エンゼルフィッシュと聞くと、上下に長く伸びたヒレに綺麗な模様で、水槽をゆったり泳ぐとても優雅な印象があるかと思います。
エンゼルフィッシュが「熱帯魚の女王」と呼ばれるのにも納得できる美しさがあります。
アクアリウムショップでも「初心者向け」という広告で販売されている場合が多いですし、国内で繁殖されたエンゼルフィッシュは安価で入手することができます。
しかし、私の飼育経験から言わせていただくと、初心者の方にはエンゼルフィッシュの飼育をお勧めしません。
その理由には、水槽内での喧嘩が絶えないことや水草が被害に遭うこと、そして他の魚との混泳にも気を遣う等の事が挙げられます。
この記事では、その詳細な内容とエンゼルフィッシュを飼育する上で事前に対策しておくべき事柄をお伝えしたいと思います。
エンゼルフィッシュの飼育を検討されている方に有益な情報になりましたら幸いです。
熱帯魚の女王「エンゼルフィッシュ」について
まず最初に、エンゼルフィッシュに詳しくない方のために、簡単ですがエンゼルフィッシュの御紹介をしておきたいと思います。
すでに知っている方は、目次からメイントピックの「エンゼルフィッシュを初心者にお勧めしない理由」にジャンプしてください。
エンゼルフィッシュの出身地はどこ?
エンゼルフィッシュの故郷はアマゾン川を中心として南アメリカの広い流域になります。
科目としては、スズキ目ベラ亜目シクリッド科に属する淡水の熱帯魚になります。
「スズキ目なの?」と疑問があるかもしれませんが、エンゼルフィッシュは日本の近海に住み着くスズキと同じ科目に分類されます。
アマゾン川の天然のエンゼルフィッシュは、実はなかなか国内では見ることができません。アクアリウムショップに流通しているエンゼルフィッシュは、基本的に国内や海外で繁殖された魚になります。
原種となる野生のエンゼルフィッシュは、スカラレ・エンゼル、アルタム・エンゼル、デュメリリィ・エンゼルの3種類と言われていますが、国内で手に入れるには専門のショップに購入を依頼しないと入手が困難です。
人間が交配によって生んだ改良品種にはマーブル・エンゼル、ベールテール・エンゼル、レッドデビル・エンゼルなどがいます。
どれも野生のエンゼルフィッシュよりも模様が美しく、アクアリウムの人気品種となっています。
ただ、ちょっと価格はお高いのですが…。
エンゼルフィッシュの体長や飼育環境について
エンゼルフィッシュの種類にも依りますが、最大で幅が15cm~20cmまで成長する熱帯魚です。背ビレと胸ビレが長く上下に伸びており、まさに天使のように泳ぐ姿から、「エンゼル」という名が付きました。
アクアリウムショップで販売されているのは、生後数か月の小さなエンゼルフィッシュなのですが、成長が早く半年後には倍くらいのサイズになりますので、30cm以下の小さな水槽では飼育ができません。最低でも60cm水槽が無いと、胸ビレが底に擦ってしまい、折角の美しいヒレがボロボロになってしまいます。
また、その長いヒレが原因で、泳ぎは得意な方ではないため、水流の弱い場所や流木や水草で水流が弱められるような場所を好んでいます。水槽の準備をする際も、水流が強くならないように、水流を弱める工夫をが必要です。
私自身も、エンゼルフィッシュを飼育した時は幅60cmの水槽で飼育を行っていました。
エンゼルフィッシュは入手しやすい熱帯魚
エンゼルフィッシュを扱っていない熱帯魚ショップは無いと思います。
シュリンプの専門店などには置いて無いかもしれませんが、ホームセンターに併設の熱帯魚店などでは必ず取り扱っています。
ミックスエンゼルというタグが張られていて、1匹300円~500円くらいで販売されています。ミックスエンゼルというのは、品種が特定されていない、ブリードで繁殖されたエンゼルフィッシュのことです。
しかし、ミックスエンゼルの中にはレッドデビルエンゼルやベールテールに似たものも混ざっており、少し見た目が綺麗なものを入手することもできます。
エンゼルフィッシュを初心者にお勧めしない理由
さて、ここからは本ブログ記事のメインテーマである「エンゼルフィッシュを初心者にお勧めしない理由」を、私の飼育経験から語らせていただきたいと思います。
エンゼルフィッシュは、皆さんが思っている以上に飼育が色々と大変な熱帯魚です … 。
私がアクアリウムを再開した後、すぐにエンゼルフィッシュを飼育し始めたのですが、今思うと良く飼育できたなぁ…と思います。
①エンゼルフィッシュ同士での喧嘩が絶えない!常に喧嘩ばかり!
エンゼルフィッシュはシグリッド科の熱帯魚になりますが、シグリッド科の多くは自分の縄張りを主張するため、喧嘩が絶えません。
水槽という狭い空間のため、エンゼルフィッシュが自分の縄張りを確保するために、他のエンゼルフィッシュを追い回したり、餌場の奪い合いも起こります。
熱帯魚を始めたばかりの方は、その姿を見るととても心配になると思いますし、できれば水槽内での魚同士の喧嘩はやめて欲しいと思ってしまうほどだと思います。
同じ水槽内でエンゼルフィッシュを複数匹飼育していると、力のあるものから順番に順位が決まり、最も弱いものは他のエンゼルフィッシュからいじめられ、餌も十分に食べられないような状態になりました。
人間の世界では弱い者いじめはいけないことであると教育されるのですが、魚の住む自然界では弱肉強食が基本で強いものが残るのです。
エンゼルフィッシュが喧嘩をする姿は独特なもので、後ろから追い回す場合もあるのですが、激しい時には下の絵に示すように、口でお互いを噛み合って力をぶつけ合います。
これは相手があきらめるまで続き、口がボロボロになってしまうまで続くこともあります。私も実際に見たことがあります。エンゼルフィッシュの喧嘩を知らない人が見たら、エンゼルフィッシュ同士がコミュニケーションを取っているように見えるのですが、実際は力と力のぶつかり合いの権力争いなのです。
こんな激しい喧嘩…リビングに置いてある水槽内で見たくないですよね…。
熱帯魚ショップのエンゼルフィッシュ水槽を観察して見てください。多くの場合、いじめるエンゼルフィッシュといじめられているエンゼルフィッシュがいて、力の上下関係が完全に出来上がっています。
②小型魚やシュリンプは食べられちゃいます!混泳は絶対にできない
上でも記載しましたが、エンゼルフィッシュは肉食魚です。
小型のネオンテトラ、アフリカンランプアイ、小型のシュリンプを同じ水槽に混泳させると、それらの小型魚はエンゼルフィッシュの餌になってしまいます。
小型魚が起きている昼間は、エンゼルフィッシュから逃げられるので、エンゼルフィッシュに捕食される可能性は減りますが、夜の寝ている時間帯に捕食されてしまうことが多いです。
実際、私もエンゼルフィッシュの知識が無かった時、アフリカンランプアイを混泳させていました。そして、ある時にアフリカンランプアイが捕食されるのを見てしまいました。
そのため、小型魚やシュリンプはエンゼルフィッシュとの混泳は絶対にできません。エンゼルフィッシュは食いしん坊なので、餌を与えていたとしても小型の魚を襲いに行きます。
③水草レイアウトがあっという間に荒らされる
エンゼルフィッシュは雑食で食欲旺盛です。口に入るものなら何でも食べてしまいます。
お腹が空くと、水草も口に入れ始めます。
私は水槽内に植えていたグロッソスティグマを食べ散らかされました。水槽内に頑張って植えてたのに、植えた当日にあっという間に食べ散らかされた経験があります。
エンゼルフィッシュ等のシグリッド科の魚がいる水槽では、水草の栽培が難しいと言われるのですが、まさにその通りです。
エンゼルフィッシュの水槽に水草を入れるとしたら、基本的にアヌビアス・ナナやミクロソリウム等の葉が大きく固い水草を選びましょう。アヌビアス・ナナやミクロソリウムであれば、食べられたり被害に遭うことはほとんどありません。
④実は意外と水質に気を遣う
「初心者向き」というタグを見ると、誰でも簡単に飼育できるというイメージが湧きます。しかし、エンゼルフィッシュは飼育水の水質に気を遣う魚です。
私もアクアリウムを始めた時、エンゼルフィッシュを3匹買ったのですが、2週間ほどで全て残念な結果にしてしまいました。
水槽を立ち上げて日が浅い時でしたので、フィルターによる濾過が安定していなかったのが原因かと考えています。その後、きちんとフィルターが立ち上がった後に再度チャレンジしましたが、3匹中1匹が水槽に入れたその日に残念な結果になってしまいました。
もしかしたら、pHショックと呼ばれる水合わせが不十分な状態であったのかもしれません。しかし、それだけ水質に気を遣うとなると、初心者の方が立ち上げたばかり水槽では、飼育が難しいのかもしれません。
もしエンゼルフィッシュを飼育する時には、フィルターを含め、水槽の状態が安定した状態で迎え入れるようにした方が無難だと思います。
⑤想像以上に巨大化する
エンゼルフィッシュは熱帯魚ショップで見る時は体調5cmくらいの小さな体なのですが、最大で体調が15cmから20cmに巨大化します。
正直なところ、45cm水槽では1匹、60cm水槽でも2, 3匹の飼育が限界です。
エンゼルフィッシュと他の魚を混泳させたいと思われるかもしれませんが、魚種をきちん剪定しなければなりません。
エンゼルフィッシュは水槽の中層から上層を生活圏にしますので、例えば底を住処にするプレコやコリドラスは混泳が可能になります。私自身もコリドラスと混泳をさせていました。特にトラブルは無かったです。
エンゼルフィッシュを気軽に購入してしまうと、半年後には大きなエンゼルにフィッシュに成長して飼育に困るかと予想されます。そのため、エンゼルフィッシュを飼育する時は60cm以上の水槽を用意して長期の飼育が出来るようにしてください。
⑥大食漢なので飼育内が糞だらけ
エンゼルフィッシュは、大変に食いしん坊です。
そのスリムな体に似合わず、与えれば与えるだけ餌を食べます。また、餌の時間が終わっても常に食べれるものを口に入れては吐き出して、常に食べるものを探しています。
そのため、糞の量も多くなり、飼育水も汚れやすいのでフィルターの掃除はこまめに行う必要があります。また、小さな水槽だと水質の悪化も顕著になるので、上でも記載したように60cmクラスの水槽が安心かと思います。
エンゼルフィッシュを上手に飼う方法もあります
エンゼルフィッシュを勧めない理由を色々と書いてきましたが、上手く飼育すれば長く愛でてあげることができる魚だと思います。
上手く飼育するポイントを以下に2つ挙げておきます。基本的には上で紹介したデメリットを穴埋めるための方法になります。
単独飼育することは喧嘩を防ぐ決め手
喧嘩が多いのであれば、単独飼育 (エンゼルフィッシュを1匹で飼うこと) すれば良いのです。また、エンゼルフィッシュに食べられてしまう危険性のある小型の魚との混泳もさせなければ良いのです。
ちょっと寂しいかもしれませんが、45cmか60cm水槽で1匹だけで飼育すれば、混泳相手を迷うこともありませんし、問題は全く起こりません。
ただ、水槽内にエンゼルフィッシュだけでは寂しいというのであれば、私の経験上、混泳相手はコリドラスのみかと思います。水槽の底で生活するコリドラスは、エンゼルフィッシュを襲うことはありません。また、逆にエンゼルフィッシュもコリドラスに興味が無いようで、喧嘩をしたところをほとんど見ませんでした。
エンゼルフィッシュは逆に、グッピー、プラティ、ラミレジィ、ベタ等の魚とは相性が難しいと言えます。喧嘩によってグッピーの綺麗なヒレが傷つけられてしまいますし、ベタについては美しいヒレを食べられてしまうこともあります。
ベアタンクや流木水槽で飼育すること
せっかく作った水草レイアウトも、エンゼルフィッシュによって崩されてしまうとショックが大きいです。
ですので、逆転の発想で、水草を入れない水槽でエンゼルフィッシュを飼育すればよいのです。
また、エンゼルフィッシュは流木を食べることは無いので、流木のみレイアウトで飼育してあげることも一つの手段かと思います。
エンゼルフィッシュは、ベアタンク (レイアウト素材の入っていない水槽) で飼育する方が良いという情報は聞いたことはありました。しかし、水草も栽培してみたいという希望があって、エンゼルフィッシュの水槽で水草栽培にチャレンジしたのですが…無理な結果に終わりました。
今、この記事を書きながら、アクアリウムショップで飼育されているエンゼルフィッシュを思い出すと、確かにベアタンクで飼育されていることがほとんどです。飼育し始める方は、水草は止めてベアタンクか流木だけのレイアウトにしましょう!エンゼルフィッシュの飼育を経験した私は、その方が無難であると断言できます…。
エンゼルフィッシュ飼育のまとめ
この記事では、私がアクアリウム初心者にエンゼルフィッシュをお勧めしない龍を、私の飼育経験から記載させていただきました。
その理由としては「水槽内での喧嘩が絶えないこと」、「水草が被害に遭うこと」、そして「他の魚との混泳にも気を遣う」等が挙げられます。
喧嘩が多いことや水槽内を荒らす可能性もあることを理解した上で、飼育を始める決断をしてもらえればと思います。それが無理であれば、私はエンゼルフィッシュの飼育をお勧めしません。
ただ、エンゼルフィッシュの性格や特徴を理解しながら飼育をすることも、アクアリウムという趣味としての楽しみです。また、エンゼルフィッシュは成長の過程で人懐っこい性格になるのも嬉しいことです。もし飼育を始めることになったら、最後まで家族の一員として可愛がってあげて下さいね。