【熱帯魚】小型カラシン科のネオン病 -実際の症状と行動の変化-

熱帯魚の中でも、その魚体の美しさや種類の豊富さで人気の「小型カラシン科」の魚たち。

アクアリウムに詳しくない方でも一度は名前を聞いたことがあるであろうネオンテトラ、鮮明で輝く赤い魚体のレッドファントムテトラ、腹部が下方に出っ張っている特徴的な体を持つハチェットフィッシュ…

主に南米アマゾン流域やアフリカに生息する小型カラシン科の熱帯魚ですが、アクアリウムの入門と言える種類から珍しい品種(珍カラと呼ばれています)まで数多くの品種があり、初心者からベテランさんまで広く愛される熱帯魚の「花形」と言えるような存在です。

そんな小型カラシン科の魚たちですが、「ネオン病」と呼ばれる非常に重い病気があることを御存じでしょうか?

ネオン病は、カラムナリス菌と呼ばれる病原体が原因となる魚病ですが、珍しい病気でも無く、皆さんの管理する水槽の中でも発症するリスクがある病気となります。

そして、ネオン病は発症すると完治させることが非常に難しく、そのまま命を落としてしまう個体が多い病気であり、小型カラシン科にとっては致命的な病気の一つとも言えるのです。

この記事では、そのネオン病について、筆者の管理する水槽で発症した実例を紹介したいと思います。

実際にネオン病で生じた症状や、ネオン病に罹った魚の行動の変化についても詳細に記載していきます。


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体色が白色化したカージナルテトラ -ネオン病の発症-

本記事で記載するネオン病ですが、筆者が飼育しているカージナルテトラが罹患した時のことを詳細に紹介していきたいと思います。

まずは、カージナルテトラがネオン病に罹った時の状況・症状を記し、罹患後の行動の変化の様子も記載していきます。

ネオン病を発症した時の状況 -突然、魚体が白色化-

カージナルテトラの体に変化が起きたのは、2021年7月初旬の事でした。

朝、いつものように水槽のLEDを点灯すると、青と赤の体のカージナルテトラの群れの中に、1匹だけ真っ白な魚体をした魚が混じっていました。

真っ白と言うのは、まるでアルビノ個体の様な状態で、前日までは見られなかった変化でした。つまり、一晩にして魚体の色が白色化してしまったということになります。

その時の写真を下に載せておきます。カージナルテトラの群れの中に、写真の中央に1匹だけ白い体の個体がいるのがわかると思います。

「え?これがカージナルテトラ?」と思われるかもしれませんが、このカージナルテトラは前日までは正常な色をしていたんです…。

熱帯魚の病気には伝染するものが多く、症状が急に進行するものも多いです。そのため、初期段階での隔離と早い治療着手が重要になります。

今回のカージナルテトラについても、急激な体色の変化は正常な状態ではないと判断し、直ぐに他の水槽に隔離して治療を開始することとなりました。

ネオン病と判断できる症状について

魚体が急に白色化したカージナルテトラですが、ネオン病に罹患してると判断できる症状がいくつかありました。

その症状を次に列挙します。

① 体色が急に白色化してしまったこと

② 群れから離れて1匹で行動する時間が長いこと

③ 泳ぎ方にぎこちなさがあること(正常な動き・泳ぎではない仕草を見せる状態)

④ 餌を与えても食べようとしないこと

⑤ 尾鰭や背鰭の一部が溶け始めている症状があること

この①~⑤に全て当てはまる病気を考えると、これまでに報告されている病状の例と比較しても「ネオン病」に合致するのです。

これらの症状以外にも、ネオン病には「魚体に血がにじむ箇所がでてくる」という症状もあるようですが、その症状については発見した時点では見られませんでした。

体色が白色化したのは20匹の中で1匹だけ

このカージナルテトラは、60cm水槽で飼育しているもので、合計で20匹のカージナルテトラを飼育している中の1匹でした。

その他のカージナルテトラには全く変化が無く、いつも通りの健康的な魚体で、餌もしっかりと食べている状態でした。

ネオン病を発症したカージナルテトラが1匹出たので、他のカージナルテトラにも伝染するのでは?と思ったのですが、隔離したタイミングが早かったこともあり、他のカージナルテトラにはネオン病が伝染することはありませんでした。

ネオン病発症の前の環境の変化について

ネオン病は冒頭でも記載しましたが、カラムナリス菌と呼ばれる病原菌が原因となる魚病です。

カラムナリス菌自体は、水槽の中にも少なからず生息している菌ですが、何らかの変化を起因として小型カラシン科の魚にネオン病を発症させると言われています。

その変化とは、飼育水の汚れや水槽内の汚れが蓄積した場合、魚が消化不良などの体調変化を起こした場合などが挙げられます。

今回のカージナルテトラのネオン病罹患ですが、直前に水槽の管理で変化を起こしたことがありました。

それは、水槽内の水草の植替えです。

水槽のリセットでは無く、植栽していた水草の種類を変更するため、水草の一部をソイルから抜いてしまいました。

その際に、ソイルの中に蓄積していた汚れが飼育水中に拡散してしまい、一時的に飼育水が非常に汚い状態になってしまいました。

また、水草を植え替えたことで、水槽内の環境 (生態系のバランス) の変化も引き起こしていたと考えられます。

さらに、水槽内の環境の変化は、少なからず魚たちにストレスを与えていることに間違いはありません。

これらの変化がトリガーとなり、1匹のカージナルテトラがネオン病に罹患してしまったのではないかと予想しています。


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グリーンFゴールドで治療 (薬浴) を開始

ネオン病の原因はどうであれ、兎にも角にも治療を開始しなければなりません。

ネオン病の原因となる病原菌は、上述の通りカラムナリス菌となります。カラムナリス菌は「尾ぐされ病」を引き起こす病原菌としても知られており、これに効果のある薬はグリーンFゴールドが有名です。

隔離水槽に移動させたカージナルテトラを、グリーンFゴールドで薬浴させて治療していくこととします。

隔離水槽と記載しましたが、カージナルテトラは小型の熱帯魚になるので、虫かごに水を張ってそこにグリーンFゴールドを投入して薬浴させていきます。

フィルターが無いため、2日に一度、隔離水槽の飼育水を1/2換水し、餌は与えない環境で治療を進めます。

18日経過しても症状の改善が見られず…お星様に…

グリーンFゴールドを用いた薬浴を開始し、カージナルテトラの回復を祈りましたが、2週間経過してもほとんど変化はありませんでした。

下の写真で、左側が薬浴開始直後の様子、右の写真が2週間後の様子となります。魚体の色が戻っているわけでもなく、魚体の見た目もほとんど変化がに事がわかるかと思います。

熱帯魚の白点病や穴あき病を過去に経験したことがあり、その時には2週間経過するころには変化が見られていたのですが、ネオン病の場合には魚体に変化がほとんど見られません。

グリーンFゴールドを使ったことで病気の進行が遅くなっている可能性はありますが、症状が良くなる兆しがみえませんでした。

そして、治療開始から18日後になりますが、治療の努力が報われず、カージナルテトラが命を落としてしまう結果となってしまいました。

治療期間の終わりの頃(ネオン病の末期)には、各鰭がかなり傷つき、かつ体表に血のにじむような部分が出ておりました。また、泳ぎ方もぎこちなくなってしまっている状態で、「助からないだろうなぁ…」と思えるような状態でした。

魚の病気は治療が難しいのは重々承知の上でしたが、2週間以上の治療の末に残念な結果に終わると辛いものがありますね…。

ネオン病の症状が魚体に現れた時点で治療を開始しましたが、目に見えるような症状になっている時点で、ネオン病がかなり進行しており、助からない状態になっていたのかもしれません。穴あき病や松かさ病などの魚病も、病気による外傷が目視確認できる時点で、症状はかなり進行している状態だと言われています。

ネオン病の場合も同じなのだと思いますね。

身体が白色化するという異常事態は、それなりに病気が進行している証拠だったのかと…。


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この記事の終わりに

この記事では、小型カラシン科の熱帯魚にとって難病となるネオン病の症状や、ネオン病に罹った魚のとる行動の変化について、実例の詳細を記載させていただきました。

ネオン病の症状が確認出来た時点で治療をすぐに開始したのですが、それでもネオン病に罹患したカージナルテトラを助けることができませんでした。

魚の飼育は猫や犬(哺乳類)の飼育とは異なり、頻繁に体に触れたりすることが出来ず、かつ病気の症状に気付きにくいという難しさがあります。そのため、魚が病気に罹患すると、気づいた時点で病気がかなり進行しており、治療が難しく命を落としてしまうパターンが多いです。

魚の飼育で最も難しいのが病気の治療だと言われますが、まさにその通りだと思います。治療して治る場合もありますが、治らずに命を落としてしまう魚が多いということは忘れてはいけない事実です。

魚が病気に罹った時、それが何の病気なのかを的確に判断し、適切な治療を開始するのは飼育者である我々アクアリストのタスクです。

どのような病気があるのか?治し方はどうなのか?という情報を事前に身に付け、いざと言う時のために備えておきましょう!

以下のリンクでは、私が熱帯魚の飼育の中で経験した魚病について、症状や治療法をまとめています。お役に立てる記事があれば幸いです。

では!