水草水槽の前景草に適した水草は数多くありますが、その中でも最も有名な品種の一つが「グロッソスティグマ」ではないでしょうか。
グロッソスティグマは、ランナーを伸ばしながら可愛らしい双葉を茂らせていく特徴がありますが、高密度にグロッソスティグマが茂った姿は非常に美しい水景となります。
「ショートヘアーグラス」と肩を並べる有名な水草ですが、育成が少し難しい面もあるため、アクアリウム中級者以上の方向けの水草とも言われています。
しかし、個人的には、育成のコツを掴めば誰でも育成が可能な水草であると思います。
この記事では、グロッソスティグマ育成の参考例として、グロッソスティグマを水槽に植え付ける場面から、実際の成長の様子を写真と共に紹介していきたいと思います。
これからグロッソスティグマの育成に挑戦される方に、少しでも御参考になれば幸いです。
【注意】水草の育成は、水槽の環境に大きく左右されます。本記事と同じような方法でグロッソスティグマを育てても、同じように育たない場合もあります。本記事に記載の内容は、あくまで御参考としてお考え下さい。
本記事で植え付けを行うグロッソスティグマについて
本記事で育成を行うグロッソスティグマですが、下の写真の通り、ADA (Aqua Design Amano) の「BIO みずくさの森」シリーズのグロッソスティグマとなります。
ADAの製品は特約店でしか入手ができませんが、ADA以外にもグロッソスティグマの組織培養は販売されています。
少し価格の抑えられている国産のグロッソスティグマもありますので、それらの商品を使っても良いかと思います。
下のリンクに、charm楽天市場店のグロッソスティグマを紹介しておきます。
筆者の管理する60cm水槽に前景草としてグロッソスティグマを植栽
今回、グロッソスティグマを育成する水槽は、筆者が管理している60cm水槽となります。
下の写真に示す通り、水槽前面の下部における前景草として植栽します。
この場所には、もともとショートヘアーグラスが植栽されていたのですが、ショートヘアーグラスの調子が悪くなったため、グロッソスティグマへ植え替えることにしました。
ショートヘアーグラスを綺麗に除去して、グロッソスティグマを植え付けていきます。
本来は、ソイルを新しいものに交換した方が良いのですが、今回はソイルの交換は行わずにグロッソスティグマを植栽していきます。
グロッソスティグマを植栽する前には、ソイルの中にテトラのイニシャルスティック (固形肥料) を埋め混みました。
水槽の管理方法・育成環境
次にグロッソスティグマを育成する水槽の管理方法と育成環境の詳細を紹介しておきます。
・水槽: 60cm規格水槽
・肥料: テトラのイニシャルスティックを規定量のみ(液体肥料は無し)
・水槽用ライト: Aqullo製Triangle LED + GEX製CLEAR LED POWER III
・二酸化炭素添加装置: ADA製 アドバンスシステム – フォレスト
・二酸化炭素添加量: 4秒~5秒に1滴
・主な飼育生体: ミナミヌマエビ約20匹, 小型カラシン20匹, ラミレジィ3匹, ネオンドワーフレインボー1匹
・水温: 年間を通じて25℃で管理
・換水頻度: 週に1度、水量の1/2を換水
その他に不明な点があれば、コメント欄で質問下さい。
ランナーを伸ばしながら成長するグロッソスティグマ
グロッソスティグマの緑の絨毯が形成される実例を見る前に、グロッソスティグマがどのように成長していくのかを紹介しておきたいと思います。
グロッソスティグマは「ランナー」と呼ばれる茎を伸ばしながら、そのランナーに新しい双葉と根を展開して成長していきます。
下の写真がその一例となりますが、ソイルの表面にランナーを伸ばし、概ね一定の間隔で双葉が生えていることがわかります。また、双葉のすぐ下には新しい根が生えていることも特徴です。
上の写真にランナーの「成長の先端部」と記載をしていますが、この部分がランナーの先端であり、ここがどんどん伸びて、新しい双葉を形成するため、グロッソスティグマの緑の絨毯が完成していくことになります。
また、ランナーを途中で切ってしまっても、それぞれの双葉に根があるため、グロッソスティグマは枯れることはありません。
枯れるどころか、その切断部から新しいランナーが伸び始めるため、葉の密度がさらに上がります。
(ただ、ランナーを切るのは細かい作業で面倒なため、葉を増やすためにランナーを切るという作業はあまりやることは無いかと思います。)
グロッソスティグマの成長を写真で紹介 (植栽から1ヶ月の成長)
それでは、ここからはグロッソスティグマの成長の様子を写真で見ていきます。
植栽した日から約1ヶ月の間で、どのくらい成長するのかを見ていただければと思います。
まず最初の写真ですが、植栽した当日と10日後を比較した写真となります。
10日後の写真を見ると、わずかに成長の様子が見て取れますが、まだまだソイルの表面が見えていて緑の絨毯が形成されているとは言えませんね。
続いて、次の写真が植栽から20日後の様子となります。
植栽から20日が経過すると、明確にグロッソスティグマの成長が分かるようになってきました。
ランナーを次々と伸ばし始め、ソイルの表面を這うようにして、次々と新しい双葉を展開しております。ここまで成長が進めば、植栽が成功しているということがわかるようになると思います。
そして、次の写真が植栽から35日後の写真となります。
植栽から約1ヶ月が経過すると、ソイルの表面が見えにくくなるくらいにグロッソスティグマが成長してきました。
時間が経てば、葉の密度はさらに上がっていきますが、写真で見るグロッソスティグマの成長はここまでにしておきます。さらに時間が経過すれば、もっと葉の密度は上がってきますよ!
育成環境にも依存しますが、グロッソスティグマは概ね1か月くらいが経過すると緑の絨毯を形成するということが言えるのかと思います。
グロッソスティグマを上手に育てるために大切な事
ここからは、グロッソスティグマを上手に育てるために必要だと思うことを、私の経験から記載しておきたいと思います。
実際に経験したことや実践していることでもあるので、少しでも御参考になれば幸いです。
① 植え付ける前に肥料を与える事
まず一つ目は、グロッソスティグマを植え付ける前の肥料です。
グロッソスティグマは、成長のスイッチが入ると、どんどんランナーを伸ばして双葉を展開してく植物です。
そのため、その成長を支えるための肥料が必ず必要になります。
グロッソスティグマを植え付ける前には、ソイルの中に固形肥料を適量埋めて、成長をサポートしてあげるようにしてください。
最初に使う肥料としては、テトラのイニシャルスティックがお勧めです。
また、グロッソスティグマが成長して緑の絨毯を形成すると、固形肥料を埋めることが困難になります。
そのため、グロッソスティグマが成長した後は、液肥を利用しても良いかと思います。
② 比較的強いライトを使用すること
2つ目の注意点は、水槽用ライトの光量に関することです。
グロッソスティグマの育成には、比較的強い光量が必要になります。
水槽用のライトは様々な種類がありますが、光量が弱い水槽用ライトを使うと、グロッソスティグマの成長に変化が現れます。
グロッソスティグマは、本来は上記の様にランナーを伸ばしながら地を這うように成長していくのですが、光が弱いと光を求めて上方向に間延びしたような成長を見せることがあります。
下の写真が実際の例となります。
黄色の矢印で示した部分ですが、この部分はランナーを伸ばそうとせず、上方向に成長していることがわかります。
実はこの部分は、他の水草によってライトの光が遮られてしまっている部分になります。
ライトが十分に当たらないため、このように上方向に延びるような成長を起こしてしまった例です。
このような成長になると、グロッソスティグマの綺麗な絨毯が作れないため、ライトの光量には注意して育ててあげてください。
私が使っているライトは、上で記した通り、Aqullo製のTriangle LEDです。
③ コケ抑制剤は絶対に使わないこと
3つ目の注意点は「コケ抑制剤」を絶対に使わないことです。
コケ抑制剤は、私の過去の記事でも紹介したことがあるのですが、例えば「Bio コケクリア」です。
コケ抑制剤は、水槽内に発生するコケや藻を強力に抑制してくれる製品なのですが、使用上の注意点には「植物によっては育成を阻害する」ということが記載されています。
私が初めてグロッソスティグマの育成に挑戦した時、何も知らずにコケ抑制剤を導入してしまいました。
その結果、グロッソスティグマは全く成長せずに、水槽内で溶けて行ってしまいました。
コケ抑制剤によってグロッソスティグマの養分吸収が阻害され、全く成長できなかったものと考えられます。
そのため、グロッソスティグマを育成される場合には、コケ抑制剤の使用は控えておいた方が無難だと思います。
④ グロッソスティグマのコケ取り生体はミナミヌマエビが最適
4つ目の注意点は「コケ取り生体」に関することです。
有名なコケ取り生体としては、ヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビ、オトシンクルス等がいますが、グロッソスティグマの育成に最もお勧めなコケ取り生体はミナミヌマエビです。
ヤマトヌマエビはコケ取り能力は非常に強いのですが、体が大きく力が強いため、植栽したばかりのグロッソスティグマを引っこ抜いてしまうことがあります。
そのため、ヤマトヌマエビを入れるのは、グロッソスティグマがある程度成長してからの方が良いです。
また、オトシンクルスに関しては、グロッソスティグマの葉が小さいため、グロッソスティグマの葉に発生したコケを積極的に取ろうとしてくれません。(私の経験上です。個体差もあるかもしれません。)
それに対して、ミナミヌマエビは体が小さく力が弱いため、グロッソスティグマを引っこ抜くような事はしません。また、体が小さいことでグロッソスティグマの隙間に入り込んでコケを取ってくれます。
上の写真でもお分かりいただけるかと思いますが、今回のグロッソスティグマの育成では、ミナミヌマエビ達のお陰で、グロッソスティグマにコケや藻が発生することはありませんでした。
この記事の終わりに
この記事では、水草水槽におけるグロッソスティグマの育成例として、筆者が育てたグロッソスティグマの成長の様子を写真とともに紹介をさせていただきました。
今回の育成環境では、グロッソスティグマは植栽から概ね1カ月程度でソイルの表面を覆うくらいの緑の絨毯を形成してくれました。
グロッソスティグマの成長は、水槽用ライトや肥料の量にも強く依存しますが、育成の一例として御参考になれば幸いです。
グロッソスティグマは、育成が難しいというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、ポイントをきちんと知っておけば、それほど難しい水草では無いと思います。
個人的には強度の強いライトを使うことと、コケ取り生体の力をしっかりと活用することが、グロッソスティグマの育成で最も重要なのでは無いかと思います。
グロッソスティグマは、水草水槽の前景草としては非常に優秀な品種になりますので、水草水槽を立ち上げる際の一つの候補に考えてみて下さいね。
それでは!