草を植栽して、美しい水景を楽しむ「水草水槽」。
絵画や書道と同じで、水草水槽は一つ一つが唯一無二の作品となり、アクアリストの皆様も美しいレイアウトが作れるように、試行錯誤を繰り返している事かと思います。
有名なレイアウターの方が作った水草水槽や世界大会で入選している水草水槽は、レイアウトを考える際に非常に参考になりますよね!
ただ、自分で水草水槽のレイアウトを考えた時、流木の形状や石の形状、水草の種類など…組み合わせが無限にあるため、どのようにレイアウトを進めれば良いか困ってしまいますよね。
さらに、水草ごとに必要な栽培環境や成長速度が異なりますし、数多くある水槽設備のどれを使えば良いのか?と言う点も迷いの種になります…。
つまり、言い換えると、水草水槽は数多くの「パラメータ」を最適化して、自分が理想とする作品を作り上げていくということなのかと思います。
ここでは、そんな数多くある水草水槽のパラメータの中で水草の成長速度に着目し、筆者が育てた水草の中で、最も成長速度が速かった水草 (有茎草) を5つ紹介したいと思います。
さて、どの水草の成長速度が速かったのでしょうか?
【注意】この記事で紹介する水草の成長速度は、筆者が管理する水槽で実際に実験を行った結果のみを掲載しています。ここに掲載されていない水草の中には、更に早い成長速度持つ品種もあると思います。また、水槽の管理方法や設備によっても成長速度は異なりますので、参考としてお考えいただけましたら幸いです。
また、ここで紹介する水草の成長速度については、それぞれ詳細に記載した記事があります。各リンクを貼っておりますので、詳細はそのリンクから御確認下さい。
水草 (有茎草) の成長速度を測定した水槽設備と管理方法について
まず最初になりますが、水草の成長に影響を与える水槽の設備と管理方法について記載しておきたいと思います。
この記事で紹介する水草の成長速度は、概ね以下の設備と管理方法で調査していきました。
・水槽サイズ … 60cm水槽
・LEDライト … GEX製CLEAR LED POWER III, Aqullo製 Triangle LEDTriangle LED
・フィルター … 外部フィルター (エーハイム 2213)
・二酸化炭素 … オランダプラント以外の水草育成時に添加 (5秒に1滴程度)
・ソイル … リベラソイル
・肥料 … テトラ製のイニシャルスティック
・水替え頻度 … 週に1回または2回
・pH値 … 6.5~7.0
・飼育している生体 … 小型カラシン科 約20匹、サイアミーズ・フライングフォックス、ヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビ、オトシン・クルス
主要な項目は上記の通りですが、その他にも必要な情報などがございましたら、コメント欄で御質問ください。可能な限りお答えさせていただきます。
成長速度の測定方法について
この記事で紹介する水草の成長速度の測定方法についても紹介しておきます。
下の図はグリーン・ロタラの成長を図示したものです。
成長速度の測定開始日から、定期的に茎の長さを測ります。
そして、茎の長さと経過日数をグラフ化して、そのグラフの傾きから成長速度を算出するという方法を採用しました。
この記事では、有茎草のみを取り上げておりますので、全て茎の長さを測定しております。
では、以下で成長速度の速い水草 TOP5 を順番に見ていきたいと思います。
第5位 プロセルピナカ・パルストリス
第5位はプロセルピナカ・パルストリスです!
非常に言いにくく、覚えにくい名前の水草ですが、独特な針状の葉を持つ水草であり、他の水草とは少し異なる雰囲気を水槽内に醸し出してくれます。
プロセルピナカ・パルストリスの成長速度は3.3mm/日となり、1ヶ月で約10cm程度成長することになります。
実際に成長の様子を写真に撮影したものが以下となります。
下に示す写真は、左の写真が植栽直後の様子、右の写真は植栽から15日後の様子になり
植栽した直後は葉の多くが水上葉の状態でしたが、2週間経つと針状の葉が展開し始めていることがわかります。
そして、さらに45日後と60日後の様子が次の写真になります。
プロセルピナカ・パルストリスは、育成も容易であり、トリミングした後には挿し芽で株数を増やすことも簡単にできました。
初心者の方でも安心して育てられる水草だと思います。
詳細は、以下のリングに記載しています。
第4位 ルドヴィジア・グランデュローサ
第4位はルドヴィジア・グランデュローサです。
ルドヴィジアは、ルドヴィジア sp. スーパーレッドが有名ですが、このグランデュローサは真っ赤で大きな葉を展開する品種であり、水槽の中での存在感が抜群です。
そんなルドヴィジア・グランデュローサの成長速度も約3.3mm/日となり、第5位のプロセルピナカ・パルストリスとほぼ同じ成長速度となります。
下の写真は、水槽に植栽した直後と2カ月後の状態を比較したものとなります。
植栽した直後は、葉が緑色でしたが、2カ月経つと真っ赤で大きな葉をたくさん展開していることが分かります。
ルドヴィジアを真っ赤に染めるには、比較的光量の多いLEDライトが必須だと思います。
少しライトが弱いと、葉の色が若干緑がかってしまい、鮮明な赤には染まりにくかったです。
ルドヴィジア・グランデュローサの成長速度の詳細は以下のリンクで紹介しています。
第3位 オレンジ・ミリオフィラム
第3位はオレンジ・ミリオフィラムです。
オレンジ・ミリオフィラムは非常に細く細かな葉を展開することで有名な水草です。
葉が細かく揺れるため、水槽のレイアウトの中に「動き」を取り入れるのにも適した水草だと感じます。
このオレンジ・ミリオフィラムの成長速度は約5mm/日なりました。第3位にして、5mm/日を上回ってきました。
では、実際の成長の様子を見ていきたいと思います。
下の写真が植栽した直後の様子となります。少し葉が太いのですが、これは水上葉として育ったものです。
そして、次の写真が植栽から3週間後の様子です。
僅か3週間でも、これだけ成長します。また、栽培環境にも依りますが、葉の色がオレンジ色に変化してきます。「オレンジ・ミリオフィラム」と呼ばれる所以ですね。
このオレンジ・ミリオフィラムの成長の詳細は、以下のリンクでも紹介しています。
第2位 グリーン・ロタラ
第2位は、最も有名で人気の高い水草の一つである「グリーン・ロタラ」です。
ロタラには、様々な品種がありますが、その中でも最も鮮やかな緑色が水槽に映えるグリーン・ロタラが特に成長が速いです。
その成長速度は約6.5mm/日となり、ここまで成長が速くなると日々の管理の中でも成長の速さが分かるレベルになってきます。
実際の成長の様子を2枚の写真で比較したいと思いますが、まず下の写真が水槽に植栽した当日の様子です。
そして、次の写真が3週間後の様子となります。
3週間が経過すると、グリーン・ロタラが60cm水槽の水面に到達するまでに至りました。
グリーン・ロタラは成長がとても旺盛な水草のため、植栽後に枯れてしまったり、溶けてしまうような事は少ない印象です。初心者の方でも安心して育てられる水草だと言えます。
グリーン・ロタラの成長の様子については、以下のリンクで詳細を紹介しております。
第1位 オランダプラント
さて、筆者が育てた水草の中で、最も成長速度の速かった水草ですが…。
第1位は「オランダプラント」です。
オランダプラントは細長い葉を高密度に展開しながら成長する有茎草となりますが、とにかく成長が速い!
水草は植栽した直後は、根の安定と環境対応で少しだけ成長速度が遅くなるのですが (筆者の経験上) 、オランダプラントは植栽直後からぐんぐん成長してあっという間に水槽の水面まで到達しました。
その成長速度は、約8mm/日となりました。しかも、二酸化炭素の添加無しで、この成長速度です。
実際に植栽当初と20日後の様子を比較したものが次の写真となります。
茎はまっすぐ伸びる上に向かって伸びると思いきや、茎を曲げながら暴れるような形で伸びていきました。
葉が高密度に茂るため、レイアウトで使ったらとても綺麗になるのではないかと思いましたが、60cm水槽クラスでは狭すぎる印象です。
オランダプラントをレイアウトに導入する時は、もう少し大きな水槽を使った方が良いのかもしれませんね。
オランダプラントに関するその他の詳しい情報は、以下のリンクで紹介しています。
この記事の終わりに
本記事では、筆者が実際に育てたことのある水草の中で、最も成長速度が早かった品種を5つ紹介させていただきました。
最も成長速度が速かった水草は「オランダプラント」で約8mm/日となり、他の水草には見られないスピードで成長をしていきました。オランダプラントが最も成長する環境を整えれば、1日に1cmを越える成長になる可能性もありますね。
水草の成長速度を把握することは、水草レイアウト水槽を美しく仕上げるためには必要なデータだと感じます。
水草水槽を立ち上げる際や、水草のトリミングを行う際には、1か月後~2カ月後の水景を想像しながら作業を行っていきます。その時に水草の成長速度が分からないと、なかなか思うように水景を仕上げていくことが出来ません。
水草の成長速度は測定してデータを積み上げるのが面倒な作業ではありますが、自分の理想とするレイアウトを作り出していくためには、把握することが望ましいパラメータの一つかと感じます。
本ブログでは、この記事で取り上げた以外の水草についても成長速度の測定結果を紹介しています。
もしよろしければ、「水草の知識」のカテゴリーから検索してみて下さい。
では!