水槽で金魚やメダカ、熱帯魚を飼育していると、いつの間にか魚の体に傷が入っていることがあります。
明らかに目で見える傷だけでは無く、魚の体表を保護するための粘膜が損傷してしまっているようなこともあります。
外傷の原因は様々ですので、傷を負ってしまった原因を探して対策するべきですが、それに並行して魚の外傷治療を進めなければなりません。
例えば、魚の体を保護する粘膜 (触るとヌルヌルする粘膜) ですが、これは鱗と合わせて人間の皮膚と同じような役割を持っています。人間も切創を負うとその部分が露出し細菌の侵入路となることがあります。それは魚も同じなんですね。
外傷の無い健康体の時には比較的強い免疫力を持っていますが、一度体表に傷が付いてしまうとその傷が原因で重い病気に罹ってしまうこともあります。
この記事では、体表の粘膜が傷ついてしまった金魚を例に取り、誰でも出来る簡単な治療方法 (応急処置) を紹介します。金魚や熱帯魚なら、傷の浅いものであれば、この方法で治療が可能です。
金魚に起こる外傷の例
まず最初に、金魚の体に発生しやすい外傷発生源とその症状を紹介したいと思います。
金魚は古くから日本人に愛されてきた馴染みの深いコイ科の魚ですが、品種改良と共にヒレが長くなったり短くなったりして、自然本来の体の形から大きく変化を遂げた魚です。
それが原因の場合も有りますが、怪我をしてしまう場面が多い様に思えます。
ヒレが裂けてしまう症状
最初の例はヒレが裂けてしまっている症状です。
これもヒレが傷ついてしまうという外傷の一つになります。
下の写真は琉金の長い尾ひれが裂けてしまっている症状になります。
琉金や丹頂、オランダ獅子頭などの品種改良の金魚は長く立派なヒレを持ちますが、それが理由でヒレが裂けやすいという特徴も持っています。
本来はこんなに長いヒレを持っていなかった金魚ですが、品種改良によってヒレが長くなり、それは泳ぐという魚本来の運動性能を妨げるものになりました。
レイアウト素材である石や流木などに引っかかって避けてしまう場合も有りますし、金魚同士で長いヒレをつつき合って傷が入る場合もあります。
金魚のヒレが傷つく原因については、下の記事で色々と紹介をしています。
石などに擦れた外傷
上ではヒレが傷つく例を紹介しましたが、水槽内にレイアウトの素材として石が使われている場合、その石に体を擦ってしまい体に傷が付く場合があります。
私の飼育している丹頂も、過去にどこかに体をぶつけて、体の側面に血がにじんでしまっている状態になったことがあります。
その時の写真が無いので、例として画像を紹介することができませんが、特に白い体の金魚は傷が目立ちます。
体を守る粘膜の損傷
次に紹介するのは、金魚の体表を守る粘膜の損傷です。
これは、私の以前の記事で、転覆病になった出目金の粘膜が傷ついたことを紹介しました (下のリンクの記事)。
出目金が転覆病になり、水面から体が出てしまい乾燥によって粘膜が傷ついた様子を紹介しました。
実際、この時に傷ついた粘膜を治療したのがこの記事の内容になります。
もちろん、転覆病による体表の乾燥だけが粘膜の損傷原因ではありません。
上で紹介したように、レイアウト素材である石や流木に体をこすりつけてしまった場合なども粘膜の損傷は発生する可能性はあります。
実は、深い傷よりも粘膜が傷つくという症状の方が起こりやすいです。
外傷の治療薬 -グリーンFリキッド-
金魚や熱帯魚の外傷の治療に最も適した薬は下の写真のグリーンFリキッド (メチレンブルー) です。
この薬は、金魚の白点病治療にも使われる薬ですが、実は傷ついた体表の治療にも用いることができます。
主な成分はメチレンブルーとアクリノールになり、単にメチレンブルーとして販売されている場合もあります。
使用方法も簡単で規定量を水で薄め、その中で魚を薬浴させるという方法になります。
治療開始後に直ぐに治るわけでは無く、徐々に傷が癒えていきますので、粘膜の損傷の場合には少なくとも10日くらい、深い傷の場合には外傷が無くなるまで薬浴しておくようにしています。
グリーンFリキッドは街の熱帯魚ショップでも販売されている有名な薬になります。
粘膜が損傷した出目金の治療例
ではここからは実際にグリーンFリキッドを用いて出目金の粘膜を治療した例を紹介したいと思います。
治療を行った粘膜の傷ついた出目金
治療を行った出目金ですが、一時的な転覆病になった時に体の表面が水面から出てしまい、粘膜が空気に触れたため粘膜が傷ついてしまったという症状になります。
下の写真がその時の症状ですが、粘膜が所々白くなってしまっていることが分かります。黄色の矢印で粘膜が傷ついた部分を示しています。常に体が水中にある魚は、体が乾燥してしまうと火傷の様な状態になっているものと言われています。
出目金の治療水槽と管理方法
グリーンFリキッドによる治療は基本的に水槽を分けて行います。
治療用の水槽は簡単なものでもOKです。私の場合、安価な虫かごを利用しています。実際の治療の時の様子が下の写真になります。
治療を行っている時には、新たに傷が付いてしまう事を防ぐため、水槽の中にはレイアウト素材を一切入れません。
また、金魚の場合には、体の大きさに合わせた水槽を用意して、毎日水替えをしてあげればフィルターやブクブクが不要になります。今回の場合には、体格の小さな出目金でしたので、虫かごに水を入れてあげて、フィルターやブクブクを使用していません。
ただし、心配であればブクブクなどによってエアレーションをしてあげることをお勧めします。
水温の調整についてですが、あまりにも水温が低くなる場所でなければヒーターも不要かと思います。ただし、体が弱ってしまっている金魚の場合には、白点病などを併発してしまう事を防ぐため、ヒーターの使用をお勧めします。ただし、その時にはガラス水槽を使ってあげて、プラスチック製の水槽は避けて下さい。
治療完了後の出目金の様子
今回の粘膜の損傷は、そこまでひどくないものでしたので、10日経たないうちに粘膜が完全に完治しました。
下の写真が治療完了後の出目金です。白くなっていた粘膜の損傷部分は無くなり、綺麗な体表に回復しています。
完全に完治したことを確認出来れば、もともと飼育していた水槽との水合わせを行って水槽へ戻してあげます。
その際に、メチレンブルーの入っている水が元の水槽に入らないようにして下さいね。
治療中は餌の量を少なくするべき?
グリーンFリキッド等の薬で治療中の魚には餌を与えるべきでしょうか?
与えない方が良いという意見と、与えても良いという両方の意見があるかと思います。
私の意見ではありますが、傷が酷い外傷でなければ、通常の餌の量よりも少ない量を与えても問題は無いと思います。ただ、濾過フィルターが無いので毎日水槽の半分の水を換水してあげるなどの対応は必要になります。
しかし、例えば腹部に怪我をしていて餌を食べてお腹が膨らむと傷が広がりそうな場合には、餌を控えるという対処も必要だと思います。
正直なところ、その時々に応じた餌やりを考えていかねばなりません。
外傷が起こった原因を考えることも重要
外傷が起こったら治療は必要になりますが、外傷が起こってしまった根本的な原因も考えなければなりません。
その原因が分からなければ、外傷を再度繰り返してしまう可能性が高くなります。
また、外傷を負った魚がいるということは、その水槽の中には魚に取って危険な場所があるということにもなります。
そのためには、水槽の中での金魚の行動パターンを観察したり、いつもよりも長い時間水槽内を観察してあげることも必要です。
一緒に暮らすペットでありますので、危険源となる環境は改善してあげて下さいね!
私個人としては、最も危ないのは鋭利な形状の石、2番目は金魚同士でヒレをつつき合うという行為です。
終わりに -外傷は発見次第治療に入りましょう-
魚を飼育するということは、犬や猫を飼育するのと同じように、生物特有の怪我や病気と付き合っていくという覚悟が必要になります。
人間と魚は住んでいる場所が違いますし、動き方も全く異なります。そのため、危険減となり得るポイントをお互いに知ることは少し難しいのは事実です。
しかし、毎日の水槽の観察の中で魚の行動パターンを知ることで、怪我の原因となる場所を知ることもできます。
ただ、外傷は飼育者である私たちが知らないところで起こるものです。
外傷は他の病気の原因となることもありますので、見つけたら早急に治療の対応をしてあげましょう!決して見て見ぬふりをしないようにしましょう!