【水草水槽】二酸化炭素を無駄にしない添加方法の考え方とは?

水草を育成させながら水景を完成させる水草水槽ですが、水草の光合成を促して健全に成長させるために、水槽内への二酸化炭素の添加が行われます。

自然界においては、川から流れてくる水や降雨、そして風による水面の流動で二酸化炭素が供給されます。しかし、限られた環境である水槽内では水草の数が多いと水中の二酸化炭素量が不足します。

その二酸化炭素の不足を補うために、二酸化炭素を添加してあげることが必要になります。

水中に溶け込むことができる二酸化炭素の最大量を常に供給してあげることが理想だと考えられますが、実際にどのくらいの量を添加するとその状態になるのでしょうか?

ネット上には「1秒に1滴」とか「3秒に1滴」という情報がありますが、本当に必要な量はどのくらいなのでしょうか?

この記事では、二酸化炭素が水中へ溶け込む原理や効率の良い添加方法を考えたうえで、水槽に必要な二酸化炭素の添加量について考えます。

最適解を示すのではなく、水槽の二酸化炭素管理に必要な知識や考え方を御紹介しますので、少しでも参考になれば幸いです。


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飼育水に溶ける二酸化炭素の量には限度がある

学校の物理や化学の授業で「水中の気体の溶存量」という内容を学んだ覚えがあるのではないでしょうか?

気体は水中に溶け込むことができるのですが、ある一定量まで溶け込むとそれ以上の量は溶け込むことができなくなります。「溶解度」という物理量になりますが、一度は耳にしたことがある単語かと思います。

この溶解度は、基本的に水温によって変化し、水温が高いほど溶解度は減り、水温が低いほど溶解度は増加します。つまり、冷たい水の方が多くの気体が水中に溶け込んでいくということになります。

株式会社ガステックさんの実験資料が参考になります → 二酸化炭素の水への溶解

そのため、水槽に二酸化炭素を添加しても、一定量溶け込むとそれ以上は溶け込むことができなくなります。そのため、二酸化炭素を一生懸命に添加しても、二酸化炭素を無駄にしている場合もあるのです。

そのため、水草が光合成で使用する二酸化炭素の量と二酸化炭素の添加量のバランスを見定めていくことが、二酸化炭素ボンベの無駄遣いをなくすことになるのです。

「ネットで紹介されていたから2秒に1滴添加しよう!」という安易な考えをしていると、二酸化炭素の消費量 (二酸化炭素のボンベ費用) だけが増えてしまう事になっているかもしれませんよ!

二酸化炭素を効率良く飼育水に溶け込ませる方法とは

ここでは、二酸化炭素を効率良く飼育水に溶け込ませるために必要な知識について紹介したいと思います。

ただ単に二酸化炭素の使用量を多くするだけでは、効率の良い二酸化炭素の添加にはならないということをお話したいと思います。

二酸化炭素を垂れ流すのではなく、無駄のない二酸化炭素添加にするための考え方をお話しできればと思います。

二酸化炭素が水に溶け込む原理

まず最初に、二酸化炭素が水の中に溶け込んでいく原理について、簡単に説明しておきたいと思います。

下の左図に示すように、二酸化炭素はCO2ディフューザーを使用して水中に拡散するのが一般的です。二酸化炭素ボンベから供給された二酸化炭素ガスは、多孔質な材料で製造されたディフューザーによって小さな気泡に分離されて水槽内に導入されることになります。

そして、右の図に示すように、二酸化炭素の気泡と水が接することで、気泡から二酸化炭素の分子が水中に溶け込んでいくことになります。

この時、既に水中の二酸化炭素濃度が高ければ、添加した二酸化炭素から水中へ溶け込んでいく二酸化炭素分子の量は少なくなります。逆に、水中の二酸化炭素濃度が低ければ、添加した二酸化炭素の気泡から多くの二酸化炭素分子が水中へ溶け込んでいくようになります。

二酸化炭素の添加では、二酸化炭素の気泡を水中へ供給していくのですが、目に見える気泡の状態で水中に溶け込むのではなく、目に見えない分子や小さな気泡の状態で水中に溶け込んでいくことになります。

これが二酸化炭素が水中へ溶け込んでいく原理となります。

気泡の表面積が大きくなることが重要

上で説明したように、二酸化炭素の気泡と水が接することで水中へ二酸化炭素が溶け込んでいきます。

そのため、二酸化炭素を効率良く水中へ溶け込ませるためには、気泡の表面積を大きくして、二酸化炭素の気泡が水に触れる面積を大きくしなければなりません。

下の表で1つの例を紹介します。

半径1の大きな気泡の場合と半径1/3の小さな気泡を比較すると、半径1の気泡1つと半径1/3の気泡27個が同じ体積になります。言い換えると、二酸化炭素の使用量が同じ量になるということです。

この時に体積は同じであっても、表面積は半径1/3の気泡の方が3倍になっていることがわかります。

つまり、効率良く二酸化炭素を水に溶け込ませるためには、気泡の大きさをより小さなものにすることが重要になるということです。

さらに気泡の半径を小さくすれば、気泡の表面積はさらに増えていくことになります。

極端な話をすると、目に見えないようなマイクロバブルを生成する技術を使うのが、最も効率良く二酸化炭素添加を行う方法だということです。

気泡が飼育水に触れる時間が長くなることも重要

効率良く二酸化炭素を添加する場合に、もう一つ重要な事があります。

それは一つの二酸化炭素の気泡が水に触れている時間を増やすということです。

二酸化炭素ディフューザーから供給された二酸化炭素の気泡が、あっという間に水面に到達してしまうと、水中に二酸化炭素を供給する時間が極端に短くなります。

そのため、せっかく供給した二酸化炭素は水槽内に供給されず、大気中へ垂れ流しているような状態になるのです。

したがって、例えば二酸化炭素ディフューザーを水槽の底の方に設置する等の工夫が必要になるということになります。


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二酸化炭素添加量と気泡の大きさの関係 -実例で紹介-

では、実際に二酸化炭素の添加量 (滴加量) と気泡の大きさの実例を紹介したいと思います。

下の写真が添加量を変化させた時の気泡の写真になります。

一番左の写真が10秒に1滴、中央の写真が5秒に1滴、右の写真が2秒に1滴の添加量となります。

写真では少し分かりにくくて申し訳ないのですが、二酸化炭素ディフューザーの特徴として、添加量が多くなると二酸化炭素の気泡のサイズが大きくなり、添加量が少ないと二酸化炭素の気泡が小さくなる傾向になります。

これは、添加量が多くなると二酸化炭素ディフューザーの中に供給された二酸化炭素の浮力 が大きくなるためです。

また、添加量が10秒に1滴の例を詳細に見てみると、下の写真の黄色矢印に示すように、添加した二酸化炭素の気泡が上方向に向かわず、水流に流されていくような小さな気泡が出てきています。

このような小さな気泡は、浮力が小さく水中を長時間漂うため、気泡が水に触れている時間が長くなります。

上で紹介しましたが、気泡が水に触れる時間が長くなるので、同じ二酸化炭素量での添加効率が高くなるのがこのような小さな気泡になるのです。

実際に、二酸化炭素ディフューザーから供給された二酸化炭素が水面に到達するまでの時間について、次の項目で実測値を紹介したいと思います。

二酸化炭素の気泡が大きいと直ぐに空気中へ出てしまう

上の項目で、二酸化炭素の添加量を多くすると気泡の大きさが大きくなることを紹介しました。実は、この気泡の大きさは、二酸化炭素の添加に関して重要なパラメータになります。

気泡の大きさが大きくなると、その分だけ浮力が大きくなり、二酸化炭素ディフューザーから供給された後に、あっという間に水面に到達してしまいます。

そこで、二酸化炭素の添加量を変化させたときに、二酸化炭素の気泡が水面に到達するまでの時間を測定してみました。結果が次の通りになります。

① 添加量2秒に1滴 … 約3秒

② 添加量5秒に1滴 … 約5秒

③ 添加量10秒に1滴 … 約10秒

この結果からもわかると思いますが、添加量が多くなるほど気泡のサイズが大きくなり、あっという間に二酸化炭素の気泡が水面に到達するのです。

添加量を多くすると気泡の数が多くなるので、水中への二酸化炭素の添加量が多くなることは確かな事です。しかし、その分、二酸化炭素を垂れ流しにしてしまっているという状況も否めません。

そのため、コストパフォーマンスの観点で考えると、二酸化炭素の使用量は水中への二酸化炭素の溶け込み量を考えて最適化していくべきだと言えます。


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水草の育成具合を見ながら二酸化炭素の使用量を最小限にする

上記でお話させていただきました通り、水草水槽への二酸化炭素の添加は、ただ単に添加すれば良いというものでは無いことがお分かりいただけたかと思います。

確かに、垂れ流すようにたくさんの二酸化炭素を添加すれば、確実に水槽内の水に二酸化炭素濃度を上げることができます。

しかし、二酸化炭素が溶け込める量に限界があることや、気泡の大きさ、そして気泡が水中に滞在する時間を考えると、無暗に添加しても二酸化炭素の無駄遣いになります。

(二酸化炭素ボンベの買い替え頻度が上がっても良ければ、使用量を増やせばいいと思いますが…なるべく買い替え頻度は下げたいですよね。)

そのため、水草の育成の状態を見ながら、適切に使用量を減らしていくという最適化を個々の水槽に行っていくことが必要となります。

水草達が特に問題無く成長している場合には添加量を減らしても問題無いかと思います。

例えば、赤色系の水草を育てている場合、鮮やかな赤色が出ているのであれば、二酸化炭素の添加量を減らしていって、赤色の葉が維持できるかを見ていくのもありです。

また、水草が光合成によって気泡を発生させる状況が見られるのであれば、二酸化炭素の添加量を減らしながら気泡の発生量を確認していく方法も有効だと思います。

「ネット上でこの添加量が紹介されていたから…」という考え方は排除しましょう!

水草のレイアウト水槽、それはあなたが作り上げる世界に一つの水槽なので、その管理方法の最適解を見つけられるのは皆様一人一人になります。

この記事の終わりに

この記事では、水草水槽への二酸化炭素の添加方法について、二酸化炭素の添加効率の考え方を紹介させていただきました。

添加量を多くしても水中に溶け込む二酸化炭素の量には限界があるため、どこかで二酸化炭素濃度は頭打ちになります。そのため、過剰な二酸化炭素の添加は単に二酸化炭素ボンベを浪費していることになるのです。

水草の成長速度や水草の色、そして光合成による気泡の発生などを見ながら、最適な添加量を見つけていきましょう!

御参考データですが、私は二酸化炭素の添加にADA製のアドバンスシステムを使用しています。そして、60cm水槽では「5秒~6秒に1滴」を基本にして管理しています。決して多くは無い二酸化炭素の添加量ですが、ロタラ・ベトナムは真っ赤に染まり、多くの水草が葉に気泡を付けて光合成をしてくれています。

また、二酸化炭素の添加量を変化させた際の、二酸化炭素ボンベの使用期間について下のリンクで紹介しています。御参考になれば幸いです。