室内で楽しむアクアリウムは、水槽や機器の劣化を防ぐために、直射日光が当たらないところに設置されていることがほとんどです。
そのため、淡水アクアリウムで水草をしっかりと育てるためには、それなりに強い光量を持ったLEDライトを準備する必要があります。しかし、光量の強いLEDライトはそれなりに価格も高いため、一般的な光量のライトを使っている方も多いかと思います。
そのような背景もあり、弱い光の中でも育ってくれるアヌビアス・ナナやボルビティスのような耐陰性水草が現代の淡水アクアリウムで人気の水草となっています。
ただ、そのような弱い光の中でも成長する耐陰性水草の特徴として、成長速度が遅いことが挙げられます。以前、私のブログではアヌビアス・ナナの成長速度を実測したことを記事にしました。
今回のブログでは、耐陰性水草としてアヌビアス・ナナと同じく人気の「ボルビティス・ヒュディロッティ」の成長速度について測定結果を御紹介したいと思います。水草レイアウトを作られている皆様の、レイアウト作りの御参考になれば幸いです。
ボルビティスの特徴と成長過程について
ボルビティスの成長過程について
まず最初に、ボルビティスの成長過程について、簡単ですが説明させていただきたいと思います。
ボルビティスの仲間は、アフリカ原産のシダ植物になります。
同じく淡水アクアリウムで有名なシダ植物の水草と言えば、ミクロソリウムがありますね!実は、以前の記事でミクロソリウムについても成長速度を測定した記事がありますので、もしよろしければそちらもご覧いただければと思います。
話をボルビティスの成長に戻していきますが、シダ植物のボルビティスは、園芸用の草花や植物とは異なる成長をします。一般的には、植物の成長は茎が伸びてその茎に葉が展開していく成長をしますが、ボルビティスの場合にはランナーと呼ばれる茎が横方向に伸び、そのランナーが伸びる過程で新しい葉が展開していくという成長過程を持ちます。
少し言葉では説明が難しいので、下の図に図示してみました。
左の図に示すように、ランナーの先に成長点があり、この成長点から新しい葉が成長してきます。そして、その葉の出た位置から新たにランナーが伸びてランナーの長さが伸びていきます。
この成長を繰り返すことでボルビティスの株の大きさが大きくなり、葉の数もどんどん増えていくようになります。
成長速度の測定方法
今回の記事で着目した成長速度は、葉の伸びる速度と葉が増えていく速度についてです。測定を行った期間は5月初旬から8月初旬までの約3カ月になります。
葉の伸びる速度については、下の写真に示すように、新しい葉が伸び始めてからどのくらいの期間で何cmくらいのびるのか?について紹介をします。
上の写真では、新しく伸びた葉の付け根からランナーの茎が出ていることが分かるかと思います。この新しく伸びてきた葉が成長して長い葉を形成していくことになります。
また、葉の増える速度については、上で説明したランナーが成長しながら葉が増えていくわけですが、約3か月の測定期間で何枚の葉が増えたのかを調査しています。
ボルビティスの株を4株を用意して、成長速度を測定していきました。基本的に、水槽の水替えのタイミングで葉の長さをメジャーで測定するという方法です。
成長速度を測定したボルビティスの育成環境について
次に、今回の実験でボルビティスを育てていた水槽環境について紹介します。
使用した水槽は45cm規格水槽で、フィルターやライトなどは一般的な水槽の設備で育てています。
フィルターはエーハイムの2213、LEDライトはGEX社のCLEAR LED Power IIIとなります。
CLEAR LED Power IIIは、値段もお手頃価格で、光量も高いので個人的にはかなりお勧めの水槽用LEDライトです。高価なLEDは探せばたくさん出てきますが、4,000円から5,000円の価格帯でこの品質なら、初心者の方からベテランの方まで十分満足できるライトかと思います。
また、水槽の中でボルビティスと一緒に泳いでいる魚は、テトラ系の小型魚が10匹、ラスボラが5匹、コリドラスが5匹となります。あまり魚の数を過密にはしていない水槽です。
水温は常に25℃を維持できるようにしており、ライトの点灯時間は1日約7時間程度です。
もし他に知りたい情報があれば、是非コメント欄にお願い致します。お応えできる内容は全てお答えさせていただきます。
成長速度の実測データを紹介
それでは実際に葉の成長する速度、および葉の枚数がどのくらいの速度で増えていくかについて実装データを御紹介したいと思います。
① 葉の成長速度について
まず最初に、葉の成長速度ですが、今回は4枚の葉について成長する長さを測定していきました。
約3か月の測定の間に、葉の長さが15cmから18cmくらいに成長していることがわかります。1日当たりの成長速度に換算すると、0.15cm/日から0.18cm/日となり、1週間に2mmも成長していないことになります。
水草の中には毎日数cm成長するものもあるので、そのような成長力のある水草と比べると相当遅い成長速度であることが分かるかと思います。
1日に0.2cmとなると、ほとんど成長に気付かずに、いつの間にか成長していたというパターンが多くなるのではないかと思います。
また、ボルビティスの葉が伸びる速度については、概ね3か月で成長が止まろうとしていることもわかりますね。言い換えると、新しい葉が出始めてから約3か月くらいで大人の葉っぱになるということですね!
3カ月かかって葉が育つということですので、水槽内のレイアウトにボルビティスを利用する時には、3カ月後くらいのイメージを持って作るべきであるということですね。なかなか難しいことですが…。
② 葉の枚数が増える速度について
次に葉の枚数が増える速度についてです。
約3カ月の間、4株のボルビティスについて、株についている葉の枚数を数えてきました。経過日数がゼロの点は、もともと各ボルビティスの株についていた葉の数になります。
結果を下のグラフに載せますが、例えばNo.1の株については、もともと6枚の葉が付いており、約3か月後に葉の数が4枚増えて10枚になって事を示しています。
この結果を見ると、葉が増えた数は約3か月で3枚か4枚となりますので、1カ月に1枚程度の葉が新しく形成されていくということになります。
上で説明した葉の成長速度にしても、葉の数自体が増えていく速度についても、ボルビティスの成長の遅さが分かる結果となりました。
葉の数が約3か月で3枚か4枚しか増えないとなると、水槽内のレイアウトとしてほとんど変化が無いと思っても良いのかと思います。
成長の遅いボルビティスにコケを発生させない工夫
上で紹介したボルビティスの成長速度の実測は、ボルビティスの成長の遅さが分かる結果となりました。
ボルビティスの成長の遅さは、レイアウトに大きな変化を与えないという点では長く同じレイアウトを維持できるという点で一つのメリットになるかと思います。
しかしながら、ボルビティスの成長が遅いという性質は、一般的には「コケが発生しやすい」という点ではデメリットになります。
アヌビアス・ナナもそうですが、成長の遅い植物はコケが成長する速度の方が速いために、あっという間にコケに覆われてしまうこともあります。
ボルビティスの成長速度の話をしているので、それに関連して、ボルビティスの葉にコケを発生させない方法として私が対策している方法を2つ紹介します。
1つ目は葉の密度を下げるということです。葉同士の距離が近すぎると水流や水槽内での水の動きがさえぎられます。その環境と言うのはコケからすると発生しやすい環境になります。そのため、葉が過密になり過ぎないように定期的に葉の整理や株分けを実施するようにしています。
2つ目は水槽内になるべく水流を作ることです。これは1つ目の対策とも似ているのですが、水流を作ってボルビティスの葉にコケが成長しにくくします。水の動きが無い場所と言うのはコケにとって、活着して成長することが容易になる場所になるので、そのような場所を作らないという意味を込めています。
この2つの方法を実践することで、私の育てているボルビティスにはコケが付きにくくなりました。もし、成長速度の遅い水草のコケに悩まされている方は、水流や葉の密度の観点を気にした管理をすると解決へ向かう可能性もあるかと思います。
この記事の終わりに
この記事では、耐陰性水草として淡水アクアリウムで人気の「ボルビティス・ヒュディロッティ」の葉の成長速度や葉の数の増え方について実測データを紹介させていただきました。
耐陰性のある水草は、成長速度も遅いことが特徴ですが、今回の実測でボルビティスの成長速度が1日当たり2mmも成長していないことがわかりました。また、葉の数についても約3か月の間に3枚か4枚しか増えず、成長速度の遅さが実測でも証明された形になります。
水槽内のレイアウトを作る時には数か月後の水景を想像して初期のレイアウト作りをすることになるかと思います。しかし、ボルビティスについては3か月経ってもそれほど成長をしないので、最初からレイアウトの完成図を構想しやすい水草になるのかと思います。
今回紹介させていただいた実測データが、今後ボルビティスの育成を計画されている皆様の御参考になれば幸いです。