淡水アクアリウムを楽しんでおられる方は、熱帯魚とともに水草の栽培を楽しんでいらっしゃる方が多いのではないでしょうか?
自然の風景を切り取ったような美しい水草水槽のレイアウトは、心を惹かれるものがあります。
近年はアクアリウムショップに行けば様々な種類の水草が入手できますし、専門店やインターネットでは海外から輸入された水草も購入することができます。水草水槽の楽しみの幅が本当に広がっているように思います。
また、水草育成用のLEDライトや二酸化炭素添加装置なども登場しており、一つも二つも上のレベルで水草水槽を楽しむことができます。
しかし、水槽の中での水草栽培には様々なトラブルも付き物です。
苔の増殖による水槽美観の悪化、水草が上手く育たないこと、水草が溶けてしまうこと…等々、様々なトラブルがあります。
本記事では、それらのトラブルの中から「水草の葉焼け」について紹介したいと思います。
具体的には、ブセファランドラの葉が白く白色化してしまったというトラブルになります。その経緯や葉焼けと判断できた理由などを交えて紹介したいと思います。
ブセファランドラの葉が白く変色した状態に
まず最初に、ブセファランドラの葉が白く変色してしまった件について、その経緯などを紹介したいと思います。
葉が白色化してしまったブセファランドラは「ブセファランドラ・クダガン」で、数多くあるブセファランドラの中でも最も有名な品種となります。
下の写真は、葉が健全な状態だった時のブセファランドラ・クダガンになりますが、深い緑色にラメが入った本当に綺麗な葉を持っていることがわかります。見る角度によって葉の色が変わり、葉がキラキラ光る品種となりますが、人気が出るのも納得の美しさです。
そして、このブセファランドラ・クダガンが、ある時から徐々に葉の色が白く濁り始めて、下の写真に示すように、葉の一部が白くなってしまいました。白色化した部分は黄色の矢印で記していますが、所々に白色化した葉があります。
水温や水質に急激な環境変化があったわけでは無いですし、フィルターの清掃や飼育している生体も変化させていません。
そのため、なぜ白色化し始めてしまったのかが、理由が分かりませんでした。
ちなみに、水槽の環境としては、60cm水槽で水温は25℃で一定、換水は週1回で1/2の水を入れ替えていました。また、生体数も小型カラシン科の魚が25匹くらいであり、生体が過密と言うわけでもありません。
葉が白く変色するのは葉が枯れた状態なのか?
葉が白く変色するという現象は、単純に考えれば葉が枯れているのではないかと思われます。
しかし、ブセファランドラの場合も他の水草と同様に、葉が枯れたのであれば枯れた場所が黄色に変色することが一般的です。
過去に、ブセファランドラ・クダガンの葉が枯れ落ちたことがありますが、その時は黄色く変色して、まさに葉が枯れ落ちていると判断できる状況でした。
今回は、その状況とは異なります。
葉が白色化した状態が数週間続いても、その葉が枯れ落ちていく様子は見られませんでした。
さらに、水槽の中ではヤマトヌマエビを飼育していますが、ヤマトヌマエビは枯れたブセファランドラの葉を好んで食べることがわかっています (下のリンクの記事を参照ください)。しかし、ヤマトヌマエビが白色化したブセファランドラの葉を食べる様子も見られず、葉が白色化した状態で月日だけが過ぎていきました。
つまり、単純に葉が枯れた状況ではないと言えるのです。
葉の変色は強すぎるLEDライトが原因と判明
では、なぜブセファランドラの葉は白く変色してしまったのでしょうか?
白色化した状態で数週間経過しても、葉は枯れ落ちていく様子もありませんでした。
そんな中で、ブセファランドラの葉を観察していると、ある重要なことに気付きました。
そして、それがブセファランドラの葉の白色化を解決する道筋となりました。
ブセファランドラの葉をよく観察すると白色化したのは一部分
その気付いたこととは、ブセファランドラの1枚の葉を見てみると、一部だけが変色して、残りの部分は綺麗な緑色を維持しているということです。
言葉で説明してもわかりにくいので、下の写真を見て下さい。
一枚の葉の中でも、葉の色が正常な部分と葉が真っ白に変色した部分が完全に領域分けされていることがわかるかと思います。
上で記載しましたが、この状態は葉が枯れている状態ではありません。この葉ブセファランドラの株の下の方にある葉なので、かなり古くから株に存在している葉になります。言い換えると、かなり年を取った葉になります。
そのため、この葉が枯れているのであれば、とっくに葉が枯れ落ちて朽ちていてもおかしくはありません。
強すぎるLEDライトで葉が焼けた状態になっていると判断
では、上の写真で示したように、葉の一部だけが白色化する理由は何なのでしょうか?
上で紹介した経緯や、葉の状態を考慮すると、答えは「強すぎるLEDライト」が原因だと結論付けました。
このブセファランドラ・クダガンを育てていた水槽では、赤く染まるロタラ・ベトナムも育てています。そのロタラ・ベトナムを真っ赤に染め上げるために、次の2つの水槽用LEDライトを併用していました。
①アクロ製のTriangle LED Bright
②GEX製 CLEAR LED POWER III
2つのLEDライトを使うと、強い光量によってロタラは真っ赤に染まりますが、ブセファランドラにとっては光が強すぎたのだと思われます。
上で示した写真のように、1枚の葉でも白色化した領域と正常な領域があったのは、葉の色が正常な領域は上にある葉によってLEDライトが遮られていた部分だったのです。
LEDライトの光が直接照射される部分は白色化し、LEDライトの光が遮られた部分は正常な色が保たれていた…ということになります。
あらためて上からブセファランドラを見てみると、白色化した部分は直接LEDライトが当たっている部分でした。
光量を下げて管理したら葉の色は正常化
強すぎる光量が原因であれば、単純にLEDライトを弱くすれば葉が正常な色で育つであろうと思います。
白くなってしまった葉は元には戻りませんが、新しく生えてくる葉は白く変色せずに成長するはずです。
そこで、該当のブセファランドラ・クダガンをLEDライトを「GEX製 CLEAR LED POWER III」だけで管理している別の水槽に移して管理しました。
上の写真が、弱いLEDライトで管理して1カ月後の写真となりますが、新しく生えた葉はブセファランドラ・クダガン特有の綺麗な色を維持しており、その他の葉も白色化が進行化することがありませんでした。
下の方には、葉が白くなった部分が残っていますが、この部分は回復することはありませんでした。
今回の教訓 -水草に適したLEDライトが重要-
今回のブセファランドラ・クダガンの葉の白色化を受け、あらためて水草水槽の管理の難しさを知らされました。
植物は太陽光が好きなので、ブセファランドラもLEDライトが多少強くても大丈夫だと思っていました。
実際に、ブセファランドラの別の品種である「ブセファランドラ・グリーンウェイビー」は強いLEDライトの水槽で育てても元気に育っています。下の写真は、ブセファランドラ・クダガンの葉が白色化した水槽で育てているブセファランドラ・グリーンウェイビーですが、とても美しい状態で育っています。
つまり、同じブセファランドラでも、適切なLEDライトの強さには差があるということなんですね。
水草の種類だけでは無く、同じ種類の水草の中でも品種ごとに適切なLEDライトが異なるということです。
水草水槽のレイアウトは、様々な種類の水草を植栽することで完成していきますが、使用するLEDライトの種類も考慮して水草選びをしなければなりませんね。
もし、様々な水草を水槽レイアウトに使用する時は、強いLEDライトが苦手な水草は水槽内で陰になる部分に導入する等の手段が必要です。
この記事の終わりに
この記事では、葉が白色化したブセファランドラ・クダガンを例に取り、水槽用LEDライトの強度の重要性をお話させていただきました。
水槽内で植物を育てるためには、植物に光合成をさせるためにLEDライトが必須となります。
しかし、水草の種類によっては、ライトの強度が強すぎると葉焼けを起こしてしまう場合があることを忘れてはいけません。
特に「耐陰性水草」として知られる弱い光でも育てられる水草は注意が必要だと思われます。
具体的には、ブセファランドラ、アヌビアス、ボルビティス等が該当します。
水槽に導入している水草一つ一つを美しく保つため、水草の育成状況を確認しながらLEDライトの管理したり、植栽する場所を考えてあげて下さいね。
最後になりますが、下のリンクではボルビティスの葉焼けの実例を紹介しています。