熱帯魚や両生類を飼育する際、飼育しようと考えている生物によっては、外来生物法を確認し、飼育可能か否かを必要があります。
ニュースや新聞で日本の河川や池で巨大な「ガー」や「プレコ」が発見された、という報道を見たことがあるかと思います。これは無責任なアクアリストが、飼育できなくなったことを理由に放流したことが原因です。
このような出来事により、輸入規制や飼育規制が法律で定められ、アクアリスト達の楽しみの幅を狭めることになります。
身勝手な放流や飼育放棄は、日本古来の生態系を崩してしまう恐れに繋がるため、それを規制するために外生物法が制定されました。
この記事では、アクアリウムに関連性の高い外生物法と、私たちがやってしまいがちな違法行為について紹介していきたいと思います。
外来生物法と目的について
外来生物法の目的は「特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資すること」とあります [参照元: 環境省HP]。
日本古来の生態系や自然を重んじ、そこに被害を与える可能性がある外来種の生物を特定し、輸入や飼育を制限するための法律になります。
これを守らなければ、懲役や罰金刑が課せられます。
特定外来生物に指定された魚種
現在、外来生物法で指定されている魚種は数多くいますが、その中でも有名なものを紹介したいと思います。
指定される魚類の多くは、皆さんも一度は聞いたことがある名前が多いかと思います。どれも獰猛な肉食魚や繁殖力の強いもので、日本の池や河川の生態系を壊す可能性が高い魚ばかりです。
ブラックバス
ブラックバスは、ルアーフィッシングのターゲットとして人気となり、その繁殖力の高さと日本の気候にも適応した体で、爆発的に全国に分布していった魚です。
琵琶湖や霞ケ浦、富士五湖など国内の有名な湖や池はブラックバスがほとんど住み着いています。
肉食魚のため、モロコやタナゴなどの日本古来の小さな魚を食べつくしてしまうため、特定外来生物に指定されました。
ブラックバスと同じサンフィッシュ科目のブルーギルも特定外来生物に指定されています。
オオタナゴ
観賞用にロシアや中国から輸入されたものが放流され、霞ケ浦水系に住み着いたものです。
日本古来のタナゴと見た目は似ているのですが、体調が大きいため、卵を産卵する石貝の争奪戦で日本のタナゴよりも優位に立ちます。
そのため、日本古来のタナゴが卵を産む場所を奪われて、繁殖活動 (生態系) へ影響を与えると判断されました。
ガーの仲間
アリゲーターガーやスポッテッドガーが有名ですが、ワニのような口を持った魚で、アメリカが主な原産国となります。
その見た目のカッコよさで人気に火が付きましたが、巨大化するため飼育することが困難になった飼い主が、国内の池や河川に放流したことが問題となりました。
ブラックバスと同様に、肉食魚で獰猛な性格であるため、国内生態系を脅かす存在として特定外来生物に指定されました。
ナイルパーチ
ナイルパーチはスズキ目のアカメ科に分類される大型魚の肉食魚です。
アカメ科の「アカメ」という魚は、実は日本にも古来より住みついており、高知県以南の暖かい海に生息しています。
ナイルパーチも獰猛な肉食魚で、小型の魚を食べつくしてしまうため特定外来生物に指定されました。
ナイルパーチは、スズキ目の魚ということで、食べてもおいしい魚です。そのため水産資源としても輸入する国が多いのですが、住み着いてしまうと厄介な魚なのです。
ナイルパーチは、日本だけでなく様々な国で問題視されている魚種になります。
指定外来魚を飼育するには
指定される前から飼育していた場合
指定外来魚は、年々指定される魚種が増えていっております。現在指定されていなくても、国・環境省の判断で指定されることがあります。
指定後の6カ月以内に申請・手続きを行うことで、その生体に限って飼育することが可能です。以下の環境省HPを確認し、申請手続きを行ってください。
指定された魚種を新たに飼育する場合
指定外来魚は、実は原則として飼育が禁止されております。
しかし、学術的な研究や教育の目的で飼育する場合や水族館の展示用で飼育する場合には飼育することが可能です。
個人宅で観賞用で新たに飼育することは、全面的に禁止されています。つまり、ガーやブラックバスは、私的に飼育すること自体ができないのです。
個人で生態の研究するという理由があり、主務大臣の許可を得られれば別ですが、さて申請して通るのでしょうか?
私は申請をしたことがないので、もしされたことがある方は情報をいただけましたら幸いです。
その行為・飼育方法、違法ですよ!
指定外来種の魚種について、アクアリストがやってしまいがちな違法行為について記しておきます。
「大丈夫だろう」と思っていることも、実は違法行為になります。軽い気持ちで行う前に、きちんと確認して行動しましょう。
人から譲り受けた指定外来種の飼育
例えば、友人が飼育していた指定外来種を無許可で譲り受けるような行為。
これは、あなた自身はその指定外来種の飼育について、大臣から許可を受けていないことになります。
人から譲り受けることがある場合には、環境省地方環境省事務所に事前に確認しましょう。
勝手に飼育していて発見されたら違法行為とみなされます。譲る側にも譲り受ける側にも責任があります。
釣った魚の移動および飼育
これは、一番やってしまいがちな違法行為です。
例えば、ルアーフィッシングで釣り上げたブラックバスを自宅の水槽で飼育すること、これは違法行為です。
また、別の池に移送する行為も、外来生物の繁殖域を広める行為となるため違法です。以前、釣り上げたブラックバスを輸送して検挙されているニュースがありました。
池から池への移動だけでなく、貴方の自宅への移動も違法行為になりますし、飼育することも違法行為になります。
ブラックバスが日本に導入された時代は、釣り人が様々な場所でバスフィッシングを楽しみたいので、広範囲に移動させてしまいました。今では、ブラックバスのいない池を探す方が難しいと思います。その代償がこの法律が出来た原点ではないでしょうか。
飼育する環境を変えてしまう行為
アクアリストであれば、飼育する水槽を自由に変えたいという思いがあるかと思います。
例えば、届け出をして許可を得ている90cm水槽から、新たに立ち上げた120cm水槽で飼育しようとする行為です。
これは、許可を得ていない120cm水槽で飼育を始めることになるので、飼育環境・飼育設備の無断変更で違法行為となります。飼育設備を変更する際には、事前に大臣の許可をえるようにしてください。
放流する行為
誰もが理解できる違法行為です。
この記事に記載するまでもないことですが、飼育する人が責任を怠り、国内に放流をしてしまったことが、この法律が制定された背景です。
飼育が厳しくなった場合、近くのアクアリウムショップや水族館に相談したり、最後まで責任ある行動を取りましょう。
自治体の生態系保護活動によって、日本古来の生態系を取り戻している池などもあります。そこに再び外来魚を放流するようなことは絶対にやめましょう。
地方自治体による独自の制限
特定外来生物に関して、地方自治体が独自に制限したルールも存在します。
例えば、ルアーフィッシングで釣り上げたブラックバスやブルーギルなどは飼育・運搬は禁止されていますが、その場で池にリリースすることは禁止されていません。
しかし、深刻な生態系被害に悩む琵琶湖では、釣り上げたブラックバスやブルーギルを再度琵琶湖にリリースすることを禁止しています。実際、琵琶湖を周遊すると、各所に釣り上げたブラックバスを回収する箱が用意されています。
この記事の最後に
特定外来生物を取り締まる法律は、私たち人間が様々な活動をする中で、知らぬ間に独自の生態系を破壊してしまっをことを背景に生まれてきました。
その国の生態系は地球の長い歴史の中で育まれた歴史であり尊重すべきものです。私たちの欲求を満たすために安易に破壊して良いものではありません。
輸入や身勝手な放流で絶滅の危機に立たされている生物も多く存在します。
私たちアクアリストは、法律を尊重するとともに、決められたルールの中でアクアリウムを楽しみましょう。
違法なことを繰り返すことによって、アクアリウムの楽しみをさらに狭める行為に繋がってしまいます。アクアリウムを楽しむ前提に、地球環境の保護を前提に置いて、責任ある熱帯魚の飼育を続けていきましょう。