アクアリウム用ソイルを園芸に再利用する最適な方法

アクアリウムで水草をレイアウトに使われている方であれば、アクアリウム用の土 (ソイル) を使用されているかと思います。

アクアリウムの世界では、アクアリウムに使う専用の土を慣習的に「ソイル」と呼んでいるので、この記事でもアクアリウム用の土を「ソイル」と呼ばせていただきます。

私自身も水草を育てるために、水槽の底にアクアリウム用ソイルを敷き詰めていますが、大体2年くらいで形崩れや養分の枯渇で寿命を迎えます。

その交換の度に出てくる大量の使用済みソイルの処理に困っていました。

皆さんは、使用済みのアクアリウム用ソイル…どうされていますか?

以前は、ある程度溜まったら土を引き取ってくれる業者さんに依頼して回収してもらっていました。

しかし、今では園芸用に利用する方法を自分なりに考えて、園芸用培養土として再利用しています。ソイルは粒が大きいので、そのまま園芸用には使うことができません。しかし、園芸用の培養土と最適な比率で混ぜることで、実は培養土の排水性を改善するという、意外に良い性能を発揮してくれます。

この記事では、アクアリウム用ソイルを園芸用の土として上手に利用する方法を御紹介します。


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アクアリウム用の土 (ソイル) について

アクアリウム用ソイルの特徴

アクアリウムに使用するソイルは、一般的な園芸用の土を細かく砕き、粒状にしたものを焼き固めて作られる特殊な土の一種になります。

アクアリウムを始めた時、ショップの店員さんから「これが水草用の土です。」と言われたときに若干戸惑ったことを今でも覚えています。

土と言われると園芸用の培養土をイメージしていたので、粒状のソイルを見た時には「どうやって使うんだ?」と素朴に疑問を持ちました。

アクアリウム用ソイルは、土を細かく砕き焼き固めて直径5mmくらいの球状の塊に形成しているので、土に含まれる肥料分も持っていますが、水中で使うため、飼育水内に溶け出す分が多く、園芸用の土に比べて肥料持ちがよくありません。

そのため、水草を植える時には、ソイルの中に専用の固形肥料を混ぜ込むか、後から飼育水に液体の肥料剤を投入して水草の成長を促進します。

アクアリウム用ソイルを使ったことが無い方、見たことが無い方のために下に写真を載せておきます。

アクアリウム用ソイルの写真
アクアリウム用ソイルの写真

なぜアクアリウム用ソイルは粒状なの?

園芸用の一般的な培養土を水中に沈めるとどうなるでしょうか?

皆さん、容易に想像が付くかと思いますが…。

培養土には腐葉土や細かな枝、また非常に軽い土の成分など、様々なものが配合されています。そのため、水に入れると浮かんできてしまったり、細かな土は水中を漂うゴミとなってしまいます。また、それらのゴミはフィルター目詰まりの原因にもなります。

また、培養土を上手く水槽の底に沈めたとしても、魚が泳ぐことで舞い上がり、水中の浮遊物によって美観が損なわれますし、水槽の底を清掃する時のメンテナンス性が全くありません。

そのため、アクアリウム用ソイルは、土を焼き固めて大きさのある粒状にし、確実に水槽の底に沈むようにしてあります。

また、焼き固めることで、ゴミが出にくく (崩れにくく)、水槽内の美観を維持するのに最適な構造になっているのです。

粒状にすることの意味は、実はもう一つあります。

ソイルが粒状のため、ソイル同士の間に隙間が作られるます。これにより、水槽内の生物濾過を担うバクテリアが棲みつく場所にもなります。そのため、フィルターと同じ生物濾過の効果をソイルが担ってくれます。

アクアリウム用のソイルを使用した水槽と使用していない水槽では、飼育水の白濁が無くなるスピードも明らかに違いが出ます。

アクアリウム用ソイルはそのまま園芸に用いることはできません

アクアリウム用のソイルは、水を土の中に保持すると言う効果がほとんどありません。ソイル自体が湿ることはありますが、園芸用培養土と比べると水分の保持力は大幅に低くなります。

そもそも、水中で使われるものなので、水を保持するという性能が必要ないのです。水をかけるとあっという間に水が下まで通過していきます。

園芸用の土については、水を保持し植物の根に水を供給するという役割が必要になります。あっという間に水が乾いてしまっては、植物が十分に水を吸い上げることができず、枯れてしまう原因になります。

また、草花は根と土が未着することで水分を得ることができるのですが、アクアリウム用のソイルは粒が大きく隙間が大きいため、根が効率よく水を吸い上げることができないのです。

そのため、アクアリウム用ソイルを園芸用にそのまま転用することができません。


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水草と園芸用の草花は水への耐性が異なります

この記事では、アクアリウム用のソイルを園芸用に再利用することを紹介しますので、水草と草花の水に対する耐性も記載しておきたいと思います。

水草はその名の通り、水中でも育成が可能な植物のことです。水中と水上のどちらでも育成が可能な植物も多くあり、それがアクアリウムの楽しみの幅を広げてくれます。

水草は水中でも根を張り、光合成を行うことができますが、園芸用の草花はそうはいきません。まぁ、当たり前なのですが…。

草花は水の中では呼吸が出来なかったり、根がずっと水の中にあると根腐れを起こしたりして、そもそも栽培ができませんし、花を咲かせるようなこともできません。

一般的に、園芸用の草花は地上部 (葉や花) は常に乾燥した状態です。そして、培養土が乾湿を繰り返すことで根の張りが強くなり育成をしていきます。そのため、水草の育成とは大きな違いがあるのです。

下で紹介しますが、根が乾湿を繰り返して、丈夫な根が育っていくという所に、アクアリウム用ソイルが役立ってくれます。

草花の写真

草花の栽培に最適な水捌けの条件とは?

一般的に、草花用の培養土には、水を保持する力だけではなく、水捌けが必要であると言われております。

上記の通り、常に土が湿った状態ですと根の張りが悪くなり、育成不良になってしまいます。

では、水捌けの具合を確かめるにはどうしたら良いのでしょうか?

実は最適な水捌けを見極める簡単な方法があります。

培養土に水を与えたとき、与えた水が鉢底からどのくらいのスピードで抜けていくか?という指標です。

鉢植えの培養土に水をたっぷりと与え、鉢に水が一杯溜まるようにします。その状態から、水が抜けるのに何秒かかるのか?を測定します。

水はけがよいという土であれば、15秒前後で鉢の水が抜けていきますし、水はけが悪いと30秒近く水が抜けない場合もあります。

私はいつも園芸用培養土を準備する時に、15秒から20秒くらいで水が抜けるように調整しています。


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アクアリウム用ソイルを園芸用に再利用する方法

アクアリウム用ソイルを園芸用に利用するには、上で書いたようにそのまま使うことはできないので、培養土に混ぜ込んで使うことが必須条件です。

ソイルをそのまま園芸用に使用することは絶対に避けてください。高確率で枯れてしまうと思われます。

アクアリウム用ソイルは粒状のまま培養土に混ぜ込みましょう

ソイルをそのまま培養土に混ぜ込む場合、培養土との比率が重要になります。私が以前に、配合比率と水はけの実験をしたことがあるので、その結果をお伝えしたいと思います。

培養土とソイルの混合比率と水はけの関係図

このグラフは、一つ上の見出しで紹介した水捌けにかかる時間を、培養土とソイルの配合比率の関係を変えて測定した結果です。培養土は、ホームセンターで売られている一般的な培養土になります。

最適な水捌けの時間は15秒前後になるので、配合比率としては培養土:ソイルの比率を7 : 3 ~ 9 : 1にすることが最適です。

逆にアクアリウム用ソイルだけだと水捌けに要する時間が1秒もかかりません。

また、5 : 5まで培養土の配合比率を増やしても、あっという間に水が抜けていきます。この状態だと、例えば夏の暑い日には鉢植えの植物は元気を無くしてしまう可能性が高いです。

もし、ソイルをそのまま培養土に配合する場合、培養土の種類にも依りますが、上のグラフを参考にしてみて下さい。

アクアリウム用ソイルを潰して培養土に混ぜないこと

アクアリウム用ソイルは、細かい土の粒子が焼き固められていますが、その粒は潰すことも可能です。

試しに、使用後のソイルを指で押し潰してみて下さい。あまり力も必要なく、ボロボロと崩れていくはずです。

そして、ソイルを潰されたことがある方はご存じかと思いますが、その粒径はかなり小さいことがわかります。

そのため、ソイルを潰した土は、培養土以上に水捌けを悪くしてしまいます。

市販の培養土は、そのままでは少し水捌けが悪い印象ですが、そこにソイルを潰したものを混ぜ込むとさらに水捌けが悪くなります。

培養土のすき間を埋めるように入り込み、土の中の水の抜け道を無くしてしまうような効果があるのです。

また、粒径が小さいと鉢底から流れ出てしまう分も多くなるため、日々の水やりで土の表面がどんどん下がってしまう可能性もあります。

ソイルを潰すという作業が面倒ですが、培養土に混ぜ込んでも良い効果はほとんど無いので、潰して使用することは避けましょう。

育てる草花でアクアリウム用ソイルの配合比率を変えましょう

園芸用の草花については、その草花ごとに適した土の配合や水捌けの性能があります。常に土が乾燥している状態を好む草花もいますし、湿地帯に生息する草花は常に土が湿っている状態を好みます。

そのため、培養土にアクアリウム用ソイルを混ぜ込む時には、上で紹介した配合比率を変えてあげることが望ましいのです。

ここでは、園芸で人気のマーガレット等の場合と、薔薇やクリスマスローズといった水捌けの良い土を好む花の場合に分けて紹介します。

一般的な草花の場合は配合比率 8 : 2がお勧め

街の園芸店で販売されている季節の草花に最適な配合比率から御紹介します。

マーガレット、パンジー、ガーベラ等の草花の場合、そこまで排水性が無くても健康的に育ってくれます。

そのため、培養土とソイルの配合比率は8 : 2 ~ 9 : 1位を目安に使用してもらえればOKです。

水やりをきちんとすれば、もう少しアクアリウム用ソイルの比率を上げても良いと思います。

熱帯魚と草花の写真

薔薇やクリスマスローズの場合は 7 : 3が最適

花の中でも少し難易度が高く、土の排水性が重視されるものがあります。

有名なところでは、平成の園芸界を彩ってきた薔薇やクリスマスローズです。

これらは、一般的な草花よりも土の排水性を良くし、根の張りを促進してあげることが必要になります。特に薔薇は根を丈夫にすることで、花数の増加や新梢の発生が促進されますので、水捌けがよく適度な保水性のある土作りが大切です。

上の実験結果を参考に、薔薇やクリスマスローズの場合には、培養土 : ソイル = 7 : 3を目安にソイルを再利用することをお勧めします。

私自身、薔薇を栽培していますが、アクアリウム用ソイルを混ぜ込んだ土でも、問題なく毎年綺麗な花を咲かせてくれていますのでご安心ください。

クリスマスローズの写真
冬の貴婦人 クリスマスローズ

この記事の最後に

アクアリウムで水草育成を楽しんでいる方の中には、園芸を楽しんでいる方も多いのではないでしょうか?

アクアリウムで使い終わったソイルは、廃棄してしまったらゴミになりますが、園芸用の培養土に混ぜ込むことで水捌けを調整する土として再利用が可能です。

マーガレットやパンジーなどの一般的な草花には、培養土とソイルの配合比率を8 : 2 ~ 9 : 1 として混ぜ込み、薔薇やクリスマスローズ等のより排水性が求められる植物には配合比を 7 : 3 くらいにします。

私はこの再利用で、季節の草花、薔薇、ユリを鉢植えで育てており、全く問題なく毎年花を咲かせてくれています。

アクアリウムと園芸を両方楽しんでいる方は、アクアリウム用の使用済みソイルを園芸用に再利用してみてはいかがでしょうか?