淡水アクアリウムに導入する水草はアヌビアスやミクロソリウムのような耐陰性の品種が人気ですが、ボルネオ島に自生する「ブセファランドラ属」も有名な耐陰性の水草です。
稀少性やコレクション性と言った観点では、アヌビアスやミクロソリウムよりもブセファランドラの方が勝るものがあります。
耐陰性の水草は、比較的弱い水槽用LEDライトでも健全に育成し、二酸化炭素の添加も不要なため、水槽内で栽培するのに高価な設備を揃える必要がありません。
また、成長速度が遅いことから、水槽の中でトリミングなどのお世話をする回数も少なくなります。
そのため、コケの抑制などの最低限のメンテナンスをしていれば枯れることも少ない、手のかからない植物と言えます。
そんなブセファランドラですが、大切に栽培していくと大きく成長して株分けが出来る状態になります。アクアリウムショップで販売されているものは小さなサイズのものが多いですが、半年以上育てると株分けできる立派なサイズに成長してくれます。
この記事では、ブセファランドラの株分け方法について、実例を挙げながら、注意点なども紹介していきたいと思います。
ブセファランドラの株分けのメリット
わざわざブセファランドラを株分けするということは、そこにはメリットがあるはずですよね!
まず最初に、ブセファランドラを株分けするメリットについて紹介したいと思います。
株の数を増やすことが可能 -保険にもなる-
まず最初のメリットは、誰でも容易に想像することができることですが、株の数を増やすことができるということです。
株分けすることで、株の数が2株、3株と増えるので、水槽内のレイアウトで複数個所にブセファランドラを植栽することができるようになります。
また、株分けをすることは、緊急時の保険にもなります。
何かの理由でブセファランドラの調子が崩れた時、株分けをしていないと株全体に影響が及び、その株が枯れ込んでしまう事があります。
しかし、株分けをしておくことで、1株が枯れ込んでしまっても、他の株を残すことができます。
ブセファランドラの中には、稀少性が高く高値で取引されているものもあるので、株分けしておくことで保険となる株を準備することができるのです。
葉が混み合うことを防ぐ
もう一つのメリットは、葉が混み合うことを防ぐことができるということです。
ブセファランドラは耐陰性の水草ですので、比較的弱い光でも光合成を行って成長することができます。しかし、可能であれば全ての葉に水槽用のLEDライトを当てて、光合成をさせたいところです。
多くの葉に光を当てて光合成がしっかり行える状態にすれば、株の成長を促進することができます。
葉が混み合ってしまうと、葉が重なり合ってしまい、葉同士がお互いに光を遮ってしまう状態になります。
そのような状態を解消する意味でも、株分けを行って葉の込み合った状態を解消することが望ましいと言えます。
また、葉が混み合うと苔が発生した時に、近くにある葉にもコケが発生してしまいます。そのため、ブセファランドラの葉は、葉と葉の間に適正な距離があることが望ましいと言えます。
株分けが出来るブセファランドラの状態とは?
次に株分けが可能なブセファランドラの状態について紹介しておきたいと思います。
株分けというのは、1つの株を複数の株に分けるということを意味します。
そのため、下の写真示すように、一つの株が複数分岐して成長している状態が株分けに好ましい株となります。写真の例では、赤色の矢印で示すように、1つの株から3つのブセファランドラに分かれて成長していることがわかります、。
もちろん、1本立ちのブセファランドラの株を半分に切って株分けすることも可能です。しかし、今回は上の写真の様に複数の株に分かれて成長したブセファランドラを例に取って株分け方法を紹介したいと思います。
株分け時の注意点 -根の状態を確認すること-
ブセファランドラを株分けする時に、出来れば注意しておきたいことが一つあります。
それは、株分けをした後の全ての株に根が残るように株分けするということです。
ブセファランドラは、葉からも養分を吸収しますが、根からの養分吸収も重要な役割を果たします。
そのため、株分けした後に根が残っている方が、株分けの成功確率が高くなりますし、株分け後の成長・回復を促進することが可能です。
下の図に示すように、一つのブセファランドラの株が「株A」と「株B」に分かれているとします。この時「株分けの場所」と記した場所で株分けを行う時、株Aにも株Bにも根が生えている状態になります。
この図の様に、株分け後の両方の株に根があることが望ましい状態になります。
もし、片方の株に根が生えていない状態であれば、根が生えることを待ってから株分けする方が無難かと思います。
ブセファランドラの株分け手順
では、実際にブセファランドラを株分けする手順について、写真を使いながら実例と共に紹介したいと思います。
本記事で株分けするブセファランドラ
まず最初に、本記事で株分けするブセファランドラですが、下の写真の「ブセファランドラ・ブロードウェイビー」となります。
上でも紹介しましたが、もともと1本立ちだった株が3つに分岐して成長している状態の株となります。
この株を株分けしていくわけですが、③と記載された部分は、まだ小さな状態ですので活着している石からは切り離さずに残しておきます。
①②と記載した大きく成長した部分を切り離して株分けをしていきます。
株を切り離す場所を確認する
次に株分けを行う場所を決めていきます。
株分けを行う際には、上で紹介したように、株分け後の株に根が残るように注意をします。また、株の状態にも依りますが、なるべく多くの根が残るようにした方が良いです。
①の株を切り離すポイントは、下の写真でハサミが入っている位置となります。
この株は、比較的葉の状態も良いですし、根ものと方まで健全な状態で育っていたので石に活着している部分で切り落とすことにしました。
②の株についても同様で、石に活着している部分で切り落とします。
状態の悪い葉は切り取る
次に行うのは、葉の整理です。
ブセファランドは成長速度が遅いため、なるべく葉は残しておきたいと思うのが一般的な考え方かと思います。
しかしながら、黄色く変色してしまったり、葉に大きな穴が開いてしまっているようなものは切り落としてしまっても問題は無いです。
【重要】新芽 (脇芽) が出ていたら残しておくこと
次に重要なのは新芽 (新しい脇芽) の発芽ポイントを確認しておくことです。
これは、次の株分けに向けた大切な確認ポイントになるので、必ず確認しておくことをお勧めします。
下の写真に例を挙げておきますが、赤色の矢印で示している部分に、小さな芽が出てきているのが分かるかと思います。
この部分は「脇芽」と呼ばれ、新しいブセファランドラの葉・茎が成長していく部分になります。
このような脇芽があったら、必ず残しておきましょう。
間違ってもこの部分にダメージを与えたり、株分けの際に切り落としてしまわないように注意が必要です。
ブセファランドラは成長が遅いので、このような脇芽が生えてくるのにも時間がかかります。脇芽が生え始めたら、脇芽の成長は比較的早いので、脇芽は大事に扱ってあげてください。
そのためにも、株分けをする前に、株全体の状態を確認しておくことが重要になりますね!
最後に石や流木に活着する
最後に、株分けしたブセファランドラを石や流木に活着していきます。
今回は株分けした全てのブセファランドラを小さな石に巻き付けてみました。下の写真が今回株分けした3つのブセファランドラになります。石に活着すると、水槽内での移動が楽になるという利点がありますね。
株分けしたブセファランドラの管理方法について
株分けが完了したら、その後は株分け後のブセファランドラが枯れてしまわないように管理をしていかねばなりません。
また、株分けしたブセファランドラが健全に成長し、次の株分けに繋がるような管理方法が必要になります。
そのために守っておきたい管理方法・注意点を2点紹介しておきます。
株分け後は同じ水槽でしばらく管理すること
一つ目の注意事項は、株分け後のブセファランドラは同じ水槽でしばらく管理するということです。
せっかくブセファランドラを株分けしたので、複数の水槽に分けて栽培したいと思われるかもしれません。
しかし、株分けした直後のブセファランドラは、株に大きな変化が起こったばかりの状態になります。そのため、水質の異なる水槽に入れてしまうと、それが原因で枯れ込んでしまう危険性もあります。
株分けしたブセファランドラは、出来ればもともと栽培していた水槽の中で数週間は管理してあげることが望ましいです。
同じ水槽で管理した後に、新しい葉や根が展開し始めたら別の水槽に移動するというプロセスがお勧めです。
株分けしたブセファランドラは横向きに配置すると良い -脇芽発生の促進-
次に紹介するのは、株分けしたブセファランドラを横向きにして成長させるという点です。
ブセファランドラに限らず、植物には太陽に向かって上へ上へと成長していく性質があります。より高い位置で光合成をするため、株の中で最も太陽に近い部分に成長点を持ってこようとします。
そのため、株分けしたブセファランドラを縦置きにしてしまうと、下の図に示すように、上に向かって成長してしまい、脇芽が成長しにくくなります。
これに対して、次の図に示すように、株を横に倒した場合はどうでしょうか?
株の中で最も高い位置がどこなのかわかりにくくなります。
そのため、脇芽となる部分が成長しやすくなり、次の新しい芽がどんどん成長していくようになります。
この特徴は、別の水草にも見られる特徴になります。下の写真は「ロタラ・ベトナム」の例となります。
「もともとあった茎」と記載した部分は、茎が横に倒れていることがわかります。そして、その横になった茎の途中部分から新しい脇芽が成長していることが分かります。
このように、植物は株自体を横に倒すことで茎の途中部分から脇芽を成長させることができるのです。様々な品種の水草にも応用できる技術になるので覚えておいて損は無いと思います。
株分けしない方が良い株もある
ブセファランドラの状態によっては、株分けを見送るべき場合があります。
例えば、株自身の状態が悪く、今にも水中で溶けてしまいそうな場合などです。
下の写真は、私が以前に紹介した枯れかけたブセファランドラの状態です。このように株に元気が無い時には、例え株が複数に分かれていても株分けを見送って株の健康状態の回復に努めるべきです。
また、上でも紹介しましたが、株のサイズが小さく根がしっかりと生えていないようなものも株分けは先送りにすべきです。株が小さい場合には、それだけ未熟な状態ということになるので、株分け後に枯れ込んでしまう可能性が高くなります。
しっかりと成長させて大きな株に育てる事を第一目標にしていくべきかと考えます。
この記事の終わりに
この記事では、淡水アクアリウムの耐陰性水草として人気の「ブセファランドラ」について、株分けの方法や株分け時の注意点を詳細に紹介させていただきました。
ブセファランドラは、多くの品種があると共に、その稀少性から高値で販売されている場合が多いです。そのため、入手したブセファランドラが水槽内で溶けて枯れてしまった時のショックは大きくなります。
しかし、株分けを行っておけば保険にもなりますし、水槽内の複数個所にブセファランドラを植栽できるというメリットがあります。
ブセファランドラの株分けは決して難しいことは無く、基本に忠実に行えば失敗することはありません。
皆さんも大きく成長したブセファランドラがあれば、株分けにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?!