淡水アクアリウムの水草「ショートヘアーグラス」は、水草水槽だけでは無く、流木や石をメインにしたレイアウト水槽にも使用される万能な前景草として知られています。
ショートヘアーグラスのグラスは、ガラス (glass) では無く、芝生を意味するgrassに由来しています。また、同じく前景草として有名なヘアーグラスよりも葉の長さが短いことからショートヘアーグラスという名前が付けられています。
ショートヘアーグラスは、淡水アクアリウムではとても身近な水草ではあるのですが、実は育てるのにはそれなりの知識と設備が必要になります。
この記事では、私が初めてショートヘアーグラスを水槽レイアウトに取り入れた時のお話と、その栽培が上手くいかなかったこと、そしてその解決のために行った設備導入などを詳しく記載していきたいと思います。
ショートヘアーグラスに初めて挑戦した水槽について
ショートヘアーグラスを導入した経緯
ショートヘアーグラスは、私がアクアリウムに復帰した時から存在は知っていた水草なのですが、一度も水槽のレイアウトに取り入れることが無かった水草でもありました。
レイアウトに導入しなかった理由は特に無いのですが、大きな葉の水草が好きだったことや、前景草を必要とするレイアウトに手を付けていませんでした。
しかし、一度くらいは水草水槽で前景草を育てようと思い、ショートヘアーグラスを取り入れたレイアウト水槽に挑戦をしてみました。
特に事前の予習も無く、適当にアクアリウムショップで組織培養のヘアーグラスを買ってきて、ソイルに植え付けてみました。
その結果、下で紹介するように、ショートヘアーグラスがなかなかうまく育たないという事態になったのです…。
ショートヘアーグラスを植えた水槽の設備
今回の記事で紹介するショートヘアーグラスは、水草レイアウト水槽として立ち上げた60cm水槽に植栽を行いました。
フィルターは外部フィルターのエーハイム2213、ソイルはデルフィス製のリベラソイルを使用しています。
ライトは下でも紹介しますが、最初は「GEX製のCLEAR LED POWER III」を使用し、後から「Aqullo製のTriangle LED Bright」を追加しています。点灯時間は1日に10時間前後としています。
二酸化炭素は、最初は添加していませんでした。しかし、ショートヘアーグラスの育成状態が芳しくないことから、ADA製のアドバンスフォレストシステムを追加で導入しました。二酸化炭素の添加量は、その時に状況に応じて変更しています。平均としては、2秒に1滴程度で管理しています。
換水頻度は、1週間に1度、水槽の1/2の水を交換しています。
また、飼育している魚は小型カラシン系の魚が焼く30匹で、ヤマトヌマエビとミナミヌマエビを数匹ずつ入れてコケの処理をしてもらっています。
植栽から2週間経っても新しい葉が出てこなかった
上でも記載したのですが、ショートヘアーグラスを導入した当時は、ショートヘアーグラスの知識はあまり無い状態でした。
一般的な水槽用LEDライトがあれば、問題無く育つだろうと思っていました。
植栽した直後の様子が下の写真になります。
アクアリウムの教科書やYoutubeで説明されている通り、組織培養のショートヘアーグラスを小さく小分けして、概ね一定の間隔で植栽した状態になります。
植栽を行った後の数日くらいの時点では、特に大きな問題は起きていませんでした。
しかし、2週間経っても、新しい葉が多く芽吹いてくる雰囲気がありません。次の写真が2週間後の様子ですが、植栽当初に比べて葉の色が悪くなっている様子が見て取れます。枯れてはいないのですが、新しい葉が少ししか出ていない状況です。
組織培養のショートヘアーグラスを植栽したのですが、水上葉だった部分は色が悪くなり、かろうじて新しく生えてきた緑の葉が見えているような状況です。
この時は、LEDライトがGEX製のCLEAR LED POWER IIIのみの状態で、二酸化炭素の添加も行っていませんでした。
二酸化炭素を添加しても状況は全く変化無し
上の状況になって、ショートヘアーグラスの栽培は一筋縄ではいかないと気付きました。もっと簡単に育てられると思ったのですが…。
そこで、二酸化炭素が無いことが原因だろうと思い、二酸化炭素の添加を行うことに決めました。導入したのは、最も簡単に二酸化炭素導入が出来るADA製のアドバンスフォレストシステムです。
二酸化炭素の添加量を変化させながら、ショートヘアーグラスの状況を確認していったのですが、それでも状況は打開せず…ショートヘアーグラスの成長速度が遅いまま月日が流れました…。
LEDライトを2つに増強して状況が好転!
ショートヘアーグラスの事を色々調べていき、アクアリウムショップの店員さんにも相談を持ち掛けてみると、どうもライトの強度が足りないという状況では無いか?ということが判明しました。
GEX製のCLEAR LED POWER IIIは、水草も育つライトとして販売されているものです。しかし、比較的光量が少なくても育つ水草には適応したライトのようで、ショートヘアーグラスや赤色系の水草には光量が不足するとのこと。
そこで、明るいアクアリウム用LEDとして有名なAqullo製のTriangle LED Brightを追加で購入。二酸化炭素の添加と強いLEDライトの併用でショートヘアーグラスの育成改善を図りました。LEDライトは、GEX製のものとAqullo製の2つを併用することにしました。
その結果、見る見るうちにショートヘアーグラスの育成状況が良くなり、どんどん新しい葉を伸ばしてくるでは無いですか!?
LEDライトを2つに増強して約1か月後の状態が次の写真ですが、見るからに状況が改善していることがわかるかと思います。
正直なところ、このショートヘアーグラスは、枯れてしまうのではないかと思っていましたが、LEDライトの追加によって息を吹き返しました。
まだまだソイルの表面が見えている状況ですが、このまま育成してくれれば、ソイルの全面を覆って、草原の様な前景になってくれるのではないかと期待しています。
そして、水槽のガラス面を見てみると、次の写真の様に、ショートヘアーグラスのランナーがしっかりと伸びていることが分かります。
LEDライトをGEX製のみで育ててていた時は、この写真の様なランナーは全く見られませんでした。それが、わずか1ヵ月程度で、しっかりランナーが伸びている様子が見て分かるようになりました。
ここまでランナーが充実すると、新しい葉を展開する速度も上がります。また、毎日観察していると、ランナーが日々成長して次々と葉を展開させていく様子も見えるようになります。
また、この時の二酸化炭素添加量ですが、2秒に1滴程度で管理していました。
前景草は背が低いのでライトの強度は必須
後から色々と聞いた話ですが、前景草には強い光量のLEDライトが必須とのことです。ショートヘアーグラスに限らず、グロッソスティグマやキューバパールグラスなども同様です。
前景草と呼ばれる背の低い水草達は、水槽の底で成長することになります。後景草のようにLEDライトに近い所まで葉を伸ばして光合成を行うことができないのです。
そのため、LEDライトは比較的光量の大きなものを用いてあげないと、前景草が上手く育たないということなのだと思います。
以前の記事で、LEDライトの光が水槽の水深に対して、どのように減衰してしまうのかを試算した結果を紹介しました。
その時の試算では、青色の光は比較的減衰量が少ないのですが、赤色の光は水深30cm程度でLEDライトの15%の強度が失われるという結果となりました。
この記事の終わりに
この記事では、淡水アクアリウムの水草として人気の「ショートヘアーグラス」の育成に必要な条件について、私の経験を紹介させていただきました。
私の栽培環境では、一般的なLEDライト1つのみの設置、そして二酸化炭素の添加だけでは上手く育ちませんでした。
しかし、高強度のLEDライトを導入したことで、水槽の底まで強い光が届くようになり、ショートヘアーグラスがしっかりと成長する環境となりました。
下の写真は、ショートヘアーグラスが光合成を行って酸素の気泡を出している写真になります。このような状態にするためには、それなりの設備を用意しないといけないのだと思いますが、ここまでくると安心して成長を見届けられます。
ショートヘアーグラスの栽培に苦労されている方にとって、参考になれば幸いです。