淡水アクアリウムに発生するコケや藻の対策として、ヤマトヌマエビを水槽に導入している方は多くいらっしゃるかと思います。
ヤマトヌマエビは日本に住む淡水のエビであり、日本の四季を生き抜く力があること、そして何よりもコケや藻を旺盛に食べてくれることから、コケ取り生体として最も人気の高いエビだと思います。
その旺盛な食欲で、一晩にして水槽内に発生した苔や藻を食べてしまう事があるくらいです。
しかし、良く耳にするのは「ヤマトヌマエビは水草を食害することがある」という噂です。
実際に私の飼育しているヤマトヌマエビも水草の葉を食べているのを見たことがあります。
しかし、それは本当に食害なのでしょうか?
この記事では、ヤマトヌマエビが水草を食べる事実と、どのような水草を食べてしまうのかについて詳しく紹介できればと思います。
そして、ヤマトヌマエビが水草を食べるのは、実は食害では無いという事実もお伝えできればと思います。
ヤマトヌマエビが食べた水草の例
まず最初に、私の管理している水槽でヤマトヌマエビが水草を食べてしまった例から紹介しておきたいと思います。
紹介する例は全て、淡水アクアリウムで一般的に知られている水草達ですので、皆様にもなじみのあるものが多いと思います。
ロタラ・ベトナムの例
一つ目は赤色のロタラとして人気の高い「ロタラ・ベトナム」の例になります。
強いLEDライトの照射や二酸化炭素の添加によって、葉が光るような赤に染まる水草になります。
ロタラ・ベトナムがヤマトヌマエビの食害に合った部分が下の写真となります。黄色の矢印で記している部分には、茎は残っていますが葉が無いことがわかります。
朝起きて水槽を見て見ると、ロタラ・ベトナムの茎にしがみつきながら葉を食べているヤマトヌマエビの姿がありました。
前日の夜には葉が残っていたはずなので、一晩で多くの葉を食べてしまった例となります。
ヤマトヌマエビはその大きな体が故に、ミナミヌマエビに比べると食べるスピードが格段に違います。
グリーン・ロタラの例
次も同じくロタラの仲間ですが、葉が緑色の「グリーン・ロタラ」となります。
このロタラは、水上で育てていたものを水中栽培に移行させたものになります。そのため、葉は細長い水中葉では無く、水上葉の特徴である丸い葉になっています。
黄色の矢印の部分が該当部になりますが、もともとは葉があったのですが、ヤマトヌマエビが食べてしまったので葉が無くなっています。
ロタラの水上葉のような比較的厚い葉でさえも、ヤマトヌマエビの食害に合うという事例になります。
ブセファランドラの例
最後の例は耐陰性の水草としても人気のある「ブセファランドラ」になります。
ブセファランドラは、ロタラよりも厚みがあって丈夫な葉を展開させてくれます。そのため、ヤマトヌマエビによる食害は受けないだろうと思っていました。
しかし、実際にはその考えは甘く、一部の葉がヤマトヌマエビによって食べられてしまいました。
全ての葉は食べられませんでしたが、葉の一部が食いちぎられているような様子が分かるかと思います。
ヤマトヌマエビが食べる水草 (葉) の特徴
ヤマトヌマエビが食べる水草 (葉) にはどのような特徴があるのでしょうか?
上で紹介した例を再度考えてみると、ヤマトヌマエビが食べた葉には赤色の水草があり、緑色の水草があり、葉の厚が薄いものも厚いものもあり…というように、これと言った特徴は無いんですよね。
では、ヤマトヌマエビ達は気まぐれで水草を食害しているのでしょうか?
いや、実はそうでは無いようです。
ヤマトヌマエビが食べる葉には共通する点が一つだけありました。
それは「元気の無い枯れかけているような葉を食べている」ということです。
ヤマトヌマエビは、上で紹介した例以外にも、多くの水草を食べた例があります。
クリプトコリネを食べたこともありますし、ハイグロフィラの葉を食べているのを見たこともあります。
しかし、どの場合も枯れかけている葉ばかりを食べていました。
例えば、上でも紹介したロタラ・ベトナムですが、茎の頂点に近い部分には元気な赤い葉が多く展開していますが、株元に近い部分は下の写真の様に葉が枯れかけているものが多くあります。黄色の矢印で枯れかけている葉を示しています。
ロタラは、新しい葉を展開させながら茎が伸びていくという成長過程を持っています。そのため、新しく出てきた葉は元気なのですが、株元に近い葉になるほど古い葉となり、枯れ落ちていくケースが多くなります。
ヤマトヌマエビは、そのような弱った葉を狙って食べているのだと言えます。
また、上で紹介したブセファランドラについても、実は食害を受けた葉は、先端が枯れ始めている状態のものでした。その枯れ始めている部分だけを食べてしまい、元気な緑色の部分は残してあるような状態になります。
食害では無く枯れた葉の掃除をしていると考えるべき
今までに多くのヤマトヌマエビを飼育してきましたが、実はヤマトヌマエビが元気で青々とした水草を食べている姿を見たことがありません。
ヤマトヌマエビが食べている水草は元気が無く枯れかけている葉ばかりなのです。
確かに、朝起きた時に水槽を見て、水草が茎だけの状態になっていたら、ヤマトヌマエビが水草を食害したように見えるでしょう。
しかし、実際の所は、ヤマトヌマエビは枯れ落ちそうな葉を早々に処理してくれているだけであり、お掃除屋さんとしての役割を果たしていると言えるのではないでしょうか?
つまり、それは「食害」では無く、事前にゴミとなりそうな枯れ葉を処理・清掃してくれていると考えられるということです。
葉が食べられてしまうと、どうしても「食害」と思い込みがちになります。
しかし、実際に起こっていることを観察してみると、ヤマトヌマエビは食害では無く掃除をしてくれていると考えるべきなのかもしれません。
【参考】ヤマトヌマエビは枯れた黒髭苔を食べる
ヤマトヌマエビは茶ゴケやアオミドロを食べてくれますが、黒髭苔はなかなか食べない傾向にあることも知られています。
これは、ヤマトヌマエビを飼育している多くの方が御存じの事実だと思います。
しかし、黒髭苔に木酢酢を吹きかけて枯れさせた状態にすると、その枯れた黒髭苔を目掛けてヤマトヌマエビがお掃除しに来てくれます。
枯れた黒髭苔を見ると、御馳走を見たかのようにヤマトヌマエビが集まってくるんです。
この事実を知った時には私も驚いたのですが、コケや葉が枯れた状態になると、エビにとっては食べやすい状態になるということなのだと考えられます。
確かに健康的で硬い葉よりも、枯れて腐りかけているような葉の方が柔らかく食べやすそうですからね。
黒髭苔を木酢酢で枯らせる方法は、下のリンクで紹介しています。
食害を防ぐなら葉が弱りにくい水草を選ぶ
ヤマトヌマエビが弱った水草の葉を食べてしまうと、茎だけが残りどうしても見栄えが悪い状態になってしまいます。
そのため、できればヤマトヌマエビに水草を食べて欲しくないと思う方もおられるかと思います。
そのような場合には、水草レイアウトに植栽する水草の種類を考えなければならないかと思います。
水草の成長に伴い、葉が世代交代で枯れてくるような水草を使うと必ずと言っていいほどヤマトヌマエビに狙われます。
そのため、例えば葉が枯れにくい「ミクロソリウム」や「アヌビアス」の仲間等がお勧めです。
また、「ハイグロフィラ」や「ボルビティス」の仲間も葉が枯れにくいのでお勧めです。
この記事の終わりに
この記事では、ヤマトヌマエビが水草を食べてしまった実際の例を紹介させていただきました。
ヤマトヌマエビが水草の葉を食べてしまうのは確かに事実です。
しかし、ヤマトヌマエビが水草の葉を食べている所を観察して見ると、古くなって枯れ落ちそうな葉だけを選んで食べていることがほとんどです。
それは単に、枯れかけた葉を「お掃除をしてくれている」と考えることもできます。
枯れ落ちてしまう葉を事前に食べてくれていると考えれば、ヤマトヌマエビが立派な「水槽のお掃除屋さん」として働いていると言えるでしょう。
水草を食べている姿を見ると、どうしても「食害」というイメージが湧いてしまいますが、ヤマトヌマエビの場合には単に食害とは言えないと考えています。
皆さんの管理する水槽でもヤマトヌマエビが水草を食べている姿が見られるかもしれませんが、その葉を確認してみて下さい。緑色で元気な葉を食べているのではなく、元気の無い葉ばかりを処理してくれているはずです。
では、これからもヤマトヌマエビとの良いお付き合いを!