飼育している熱帯魚に餌を与えるとき、熱帯魚たちが自分の元へ寄ってきて餌をおねだりする姿を見ると、とても可愛くてついつい餌をたくさん与えてしまうこともあります。
熱帯魚の餌って、どのくらい与えたら良いのでしょうか?
よく見るのは「5分間で全て食べ終える量」という表現ですが、これって餌の量に対しては全く定量性が無くて信憑性に欠ける情報だと思っています。
私自身、熱帯魚への餌の与え過ぎは、実は熱帯魚の命に関わることだという経験をしました。
この記事では、熱帯魚への餌の与え過ぎが熱帯魚の体に起こす弊害について考えてみたいと思います。
熱帯魚には満腹中枢が無い!?
私達人間は、ご飯を食べるとお腹が一杯になり、これ以上食べられないという感覚になります。
これは満腹中枢と呼ばれる体の機能が働き、それ以上食べないように体が制御をかける機能になります。この機能があるので、人間は食べすぎを防ぐことができます。
中には満腹中枢が働いているのに食べすぎて後悔する人もいますし、フードファイターの様にいくらでも食べられる方もいますが…そのような方々を除けば、一般的には食べる量は制限できるものです。
では、魚はどうでしょうか?
与えれば与えただけ食べ続けませんか?
餌をしっかり与えても、30分後には同じ量を食べる魚もいます。
実は魚には満腹中枢にあたる機能が無い、または満腹中枢の機能が非常に小さいと言われており、与えられたら与えるだけ餌を食べ続けるという状況になります。
考えただけでも、肥満になりそうな体ですよね!?
餌の量と体の大きさの関係を考える
皆さんはどのくらいの量を食べるとお腹が一杯になったと感じますか?
女性であればおにぎりが2個くらい、男性であれば4個くらいは食べられるでしょうか?
ここでは考えやすいので、おにぎりの大きさで考えてみます。
人間の体の大きさや体重に対しておにぎりの大きさって、そこまで大きくは無いですよね?
例えば、体重が70kgの男性からすると、おにぎり一個の大きさ100gは1/700の重さになります。そのおにぎりを3つか4つ食べると満腹になるとすると、体重に対して3/700から4/700の重さを食べて満腹になることになります。
それに対して、例えば、小型のネオンテトラの様な魚が食べる量を例にするといかがでしょうか?
体の大きさに対して少し大きいような餌も10個単位で食べていきませんか?
つまり、人間で言うとおにぎり10個分くらいの量になります。
それ以上に食べる場合も多く、朝と晩の2回で大量に食べるとなると…想像しただけでも餌の過剰摂取になるかと思います。
人口飼料はカロリーが高い
次に考えるべきは食べている餌の種類です。
熱帯魚が自然の中で食べている餌って何でしょうか?
水底の砂の中に棲む水ミミズの様な生物や水面に落ちてくるボウフラの様な虫、またはコケなどの植物がほとんどだと思います。
しかも、毎日の様に豊富に餌が食べれるわけではなく、季節によっては数日間十分な食べ物が食べられないような状況もあると思います。
それに対して、人口飼料を考えてみると、バランスよく栄養素が含まれているとはいえ、熱帯魚が自然の中で食べる餌に比べると確実に高カロリーな食べ物になります。
しかも、その人口飼料が大量に与えられるとなると、人間でいうところの「肥満」という状態になることは間違いないと思います。
食べ過ぎは消化不良による合併症を起こす
食べすぎは消化不良を起こす
人間もそうですが、食べすぎた時って、身体に不調が起こりませんか?
例えば、焼き肉の食べ放題に行って、立ち上がるのも苦しくなるくらいに食べると、その後に直ぐにトイレに行きたくなったり、次の日に腹痛を起こしたりしますよね。
胃に負担がかかったり、消化不良によって腸の状態が悪くなったり…色々な弊害が体調に現れてくるかと思います。
人間の場合には、体調が悪ければ薬を飲めば回復に向かいますが、熱帯魚の場合には薬を飲ませる訳にもいきません。
そのため、熱帯魚にとっては「消化不良」程度の小さな体の変化も、重たい病気を併発する原因になり得るのです。
毎日の様に満腹以上の餌を食べて消化不良ばかりを起こしていると、併発した様々な病気で命の危機を起こす可能性が高まります。
以下では、私の飼育環境下で起こった食べすぎ・消化不良による病気を紹介しておきたいと思います。
腹水病のネオンテトラ
ネオンテトラは、小さな体に似合わず、餌の時間には結構な量を食べる魚になります。与えれば与えるだけ食べ続けるので、餌の与えすぎに注意が必要な魚です。
私が飼育していたネオンテトラの中に、かなり餌を大量に食べてとても大きく育ったネオンテトラがいました。体長は5cmくらいあり、水槽の中のネオンテトラの中でもボス的な存在の魚でした。
しかし、この魚がある日からお腹が大きく膨れ上がり、お腹が割れて内臓が飛び出してしまう状態になってしまいました。その時の症状が分かるように下に写真を載せておきます。
お腹が大きく膨れる「腹水病」です。
腹水病は消化不良によって併発することもある病気なのですが、このネオンテトラはまさに食べすぎと消化不良による腹水病になってしまったのだと思います。
同じ巣層で飼育しているネオンテトラで、同じような症状になったものはいなかったので、食べすぎていたこの魚だけが発症したことになります。
下の記事でも紹介していますが、こうなると手の施しようが無く、お星さまになってしまった魚でした。
穴あき病のブラックモーリー
食べすぎによる病気は腹水病以外にもあります。
ブラックモーリーが食べすぎによる消化不良を起こしたと考えていますが、「穴あき病」という病気を併発しました。
穴あき病はウイルス性の病気になるのですが、食べすぎによる消化不良が起きた際に、熱帯魚の体の中でウイルスが増殖して発症する病気になります。
ここで紹介するブラックモーリーは、ネオンテトラ以上に食いしん坊で、常に何かを食べていないと気がすまないくらいに食べ続けていました。油膜もコケも、食べられ物は常に食べて、餌の時間には他の魚の餌を奪って食べるくらいの性格でした。
そのブラックモーリーのお腹が突然膨れ上がり、体側に穴が開き始めるという症状に見舞われました。
最初は何が起きているのかわからなかったのですが、下の写真に示すように、身体に穴の開く「穴あき病」に罹患していることが判明しました。
このブラックモーリーも帰らぬ魚となってしまったのですが、消化不良によって穴あき病が併発されたことが原因でした。下の記事で、その時のことを細かく紹介しています。
餌の量の最適化について
私個人の意見から述べると、「5分で食べ終わる量」は確実に与え過ぎです。
1分で食べきれる量で問題ないと思っています。
餌を水槽に投入した時に、水槽の底に落ちる前に魚が食べきれるような量を与え、どの魚もある程度は食べ終えたな…と思えるような量が最適かと思います。
水槽の底に大量の餌が落ちて溜まってしまうような餌の与え方は、良くない例だと思います。コリドラスなどの底層の魚がいれば別ですが…。
水槽内に一季に餌を投入するのではなく、ゆっくりと少量ずつ落としてあげて、全ての魚が食べすぎにならない量を与えるような方法が最適だと思います。
また、餌の与え過ぎは水質の悪化や水面の油膜の形成にも悪影響を与えるので、魚の健康面だけではなく飼育環境の改善の意味でも餌の与え方は注意すべきだと思います。
この記事のおわりに
この記事では、熱帯魚への餌の与え過ぎが、熱帯魚の健康面に及ぼす悪影響について記載させていただきました。
小型の熱帯魚が食べる餌の量を人間に置き換えると、相当な量を食べていることになるので、一般的な餌の量は熱帯魚にとっては「高カロリー」の状態になっている可能性が高いです。
熱帯魚の体の大きさ、食べ終わる量、餌を与えるのに要する時間も踏まえて、食べすぎないように餌の調整が必要ですね。
餌の与え過ぎにするのではなく、ちょっと少なすぎかな?と思えるくらいが丁度よい量なのかと考えます。
お腹がパンパンに膨らんだ熱帯魚が水槽の中にいる方は、餌の与え方を考え直す良い機会になるのかと思います。