小さな水槽の方が飼育環境の管理が難しい理由と対策

アクアリウム用の水槽は、小さなものではベタ用の10cm角くらいのものもあれば、90cmを超えるような大きな水槽まで多くの種類があります。

それぞれ、飼育者のお家の事情や飼育できる環境に合わせて水槽のサイズを選ぶべきではあるのですが、実は小さい水槽の方が飼育環境の管理が難しいことになるのは御存じでしょうか?

小さな水槽であれば手ごろに家に置けるというイメージがあるのですが、飼育する魚の種類や数などにも依存しますが、管理する面では難しいことが多いのです。

この記事では、その理由や小さな水槽を導入する際に考えておくべき点を御紹介していきたいと思います。


Advertisement

この記事で対象にする小さな水槽とは?

小さな水槽にも様々な種類がありますが、この記事では25cm以下の水槽ということでお話を進めたいと思います。

30cm水槽になると、正方形の水槽も販売されており、それなりに水量も多くなるのである程度水質の管理は楽になります。

25cm以下となると、水槽の中の水量が10L以下になるので、水質の変化が起こりやすく、大きな水槽に比べて管理維持のために気を遣う必要が出てきます。

水の量が少ないことで起こる水質変化

小さな水槽の管理に気を遣う理由の根源は、水槽内の水量が少ないことによるものです。

以下で、水量が少ないことによる飼育の難しさに付いて、その理由を御紹介していきたいと思います。

魚の数によっては生物濾過が間に合わない

アクアリウムの水槽が、数日間水の入れ替えを行わなくても済むのは、全てはフィルターによる生物濾過があるためです。

生物濾過の詳細にはついては、以下の別の記事で紹介していますので、もしお時間あれば、そちらの記事でご確認下さい。

その生物濾過ですが、簡単に説明すると、フィルターの中に住み着いているバクテリアによって、魚の排泄物や餌の食べ残しが、アンモニア→亜硝酸→硝酸と言う過程で分解されていきます。

しかし、この生物濾過の速度以上に魚が糞をしてしまうと、水槽内のアンモニア濃度が高くなってしまうため、魚にとっては住みにくい状態になります。

アンモニア自体は実は魚にとっては「毒」にあたるため、濃度が上がれば水槽内の環境変化で魚の命が危ない状態になります。

小型の水槽ですと、導入できるフィルターにも制限がかかるため、大容量のフィルターを設置することはできず、小型の壁掛けフィルターを使う場合が多いかと思います。壁掛けフィルターの生物濾過能力はそこまで高くないので、熱帯魚の数が多いと生物濾過の不足が起こり得ます。

硝酸濃度が上がりやすい

上で紹介した生物濾過ですが、このバクテリアによる生物濾過の最終生成物は「硝酸」になります。

硝酸を分解してくれるバクテリアはいないため、水槽の中では、魚が糞をすれば硝酸の生成が続きます。そして、硝酸の濃度もどんどん上がってしまいます。

硝酸は高校の化学でも学ぶ酸性の薬品ですが、硝酸は濃度が上がると水を酸性化させます。化学の実験で使う硝酸はpHが2以下になるような強酸ですので、硝酸濃度が上がりすぎることが魚の生命に影響することは想像しやすいと思います。

実際にはpHが2まで下がることは無いと思いますが、pHが6を下回るようになると、魚の体にも弊害が出始めます。

生体数が多かったり、しばらく水替えをしないことが続くと、水量が少ない小さな水槽では、硝酸の濃度が上がりやすい傾向にあります。

水温の変化が起こりやすい

熱帯魚の飼育環境として、絶対に無視できないのが水温です。

熱帯魚を飼育する場合には、冬場にはヒーターが必須となりますし、夏場にはクーラーも必要になります。

水温の変化と言う意味で、水量が少ない場合と多い場合で、どちらの方が水温が上がりやすいでしょうか?

想像が付くと思いますが、水くない水量の方が水温の変化は激しくなります。

私も過去に6月の水温変化を測定したことがあるので、そちらを御参考にしていただければと思います。

こちらの記事で紹介の通り、水槽のサイズが小さい方が水温変化が速いので、大きな水槽よりも小さな水槽の方が水温の観点でも注意が必要であることがわかります。

また、特に冬の水温の管理は非常に難しいです。水槽用のヒーターを使用するのですが、小さな水槽の少ない水量を精度よく維持してくれるヒーターはあまりありません。

大きな水槽であれば、ヒーターを使っても急激な水温の変化はほぼありませんが、10L以下の水量でヒーターであっという間に水温が上がるので、突然30℃近くの水温になってしまうこともあります。

特に小さな水槽では、冬の水温の管理は本当に難しいです。


Advertisement

小さな水槽は魚が飛び出しやすい

小さな水槽を導入される方にとって盲点になりやすいことだと思いますが、実は小さな水槽は魚が飛び出しやすいです。

水槽サイズが小さいので、水槽の底と水面の距離が小さく、魚が泳げる距離が短くなります。一般的には、小さな水槽では水深が30cmもなく、概ね20cm程度しか得られないので、魚が泳げる範囲が狭まります。

その限られた環境の中で、熱帯魚が何かに驚いて水槽の中を俊敏に泳いだとき、勢い余って魚が飛び出すことが多々あります。

特に、小型のカラシン科のネオンテトラ系などは俊敏に泳ぐことが出来る魚であり、気が弱い所があるので飛び出しやすいです。実際に私が25cm水槽で飼育して、水槽から頻繁に飛び出してしまったのは小型カラシン科の熱帯魚でした。

ラミノーズテトラやヤマトヌマエビも飼育したことがありますが、飛び出しましたね…。

上蓋があっても、フィルターを設置する以上は密閉が出来ないので、熱帯魚の飛び出しを完全に防ぐことは困難です。

60cm水槽と比較しても、小型水槽の方が格段に魚の飛び出しが多いです。

飼育できる生体数や魚の種類が限られる

小さな水槽は初めて熱帯魚を飼育する方や、ちょっとインテリアに水槽を導入したいという方が購入されることが多いかと思います。

しかし、熱帯魚を飼育し始めると、他の熱帯魚も飼育したいという気持ちが高くなり、熱帯魚の数を増やしてしまう傾向が強いです。(私もそうでした…)

小型の水槽は、上で記載した通り、飼育水の生物濾過が間に合わない場合もあります。

小型水槽を導入する際には、何を飼育したいのか?何匹飼育するのか?ということをきちんと決めてから使用することを心掛けるべきかと思います。


Advertisement

比較的安定して飼育環境を維持できるのは45cm水槽か60cm水槽

上記の通り、小型水槽には小型水槽の維持管理の難しさがあります。

小さな水槽だからと言って、安易に導入してしまうと、もしかしたら失敗をしてしまう可能性も秘めていることは、必ず頭の片隅に留めておくべき事かと思います。

もし、水替えの頻度がそこまで高くできない方や、フィルターによる生物濾過を確実にしたいのであれば、少しサイズが大きくなってしまいますが、45cm水槽や60cm水槽を使用する方が安心です。

熱帯魚を追加で飼育したいという気分になっても、60cm水槽があれば、ある程度の数を飼育しても維持管理が崩壊することは無いと思います。

小さな水槽を維持する時の注意点

少し小さな水槽について心配な事ばかりを記載してしまいましたが、日々の管理とメンテナンスを行うことが出来れば、小さな水槽でも熱帯魚を安心して飼育する事ができます。

特に注意すべき点は以下の①~③の内容になりますので、最低限これらの項目は確実にクリアできるようにすれば、小さな水槽でも問題なく飼育環境の維持は可能です。

① 換水頻度は3日か4日に一度で1/3を交換

② 夏は水温上昇を防ぐためファンを活用、冬は性能の良いヒーターを使用

③ 魚の数を制限し餌を与え過ぎないこと

勿論、これらの項目だけを管理していれば良いわけではありませんが、少なくとも①~③までを実施することで、小さな水槽でも魚に取って住みやすい環境を提供できるかと思います。

この記事の終わりに

この記事では、小型水槽での飼育環境の管理の難しさについて、御紹介させていただきました。

小型水槽は、そのコンパクトなサイズで様々な場所に導入することが出来るのですが、水量が少ないことによる飼育環境維持の難しさがあります。

換水頻度は中型水槽よりも高くすべきですし、夏や冬の水温管理にも気を遣う必要があります。

小型水槽を導入される際には、どのような魚を飼育するのか?何匹飼育するのか?水槽維持管理のためのこまめなメンテナンスが可能か?という点を確認したうえで導入すると安心です。