水槽を管理されている皆様は、お気づき方と思いますが、水槽の水って意外に早く蒸発していきませんか?
気付いたら1cmくらい水位が減少していて、水槽の内壁にカルシウム起因の白い粉が付いていたります。
また、水草水槽を管理されている方は、いつの間にか水草が水面まで到達していて、水の補充を急ぐこともあるかと思います。
では、水槽の水位ってどのくらいの速度で減るのでしょうか?季節によって違いはあるのでしょうか?
この記事では、冬と夏の水位減少の差と、その差が生まれる理由を説明していきたいと思います。
水槽水位を測定した背景
アクアリウムを維持していると、長期連休中などに旅行に行く時に、水槽の状態が心配になることがありませんか?
犬や猫はペットホテルを利用できるので、生命に危機が訪れることはありませんが、熱帯魚は預けることができないので、心配になる方は多いと思います。
魚の餌やり、フィルターの状態、水槽ライトがオフのため水草の光合成が出来ない、魚が飛び出していないか…考え出すと多くの項目に心配事があると思います。
その中で、水槽の水位も一つの懸念事項かと思います。
水槽を管理している方であれば気付くと思いますが、水槽の水位って意外と早く減っていきませんか?
夏休みや年末年始の長期帰省・旅行の時に水が無くなってしまわないか…私自身、心配になることがありました。
そこで、冬と夏にどのくらいの速度で水が蒸発していくのか?を測定してみることにしたのです。
水槽の水が減る理由
蒸発による水位減少と弊害
水槽の水が減る理由は単純で、空気中へと水分が蒸発していくのが原因です。
実は、水槽の水位が減っていくと弊害が起こり得ることもあります。
飼育水の中には魚の排泄物や食べ残しが原因となるアンモニアや亜硝酸、そしてバクテリアによる生物濾過で生じた硝酸が含まれております。
水が蒸発する時、実はこれらの物質は水とともに空気中へ蒸発していくのではなく、基本的に水分のみが蒸発していきます。
つまり、水分が減ってしまうとアンモニア、亜硝酸、硝酸の濃度が徐々に高くなるため、魚にとっては住みにくい環境になるといえるのです。
そのため、水が減ったら魚にとっては住みにくい環境になってしまうので、水替えと足し水には気を遣ってあげてくださいね。
エアレーション・ライトがある方が減りやすい
原理的な内容になってしまいますが、水面が揺れている方が水の減り方 (蒸発) は早いです。
水と空気の触れ合う水面付近の空気が揺れますので、水分が水中から空気中へどんどん逃げていくことになります。水面が揺れるほど、水分が逃げやすいです。
そのため、かなり激しくエアレーションされている水槽ほど、蒸発による水の減少には気を遣う必要があります。
また、水槽の上部にライトを設定している水槽の方が、表面付近の温度が上がりやすくなるので、蒸発が少しだけ早くなる傾向があります。近年発売されているLEDを利用したもので、そこまでワット数が高くないものであれば気にすることは無いかもしれませんが、白熱級やワット数が高いLEDを使うと水位の減少が起こりやすいです。
水の減る量を調査する実験
水の減少量の測定方法
水の減る量を調査するため2020年1月と6月に1週間の実験を実施しました。
方法としては、水槽に水を満水にした後、どれだけ減っていくかを毎日物差しで測定していく方法です。
物差しでの測定なので、正直なところ制度はそこまでありませんが、大体の目安は掴むことが出来るかと思います。
下の写真に、2020年6月に測定した時の水位の減り具合を示していますが、1週間で約1.5cm位水位が減りました。水槽にテープを張り、赤いラインを付けて水位の測定をしています。詳しい結果は以下で紹介していきます。
水位を測定した水槽と測定環境
まず、測定環境について記載しておきます。
水位を測定した水槽は30cm水槽と60cm水槽の2種類で、測定した時期は2020年の1月と6月の1週間を使って実験しました。
水槽はエアレーションありで、冬場はヒーターで水温を26℃設定とし、夏はクーラーで26℃に水温を下げています。
ライトはGEXのLEDライトを使用しておりますが、そこまでワット数は高くないので、LEDによる水分蒸発は少ないと思います。
飼育している生体は60cm水槽の方はテトラ系が20匹、30cm水槽は数匹の金魚を飼育している水槽です。
上蓋は水槽全面ではなく、半分だけに設置しております。
いつない環境としては、冬は室内暖房は使用せず、夏はエアコンで28℃以下の室温に保っています。
水位変化を測定した結果
水位測定の結果
それでは、実際に水位の変化を測定した結果を下のグラフで紹介します。
実際に測定した結果を見ると、実は冬の方が水が減る速度が速い!
そして、30cm水槽と60cm水槽では水の減り方に差がほとんどないという結果になりました。
この点について、下で理由を御紹介したいと思います。
冬の方が水位減少が速い!
まず、冬の方が水位減少が速い点ですが、これは「空気の湿度」と「気温と水温の差」が影響を与えています。
夏は湿度が高いため、水中から空気中へ出ていく水分量が減ります。特に測定を行った6月は梅雨時期なので、湿度が80%以上になるような日がほとんどです。そのため、空気中への蒸発が減る傾向にあります。
冬は空気が乾燥しているため、空気が水分を欲しがります。そのため、水中から空気中への蒸発が活発になり、どんどん水位が減っていきます。
また、気温と水温の差も大きいです。冬は部屋の暖房を使っていないため、室内の最低気温が5℃くらいになり、26℃の水温との差が20℃くらいになります。そのため、温かい水から空気中への蒸発がより活発に起こるのです。
冬の朝、湖や池から水蒸気が出ているのを見たことがありませんか?あれは水中から空気中へと水蒸気が出て行っている証拠ですが、水槽でも同じことが起こっているのです。
蒸発速度が水槽の大きさに依存しない理由
基本的に蒸発する速度は単位面積当たりの蒸発量で決まるため、水槽の大きさに依存はしません。
「単位面積?」と疑問マークが出た方もいるかもしれませんが…説明します。
30cm水槽と60cm水槽の上に10cm×10cmの枠を用意したとします。
このとき、その10cm×10cmの面積から蒸発していく水の量は変わるでしょうか?変わらないですよね。30cm水槽で10cm×10cmの面積から10ccが蒸発したら、60cm水槽でも同じ10ccが蒸発します。
異なる水槽サイズでも、同じ面積の中から蒸発していく量は同じなんですね。
これは最初から推測は付いていたことですが、一応確認を取るために30cmと60cmの水槽で実験をしてみました。
どのくらいの水量が蒸発した?
では、どのくらいの水の量が蒸発したのでしょうか?
蒸発量が多い冬の例 (2.7cmの水位減少) で計算してみますね。
30cm水槽は幅30cm×奥行き30cmの大きさで、60cm水槽は幅60cm×奥行き30cmのサイズです。(ガラスの膜厚は無視して計算します。)
①30cm水槽の場合
30cm×30cm×2.7cm = 2,430cm3 = 2.43L
②60cm水槽の場合
60cm×30cm×2.7cm = 4,860cm3 = 4.86L
水位で見ると2.7cmは小さく感じるのですが、水の量で見るとかなりの蒸発量であることがわかりますね。
30cm水槽では2Lペットボトル1本以上、60cm水槽では2Lペットボトル2本以上の蒸発量です。
本記事のまとめ
この記事では、冬と夏の水槽の水位減少量を実際に測定した結果を紹介させていただきました。
水位の減る速度は夏よりも冬場の方が速く、それは「空気の湿度」そして「気温と水温の差」に原因となります。
長期連休中の旅行では、水槽の水位減少が一つの心配事となりますが、2泊3日や3泊4日くらいの旅行であれば、そこまで水位が減少することは無いのかと思います。
ただし、今回の結果は私の管理する水槽での事のですので、皆様の水槽でも一度は確認しておいた方が良いですね。
水替えを行った日に水位を確認し、次の水替えの日に水位を測定すれば、誰でも簡単に見当をつけることができると思います。
この記事が、アクアリストの皆様にとって有益な情報になりましたら幸いです。