アクアリウムを楽しんでいる方の中には、水槽の水面に浮かぶ「油膜」の除去に苦労している方も多いのではないでしょうか?
油膜が浮かんだ水面は、水槽の美観が悪くなりますし、空気中から水中への酸素の供給を妨げる原因にもなるので、出来れば発生させないことが望ましいです。
油膜を放置すると、油膜の膜厚がどんどん厚くなって、水槽のガラス面に油膜が固着してしまうこともあります。
そのため、油膜が発生してしまった場合には、こまめに除去することが必要になります。
油膜を解消する方法の一つとして、エアレーションによって水面を動かし、油膜を分解していくという方法があります。
しかし、どのくらいの強さでエアレーションをすれば良いのか?という点に関しては、あまり情報がありません。
この記事では、エアレーションによって油膜が抑制できるのかを実験するとともに、どのくらいの強さのエアレーションが必要なのかをしてみましたので紹介したいと思います。
そもそも「油膜」の原因は何なのか?
まず、油膜の原因が何なのか?を記載しておきたいと思います。
油膜の原因はバイオフィルムと言われる細菌・バクテリアが作り上げる膜や、餌の中に含まれる油分が水面に浮いている状態になります。
油膜の原因が細菌やバクテリアであると言われると、何となく嫌な気もするのですが、池や沼など自然界にも存在する細菌です。そのため、魚に対して直接悪さをするわけではありません。
ただし、その細菌の増殖が活発で、水槽内のタンパク質と酸素の豊富な水面付近で爆発的に増加してしまい、細菌の集合体が「油膜」として水面に現れてきます。
また、油分が多い餌を使用している場合や、餌を与え過ぎている場合にも油膜は発生します。
そのため、油膜は水槽での飼育環境がしっかりと確立されていない時に発生する問題と思っていただいて間違いは無いです。
特に、水面が波打っていない場合や水流が無い場合には、水面付近の油膜が分散されることがないため、短時間のうちに増殖し油膜を形成してしいます。
自然界の川や池を見ても、水槽内と同じことが起こります。
例えば、流れの強い川では水面に油面がありませんが、水流が無く水面が静止している溜め池には油膜が出来ていることがあります。
油膜を無くすためには根本的な原因を突き止めて解消することが望ましいですが、流れの急な河川に油膜が起こりにくいことを考えると、エアレーションによって水面を波打たせることで、油膜を抑制できる可能性があるのです。
以下の実証実験で、実際にエアレーションの強さを変化した場合の油膜の状態を紹介したいと思います。
実験に使用した水槽と実験方法について
まず最初に、エアレーションによる油膜の軽減を実験した水槽と、エアレーションの変化のさせ方について紹介します。
実験に使用した水槽の詳細
今回の実験に使用した水槽ですが、一般的な60cm規格の水槽になります。
熱帯魚の種類と数については、コリドラス10匹、ネオンテトラ10匹、プレコ1匹、ラスボラ3匹となっています。
水温はヒーターを使用して25℃を維持し、流木はMサイズのものが2つ入っています。
水草としては、Mサイズのミクロソリウムが2株、アヌビアス・ナナが2株、ボルビリスが1株となります。また、魚の産卵用にウィローモスが入っています。
水槽用ライトは一般的なLEDライトを使用して、1日当たり7時間程度の点灯時間となります。
また、フィルターについては、通常はエーハイムの2213とGEXのスリムフィルターLサイズを併用している水槽です。今回の実験では、下で示す通り、これらのフィルターのどちらか片方を使用して油膜の検証を行います。
この水槽は、立ち上げから数カ月経っていますが、油膜が発生しやすいことが悩みの種であった水槽となります。
エアレーションの変化方法と実験日数
エアレーションの強弱の付け方については、フィルターから給水される時の水流を変化させて行いました。
具体的には、以下の3つのエアレーション方法で実験をしてみました。
①壁掛けフィルターのみを使用した場合: GEXのスリムフィルターを使用
②外部フィルターに水流調整機構を付けた場合: エーハイムの2213とナチュラルフローパイプを使用
③外部フィルターの水流をそのまま利用した場合: エーハイムの2213の水流をそのまま使用
エアレーションの強さについては、①→②→③の順に強くなっていきます。
また、油膜の発生を確認する日数ですが、水替を行って油膜を除去した後に①②③のそれぞれの条件で2日間の管理を行い、水面を確認することとします。
以下の実験結果では、①②③の場合に分けて結果を紹介したいと思います。
エアレーション強化による油膜抑制の実験結果
それでは、実際にエアレーションの強度を変化させた場合に、油膜のでき方に違いが出たのか否かについて紹介します。
①壁掛けフィルターのみの場合
壁掛けフィルターについては、上記の通りGEXのスリムフィルター (Lサイズ) を使用しています。下の写真に示す通りのフィルターです。
換水を行って水面の油膜を除去した状態から、この壁掛けフィルターのみを稼働させました。一応、魚の数もそこまで多くないので、この壁掛けフィルターのみでも濾過は問題ないと考えています。
実際に壁掛けフィルターの水流のみで2日間管理した後の水面の写真が下の写真になります。
見ての通りですが、油膜が大量に発生してしまっていることがわかります。
壁掛けフィルターの流量は最大にしていますが、壁掛けフィルターは水面を揺らすエアレーションの効果が少ないため、このように油膜が形成されやすい状態になっていると考えられます。
したがって、壁掛けフィルターの水流だけでは油膜の抑制ができないということになります。
②外部フィルターと水流調整機構を使用した場合
次に、外部フィルターに水流調整機構を使用した場合の結果です。
外部フィルターはエーハイムの2213で、水流調整機構として下の写真に示すように、ナチュラルフローパイプを使用します。
このナチュラルフローパイプによって、上で紹介したした壁掛けフィルターよりも少し強いエアレーションをかけられるように調整しています。
写真で分かるように、ある程度水面が揺れていることがわかります。
この条件で実験した場合の油膜の発生状況を、下の写真に示します。
いかがでしょうか?上で紹介した壁掛けフィルターの場合よりも、確実に油膜の厚さが薄く、下の水草も見えやすい状況かと思います。
ただし、油膜を完全には抑制できていないので、より強いエアレーションが必要になるのだと思われます。
③外部フィルターの水流をそのまま使用した場合
最後に、最もエアレーション効果が強い外部フィルター (エーハイム 2213) の水流をそのまま使用する場合です。
エアレーションの状況としては、下の写真に示すように、かなりの水流で水面を揺らしている状況となります。
この水流とエアレーションの状態で2日間放置した後の、油膜の状況が次の写真に示す通りです。油膜の状況を見えやすくするため、フィルターは止めた状態で撮影しました。
驚きました。
油膜がほとんどない状態です。
水槽の中を上から見ても、水草もはっきりと見える状況です。
したがって、外部フィルターからの給水によるエアレーションをそのまま利用することで、油膜の抑制に相当効果があるということになります。
私自身、ここまで効果があるとは思いませんでした。
【2024年9月15日追記】記事の公開後、外部フィルターの水流を用いて油膜の抑制を続けていますが、この方法は油膜を100%抑制できる方法ではありませんでした。何度か油膜が発生してしまっています。魚の数や餌の量の変化、水草の量などに依存するものと思われます。
エアレーションを強くする場合の注意点
今回の実験では、水面のエアレーションを強化することで油膜の発生を抑制るという実験を行いましたが、この方法には1つの注意点がありますのでお伝えしておきます。
今回実験した水槽には強い水流を作っても問題ない熱帯魚のみが飼育されています。
しかし、ベタやエンゼルフィッシュ等の泳ぎが得意ではない熱帯魚の泳ぐ水槽に、強いエアレーションや強い水流を作ることはお勧めしません。熱帯魚が強い水流に流されてしまうことで怪我をしたり、水流の強さでヒレが傷ついてしまうこともあります。
そのため、エアレーション強化で油膜抑制を行う場合には、飼育している熱帯魚の魚種を考慮して実施するようにしてください。
この記事のまとめ
この記事では、エアレーションの強化によって水槽の水面に浮く油膜を抑制できるのか?を調査した結果を紹介させていただきました。
結果として、エアレーションを強くすることで油膜の量と油膜の厚さは減少していくことがわかりました。
特に、外部フィルターの給水の水流を直接利用することで、油膜抑制に大きな効果があることを実証することができました。
油膜の発生にお困りの皆様も、今回紹介した方法で油膜対策をしてみてはいかがでしょうか?
ただし、飼育している熱帯魚が泳ぎが下手な魚の場合には、導入を控えてあげて下さい。