子供から大人まで大人気のコリドラスですが、実は御家庭の水槽内でも繁殖も難易度は低いため、「知らぬ間に水槽内に稚魚が泳いでいた」という方も多くいらっしゃるかと思います。
私の管理する水槽の中でも、コリドラスが何度も産卵し、失敗経験がありながらも繁殖に成功をしております。
繁殖と聞くと敷居が高い様に思えますが、アクアリウムショップで販売されている多くの熱帯魚は水槽の中での繁殖が可能な品種が多いです。
アクアリウムショップで「国内ブリード」と記載された熱帯魚をたくさん目にしますが、これらは国内で繁殖された生体になりますので、水槽の中での繁殖が可能であることを示しているのです。
この記事では、私が実践しているコリドラスの繁殖環境の整備と共に、コリドラス・パンダの産卵から稚魚の飼育の実例を、写真入りで御紹介させていただきたいと思います。
コリドラスの産卵に適した環境について
まず最初に、コリドラスの産卵を視野に入れた水槽環境の整備から見ていきたいと思います。
水槽内でのコリドラスの繁殖を視野に入れた時、最も重要な事は、コリドラス達が「この水槽の中で産卵しよう」と思ってくれることです。
そのような環境を提供してあげられなければ、産卵には至りません。
「安心できる」と思わせる水槽環境を用意する
コリドラスが繁殖活動を行う前提として、安心して暮らせる水槽内の環境整備が絶対必要です。
コリドラスは臆病な魚なので、隠れ家の全くないベアタンクのような水槽でライトが常に点灯していては…コリドラス達も安心できませんよね。
以下で紹介する環境整備は、最低限必要になる産卵のための環境です。
繁殖を望むのであれば、次の3点は必ず導入することをお勧めします。
水槽内での魚の産卵は、何か一つでも条件が欠けてしまうと実現しません。そのため、出来ることは水槽の準備の段階から進めておきましょう!
細かい砂利を敷くとストレス解消ができる
水槽の底には水草用のソイルを敷くのではなく、細かい砂利を敷くようにします。
コリドラスは本能的に、口先を砂利の中に突っ込んで餌を探します。
また、身体に付いた寄生虫などを砂利にこすりつけて除去するような行動もとります。
そのため、水槽の底に砂利を敷くことで、それらの本能的な行動を阻害する要因が無くなります。
また、特に粒形が最も細かい砂利を選ぶようにします。
コリドラスのヒゲは傷つきやすいので、粒形の荒い砂利を選ぶと、コリドラスのヒゲが切れて無くなってしまうことが多々あります。
コリドラスの本能を妨げずにストレスを解消するため、そしてコリドラスの体を守るためにも目の細かい砂利を敷いてあげて下さい。
隠れ家を作ってあげる (他の魚からのストレスを軽減)
コリドラスはかなり臆病です。コリドラスはナマズの仲間になりますが、ナマズの仲間には臆病な魚が多いです。
人が水槽の前を通過しただけでも、一目散に隠れてしまうことが多々あります。
特にライトの付いている昼間は、水槽の前面に出てくることもありますが、多くの時間を隠れ家で過ごしています。
上の写真は、私が水槽の中に作った流木のトンネルですが、多くのコリドラスが種類の分け隔てなく集合していることが分かります。
魚は基本的に仲間で隠れて集まれる場所があると安心しますし、雄と雌が出会う場にもなりますので、産卵行動にも移行しやすくなります。
産卵場所となる水草 (ウィローモス) を入れる
コリドラスは様々な場所に産卵をします。
水槽のガラス面にも産卵しますし、水草の茎や葉に産卵することもあります。
産卵場所を提供する時には、産卵後に卵を隔離保護することも考えておく必要があります。
私の経験上での話ですが、ウィローモスに卵を産みつけられていることが多くいです。そして、ウィローモスは容易に切り取ることができるので、卵を隔離する際も便利です。
そのため、ウィローモスを入れて置いてあげるのが一番良いかと思います。
産卵場所として、ウィローモスの次に多いのが水槽のガラス面とアヌビアス等の大きな水草の葉です。
「安心して卵を産み付けられる=卵を隠しやすい場所」だと思いますので、ウィローモスが適しているのは容易に想像でいるのですが、意外にガラス面に産み付けられていることも多いのです。産み付けやすい理由があるんでしょうか?
ただ、ガラス面に卵を産み付けられてしまうと、保護するのが困難なんですよね…。
繁殖しやすいコリドラスの種類とは?
水槽内で繁殖しやすいコリドラスは熱帯魚ショップで「国内ブリード」と記載されて販売されている品種です。
下でも記載しますが、自然の川で採取された「ワイルド」と記載されたコリドラスは、国内ブリードの生体よりも、繁殖の難易度が一回りも二回りも上がります。
私の肌感覚ですが、1匹¥300~¥2,000円で入手できる国内ブリードのコリドラスであれば、多くの品種が繁殖可能です。
得にコリドラス・パンダや青コリドラスなどは、繁殖の難易度がかなり低いです。
5匹くらい飼育するとパートナーが作りやすい
雄雌を確実に用意してパートナーを成立させるには、同種のコリドラスを5匹くらい同じ水槽で飼育してあげることが一番の近道です。
雄雌の判断は見れば大体わかりますが、確実に雄雌を用意するという意味で、5匹くらいが丁度いいです。
また、コリドラス同士にも相性があるので、複数匹入れておくとペアが作られやすいという利点もあります。
もし可能であれば、熱帯魚ショップで購入する際に雄と雌を両方入れてもらうように依頼すると確実です。
私の経験上では水質はあまり気にしなくてOK
野生のコリドラスには年間を通じて決められた繁殖期があり、水質も産卵に影響を与えます。しかし、水槽内で飼育されているコリドラスは、条件さえそろえば繁殖活動を起こします。
特に国内でブリードされたコリドラスは、親も水槽内で育っていますので、自然環境を完全に再現しなくても繁殖活動に移ってくれる傾向にあります。
「自然の中ではpH変化で産卵期を迎える」と紹介されているサイトもあります。しかし、水槽の飼育環境下で繁殖した国内ブリードのコリドラスであれば、私は水質を気にする必要はあまり無いと思います。
産卵させるための理想的な水槽環境はあるかもしれませんが、趣味で楽しむ範囲であれば気にする必要は無いです。
実際、私の水槽で産卵したコリドラス達は、水質の管理などはほとんどせず、いつも通りの換水とフィルター掃除を行っていただけでした。
その水槽の環境を気に入ってくれれば、コリドラス達は産卵してくれます。
ただし、ワイルドと書かれた野生のコリドラスは、そうはいかないと思います。自然環境と同じような水温変化やpH変化が無いと繁殖は難しいでしょうね…。
産卵前には独特の行動を取ります
産卵が近くなると、雄が雌の後ろを付いて回り、追いかけっこをするような行動が見られます。1匹の雌の後を複数匹の雄が追いかける姿も見れます。
また、雄が口先で雌のお腹を突っつくような行動も見られます。業界ではTポジションと言われています。ちょうど2匹の行動が「T」の文字を書くように見えることから付けられています。
かなり特徴的な行動で、普段は見せないため、見れば「あ!これか!」と分かると思います。
Tポジションの写真があれば良いのですが、私はまだカメラで撮影できていません。
コリドラスが産卵する時間帯は基本的に夜
産卵は基本的に夜です。
上に書いたTポジションと呼ばれる繁殖行動も、基本的に水槽ライトが消えている夜の方が見られます。
ですので、水槽ライトを使用されている方は、出来れば夕方19時以降は消灯してあげてください。
私の飼育環境下でも、コリドラスが卵を産んだのは夜のみです。
朝起きるとウィローモスや水槽のガラス面に卵が産みつけられていました。
外敵の少ない安心できる時間に産卵するということかと思います。
水槽内でのコリドラスの産卵頻度
私の飼育しているコリドラスですが、産卵の時期は1年間を通じて「この時期が多い」という時期がありません。
自然界の中では、季節の変わり目や気候の変化によって産卵が誘発されると言われています。
しかし、水槽の中の飼育環境としては、1年を通じてほとんど変化がありませんので、コリドラスが産卵のタイミングを自分で見計らい、条件が整えば産卵するのだと思われます。
私の飼育するコリドラス・パンダは、2カ月連続で産卵したこともあります。
いつ産卵するかわからないので、日々、水槽の中を観察して産卵に備えておきましょう!
産卵したら必ず卵を隔離しましょう!
さて、待ちに待った産卵が確認出来たら、産卵された卵を隔離しましょう!
隔離するのには、次の2つの意味があります。
一つ目は他の魚が卵を食べてしまうのを防ぐことです。
コリドラスをグッピーやプラティ等と混泳させている方は多いかと思いますが、それらの魚は栄養価の高い卵が大好物です。
卵を発見すると高確率で捕食してしまいます。
また、2つ目の理由は孵化した後の稚魚が他の魚に狙われてしまうためです。ネオンテトラ等の温厚な魚であっても、小さな稚魚は格好の餌になります。
ネオンテトラは卵には興味を示さないのですが、稚魚には襲いかかっていた場面を見たことがあります。
そのため、卵は発見したら直ぐに隔離するようにしてあげて下さい。
卵の隔離場所はサテライト水槽やフローティングネットで大丈夫です。
稚魚の成長と餌槍の観点を考えると、サテライト水槽がベストだと思います。
コリドラス・パンダの産卵から稚魚の成長
ここからは、コリドラス・パンダの産卵の実例を取り上げ、産卵後の卵の保護と稚魚の育て方について記載をしていきます。
コリドラスの繁殖で最大の壁は、卵の孵化と孵化後2週間の飼育です。
隔離中の卵には新鮮な水を供給する
産卵後に隔離した卵の管理ですが、必ず飼育水が循環している環境下で管理していきます。
例えば、水槽とは別に用意した容器の中で、フィルターもヒーターも無い状況で卵を管理すると、卵がいつの間にか腐ってしまっていることがあります。飼育水が循環していない事や酸素が不十分になっていることなどが原因として考えられます。
出来れば、産卵したコリドラスの親と同じ水槽内にサテライトを作り、飼育水が循環しているような環境を提供してあげることが望ましいと言えます。
私自身、コリドラスが初めて産卵した時に、虫かごの様な容器で卵を管理していたことがありました。その時には、卵が白く変色し腐ったような状態になってしまったのを今でも覚えています。
そのような失敗をしないためにも、水を循環させるということを忘れないで挙げて下さい。
また、卵が孵化しない理由の一つには、無精卵の可能性もあります。その場合には、運が無かったと思うしかないです…。
産卵後の約1週間で稚魚が孵化
少しわかりにくい写真で申し訳ないのですが、産卵後の約1週間で下の写真の様に稚魚が卵から孵化します。
この写真は、卵化から孵った直後のコリドラス・パンダ写真です。
お腹には栄養が詰まった袋を持っている状態で、まさに生まれたばかりの稚魚という印象です。
生まれた直後は、まだ体長は約2mmくらいです。
この姿だと、まだ何の魚か種類が全くわかりませんね!
孵化後1週間の稚魚の様子
何となくコリドラス・パンダの特徴である目の周りの黒い部分が、既にあるように見えてきました。
このサイズで概ね3mmくらいの大きさですが、小さな粒形の餌を食べるようになります。
餌を与えると、コリドラス独特の口先で餌を探す仕草も始めます。
この時期の稚魚には、稚魚用の人口飼料で0.2mm以下の小さな粒径の餌が販売されていますので、それを与えましょう。
孵化後3週間には稚魚が5mmを超えます
約3週間経つと、コリドラスだとわかるような体つきになり、大きさも5mmを超えてきます。
このサイズになると、少し大きめの0.3mmくらいの餌にも食いつくようになるので、餌やりが楽になります。
混泳させている魚にも依るのですが、コリドラスのみの水槽の場合には、1カ月目でも水槽導入してOKだと思います。
ただし、ネオンテトラなどのちょっかいを出してくる魚がいる場合には。体長が1cmくらいになるまでは待ってあげましょう。
1cm位まで成長したら、水槽の中に入れてあげても大丈夫だと思います。ネオンテトラやその他の小型熱帯魚であれば、ちょっかいを出すことは無くなります。
この記事の最後に
今回の記事では、人気のコリドラスについて、繁殖に向けた環境作りと産卵後の卵の保護、そして稚魚の育成について紹介をさせていただきました。
コリドラスは国内で繁殖されたブリード個体の場合には、比較的容易に御家庭でも繁殖を実現させることができます。コリドラスパンダ、青コリドラス、赤コリドラスといった種類は、複数匹飼育していれば、知らないうちに産卵していることがほとんどです。
ただし、ネオンテトラや小型の魚に取っては、コリドラスの稚魚は餌でしかないので、確実に育てたいのであれば隔離して飼育してあげてくださいね。
コリドラスの子供が水槽を泳ぐ姿はとても可愛く、子供と一緒に観察していると成長の過程も観察出来て家族で楽しめます。
コリドラスを飼育されている方は、是非繁殖にもチャレンジしてみて下さいね!