金魚のヒレが傷付く原因とは?飼育環境で改善可能

水槽の中を優雅に泳ぐ金魚の姿は、小さな子供からご年配の方まで、誰もが好きな日本のアクアリウムの水景だと思います。

品種改良によって、様々な品種が生まれてきた金魚ですが、身体と同じくらいの大きさ・長さのあるヒレを持つものもあります。また、コイ科の魚であり、フナと同じような大きさに成長することから、熱帯魚には無い見応えのある魚ということもできるかと思います。

そんな金魚の美しいヒレですが、いつの間にか傷ついていたり、咲けてしまっていることがあります。何故でしょうか?

実は、水槽の環境が原因である場合も多いです。

この記事では、金魚のヒレを傷つけさせないために必要な条件に付いて、私の経験から内容をまとめて御紹介したいと思います。


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金魚は美しいヒレを楽しむ観賞魚

金魚が観賞魚として日本人に親しまれてきた理由は様々です。

その綺麗な赤色の魚体、長いヒレ、多くの品種、人懐っこい性格、そして日本の四季を生き抜く強い生命力…

長所を挙げていくと、どんどん出てきますね。

私が金魚が好きな理由の一つはヒレの美しさです。大きな体に長いヒレを揺らしながら水槽の中を泳ぐ姿は、ネオンテトラ等の熱帯魚には無い良さがあります。

色の美しさで言えば、青色や蛍光色などがある熱帯魚に負けてしまうところがあるかもしれませんが、それでもあの長いヒレを優雅に揺らす姿は日本の淡水魚を代表する観賞魚の一つだと言い切れるかと思います。

そんな美しい金魚のヒレをいつまでも美しい状態に保つためには、飼育者である我々が気を遣ってあげなければいけないことが多々あります。

その点を以下で説明していきたいと思います。

魚のヒレの構造について

魚のヒレの構造は御存じでしょうか?

「筋が通っていて、薄い皮の様なものがついている…」というイメージが、皆さんが持つ一番近いイメージかと思います。

実際の魚のヒレは、下の図に示すような構造になっています。

ヒレの骨格を作っているように見える筋は、正式には鰭条 (きじょう) という名前です。いわゆるヒレの骨組みを支える役割の構造です。

そして、その鰭条と鰭条の間が粘膜 (鰭膜) によって繋がっており、ヒレを成す構造となっています。

つまり、ヒレは膜で出来ているので、とても弱くて脆い体の一部になるんですね。そのため、ヒレは傷つきやすいですし、傷ついても粘膜の回復で治っていく構造でもあります。

鰭が鱗と同じような固い構造で出来ていたらヒレが傷つくことは無いのですが、ヒレを柔軟に動かすためには柔らかい鰭膜が必要になります。ヒレに柔軟さがあることで魚の泳ぎがスムーズになると言えます。


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ヒレが傷つく原因について

金魚のヒレが傷ついてしまう原因は様々です。

単純に怪我をしてしまっている場合や、病気によってヒレがボロボロになってしまうケースもあります。ここでは、病気以外の原因について考えてみたいと思います。

原因① 水槽が小さすぎること

まず最初に水槽のサイズです。

金魚は泳ぐスピードがそこまで速い魚ではありません。特にヒレの長い金魚については、そのヒレが水の抵抗になるため、本当に身の危険を感じた時以外は、ゆらゆらと泳ぐ程度の能力しか持っていません。

しかしながら、金魚は水槽内を縦横無尽に泳ぎ回ります。そして、その泳ぐ速度は、物にぶつかった時にヒレが破れてしまうような速さになります。

そのため、小さな水槽で飼育していると、水槽内をUターンする回数が多くなり、レイアウト素材やフィルターなどの設備にヒレが当たってしまい、ヒレが裂けてしまうことがあります。

金魚のサイズが小さいうちは良いのですが、金魚が10cm以上になってきたら30cm水槽では飼育が困難になってきます。金魚のサイズに合わせて水槽を用意してあげることもヒレの傷つきを防ぐ手立てになります。

原因② 流木や石などのレイアウト素材の存在

これはひとつ前のトピックの水槽が狭いということにも共通していることですが、水槽内のレイアウト素材として流木や石を使っている場合、それが金魚のヒレを傷つける原因となります。

現代の淡水アクアリウムでは、流木・石・水草を使った美しいレイアウトが人気となっていますが、金魚水槽にも同じようなレイアウトを使う方も多いかと思います。

しかしながら、流木のレイアウトがあれば、金魚は自分のヒレが傷つくことを気にせず、流木の隙間に入っていくことが多々あります。また、角が鋭い石があれば、ヒレがぶつかった時に傷ついてしまうことは避けられません。

金魚を飼育している方は分かると思うのですが、金魚は餌を求めて狭い所にも入り込んでいく習性があります。金魚は自分が入り込めないような穴や空洞であっても、そこに無理やり体を突っ込んでいきます。

そのため、金魚の水槽を作る時には、金魚が入り込めるような空洞や穴が無いようにレイアウトを組むことも重要になります。なるべく金魚が広々と泳げるようなレイアウトがポイントということですね。

原因③ 金魚が互いに鰭をつつき合うこと

金魚は温厚な性格でお互いに傷つけあうようなイメージは無いかと思います。

しかしながら、金魚の中には他の金魚のヒレを口でつつく癖のある個体がいます。品種に依存するのではなく、個々の金魚の性格によるものなので、どの品種だったら大丈夫ということは言えないです。

私の家の金魚水槽でも、オランダ獅子頭の1匹が他の金魚を口で突くような性格があり、特にヒレの長い丹頂や琉金の鰭が被害に合いました。

上でも記載した通り、ヒレは薄い粘膜で形成されているので、金魚の口に鋭い牙が無いにしても、粘膜を傷つけてしまう場合があります。金魚は複数を混泳させて楽しむ魚ではありますが、それが原因で鰭が傷つくことがあります。

金魚の性格に起因することなので、防ぎようがないのですが…。しかし、金魚を購入する時に、この問題を防ぐ手立てが一つあります。絶対有効とは言えませんが、下記の手段はかなり有効だと思います。

ショップで購入する時に、他の金魚をつつく癖がなさそうな個体を選ぶことです。

他の金魚をつつく癖のある個体は、アクアリウムショップで販売されている時点でその癖を持っている可能性が高いです。そのため、アクアリウムショップの水槽を泳いでいる様子を観察し、他の金魚にちょっかいを出しているような金魚を選ばないことです。

原因④ 水流が強すぎること (金魚は泳ぎが下手)

鰭の長い金魚は泳ぎが下手…これは確かな事です。

和金の様にヒレの短い金魚であれば、他の魚の様に俊敏に泳ぎ、水流が強い所も泳げます。しかし、ヒレが長く水流を受ける面積が大きな金魚、さらには丸っこく重量が重い金魚は水流に勝てません。

例えば、外部フィルターからの給水はかなりの水流がありますが、その直近を金魚が通過すると、勢いよく水流に流されていきます。

また、ヒレが大きいということはそれだけ水流を受ける面積が大きくなるので、水流によってヒレの粘膜が引き裂かれてしまうことは容易に想像できるかと思います。

昔から金魚の水槽には細かな泡の出るブクブク (投げ込み式フィルター) を使われている方が多いかと思いますが、これは金魚のヒレを守る意味でも大切な役割があると言えるでしょう。

金魚のヒレを守る理想的な水槽とは?

では、金魚のヒレを守る理想的な水槽やレイアウトはどのようなものなのでしょうか?

その答えは、上で紹介した金魚のヒレが傷ついてしまう原因の無い水槽になります。

具体的には水槽の中に流木や石などのレイアウト素材が無いベアタンクであること、飼育している金魚の数を制限すること、また水流が弱いフィルターを使用すること等が挙げられます。

実際に金魚の専門店に行くと、レイアウトの無いベアタンクで広々とした空間で金魚を管理されていることが多いです。それには、金魚の美しいヒレを守るという意味があるんですね。

ただ、レイアウトが全く無いベアタンクは、アクアリウムの美観の観点では味気ないものになってしまいます。そのため、金魚のヒレを傷つけないような小さな流木や、鋭い部分の無い石を使うなどの工夫をすればレイアウト素材を使用することも可能になるかと思います。

水草については葉が柔らかいので、大量に入れない限りは問題無いと思います。ただし、水草の種類によっては金魚に食べられてしまったり、植栽部分が荒らされる場合が多々あるので注意は必要です (以下の別記事にまとめています) 。


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この記事の終わりに

本記事では、水槽で飼育している金魚のヒレが傷ついてしまう件について、私の経験も交えながら原因を御紹介させていただきました。

金魚はヒレが長く泳ぎが下手なくせに、レイアウト水槽の中で無理な泳ぎをしたりするやんちゃな面があります。また、温厚な性格の持ち主と思いきや、お互いにヒレをつつき合うようなこともあります。

混泳やレイアウトの問題だけではなく、水質によってヒレがダメージを受ける場合もありますので、ヒレが傷つく原因は様々です。その真の原因を突き止められるのは飼育者の皆様しかいませんので、ヒレが傷つくようであれば、本記事で紹介させていただいたことを確認してみても良いかと思います。

金魚は美しいヒレと優雅な泳ぎを観賞する魚ですので、ヒレは美しいに越したことはありません。美しい金魚を長く飼育するためにも、熱帯魚だけではなく金魚飼育の技術も磨いていきたいものです。