換水しない水槽で飼育水のpH変化を測定調査

熱帯魚や金魚などの魚を飼育していると、飼育環境の整備で必ず目にするのが、水槽の飼育水の「pH」です。

pHは液体が酸性かアルカリ性かを判断するための水素イオン濃度指数になりますが、熱帯魚を飼育している水槽では、その水槽内の水は必ず酸かアルカリのどちらかに傾きます。

pH値が7の時が中性なのですが、pH=7の水は作り出せば存在するかもしれませんが、川や池の水、そして水槽の中の飼育水では考えられません。どちらかに傾いているはずです。

この記事では、私の管理する水槽の中の飼育水について、水換えをしなかった場合のpHを測定してみましたので、水槽内の飼育環境と共に紹介します。


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飼育水は多くの場合に酸性へ傾きます

水槽内の飼育水は、多くの場合は酸性側へ傾きます。

pH=2といった強酸の状態にはなりませんが、pH=6~7の弱酸性と言う状態になります。

これは、フィルターや水槽内に存在しているバクテリアが、魚の糞や食べ残した餌を分解することによって、最終的に生成される分子が「硝酸」になるためです。

魚の糞や食べ残しに含まれるアンモニア分子がアンモニア分解バクテリアによって亜硝酸に変化し、亜硝酸分解バクテリアによって亜硝酸が硝酸への変化します。この一連の分解を生物濾過と言い、魚に取って有害なアンモニアや亜硝酸を、比較的毒性の低い硝酸への分解してくれる濾過機構です。

この生物濾過があるからこそ、水替え頻度を落としてもアクアリウムを管理することが出来るのです。

しかしながら、最終生成物である硝酸を文化してくれるバクテリアはいないため、水替えをしなければ飼育水の中の硝酸濃度が上昇します。硝酸は高校の化学でも学んだ通り酸性になりますので、硝酸が溜まるほどpHが下がって酸性化が進むことになるのです。

酸性化した飼育水のデメリット

水槽の飼育水が酸性化していくと、やはりデメリットが生まれます。基本的には魚の体に影響があることなのですが、以下でその内容を紹介します。

魚の粘膜を傷つける場合がある

まず最初に魚の持つ粘膜を傷つける可能性があるということです。

人間の皮膚は弱酸性に傾いているので、pH=6.5~7くらいの水は、実は体には特に害のない水になります。しかし、それ以下になってくると、皮膚に刺激を与えるような状態になります。

もちろん、酸性化が進むと人間と同じように、魚にとっても悪い影響が出てきます。魚は水中で生活し、水の中から酸素を取り込むため、人間の皮膚以上に水の環境変化に対して敏感です。

例えば、pHが5を下回るような酸性域になると、魚の粘膜や呼吸器系、また内臓にも影響が出始めて体調を崩す魚も多くなります。

酸性化が進むと水替えの時にpHショックの恐れがある

例えば、水替えをあまりしていない水槽の飼育水は、単純に考えれば酸性化がどんどん進行していくことは想像が付くかと思います。

下でも紹介しますが、2週間程度水替えを実施しなかった場合、pHは1くらい下がってしまいます。

pHが1なら問題無いだろうと思うかもしれませんが、デリケートな体を持つ魚にとっては、そのpHの違いが命に関わる変化になってしまいます。

これを「pHショック」と呼びますが、pHが急に変化することで魚がショック状態となり、命を落とす危険性のある現象となります。

そのため、水替え頻度の少ない水槽は、水槽の中の水を一度に1/2くらい変えると急激なpH変化が起こり、魚やエビなどがpHショックを起こしやすいと言えるのです。


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pHを測定した水槽の飼育環境の紹介

では、ここからは実際にpH測定を行った水槽を紹介したいと思います。

pH測定方法について

pHの測定は「TetraTest Teststreifen PH」という商品を使って行いました。 (下の写真参照)

この商品は、pHが0.5刻みで測定できるような試験紙になります。そのため、そこまで細かいデータ取りはできません。もし、より細かいpH測定をしたい方は、デジタルpH計などを使用することをお勧めします。

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pH測定水槽① 60cm水槽

pHの測定をした水槽の一つが60cm水槽です。

外部フィルターとしてエーハイムの2213を導入し、水量が約55Lある水槽になります。

また、飼育している生体としては、ネオンテトラ等の小型カラシン15匹、コリドラスを5匹、そしてラスボラを5匹を飼育している水槽になります。

普段は1週間に1回か2回の水替えを行っている水槽ですが今回は約20日間、水替えを実施しませんでした。ただし、蒸発して減った分の水は継ぎ足していきました。

pH測定水槽② 25cm水槽

次にもう一つの25cmの水槽でもpHを測定しています。

フィルターは壁掛けフィルターを利用して、飼育している生体数は金魚が2匹となります。金魚は琉金と丹頂で、Mサイズになるので少し窮屈な25cm水槽になっています。

この水槽も、基本的には週に1度は換水をしておりましたが、今回の実験で約20日の換水無しとしました。また、60cm水槽と同じように、蒸発で減った分の水は継ぎ足していきました。

pH測定の結果を紹介

それでは、実際に20日間のpH変化を測定した結果をグラフで紹介します。

縦軸にpHの値、横軸に経過日数を取っています。毎日pH測定すると、pHの試験紙が足りなくなるので、4日に一度のpHチェックとしています。

グラフに示すように、25cm水槽の方がpHの変化が早くなっていることがわかります。

これは、25cm水槽の方が水の量が少なく、かつMサイズの金魚と言う大きな魚がいるため、排泄物の量も多くなり酸性化が進む速度が速くなっていったということかと思います。

また、60cm水槽については生体数が多いのですが、水量が多いこともありpHの変化が鈍くなったものと考えられます。

ただし、約2週間水替えをしなくても、上記の水槽の飼育環境であれば、pH=5.5くらいを維持できていることが分かります。pH=5.5は熱帯魚も何とか生きていける環境となります。しかし、pHの変化は急にスピードが上がることもあるので、早めに水替えすることが必要です。

今回の実験では、これ以上pHが変化することは危険と思い、20日で実験を終了し、pHが急激に変化しないように、少しずつ水換えを実施しました。

水量の多い水の方が水質が安定して熱帯魚の飼育がしやすいと聞きますが、pHの観点でもその理由がわかりますね。

また、約20日間換水をしなかったのですが、熱帯魚への影響は目に見える変化は特に感じられませんでした。生体数がそこまで過密では無かったためであると考えていますが、改めて考えてみると、魚にを過酷な環境に置いてしまったことに変わりはないと思います。もし、皆様が同じような測定をされる場合には、必ず魚の動きや体調を見ながら行ってあげて下さい。


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飼育水のpH変化を抑えるには?

では、pHの変化を抑えるためにはどうすればよいのでしょうか?

方法は簡単で、次の①②に示す通りです。

①換水頻度を上げる

②生体の数を増やさない

換水頻度を上げれば、pHが下がる前にpH=7に戻すことが出来ますし、生態の数が少なければ糞や食べ残しも抑制できるので、硝酸の生成を抑えることができます。

どちらの方法を採用するかは、皆様の飼育寛容とご相談ください。

私個人としては、水槽の中の汚れも掃除したいので、水替え頻度を上げるようにしています。

また、pH調整剤や水替えが少なくても水質の変化を抑制できる薬も販売されているので、皆様のライフスタイルに合わせた方法でpHの変化を防いで下さい。

この記事のまとめ

この記事では、水替えを行っていない水槽の飼育水について、pHを測定した結果を紹介させていただきました。

生物濾過の紹介の部分で話したように、生態を飼育するということは最終生成物である硝酸を生み出すことになります。

そのため、飼育水の多くは酸性に傾き、水換えをしていない水槽はどんどん酸性化が進みます。

熱帯魚の種類によっては、pHが6を下回ると体長に支障がある場合もありますので、出来る限りpHの変化は無くせられるように管理してあげて下さい。

そのためには、面倒臭い換水にも慣れていかねばなりませんね!