淡水アクアリウムに導入する水草の中で、美しさだけでは無く耐陰性や育成の容易さもある人気品種が「ボルビティス」です。
ボルビティスの透明感のある緑色の葉は、水草水槽だけでは無く、流木や石を使ったレイアウトにもマッチするので、水槽レイアウトに対してオールラウンドに適応できる優秀な水草と言えます。
少しお値段の張る水草ではありますが、それに似合う美しさを水槽の中で表現してくれます。
既に水槽の中で栽培されている方はお分かりいただけるかと思いますが、ボルビティスがあるだけで水槽の雰囲気がガラッと変わるのが事実です。
そんな優秀なボルビティスですが、実は水槽用LEDライトの強度が強すぎると、成長速度が遅くなり、成長不良に陥ることを御存じでしょうか?
この記事では、私が育てていたボルビティスが、強いLEDライトが原因で育成不良になった実例を紹介し、その理由についても御紹介したいと思います。
育成不良に陥ったボルビティスの詳細 (育成環境など)
以前の記事になりますが、下のリンクで大きく育ったボルビティスを株分けする方法を御紹介させていただきました。
この時に株分けによって複数のボルビティスの株が出来たのですが、その中の一つが育成不良に陥りました。
実際の写真が下になります。
葉の色は悪く、葉が伸びても全く成長が進まない様子で、いつまで経っても美しい透明感のある葉が育たないような状態でした。新しい葉が出てきても、直ぐに黄緑色に変色してしまっている状況です。
株分けをした際に比較的小さな株ではあったのですが、根の状態を含めてとても元気そうな株だったので、状態が悪かったボルビティスとは思えません。
このボルビティスの育成環境は以下の通りです。
① 60cm規格水槽
② 外部フィルター エーハイム 2213
③ LEDライト: アクロ製 Triangle LED Bright + GEX製 CLEAR LED POWER III
④ 生体: 小型カラシン科の魚が合計で約25匹
⑤ 換水頻度: 週に1度、水槽の1/2の水を交換
⑥ 二酸化炭素の添加: ADA製 アドバンスシステムフォレストで5~6秒に1滴
特に間違った管理方法はしていないと思ったのですが、実はこの中に見落としていた欠点がありました。
成長不良の原因は強すぎるLEDライト
この記事のひとつ前の記事で、強すぎるLEDライトでブセファランドラの葉が葉焼けを起こしてしまったことを紹介しました。
実はボルビティスも、ブセファランドラと同じ様に強すぎるLEDライトで葉焼けの状態を起こしてしまったようです。
実際に上の写真をもう一度見ていただくとわかるのですが、葉の色が緑と言うよりは黄緑色や黄色になっていることが分かります。これは、葉の緑色の色素 (クロロフィル) が破壊されて、色が変色してしまっている状況であると思われます。
下の写真に、健全に成長したボルビティスの写真と今回の育成不良のボルビティスの写真を並べてみました。
水槽の背面スクリーンの色は異なりますが、明確に葉の色が悪いことがお分かりいただけるかと思います。
上で水槽設備の詳細を紹介しましたが、アクロ製Triangle LED BrightとGEX製 CLEAR LED POWER IIIを併用していたことが原因だと思われます。
古い葉ほど葉焼けの状態が悪化しており、緑色から黄緑色に、そして最後には葉が黄色に変色してしまっている様子がわかります。
葉の成長速度も相当遅いことが判明
下のリンクの記事で、ボルビティスの成長速度を測定した結果を紹介させていただいたことがあります。
この記事では、GEX製CLEAR LED POWER IIIのみを利用してボルビティスの葉の成長速度や葉の増える枚数を紹介させていただきました。
今回の葉焼けを起こしたボルビティスですが、過去の記事と同じ様に葉の成長速度を測定し、グラフにプロットしてみました。
株分けした際に葉の長さを一部測定していたのですが、LEDライトをアクロ製Triangle LED BrightとGEX製CLEAR LED POWER IIIの2つで管理してから約2カ月後の葉の長さを測定してみました。
下のグラフがその結果になります。比較のために、以前紹介したデータも併記しています。
今回の葉焼けを起こしたボルビティスは赤色のグラフで示していますが、健全な成長を見せていたものに比べて成長その速度が1/2以下に落ちてしまっていることがわかります。
葉焼けを起こしてしまうと、上述の通り、葉の中にある光合成色素のクロロフィルが正常に働かなくなるためであると思いますが、明確な成長速度の差が生まれていました。
ボルビティスは弱い光の中でも成長する植物のため、ブセファランドラと同様に、強すぎる光には耐性が弱いのだと言えます。
また、成長速度が遅い理由は葉焼けだけが原因かと言われると、それだけではないと思います。
ボルビティスは耐陰性の水草であり、少ない光量の環境でも健全に成長することができるという強みを持っています。
弱い光の場所で成長する際には、葉を長く伸ばして葉の面積を大きくし、より多くの光を集めなければなりません。
しかし、強い光がある場所では、光を集めることに困らないため、頑張って葉を成長させる意味も無いのではないかと考えられます。
強すぎるLEDライトの光は、ボルビティスの葉を葉焼けにするだけでは無く、ボルビティスにとって楽な環境を与えている可能性もあるのではないかと思います。
葉焼けしたボルビティスを弱い光量で管理したら健全な葉が成長しました
さて、ボルビティスの育成不良が分かり、その原因も解明できたところで、葉焼けを起こしたボルビティスをLEDライトの光量が低い水槽で管理してみました。
具体的には、GEX製 CLEAR LED POWER IIIのみで管理している水槽で育てて見ることにしました。
すると、下の写真に示すように、新しく生えてきた葉は透明感のある緑色をしていることがわかるかと思います。
葉焼けしたボルビティスの葉も残してありますが、葉の色の差は明確にわかります。
ちなみに、葉焼けを起こして黄緑色や黄色になってしまった葉は、光量を下げて管理しても元の緑色に戻ることはありませんでした。
葉焼けした葉は見栄えが相当悪いので、新しい葉が展開してきたら切り落としてしまおうと思います。
この記事の終わりに
今回の記事では、強すぎるLEDライトが原因でボルビティスが育成不良に陥った実例を紹介させていただきました。
耐陰性の水草として知られているボルビティスですが、強すぎるLEDライトは育成不良や葉焼けを起こす原因となってしまいます。
強いLEDライトは、植物の育成のためを思って導入するものではありますが、実はそのLEDライトの強度に耐えうる植物と耐えられない植物があることは覚えておくべき事実です。
淡水アクアリウムの水草水槽は、様々な水草を植栽して美しいレイアウトを作っていく技術になりますが、水草ごとに必要なLEDライトや光量についても考慮しながらレイアウト作りをしていくべきだと言えますね。
皆さんも、耐陰性水草を水槽に導入する時には、LEDライトの性能 (光量・強度) には十分注意してください。
事前にアクアリウムショップで水草の特性を確認するというのも有効な手段です。
また、もしボルビティスが葉焼けを起こしてしまっても、完全に株が枯れていなければ復活させることは可能です。この記事でも紹介させていただいたとおりですが、葉が焼けてしまった水槽よりも弱い光量で管理してあげることが最初の手段となります。