クリプトコリネの成長速度と葉の増え方を実測

淡水アクアリウムに導入する人気の水草に「クリプトコリネ」があります。

東南アジア原産のサトイモ科の植物であり、湿った場所に根を張って水上で育成することもできますし、水中でも水草として栽培することができます。

また、葉の形や数、葉の色などが異なる種類が多くあり、自分の水槽に似合うクリプトコリネを探すことができるというメリットもあります。

さらに、一度水槽の中の環境に慣れると、次々と元気な葉を茂らせていくので、アクアリウムの初心者からベテランの方まで栽培の敷居が低いのも嬉しいポイントです。

そんなクリプトコリネですが、実際の成長速度はどのくらいなのでしょうか?

何となく想像が付くのかもしれませんが、実データを見る機会は少ないかと思います。

この記事ではクリプトコリネ・ウエンティ・ブラウンを例に取り、その成長速度を調査した結果を御紹介したいと思います。


Advertisement

水上葉と水中葉では形や色が異なる

冒頭でも少し紹介しましたが、クリプトコリネは水上でも水中でも栽培することができる植物です。

そして、水上で育てる場合と水中で育てる場合では、実は葉の色や形が全く異なるものになります。

私自身、クリプトコリネは水槽によく導入するのですが、いつもアクアリウムショップで販売されている水中栽培のクリプトコリネばかりを購入していました。

しかし、今回紹介するクリプトコリネ・ウエンティ・ブラウンですが、水上で育てられていたものを水中に移行するという形をとりました。

すると、水中で葉が成長した時に、水上で栽培していた時と葉の色が全く異なることが分かりました。下の写真に例として載せておきます。

写真の上の緑色の葉が水上で育てていた時の葉、下の茶色い葉が水中栽培で新しく出てきた葉になります。

水上で育てていた際には鮮やかな緑色の葉が出ていましたが、水中栽培に移行してからは、その名の通りブラウンの葉が展開してきました。また、葉の形としては、水中葉の方が葉にウェービングがかかっているという特徴もあります。

このように、水上と水中で葉の色や形が異なるというのも、クリプトコリネを育てる楽しみでもあります。

クリプトコリネ・ウエンティ・ブラウンだけではなく、他のクリプトコリネも同じような特徴があると思いますので、機会があれば水上と水中で違いを見てみて下さい。

クリプトコリネの成長速度の測定方法と栽培環境

では、この記事のメインであるクリプトコリネの成長速度について、最初に測定方法と栽培環境についてお話していきたいと思います。

成長速度の測定方法

まずは、成長速度の測定方法についてです。

クリプトコリネは、株元から新しい葉を次々と展開させて株を大きくしていく成長過程を持っている植物です。葉の形や色は品種ごとに異なりますが、成長の過程は基本的には同じです。

下の図に示すように、株の中心付近から新しい葉を展開させて、その葉を大きく成長させていきます。新しい葉がある程度成長したら、次の葉が株元から顔を出し始めます。

今回の成長速度の測定の1つ目は、この葉が増える速度について測定を行っています。クリプトコリネ・ウエンティ・ブラウンの株を2つ選び、その株の葉の増え方を時間と共に測定した結果となります。

次にもう1つの成長速度の測定は、単純に葉の長さの成長を測定したものです。

下の図に示すように、新しい葉が出てきたら、約1cmの長さから葉の成長速度を測定して、何日位で1枚の葉が成長しきるのかを実測しています。

クリプトコリネの栽培環境について

今回成長速度を測定したクリプトコリネ・ウエンティ・ブラウンですが、60cm水槽の中でソイルに植えた2つの株になります。

水温は24℃から25℃程度で管理しており、小型カラシン科の魚が20匹程泳いでいます。

また、水槽用ライトはアクロ製のTriangle LEDとGEX製のClear LED Power IIIを2灯で使用しています。点灯時間は1日当たり約10時間となっています。

二酸化炭素の添加も行っており、ADA製のアドバンスシステムで平均して3秒から4秒に1滴の添加量となります。

フィルターは外部フィルター (エーハイム 2213) です。

肥料はソイルにテトラ製のイニシャルスティックを導入し、その後は液肥を少量だけ添加しています。

植栽直後と成長した後のクリプトコリネの比較

植栽した直後のクリプトコリネと約3か月後の様子を写真で比較したいと思います。

今回は2つの株を植えているので、それぞれの株について成長後の様子を載せておきます。

まず一つ目の株①は、上で水上葉と水中葉の違いを紹介した株になります。植栽直後はとても小さな株だったのですが、下の写真の様に3カ月経つと立派な葉を何枚も展開させていることが分かります。

次の株②は、水上栽培の時点で葉が多かった株ですが、3カ月経つと水上葉がほとんど枯れ落ちて、全て立派な水中葉に生え代わっていることがわかります。水上栽培の時点で充実した株だったこともあり、水中栽培に移行した後も大きな葉を展開しています。

約3カ月の栽培で、クリプトコリネの株は大きく成長しているのですが、栽培に困るほど巨大化しているわけではありません。

水槽の中に植栽しても、それほど存在を主張することなく、狭い場所にも植栽が可能な水草と言えるかと思います。


Advertisement

葉の増える速度の実測結果

それでは、実際の測定データを見ていきたいと思います。

下のグラフは、葉の増える速度を測定した結果です。横軸が経過日数、縦軸が株の葉の枚数になります。

最初の20日間では、あまり葉が増えていないのですが、これは水上栽培から水中栽培に移行したことで、水上葉が枯れ落ちたことによるものです。

その後は概ね20日に1枚くらいのペースで増えていることが分かります。

また、新しく出てきた葉が途中で枯れて溶けてしまった場合もありますので、発生した新しい葉の枚数を完全に反映されているわけではありません。あくまでも、測定のタイミングで株に残っている葉の枚数となります。

そのため、葉が溶けなればもう少し葉の枚数が多くなっていたと思われます。

しかし、2週間に1枚程度増えていくという計算になるので、葉の展開速度という観点では、遅くもなく速くもなく…という印象です。

水槽の中では、とても扱いやすい葉の増加速度では無いかと思います。

葉の成長速度の実測結果

次のグラフは、葉の長さが成長する速度を実測したグラフになります。

このグラフは上で紹介した株②に新しく生えてきた葉3枚について、葉の長さを測定した結果になります。

葉の長さについては、3枚の葉がほぼ同じような成長曲線で成長していることが分かります。

また、最大で12cm程度まで伸びて、葉の成長が終わるような傾向にあることもわかります。

この葉の中がについては、株自体が大きく成長すれば、葉の長さも長くなります。

実際に、上で写真で紹介した株①と株②については、株①の方が株が小さいため、葉の長さが確実に短いです。

株の状態が成長と共に充実することで、大きな葉を展開する能力が身に付いていきます。


Advertisement

クリプトコリネを植栽する時の注意点

私が実際にクリプトコリネを水槽内で栽培してみて、注意した方が良いと思う点を以下で2点紹介します。

前景から中景に植栽するのがお勧め

クリプトコリネは、植栽されている環境が気に入ると成長速度が上がる傾向にあると感じます。そして、それと共に葉の数もどんどん増えていきます。

そのため、成長後の事を考えて水槽の後景草として植えたこともありました。

しかし、やはりロタラ系の水草等に比べると成長速度は遅く、背丈は低い状態になりますので、後景草としてはお勧めはできません。

株が大きく成長して、水槽の背面に配置しても存在感が出るようになってから、後景草として用いることは可能かと思います。

もしクリプトコリネを最初から後景草に使いたい場合、ある程度成長して充実した株を最初から用意すべきです。また、最初は前面で育てて、成長したら背面に植え直すということでも良いと思います。

また、後景草として用いる場合には、水槽の背面側のソイルを盛り上げて、クリプトコリネが水槽前面から見えるように工夫する方法もあります。

葉が溶けてしまう事があるので注意が必要

クリプトコリネを水中栽培する時の最大の注意点は、水中で葉が溶けてしまう場合があるということです。

クリプトコリネは水中栽培に比較的強い植物ですが、水中での環境が合わない場合には葉が枯れ始めてしまいます。

私自身もクリプトコリネの大きな株が突然枯れて葉が溶けだしたことを経験したことがあります。その時の原因は明確ではありませんが、水槽内の浮遊物 (ゴミ) が多かったため水替え頻度を多くした後の事でした。

それを考えると、水質が急に変わってしまったことが一つの変化点であり、原因では無いかと思っています。

クリプトコリネは環境に適合すれば長く栽培を楽しむことができますが、クリプトコリネにとって気に入らない環境になると枯れ込んでしまう場合があります。

そのため、急激な環境の変化は避けるような管理が必要かと思います。

例えば、水温を変える場合には1週間に1℃程度で変化させることや、換水の際には水槽の1/3の水量に留めておうというような方法が有効です。また、光の量についても急激な変化を起こさせない方が無難だと思います。

この記事の終わりに

この記事では、淡水アクアリウムの水草で人気の「クリプトコリネ」について、葉の増える速度や葉の伸びる速度の実測結果を紹介させていただきました。

結果としては、成長は速くもなく遅くもなく…水槽の中では丁度良い成長速度で管理していけるという結果でした。

ただし、植物の成長速度は水槽の環境に大きく依存するので、本結果はあくまでも参考例の一つとしていただければと思います。

その水草の成長速度を知ると、半年後の水槽内の様子を想像しながら水草レイアウトを作ることができます。

本ブログでは、様々な水草の成長速度を紹介しているので、もしよろしければ「水草の知識」のカテゴリから御確認下さい。御参考になるものがあるかもしれません。