関西の伝統的な海釣り釣法の一つに「エビ撒き釣り」があります。
海中に活きたエビを撒いて魚を寄せ、そこに挿し餌を送り込んで魚を釣る釣法になりますが、その餌に用いられるエビが「シラサエビ (スジエビ) 」です。
生きたシラサエビを使った釣りのため、スズキ、チヌ、メバルなど、様々な魚種を釣ることができる釣法として有名です。
私自身もエビ撒き釣りを楽しんでいる釣り人の一人なのですが、エビ撒き釣りに出掛けると、頻繁にシラサエビが余ることがあります。
余ったシラサエビは、その場で海に撒いて捨ててしまうのですが…
ある日、子供から「このエビを飼ってみたい」と言われ、熱帯魚の水槽で飼育してみることにしました。
飼育開始から半年が経過しましたので、飼育方法や注意点などを紹介したいと思います。
あくまでも個人の経験と意見ではありますが、シラサエビの飼育をお考えの方に御参考になれば幸いです。
シラサエビとは??
シラサエビは、河川や沼に生息する淡水の小さなエビで、体長は最大で5cm~6cm程度まで成長します。
関西では琵琶湖がシラサエビの一大産地となっており、安価に流通することから「エビ撒き釣り」という釣法が定着したのだと聞きます。
下の写真がシラサエビとなります。
シラサエビは、地域によっては呼び方が異なり、「スジエビ」「モエビ」「ヌマエビ」と呼ぶところもあります。
アクアリウムの正解ではヤマトヌマエビやミナミヌマエビがコケ取り生体として有名ですが、シラサエビはヤマトヌマエビよりも大きく育つため、水槽の中に入れると存在感がかなり強くなります。
シラサエビとヤマトヌマエビの違いを写真で比較
次にシラサエビとヤマトヌマエビの違いについて、実際に写真で見比べて比較をしてみたいと思います。
下の写真で、左がシラサエビ、右がヤマトヌマエビになります。
ヤマトヌマエビはアクアリウム業界では超有名なコケ取り名人のエビですが、体長の観点ではシラサエビはヤマトヌマエビよりも大きく育ちます。
また、シラサエビはその名の通り、体が白っぽく見えることから「シラサ」という名前が付いたと言われています。
ヤマトヌマエビは体に沿って縦の茶色いラインが入っていることが特徴ですが、シラサエビは横方向に筋のような模様があることが特徴です。「スジエビ」と呼ぶ地域があるのは、この模様が理由です。
また、シラサエビは両目が少し離れており、ピノキオシュリンプに似た特徴があります。
シラサエビを飼育している水槽の管理方法
次に筆者が飼育しているシラサエビの水槽管理方法について記載しておきます。
飼育している水槽は、ブラックファントム等の小型カラシン科の熱帯魚が泳ぐ45cm水槽で、合計で3匹のシラサエビを飼育しています。
(最初は小さなシラサエビを選んで10匹導入したのですが、結果的に3匹に落ち着きました。その理由は下に記載しております。)
フィルターはGEX製の壁掛けフィルターを使用しており、水温は年間を通じて23~24℃で管理しています。
また、換水頻度は1週間に1度、水槽の1/2の水量を交換しています。
餌は朝に1度だけ与えており、水草はアヌビアス・ナナとアヌビアス・ナナ・ゴールドが導入されています。
この水槽で約半年間、シラサエビを飼育している状況です (2021年12月時点)。
シラサエビ飼育で最も注意が必要なのは水槽導入時
シラサエビを実際に飼育してみて、最も注意すべきだと感じたのは「水槽導入時」です。
以下では、その注意点を3つ理由と共に紹介したいと思います。
シラサエビを選ぶときは傷ついていない個体を選ぶ
まず一つ目は、水槽に導入するシラサエビの状態についてです。
シラサエビは前述の通り、釣りの餌で使われることから、自然採取以外の方法で入手するには釣具店で購入するのが一般的となります。
釣りの餌として扱われるため、シラサエビはアクアリウムショップのような丁寧な扱いを受けていません。
網で雑に掬われて、計量カップに入れられて販売されているため、至る所に傷を負っている個体が多いのが現状です。
そのため、下の写真で左に写っているシラサエビの様に、触角が完全に無くなっている個体も見受けられます。
このように傷ついてしまっているシラサエビは、水槽に導入しても短期間でお星様になってしまう懸念があります。
水槽導入時には、個体一匹一匹の状態を仔細に確認しておきましょう!
自然採取のシラサエビであれば、このような傷付いた個体は少ないのだと思います。
水合わせを慎重に行っても水槽導入に失敗することがある
次の注意点は、水槽導入時の水合わせの難しさです。
シラサエビは日本に生息する淡水のエビであるため、釣具店では冬場にヒーターを入れずに管理されている所がほとんどだと思います。
そのため、冬場には水温10~15度程度で飼育されている状態となります。
そのシラサエビを水温25度の熱帯魚水槽で飼育する事を考えると、水合わせ時の水温変化は非常に大きくなります。
点滴法での水合わせに1時間程度の時間をかけたとしても、短時間の間で釣具店の管理水温15℃から自宅の熱帯魚水槽の水温25℃に変化させられるわけです。
ですので、アクアリウムショップで販売されているヤマトヌマエビやミナミヌマエビよりも、水合わせが難しいと言えるのです。
実際、私がシラサエビを飼育する際、合計で10匹のシラサエビを導入したのですが、導入したその日に短期間で3匹のシラサエビが立て続けにお星様になってしまいました。
これは水質・水温が急激に変わったことが主要因と考えて良いかと思います。
水槽の飼育水に慣れてしまえば、その後は大きな問題無く飼育が出来ています。
シラサエビが共食いすることもあります…
最後の注意点はシラサエビ同士の共食いです…
10匹導入したシラサエビのうち、3匹は上記の通り水合わせでお星様になり、4匹は共食いをしている姿を見ることとなりました。
45cm水槽という水槽サイズが小さ過ぎて、シラサエビ同士の距離が近かったこと、そしてシラサエビがコケや藻に加えて肉系・タンパク質系の食べ物を好んでいるからだと思われます。
もちろん、コケや藻も食べるのですが、水槽内に生えているコケには限りがあるため、お腹が空いた時に共食いを始めてしまったのだと思います。
この事実を知ってから、少しだけ多めに人口飼料を与えることとしました。
その結果、現在では45cm水槽に対して、3匹のシラサエビの飼育で安定している状態になります。
熱帯魚との混泳は特に問題は起きていません
続いて、熱帯魚とシラサエビの混泳についてです。
現在、上記の通り、45cm水槽でシラサエビと熱帯魚を一緒に混泳させています。
熱帯魚はブラックファントムテトラ2匹、バルーンプリステラ2匹、エンドラーズ2匹となりますが、シラサエビが熱帯魚を襲うようなシーンは見たことがありません。
基本的にシラサエビは水底で生活するか、アヌビアス・ナナの葉の近くで生活するかのいずれかになるので、中層から表層を生活圏にしている熱帯魚とは干渉が生まれないのだと思います。
もしかしたら、コリドラスの様に水底を生活圏にする熱帯魚とは、何かしらの支障が生まれる可能性はあります。
もし、底モノの魚とシラサエビを混泳されている方がいれば、コメント欄でその様子を教えていただけましたら幸いです。
餌は沈下性の人口飼料で問題無し
シラサエビに与える餌ですが、我が家では沈下性の熱帯魚用の餌を与えています。
シラサエビもヤマトヌマエビやミナミヌマエビと同様に、水槽内に生える茶ゴケや糸状藻を食べてくれます。
しかし、コケや藻が生えるのには時間も要するので、シラサエビの健康状態維持・共食い防止の目的で、日々の餌は人口飼料を基本としています。ただし、量は必要最低限の量に留めています。
45cm~60cmクラスの水槽内にシラサエビが1匹しか導入されていないような場合には、人口飼料は不要かと思います。
人口飼料を食べすぎると、藻やコケを食べなくなる恐れもありますので…。
水槽に発生するコケや藻を食べる能力の観点でシラサエビとヤマトヌマエビと比較すると、私の肌感覚では、ほぼほぼ同じくらいの能力だと思います。
この記事の終わりに
この記事では、海釣り用の餌として有名な「シラサエビ (スジエビ) 」の水槽での飼育方法を詳細に紹介させていただきました。
シラサエビは日本に広く分布する淡水のエビであり、日本の気候に耐える能力を持っています。そのため、水槽にヒーターを設置する必要はありませんし、水質に慣れてしまえば特別な管理項目は無く飼育が可能なエビです。
シラサエビの体長が5cmを越えることを考えると、大きな個体は熱帯魚の水槽だけでなく金魚とも混泳が可能かもしれません。
また、ヤマトヌマエビと同様に、コケや藻を処理してくれるタンクメイトとしても活用が可能だと思います。
飼育上の注意点を挙げるとすれば、水槽導入時の水合わせを慎重に行うことや適切な飼育数を守ることです。水合わせについては、ビーシュリンプ等を水槽に導入する際と同じ方法で時間をかけて行う必要があります。また、シラサエビは過密になると共食いをする姿が見られたので、水槽サイズに合わせた飼育数の管理が必須だと思います。
釣り場でシラサエビが余ってしまった場合、多くの方がシラサエビを海へばら撒いて帰宅しているかと思います。しかし、シラサエビは水槽でも飼育が可能な淡水エビですので、御自宅に水槽がある場合には、そこへ2, 3匹導入してみてはいかがでしょうか?
いつも釣りの餌として使っているシラサエビが、水槽の中でどのような仕草を見せるのか?どのような生活をしているのか?を観察するのも楽しいものです。
では!