植物を簡単に増やす方法に「挿し芽」という方法があります。
植物を剪定したり切り戻した時に出た枝や茎を土に挿しておくだけで、根が生えて新しい株として成長するという方法になります。
園芸を楽しんでおられる方であれば、挿し芽で植物を増やした経験が有るのではないでしょうか?
私も薔薇の挿し芽を楽しんでいた時期があり、挿し芽をし過ぎて鉢の数が凄いことになったことも…。
この「挿し芽」という方法は、アクアリウムの水草育成にも利用することができます。
特に有茎草と呼ばれる茎を持つ水草の多くは、挿し芽で比較的簡単に株数を増やすことが可能です。
水草はアクアリウムショップで購入すると10株程度で数百円するので、挿し芽で増やしてしまえば新規に購入する必要もなくなり、アクアリウムにかかるコストダウンが図れます。
この記事では、グリーン・ロタラを例に取り、挿し芽の方法やポイントを詳細に紹介したいと思います。
ただし、挿し芽のやり方には、人それぞれのやり方や考え方があると思いますので、あくまでも参考としてお考えいただけましたら幸いです。
水草の挿し芽をするタイミングはトリミングの時が最適
当たり前のことですが、挿し穂が無ければ挿し芽をすることが出来ません。
挿し穂とは、挿し芽に使う茎や葉の事を指します。
水草から挿し穂が採取できるのは、基本的には伸びすぎた水草をトリミングするタイミングだと思います。
元気に伸びた水草には、太い茎と多くの葉が展開しているものが多いため、挿し穂として利用すると挿し芽が成功する確率が高くなります。
挿し芽を行った後、挿し穂が発根するためには、光合成を行って養分を作っていく必要がありますが、立派な挿し穂の方がそれが実現されやすいためです。
茎が弱弱しかったり、葉の数が少なすぎたり、挿し穂が小さすぎると挿し芽が失敗して挿し穂が朽ちてしまう可能性が高くなります。
挿し芽を目的としたトリミングをする際には、特に太く元気そうな挿し穂を確保しておいてください。
最適な挿し穂の長さや茎の太さについては、水草ごとに差があるため、御自身で挿し芽にトライして良い条件を見つけていくことも重要です。
親株が枯れてしまわなければ、挿し芽をするチャンスは何度も訪れるので、失敗を恐れずにチャレンジしてみた方が良いです!
「百聞は一見に如かず」ですね。
ロタラの挿し芽の方法を紹介
では、ここからは実際にグリーン・ロタラを使って実例を紹介していきたいと思います。
トリミングを行うロタラの紹介
まず、挿し芽を行うグリーン・ロタラですが、下の写真に写っている元気に伸びたグリーン・ロタラとなります。
以前の私の記事で、グリーン・ロタラの成長速度を紹介した時に用いた株ですが、大きく成長してトリミングの時期となりました。
このタイミングでグリーン・ロタラをトリミングし、挿し芽にして株数を増やしていきたいと思います。
根の生えている箇所を狙ってトリミングする
地上で育つ植物 (ガーデンプランツ) と水草の育ち方の違いを観察していると、育ち方で明確に違うと思うことがあります。
その一つが「根の生え方」です。
園芸で栽培する草花は、基本的には地中にしか根がありません (蘭などは別として) 。
しかし、水草の中には、下の写真に示すようにソイルの中では無く、茎の所々から根を出す品種が多くあります。赤色の矢印で示した部分に、グリーン・ロタラの茎から発生した根があります。
この根は、ソイルの中に植えればしっかりと根として機能する部分になります。
そして、挿し穂にこの根を残すようにトリミングすると、ソイルに挿した後に養分を吸収して成長を助けてくれる存在になってくれます。
そのため、挿し芽が成功しやすくなります。
このような根の生えた茎があれば、優先的にこの部分を挿し穂として使ってみて下さい。
私の経験上での話ですが、根の無い部分を挿し穂として利用するよりも、挿し芽の成功率は上がる印象があります。
ソイルに挿す部分は葉を除去したほうが挿しやすい
水草のトリミングによって挿し穂が採取出来たら、次はソイルに挿し穂を挿していく作業になります。
挿し穂をそのままソイルに挿しても良いのですが、ひと工夫加えると挿し芽がしやすくなります。
上で紹介した様に、茎から根が生えている部分があると思うのですが、この部分には下の写真の様に葉が残った状態だと思います。
この葉は挿し穂をソイルに挿す時に邪魔になり、かつソイルに埋めると朽ちていく部分になるので、次の写真の様に除去してしまいます。
ただし、葉を除去する時には、折角生えている根を傷つけたり、切り取ってしまわないように注意してください。この状態になったら、後は好きな場所に挿して挿し芽を完了するのみです。
挿し穂をソイルに埋める時、ピンセットを使用すると思うのですが、力いっぱい握ると挿し穂が潰れてしまいますので注意が必要です。
水草は園芸で育てるガーデンプランツとは異なり、茎の水分量が多く非常に茎が潰れやすいです。
潰れてしまった茎の細胞は、再生することなく朽ちていく可能性もあるので、茎を潰さないように挿し芽を行うのもポイントの一つとなります。
挿し芽を行った前後の写真比較
次に載せている写真ですが、上の写真がトリミングした直後の状態、そして下の写真が挿し芽を行った後の状態になります。
今回は長く伸びたグリーン・ロタラを全てトリミングするのではなく、一部のグリーン・ロタラは長いままで残しておきました。
この写真でもわかる通り、挿し芽を行ったことで下の方の葉の密度が多くなっています。
下のメリットでも記載しますが、葉の密度が増えるので、よりボリュームのあるグリーン・ロタラの水景を楽しむことが出来るようになります。
トリミングと挿し芽をするメリット
では、水草のトリミングと挿し芽を行う際のメリットを御紹介します。
挿し芽で水草の数が増えるため水草のコストが減る
一つ目は、挿し芽で水草の数が増えるという点です。
アクアリウム用の水草は、アクアリウムショップで購入すると1ポット500円以上するものが多くあります。
そのような高価な水草であっても、挿し芽をすることで株数を用意に増やすことが出来ます。
そのため、1度水草を購入すれば、しばらくの間は刺し芽で株を増やすことができ、水草を購入する費用 (コスト) を抑制することができます。
私自身の例を挙げると、ルドヴィジア・グランデュローサを1度購入しましたが、それ以降はずっと挿し芽で増やした株を再利用してレイアウト水槽に使っています。
この記事を投稿する1年くらい前に購入したルドヴィジア・グランデュローサですが、今でも挿し芽で増やした株が水槽のレイアウト製作で大活躍しています。(下の写真参照)
トリミングと挿し芽の両方で水草のボリュームが増える
水草をトリミングをすると、切った場所から新しい新芽が複数発生してくれます。
下の図はグリーンロタラをトリミングした前後での様子ですが、トリミングした場所のすぐ下にある発芽点から複数の新芽が伸びてきます。
そのため、トリミングを行うと芽の数が増えて、結果として葉もどんどん増えていくことになります。
ロタラの葉が密集したレイアウトは非常に美しく、人気のあるレイアウトの一つです。
それを実現するための一つの方策がトリミングの技術になります。トリミングする場所によっても新芽の生え方が変わるので、そこは腕の見せ所だと思いますね。
また、トリミングした挿し穂を挿し芽にすれば、株の数自体が増えますので、葉の密度はどんどん増えていきます。
大事な水草が枯れた時の保険になる
ここまで説明したら、当たり前のことのように思えますが、挿し芽で株を増やすことは大事な水草にもしものことがあった時の保険になります。
水草は丈夫そうに見えて、実は育成環境の変化に敏感なものもあり、枯れて飼育水に溶けてしまうことがあります。
そのような場合でも、挿し芽で株数を増やしておけば、挿し芽で増やした株が保険になってくれます。
水草の品種によっては、なかなか手に入らない品種もあるので、挿し芽で株数を増やしておくことをお勧めします。
成長速度が速い水草 (生育旺盛な水草) の方が挿し芽が簡単な印象
私のこれまでの経験上での話ですが、水草の中には挿し芽が成功しやすい品種と成功しにくい品種があると感じます。
挿し芽が成功しやすい水草は、
① 成長速度が速いこと
② 茎が比較的太くなること
③ 強めのLEDライトが好きな水草であること
④ 葉の数が多い or 葉の大きさが大きい
などが挙げられます。
上記の①~④に関しては、どれも「丈夫な水草」という特徴に合致する特徴になりますが、やはり丈夫な水草ほど挿し芽が成功しやすいというのは間違いない事なのかと思います。
逆に挿し芽が成功しにくい水草は、
⑤ 茎が細く繊細なもの
⑥ 葉が小さい or 葉が非常に細い
⑦ 強いLEDライトに弱い (葉焼けを起こすことがある品種)
などが挙げられます。
上で初会した①~④とは正反対で、生育が旺盛では無い水草が該当する特徴かと思います。
もちろん、生育が旺盛では無い水草が挿し芽が成功しないということではありません。
可能性での話なので、チャレンジする価値は十分にあると思います。
これまでの経験では、グリーン・ロタラ、ルドヴィジア等の系統は挿し芽が成功しやすいと感じます。
逆に挿し芽で失敗した経験が有る水草は、ミリオフィラムやロタラ sp. Hraですね。
挿し芽をする環境にも強く依存することでもあるので、失敗を恐れずに挿し芽に挑戦してみて下さい!
この記事の終わりに
この記事では、グリーン・ロタラを例に取り、挿し芽を行うポイントやそのメリットを紹介しました。
アクリウムに用いられる水草は、高いお値段で販売されているものが多く、それを購入するだけでもかなりの費用になってしまいます。
しかし、一度購入した水草を挿し芽で増やしておけば、次の水槽立ち上げやレイアウトの変更に伴う水草の所要を賄うことも出来るようになります。
また、挿し芽で増やした株は、大事な水草が枯れてしまった時の保険としても役立つのでお勧めです。
水草の品種によって挿し芽の難易度が異なりますが、親株が枯れなければ挿し芽は何度でも挑戦が可能です。
水草育成の一つのスキルとして、挿し芽にチャレンジしてみてはいかがでしょうか!?
では。