熱帯魚が餌を食べない理由 -拒食?摂食障害?-

熱帯魚を飼育していると、餌を全く食べない魚が水槽内にいることがあります。

餌を食べない魚はやせ細ったりするので、飼育者としては心配になってしまいますよね…

私の飼育している魚にも、全く餌を食べなくなった魚がいました。

ある改善をして餌を食べるようになった魚もいるので、この記事では餌を食べない魚の原因と改善策について御紹介したいと思います。


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はじめに知って欲しい事

飼育環境下の魚が餌を食べない理由は、正直なところ人間が完全に理解することは不可能だと思っています。

魚についてはコミュニケーション手段がありませんし、街の動物病院で診療をしてくれるわけではありません。

そのため、基本的に餌を食べないという症状を解決しなければならないのは飼育者である皆様です。

必ず何か原因があるのですが、試行錯誤をして解決しなければならない問題です。

相手は生物なので餌を食べなければ死んでしまいます。数年間絶食して生きることができたダイオウグソクムシと同じように考えてはいけません。

「一匹くらい餌を食べない魚がいても良い」と割り切ってしまう方もいらっしゃるかと思いますが、命を自分の家に迎えた以上、最低限の努力をして生かせてあげることが責任ある人間の行動です。

この記事が、皆様の飼育環境下での「餌を食べない魚」の解決の糸口になれば幸いです。

人口飼料を食べないと熱帯魚の色が落ちる(ネオンテトラの例)

人口飼料は熱帯魚の体調や色揚げの効果を発揮する、栄養価の高い食べ物です。

熱帯魚の飼育には欠かせない人口飼料ですが、人口飼料を食べてくれない魚も存在します。

下の写真はネオンテトラの例です。左の写真は人口飼料を食べないネオンテトラ、右の写真は人口飼料をしっかりと食べるネオンテトラです。両方とも私が飼育しているネオンテトラです。

なぜ人口飼料を食べないのかは、正直なところ解明できていません。

少し写真ではわかりにくいかもしれませんが、人口飼料を食べないネオンテトラは人口飼料を食べるネオンテトラに比べて青色の発色が悪いことが分かります。

また、体の色も少し黒くなるという変化も見られています。

これはネオンテトラの例ですが、人口飼料を食べない熱帯魚は発色の観点でも悪い影響があることがわかるかと思います。


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餌を食べない原因と解決案

以下で、魚が餌を食べない原因をいくつか紹介し、その対策についても記載させていただきます。これが全てではないですが、私が体験した症状と対処方法を記載させていただきます。

餌が合わないこと

魚によっては、人口飼料を食べてくれない魚がいます。

例えば世界最小のフグで淡水で飼育できるアベニーパファー。

フグの仲間ということもあり、餌に少しうるさい魚です。この魚に人口飼料を与えても食べないことが多々あります。食べてくれる子もいますが、ほとんど無視されることが多いです。アベニーパファーは基本的に赤虫等の生物系の餌しか食べません。

アベニーパファーだけではなく、その生体ごとに好き嫌いがある場合もあります。

プラティやネオンテトラなどではあまり見ませんが、コケ取りで有名なオトシンクルスは人口飼料を全く食べない個体に出会ったことがあります。

そのオトシンは苔は食べていたのですが、人口飼料が目の前に落ちてきても一切見向きもしませんでした。一応、苔を食べていて体も痩せていなかったので、特に対策はしませんでした。

餌の種類の話でもう一つ。当たり前の話なのですが…。

人口飼料には水面に浮くタイプと沈下性の沈むタイプがあります。沈下性のものは食べるが浮くタイプには見向きもしない魚もいます。

コリドラスに浮くタイプの餌を与えても…食べてくれないでしょう。水分を含んで落ちていけば食べてくれますが…。その魚に合った餌を用意してあげましょう。

熱帯魚の種類およびその生体の性格や性質で、餌が合わないことがあるので、餌は何種類か用意しておくと良いです。

私は人口飼料・ブラインシュリンプ・冷凍赤虫の3点セットを常に常備しています。

餌の大きさが合わないこと

これは、私も最近気づいたことです。

言われてみれば、確かにその通りなのですが、口に入る餌のサイズでも好き嫌いがあることがわかってきました。

下の写真は私が飼育しているアフリカン・ランプアイですが、矢印が付いている中央の子がやせ細っていることがわかります。

アフリカン・ランプアイ

この子が全く餌を口にしないことがわかり、色々と試行錯誤をしました。

上で書いたように、赤虫を入れてみたのですが口に入れは吐き出してしまうような状態で、どうしたら良いかわからなくて困っていました。

しかし、あることをきっかけに餌を食べるようになりました。

それは、私の水槽でコリドラスの稚魚を育てていた時のことです。稚魚は餌のサイズが小さいでの粒径が0.2mm以下の小さな餌を与えます。その餌がたまたまアフリカンランプアイにいる水槽に落ちました。

そしたら、餌を食べていなかったアフリカンランプアイが、その小さな餌をもりもりと食べたのです。

今まで与えていた餌も0.4mmくらいの粒径ですので、他のアフリカンランプアイやネオンテトラも問題なく食べていたのですが、この子だけはその大きさが嫌だったようです。

0.4mmが0.2mmになっただけですよ!魚にとっては大きな差なのですね。

まぁ、人間の子供も口に入る食べ物の大きさでも吐き出してしまう場合があるので、餌の大きさの違いも餌を食べなくなってしまう原因なのだと知らされた場面でした。

それ以後、小さな粒径の餌も混ぜて与えるようにしました。今でも元気に水槽で泳いでいます。

水槽内でのストレスの原因

ストレスの原因もあります。人の拒食症でもストレスが原因であることがあるように、魚の世界でもストレスによって餌を食べなくなることがあります。

私の飼育環境下ではエンゼルフィッシュでした。

3匹のエンゼルフィッシュを同時に購入して飼育を始めたのですが、エンゼルフィッシュは縄張り意識が強いので喧嘩が頻繁に起こります。

その中で、もっとも力が弱いエンゼルフィッシュが水槽内で居場所を無くし、水槽の隅の方から出てこなくなりました。

そのエンゼルフィッシュは餌の時間にも出てくることは無く、餌を食べない状況になってしまったのです。

餌が食べれるように目の前に落とすようにしても食べませんでした。

水槽内での力の関係が出来上がり、負けてしまった魚の末路なのだと感じました。

どんどん痩せていくので、そのエンゼルだけを別の水槽に移しました。

すると、しばらくして餌を食べるようになったのです。権力の強い魚の周りでは何もできずにいましたが、環境が変わって自分の縄張りが出来るようになり、安心して餌を食べるようになったのだと考えられます。

同じようなことは他のシグリッド系 (ラミレジィ等) の魚には起こりうることかと思います。

縄張りだけではなく、大きな魚と同居している小さな魚は、大きな魚の泳ぐ餌場に出てこれない場合もあります。同居する他の魚から与えられるストレスが原因ではないかも考えて、水槽内の環境を整えていきましょう。

感染症による拒食

熱帯魚の水槽に常駐する細菌で有名なものに「エロモナス」があります。

この細菌は水槽の中や魚の体内に住んでいるのですが、過剰に体内で繁殖すると熱帯魚が体調を崩します。

例えば松かさ病や穴あき病などが併発することもあります。

また、内臓系に異常をきたすと消化不良になりますし、お腹が膨れ上がる腹水病の原因にもなりかねません。

人も同じで体調が悪い時にご飯を食べたくなくなりますよね…。魚も同じです。

ただし、この細菌性の体調不良が原因の場合、目視できる症状が出始めると重症になる可能性が高いです。

そのため、細菌性の病気は基本的には予防によって病気が起きないようにしなければなりません。

病気を防ぐ第一の環境は、水質の問題です。

定期的に水替えを行い、飼育水の中に溜まっているアンモニア、亜硝酸、硝酸を取り除くようにしましょう。フィルターによる生物濾過でアンモニアや亜硝酸は分解されますが、飼育している魚の数が多い場合やフィルターが立ち上がっていない場合などは、生物濾過が不十分で水質が悪化しやすいです。

水槽内から変な匂いがする時、それは水質悪化の最初のサインです。

また、目で見えるような症状が出てしまっている場合には、その症状に適した薬浴 (グリーンFゴールド、メチレンブルー等) で熱帯魚の体を消毒してあげることが必要です。

私の経験では、餌を食べなくなったネオンテトラが腹水病に感染していたことがあります。

長い目で見守ることも必要

餌を食べないからと言って、すぐに何かをしなければいけないということもありません。

魚は人口飼料を数週間~1カ月、またはそれ以上食べなくても生きていきます。

確かに、人口飼料を食べている魚と比べると体格は悪いですが、生命を維持していけるのは確かです。その理由は水槽内にある自分が食べれるものを食べている方です。

例えばコケや水草等です。自分を生命を脅かしてまで拒食をすることは無いので、何かしらを食べているはずです。他の魚の糞を口にして食べてしまう魚がいるくらいなので、何か食べ物があることは間違いないです。

人口飼料を食べなくても、それぞれの生体が持つ生命力で命を維持しているのは確かなので、飼育者の皆様は少しだけ肩の荷を下ろしても良いのかと思います。


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自然採取の魚は飼育直後に餌を食べないことが大半です

水槽で飼育する魚を熱帯魚ショップやペットショップで販売されている魚たちは、人口飼料に慣れている魚がほとんどです。

しかし、川や池などで捕まえてきた魚たちは、自然の中にある餌を食べて生き抜いてきたので、水槽に入れた直後には人口飼料に見向きもしないことがほとんどです。

そのため、自然の中で捕まえてきた魚については、人口飼料を食べることに慣れさせるという訓練から始めて行く必要があります。

下の記事で、その内容について詳しくまとめていますので、もし御興味あればそちらを御確認ください。

最後に

今回の記事では、餌を食べてくれなくなった魚に関して、私の経験から考えられる原因と対策を書かせていただきました。

私もアクアリウムを始めてから、何度も餌を食べてくれない魚に出会い、そのたびに試行錯誤を繰り返してきました。

良かれと思ってやっていたことが裏目に出ることもありますし、拒食になってしまって当たり前だなぁ…と感じる行為もしてしまったことがあります。

会話・コミュニケーションが取れない以上、飼育者である私たちが糸口を見つけないと、解決しない課題です。お家に迎えた大切な命ですので、責任を持った飼育を心掛けていきましょう。