熱帯魚を水槽で飼育している方は誰でも経験があるのではないでしょうか?水槽内での熱帯魚同士の小競り合い (喧嘩) 。
見ている方としては、本当に止めてほしくなるくらい激しい時もありますよね…。心配になりますし…。
熱帯魚同士の喧嘩って、どうにかならないものなのでしょうか?
この記事では、熱帯魚の同士の喧嘩について、その原因や防ぐ方法考えてみたいと思います。
なぜ小競り合い (喧嘩) が起こる?
縄張り争いによるもの
縄張り争いは魚に限らず、動物の世界でも起こることはご存じかと思います。
アフリカの肉食獣をはじめとし、密林の中の動物も縄張りを主張し合います。
魚の場合には巣の近辺を縄張りとして主張し、同じ種の魚が入ってこないように攻撃的になります。
水槽という狭い空間での飼育になるので、縄張りという概念はないように思えますが、実際には縄張り争いが起こってしまいます。
特に魚の場合には、同じ種族の魚同士で縄張り争いが起こります。これは雌を奪い合ったり、相手を招き入れる縄張りを意識したものです。
しかし、魚種が違うと敵対心が少し無くなり、縄張り争いによる小競り合いが起こりにくいです。例えば、エンゼルフィッシュの縄張りにコリドラスが入っていっても、エンゼルフィッシュはコリドラスに攻撃を仕掛けようとしません。
下のリンクでは、コンゴテトラがネオンドワーフレインボーに攻撃をしていたトラブルを解消した実例を紹介しています。
繁殖による雄同士の喧嘩
繁殖活動は動物の世界では争いになります。複数のオスが1匹のメスを奪い合うことがよく起こります。
私は以前プラティを飼育していました。プラティは可愛いので、喧嘩のことなどまったく気にしていませんでした。適当にオス2匹とメス3匹を同じ水槽で飼育していたのですが、ある時から1匹のオスがメスの周りに常に付きまとい、もう一匹のオスを追い払い始めたのです。
1匹のオスは居場所が無く、水槽の隅の方で隅っこ暮らしになってしまいました。
「強きものが子孫を残す」という場面を水槽の中で目の当たりにした瞬間でしたね。
餌場の確保によるもの
餌場の確保は魚種を超えて起こる争いです。
水槽の中の魚は、1日に朝と晩の二回の餌の時間しか餌を食べる事ができないので、餌の時間は争いの時間になります。
水槽の中にはエアレーションによって餌が集まりやすいスポットもできるため、その餌が集まりやすい場所が奪い合いになるのです。
例えば、私の水槽ではラミレジィとプラティの間でも喧嘩が起こったことがあります。しかし、その餌場にコリドラスが入ってきても、ラミレジィとプラティはコリドラスのことをまったく気にしていませんでした。
ラミレジィとプラティは、普段から少し小競り合いをする場面がありました。それが導火線になって餌場で突き合いの喧嘩が起こったのだと思います。
コリドラスは、普段からラミレジィともプラティとも喧嘩を全くしなかったので、餌場でも共存していたのだと思います。
喧嘩をしやすい魚種
喧嘩や小競り合いを起こしやすい魚種はあります。
特に縄張り意識の強い魚がそれに該当します。
その筆頭がシグリッド系の魚です。
有名なところではエンゼルフィッシュやディスカス、ラミレジィ、アピストグラマなどです。
シグリッドは、生まれながらに闘争本能を持つ魚で、口で噛みついたり突進したり喧嘩が絶えません。そのため、シグリッドを飼育する際には雄雌1匹ずつなど、喧嘩をしにくい環境を整えてあげることが大切です。
喧嘩を誘発してしまう飼育行為
水槽に新しい熱帯魚を入れること
水槽を立ち上げて魚を導入し数か月が経つと、その水槽内でのコミュニティが確立されていきます。
上位に立つ魚と力の弱い魚、まったく気にしない魚、それぞれの生活ぶりが見えてくるかと思います。
そこに新しい魚を入れてしまうと、その瞬間に喧嘩・攻撃が始まります。
新しく水槽に入れた魚には「突然入ってきた侵入者」のレッテルを貼られ、攻撃の対象になってしまうことがあるのです。
特にシグリッド系の魚がいる水槽に、同じくシクリッド系を入れてしまうと、とてつもない喧嘩が起こることがあります。ですので、小競り合いを起こしやすい魚を途中から入れることはやめておきましょう。
以下の記事では、コンゴテトラがネオンドワーフレインボーを攻撃対象にした実例と、それを解決した方法の詳細を紹介しています。
喧嘩しやすい魚種を複数入れてしまうこと
上で書いた通り、喧嘩しやすい同じ種類の魚を数匹入れると、序列が付きます。
そのため、複数匹入れると必ず喧嘩が始まります。なるべく同じ種類の魚を複数飼いたいという希望はあるかもしれませんが、その場合はネオンテトラなどの気象の穏やかな魚にしておきましょう。
もともとエンゼルフィッシュが泳いでいた水槽に、新たにもう1匹のエンゼルフィッシュを入れると悲惨なことになりますよ…入れた瞬間から激しい喧嘩が勃発します。(私がその経験者です…)
争いの末に拒食になることもある
争いが激しくなり、完全に相手に勝てないことがわかると、その弱い魚は餌も食べずに (食べられずに) 弱っていくことがあります。
最悪のケースはそのまま栄養失調でお星様になってしまうことです。
そこまでエスカレートすることはなかなか起こらないかもしれませんが、アクアリウムショップでも1匹だけやせ細った魚が隅の方にいたりすることがあります。
見ていて、とても辛いことなのですが、水槽という狭い社会で魚を飼育する以上、起こってしまうことなのです。
魚の世界では小競り合いは当たり前
我々人間は、高い理性と知性をもつ存在ですが、魚は野生の生物です。
所謂、弱肉強食の世界で生きている生物です。
強きものが勝ち残り、強きものが子孫を残していくという世界なのです。
それは、自然の川の中でも、家の水槽の中でも変わることはありません。魚を複数飼育する環境の中では、弱肉強食の世界が自然と構築されていくのです。
例えば、水槽の中に5匹の同種の魚を入れたとします。すると、すぐに最も力のあるものが最上位に立ちます。そして、その次に強いものが2番目に付き、5番目まで順位が付いていきます。5番目に格付けされた魚はどうでしょう?4匹からいじめられることになります。相当なストレスとなりますよね。そのような状況にしないためにも、事前に魚の性格を把握し、なるべく小競り合いの怒らないような環境で水槽を立ち上げていただく方が良いかと思います。
喧嘩を起こさせない環境づくり
熱帯魚同士の喧嘩は、小さな小競り合いから噛みつき合いの喧嘩まであり、複数飼育する場合には「必ず」何かしら起こります。
これは残念ながら防ぎようがありません。
野生の本能を無視して人間がアクアリウムとして楽しんでいるので、仕方がないことなのです。しかし、喧嘩を見たくない方もいるかと思いますので、いくつか喧嘩を無くす方法を記載しておきます。
単独で飼育する
これが一番確実な方法です。
1匹しかいなかったら喧嘩する相手がいませんので。しかし、単独飼育というのは寂しい所がありますよね。
魚によっては、複数で混泳することで安心する魚もいます。小型魚は特にその傾向が強いです。ネオンテトラや小型のラスボラなどは複数がまとまって泳ぐことで安心して暮らしています。
そのような小型の魚を単独飼育してしまうと、餌を食べてくれなかったり、物陰に隠れてしまって出て来なくなってしまうこともあります。
雄と雌で1匹ずつ飼育する
繁殖によるいざこざを防ぐために、オスとメスを1匹ずつ飼育する方法です。
雌の奪い合いが起こらないように、1匹ずつ飼育します。これは、アピストグラマなどのシグリッドの繁殖にも用いられる方法ですね。
生まれてくる卵が他の魚の食害に合わないので、繁殖にも用いられる方法です。
同じ種類の魚は1匹ずつ入れる
面白い事実ですが、違う種類の魚同士では意外と喧嘩が起こりにくいのです。
例えばエンゼルフィッシュ2匹は喧嘩しますが、エンゼルフィッシュ1匹とモーリー1匹では喧嘩や小競り合いは起こりにくいです。
これは競り合う相手が同種のさなかであるという競争意識が生まれないためであると考えられます。
ただ、上で記載したように小型の魚は寂しがる傾向があるので、1匹飼いは避けておいた方が無難かと思います。
混泳させる魚の相性を考える
相性の良い相手というのは存在します。アクアリウムショップでも混泳の可否などを紹介してくれます。しかし「絶対大丈夫」という保証はどこにもありません。たまたま喧嘩しなかっただけで、別の水槽・別の個体では喧嘩が始まるかもしれないのです。ですので、混泳相手という情報は、あくまでも参考程度にしておくのが良いかと思います。
物理的に分離する
水槽の数が増やせない方にはおススメの方法です。
水槽内の仕切り版も売られておりますので導入しやすいかと思います。仕切り版は、きちんと固定しておかないと外れてしまったり、少し力の強い魚には崩されてしまうこともあります。意外と魚は力が強く、少しのすき間でも侵入してくるので注意が必要です。
記事の最後に
この記事では、水槽内で起こる熱帯魚の喧嘩・小競り合いについて、その原因と解決策を紹介させていただきました。
水槽という狭いコミュニティの中で、種類の違う魚と泳ぐことになるので、熱帯魚自身も相当なストレスを受けていることは間違いありません。
小競り合いがエスカレートして、お互いを傷つけあうようになると、飼育者としては水槽を見てられない状況になります。そうなる前に、出来る限りの対応をしてあげたいものです。
アクアショップのスタッフさんだけではなく、経験ある方にも聞いて、相性を考えたうえで混泳相手を探してあげたいですね。
ただ、忘れて欲しくないことは「絶対に小競り合いが起こらない水槽」というのは、「単独飼育の水槽」以外はあり得ない話であるということです。