誰もが一度は水辺で捕まえたことがあるであろう水生生物「ザリガニ」。
子供の頃に、小さな水槽で川や池で捕まえて来たザリガニを飼育していたことを、大人になった今でも覚えています。
そして、自分の子供がザリガニを捕まえてきて飼育している姿を見ると、いつの時代もザリガニと言うのは子供にとって一番身近な水生生物なのだと思わされます。
ザリガニは環境変化や水質変化に強い生物ですが、飼育をする際には色々と困り事が出てきます。
例えば、水槽の水が直ぐに汚れてしまったり、臭いがきつくなったり、水槽から逃走したり…ザリガニを飼育していると様々な事が起こります。
そんなザリガニ飼育のトラブルの中で、複数のザリガニを一つの水槽で飼育していると必ず起こるのが、ザリガニ同士の喧嘩です。大きなハサミを使って戦うような喧嘩をするのを見ると、飼育者の我々としては少し心が痛むものがありますよね。
しかし、飼育環境や飼育方法の改善で、喧嘩の頻度を減らすような努力をすることができます。
複数の水槽を用意できれば単独できるのですが、水槽を増やすわけにもいかない場合には、一つの水槽で複数のザリガニを飼育する場合も多々あるかと思います。
この記事では、我が家で飼育しているザリガニの水槽 (2匹飼育中) を例に取り、私が実践しているザリガニの喧嘩を防ぐ方法について紹介したいと思います。
紹介する方法でザリガニの喧嘩が100%防げるわけでは無いですが、喧嘩を少なくする一つのヒントになれば幸いです。
ザリガニは縄張り意識がある生物
池や川でザリガニ釣りを楽しんだことがある方であれば、ザリガニが住処にしている穴や隠れ家を見たことがあるかと思います。
ザリガニは基本的に、自分の住処を持ち、その周辺に縄張りを主張するという生態を持つ生き物です。
そのため、自分の縄張りの中に他のザリガニが入ってくると、少し攻撃的に追い払うような仕草を見せます。
この縄張り意識は水槽と言う小さな飼育環境の中でも変わらず、ザリガニを一つの水槽で複数飼育すると、お互いに縄張りを主張し合って喧嘩を始めてしまう原因になります。
縄張り争いは季節的なものはあまり関係なく、年間を通じて起こるため、水槽で飼育しているザリガニは年中喧嘩をしているような場合も起こり得ます。
特に注意すべきは体格の異なるザリガニ同士の飼育
一つの水槽でザリガニを複数飼育するとき、喧嘩をしてしまう事は仕方の無いことです。
縄張り争いをする生物を一つの水槽で飼育する事になるので、喧嘩をしてしまうのは必然です。
しかし、体格が大きく異なるザリガニ同士が喧嘩すると、特に酷いことになってしまう可能性があります。
具体的には、大きな体のザリガニが小さな体のザリガニを共食いしてしまうということが起こります。
そのため、複数のザリガニを飼育する際には、必ず体格が同じくらいのザリガニ同士を選んであげるようにします。
ザリガニは自分が生んだ子供でさえも食べてしまうので、複数飼育する際に注意すべきポイントの一つは体格を揃えることになります。
餌やりの方法を変えてザリガニの喧嘩を防ぐ
では、ここからはザリガニの喧嘩を防ぐために実施すべき飼育方法を紹介していきたいと思います。
まずは、餌やりの方法に関することから紹介していきます。
基本的には「縄張り争いをさせないこと」というのが大前提となりますので、餌やりの際にもそれを意識した餌やりの方法が効果的です。
餌は小分けにして空腹になる時間を減らす
ザリガニが喧嘩をしてしまったり、共食いをしてしまう場合の原因は餌やりにあるのではないかと考えられます。
人間もそうですが、空腹が続くとイライラする感情が出てきたすることがありますよね。
ザリガニもそれと同じで、お腹が満たされた状態だと結構大人しくじっとしているのですが、餌を与えていない時間帯に喧嘩しているように思えます。
そのため、出来れば一度に餌をたくさん与えるのではなく、例えば朝と晩の2回に分割したり、朝昼晩の3回に分けたりすることが喧嘩抑制に有効だと思います。
ザリガニの空腹の時間を短くするということですね。
餌場となる場所を作らない -餌は水槽の所々に撒く-
餌やりでもう一つ重要なのは、餌を与える場所を1か所に固定しないということです。
ザリガニに限らず、魚や水生生物は餌場を縄張りにするパターンが多いです。
例えば、川魚のアユ (鮎) は良いコケが生える岩や石の周辺を縄張りにします。
つまり、良い餌・多くの餌が手に入る場所は、ザリガニにとっても縄張りになってしまう可能性が高いのです。
そのため、一か所に餌を置くのではなく、水槽の中の所どころに少量ずつ餌を置くような方法がお勧めです。
餌を散りばめて置けば、ザリガニ同士の間に距離ができるので、餌の奪い合いによる喧嘩も防げます。
水槽の管理方法を変えてザリガニの喧嘩を防ぐ
次に水槽の中のレイアウトやメンテナンス方法の工夫で、ザリガニの喧嘩を防ぐ方策を考えていきます。
これに関しても、餌の与え方と同様で「ザリガニの縄張り意識を小さくする」ということを意識した対策となります。
「隠れ家」になる場所を作らない or たくさん用意する
「餌場のとなる場所」の他に、ザリガニが縄張りを主張しやすい場所はどこでしょうか?
簡単な質問ですが、答えは「隠れ家 (住処) 」です。
川や池に生息するザリガニは、必ず自分の隠れ家を持ち、その周辺を縄張りにして行動しています。
そのため、水槽の中に置いても、自分の実を隠すことができるような場所は縄張りになり、そこに他のザリガニが近づいた瞬間に小競り合いが始まります。
また、良い隠れ家があると、その場所を奪い合って喧嘩が起こる場合もあります。
したがって、「水槽の中にはそもそも隠れ家となるような場所を作らないこと」、または「飼育しているザリガニの数以上の隠れ家を用意してあげること」のどちらかが必要な対策となります。
本やインターネットで紹介されているザリガニの飼育方法としては、「水槽の中に隠れ家を作ってあげる」ということが記載されている場合が多いです。それは正しい情報なのですが、ザリガニを2匹以上飼育するのであれば、隠れ家となる場所をザリガニの数以上用意しておいた方が安心です。
私の経験上ですが、一つだけ隠れ家となる土管を用意した時、その土管の中に2匹のザリガニが仲良く入ることは無いです。必ずどちらかのザリガニが最初に土管に入り、他のザリガニを排除しようとします。
下の写真は私の家で飼育しているザリガニ水槽ですが、我が家では小さな石が複数個置いてあるだけのシンプルな水槽になっています。つまり、隠れ家になるような場所を用意していません。
シンプルな水槽ですが、2匹のザリガニは常にお互いに距離を取って生活しており、小競り合いがほとんど起きていません。
シンプルな水槽のレイアウトは、ザリガニの縄張りを無くす以外にもメリットがあります。
ザリガニは飼育水を汚しやすい水生生物になるので、水替えや清掃の頻度が多いです。そのため、砂利を敷いたりすると清掃が面倒になるので、出来る限りシンプルな水槽で飼育しています。
水槽内のレイアウトは定期的に変更する
「隠れ家」の観点では、もう一つ重要な事があります。
それは、定期的に水槽内のレイアウト配置を変更するということです。
常に同じ場所に良い隠れ家があると、その場所が縄張りになってしまうので、レイアウトを変更することで縄張りを壊していくのです。
例えば、下の写真の様に、水槽の水替えや清掃のタイミングで石の場所を変更してしまいます。
このように定期的に水槽内のレイアウトを変更すれば、水槽内に形成されたザリガニの縄張りを定期的にリセットすることができます。
「隠れ家が無いとザリガニが安心できないのでは?」という御意見があるかと思います。
しかし、水槽の中にはザリガニの外敵がいないため、ザリガニ自身は外敵だらけの自然界で過ごすよりも確実に安心できる環境かと思います。また、水槽の横を頻繁に人が往来するため、飼育期間が長くなると人影が見えてもザリガニが逃げ惑うようなことが無くなります。
実際に、ザリガニを飼育し始めた時は、人の影が見れると直ぐに逃げるような仕草をしていました。しかし、飼育の期間が長くなると、ザリガニたちは人間に慣れて全く怖がらなくなりました。つまり、ザリガニは飼育環境に慣れれば、安心して水槽の中で生活することができるようになります。
ですので、「水槽でのザリガニ飼育には、隠れ家は不要である」というのが私の意見です。
30cm×20cmの水槽なら2匹が限界です
ザリガニ同士の喧嘩や、ザリガニ同士の共食いを誘発する原因の一つに「過密飼育」があります。
子供と一緒にザリガニを飼育する際、多くの方はホームセンターなどで販売されている30cm×20cmくらいのプラスチックの水槽や虫かごなどを利用するかと思います。
そのサイズの水槽となると、ザリガニの飼育数は2匹が限界です。
もっと大きな水槽であれば3匹以上も可能かもしれませんが、一般的な家庭用の水槽サイズでは3匹以上の飼育は厳しいと考えられます。
単独飼育していたザリガニの水槽に後からザリガニを追加しないこと
最後になりますが、見落としがちな喧嘩の一因も紹介しておきます。
それは「ザリガニを後から追加してしまう」という行為です。
例えば、1匹のザリガニを半年くらい飼育していて、その水槽の中に別のザリガニを新たに入れるという場合です。
もともと飼育していたザリガニからすれば、水槽の中は自分の縄張りであり、他のザリガニや生物が侵入することが無い楽園の様な場所でした。
そこに、別のザリガニが急に入ってきたらどうでしょうか?
もともと飼育されていたザリガニにとっては、追加されたザリガニは急に縄張りに張り込んできた外敵です。
つまり、ザリガニの喧嘩の原因を、飼育者である皆さんが誘発してしまったことになるのです。
ですので、ザリガニを複数匹飼育される際には、最初から複数で飼育を行い、後から水槽へザリガニを追加するような事はやめておきましょう。
この記事の終わりに
この記事では、子供に大人気のザリガニ飼育について、水槽の中でザリガニが喧嘩をしてしまう原因や、その防止方法のヒントを紹介させていただきました。
ザリガニは縄張り意識のある水生生物であるため、複数のザリガニを飼育すると喧嘩が起きてしまうのは必然です。
そのため、複数のザリガニを飼育する際には、喧嘩にならないような環境整備や飼育方法を考えていかねばなりません。
喧嘩しているザリガニを放置しておくと、どちらかが傷だらけになったり、最悪の場合には共食いと言う結末を迎えてしまう可能性も出てきます。
また、話題は変わるのですが、海外から輸入されるザリガニが特定外来生物に指定されることとなりました。ザリガニの中には飼育が禁止されている種類があるので、飼育の前に事前に確認をしておきましょう!