水槽内における魚の死因のまとめ

アクアリストが通らなければならない最大の試練 (悲しい事) は、飼育している魚の死です。

・自分のアクアリウム技術が未熟さが原因で死んでしまったのか?

・何が足りなかったのか?

色々と考えさせられる瞬間です。

熱帯魚の死因には様々なものがありますし、複合的に起こっている場合には確固たる死因の特定は困難です。

しかし、同じミスを繰り返さないためには、その魚の死をきっかけに各知識を学び、次に活かさねばなりません。

ここでは、飼育環境下の熱帯魚に起こりやすい熱帯魚の死因をいくつか紹介します。


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魚の死因は基本的に目に見えない

魚の死因は、はっきりと目に見えるものもあれば、全く目に見えないものもあります。どちらかというと目に見えない死因の方が数は多いです。

目に見える原因としては、白点病や外傷がありますが、水槽内で酸欠が起きても水の色が変わるわけではありませんし、ウイルスが水槽内にいえても目に見えることはありません。

この目に見えない死因が多いことが、確度の高い死因を特定することの難易度を上げている原因でもあります。そのため、普段の管理をきちんと行い、少しの変化を敏感に感じる感性を身に付けておくことが重要になると感じます。

普段の観察が死因を知る近道

毎日、魚を観察していると、具合の悪い・調子の悪い魚というのはすぐに見分けが付くようになります。

普段は他の魚と群泳しているものが、突然一匹だけで単独行動をしていたり、まっすぐ泳げずに少し傾いて泳いでいたりする魚も出たりします。

また、魚体の表面の色が急に変わったり、痩せ細っていたりすることもあります。

毎日観察していると、必ず小さな違いや異変に気付くはずです。その変化を記憶・記録しておくことで、死因を特定し、次に同じことが起こらないように、対策を練ることができます。

調子の悪い魚がいる時、対応ができる場合とできない場合があります。

熱帯魚の病気として有名な白点病は、早期に発見し隔離することで他の魚への伝染を防ぐことができますが、見た目に現れないウイルス性の病気の場合、手立てがありません。

街の動物病院で魚に注射をしてくれたり治療をしてくれるところはありませんし、自ら購入した薬品を誤って使ってしまうというリスクもあります。

そのため、魚が調子を崩してしまった場合には、最悪のケースの覚悟もしなければなりません。そのため、魚の病気は「治療」ではなく「予防」が大切になるのです。


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水質に関わる死因

飼育水の酸性化

飼育水は基本的に弱酸性でpHが6.5前後で安定していることが多いです。

これは、フィルター内でバクテリアによって分解されたアンモニアや亜硝酸が硝酸に変化させられるためです。

硝酸は高校の化学の時間でも習うように、「酸」の一種になります。基本的に、水替えを実施しなかった場合には、水槽の飼育水の中に硝酸は蓄積していきます。

この硝酸は、濾過の過程における最終生成物であるため、除去するには水替えしかありません。一部の硝酸は、水槽内の水草に吸収されますが、発生する量の方が多いため、時間が経つとともに水槽内に蓄積する方向になります。そのため、定期的な換水が必要です。

pHが6くらいまでなら、熱帯魚は生命を維持することができますが、pHが5に近くなると酸性による弊害が生まれてきます。酸性化が進むと、魚の表皮が溶かされてしまうため、魚の表面が白濁してきます。また、呼吸器官であるエラも溶かしてしまうので、呼吸が困難になり死に至るのです。

ただし、飼育水の換水を怠らなければ、発生することは無い症状になります。

飼育水のアルカリ性化は起こらないはず

基本的に、飼育水がアルカリ性の方向へどんどん進んでいくことはありません。上の飼育水の酸性化の所で記載したように、水槽の中はフィルターを回していると必ず酸性化が進みます。

最もアルカリ性が高い時というのは、換水を行った時で、水道水に含まれる二酸化炭素やカルキの成分が残っている時になります。

カルキについては、カルキ抜きを使うことで除去されます。水を入れ替えた時点でのpHは7~8程度ですので、これ以上になることは基本的にありません。

起こることはありませんが、アルカリ性の水の中で魚を飼育した場合に魚に現れる症状もあります。アルカリ性の水溶液は、酸性の水溶液と異なり、少しとろみを帯びています。そのため、そこに魚が入ると体表の粘膜が溶かされ、粘性の高い膜が体にまとわりつくような症状になります。また、体表に黒い斑点が現れることもあります。

細菌・ウイルス・虫に関わる原因

細菌性・ウイルス性・虫による病気は、目に見えるものと目に見えないものがありまる。目に見えるものは対処ができる場合がありますが、体内に入り込むウイルスなどは対応が非常に難しいです。この観点で、予防・事前の対策が重要な課題になります。

アクアリウムの大敵「白点病」

アクアリウムで最も有名な病気に白点病がありますが、これは白点虫 (ウオノカイセンチュウ) と呼ばれる虫が体表から入り込むことで生じる病気になり、身体に白い斑点が無数に現れます。

この白い斑点の中に白点虫が生息しており、一定期間を経て体表から離脱し、その離脱したものからさらに大量の白点虫が生まれてくるため、水槽内であっという間に他の魚にも蔓延していきます。そのため、白点病を見つけた時にはその魚を別の水槽に隔離する等の対応が求められる場合があります。

私自身も何度も白点病に悩まされましたが、薬を使って直したことはありません。白点虫は高い水温 (概ね26℃以上) で活動を休止する特性があるため、水温を27度程度に保っておき、身体から剥がれた所を換水して白点虫を除去しています。白点病の薬もありますが、なるべく水槽内に薬は入れたくないですし、他の魚への影響も気になります。

ウイルス性「穴あき病」

「穴あき病」は、魚の体に穴が開いてしまうような病気です。何かの原因で魚の体表に傷が付いたとき、その傷から細菌が入り込み、傷口がどんどん広がっていくように進行していきます。鱗が剥がれ落ち、内側の身が見えてしまうため、非常に見た目が悪くなります。薬浴などで細菌を死滅させながら自然治癒で直してく方法が一般的です。

ウイルス性「尾ぐされ病 (エラぐされ病)」

次に、コイや金魚を飼育している方が注意すべき病気があります。フレキシバクター・カラムナリスというウイルスの感染によって引き起こされる「エラぐされ病」です。これは、ヒーターが設置されていないコイや金魚の屋外水槽で現れやすい病気で、エラだけでなくヒレにも影響があるため「尾ぐされ病」とも呼ばれます。体表の粘膜が剥がれ落ち、それによって保護機能が低下してヒレやエラが腐ってしまう怖い病気です。これも薬による治療が一般的ですし、「尾ぐされ病」の治療薬として入手しやすいです。

致死率の高い「ネオン病」

また、ネオンテトラ等のカラシン科の小型魚に甚大な影響を与える「ネオン病」という病気が有名です。これはフレキシバクター・カリムナリスと呼ばれる細菌が体内に入ること、付着することで引き起こされる病気です。この病気は致死率が高く、非常に危ない細菌性の病気です。また、他の魚への感染力も高いため、水槽内で1匹が感染すると群泳するネオンテトラ全体に蔓延してしまうという恐ろしい病気です。特効薬も無いため、治療がほぼできないと思ってください。そのため、隔離しておくことくらいしかしてあげられません。症状は泳ぎ方がおかしくなったり、1匹だけ群れから離れて水面に浮いていたり、体表が白く濁ってきたりと、様々な症状がでてきます。ですので、何かおかしかったら、すぐに隔離するという努力をしてください。

ウイルス性病気は持ち込まないことが大事!

ウイルス性の病気は外部から持ち込まれることが多いです。

例えば、近くの川や池から採取した水草を処理をせずに水槽に入れたり、購入した魚をアクアリウムショップの飼育水とともに自分の水槽に入れてしまったりすることです。

また、購入した魚が病気を持っているという可能性も否めません。完全に防ぐことはできないかもしれませんが、持ち込まない努力はできると思います。

傷・衝撃による死因

水槽内で熱帯魚が怪我をすることがあります。

他の魚との喧嘩だったり、何か物音にびっくりしてレイアウトの石にぶつかったり、様々な原因が考えられます。

人間が怪我をした時は、すぐに傷口を洗浄・消毒できますが、魚にしてあげることはできません。そのため、傷口から細菌が入り込み、命に関わる症状になってしまうことがあります。魚にとっての傷は、弱い部分を露出する致命傷になり得るのです。

また、水槽の前を人が通り過ぎたりするときに、熱帯魚がびっくりして俊敏に逃げることがあります。その時、水槽のガラス面やレイアウト素材に衝突してしまうことがあります。魚の骨は人間の様に強いものではありませんので、その衝撃で死に至ることがあります。これは、人間で言うと交通事故に匹敵する衝撃になります。頭蓋骨が損傷してしまえば、脳に影響がありますし、身体を支える背骨が折れてしまっては生命維持ができません。


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pHショックによるもの

pHショックは基本的に、新しい魚を水槽内に入れた時に発現する症状になります。

例えば、アクアリウムショップでpH=7.0で管理されていた魚が、自宅の水槽のpH=6.5の水槽に入れられたとき、そのpHは0.5も違うことになります。

魚にとっては生身の体を預ける水になるので、少しのpHの違いが死に至る原因になってしまうことがあります。突然の環境変化によって魚が弱って死に至るものです。これを防ぐために、時間をかけて水合わせの作業をしてあげることが必要です。

水温に関わる死因

熱帯魚の最適な水温は概ね25℃前後になりますが、この水温から逸脱した環境で飼育すると、その行為が魚を死に至らしめることになります。

日本の河川や池に古来から棲む魚は、日本の四季に対応しているため、冬の低水温にも耐えられます。

しかし、熱帯地方が原産の熱帯魚は10℃以下の水温に耐えられません。

また、夏場の高水温も死因になります。日本の真夏はエアコンを使わない場合、室内の温度を40℃かそれ以上に上昇させます。

水槽用のクーラーを導入していない場合、飼育水の水温もそれに近づいていくため、魚にとっては沸騰した水の中に入れられるようなものです。

冬はヒーター、夏はクーラーを使用して、年間を通じて水温を変化させない努力をしましょう。

設備異常によるもの

アクアリウムは電気エネルギーで稼働する設備の上に成り立っています。

そのため、電気設備の故障による漏電で魚が死に至ることも稀にあります。

例えば、水槽の中に沈められているヒーターがありますが、サーモスタット内蔵のヒーターが壊れて常にヒーターがONしている状態ではどうでしょうか?水温がどんどんが上がっていきます。

また、老朽化した配線が断線した場合、そこから漏電することもあります。設備のメンテナンスは定期的に行い、外観異常が無いか?配線は傷が無いか?等、目視による検査を必ず行うようにしておきましょう。

栄養失調

熱帯魚の個体差があるところですが、用意した人工飼料を全く食べない魚も存在します。

例えば、同じ種類の熱帯魚でも、飼料を食べる魚と全く食べない魚がいます。

そのため、餌を食べない魚は栄養失調になり、どんどんやせ細っていきます。

多くの魚を混泳させている場合、痩せ細る魚に気付かない場合もありますので、全ての魚を毎日見ておくようにしてあげて下さい。また、餌も複数種類用意しておくと安心です。

魚同士の小競り合いによるストレス

熱帯魚同士の喧嘩や小競り合いは、水槽内では日常茶飯事です。

その喧嘩が原因で餌を食べることができなかったり、水槽の隅に追いやられてしまう魚が出てきます。

こうなるとストレスによって拒食症になり、いずれ体力が落ちて死に至ることがあります。熱帯魚の小競り合いは、防ぐことが難しいのですが、起こらないような環境作りをしてあげることはできます。下の関連記事も御参考にしていただけましたら幸いです。

寿命の可能性

この記事で見てきたように、水槽内の魚の死因は様々なものがり、特定することが難しい場合がります。

「寿命」も死因の一つであることは忘れずにおいてください。

人間の寿命も人それぞれで、70歳で寿命を迎える方もいれば100歳以上のご長寿もおられます。熱帯魚も同じで、寿命は1~2年と記載があると思いますが、それだけ幅があるということなのです。年を取れば、それだけ病気に対する耐性が落ちますので、寿命が原因の病気ということもあります。

病気によって熱帯魚がお星さまにならないように努めるのが私たちの責任ですが、出来る範囲も限られています。どこかで線を引いて死因を考えることも、飼育者の自分自身にストレスを与えないという意味で大事なことなのかもしれません。

記事の最後に

この記事では、水槽で飼育している熱帯魚がお星様になってしまう原因について、私がこれまでのアクアリウム生活で学んだ事を詳細に記載させていただきました。

熱帯魚の死因というのは、本当に正確な原因を知ることが難しいです。

良かれと思ってやったことが悪い方向に働くこともありますし、予想もしていなかったことが死因になる場合もあります。

最も大事な事は、最悪の事態になる前にそれを予防することができるアクアリウムの技術だと思いますが、それと同じくらい重要なことは「繰り返さないための知識の蓄積」だと思います。

飼育していた熱帯魚とのお別れに直面した時、何も考え無いのではなく、理由を考えて次につなげることが私たちアクアリストの責任の一つかと思わされます。