夏の休日、子供と一緒に渓流へ川遊びに行くと、必ず出会える川魚がいます。
「ヨシノボリ」という川魚です。
ハヤやウグイの様に泳ぎが速くないので、簡単に網で捕まえることもできるのため、魚とり網を持っていけば誰でも捕まえることができる魚です。1日川遊びをしてヨシノボリを捕まえれば、魚影が濃い川では30匹くらいは捕まえられます。
とても可愛い泳ぎ方をしており、お腹の部分に吸盤を持つので、水槽のガラス面に吸い付いていたりして、水槽内でとてもコミカルな動きを楽しむことができる魚でもあります。
この記事では、筆者が飼育しているヨシノボリの紹介に加え、ヨシノボリを飼育する上で必要な知識を紹介していきたいと思います。
この記事を読むとヨシノボリを飼育したくなるかもしれません。
ヨシノボリの概要
まず最初にヨシノボリについて概要的なところを紹介しておきます。
ヨシノボリと言いますが、実はヨシノボリと言う魚はハゼ科のヨシノボリ属に分類される魚の総称になります。ヨシノボリには地域固有の種類もいますし、全国に広く分布しているものもいます。
ヨシノボリの見た目や大きさ
ヨシノボリはハゼ科になるので、海にいるハゼにそっくりな見た目をしています。下の写真に私の水槽で泳いでいるシマヨシノボリの写真を載せておきます。
ヨシノボリを知らない方に写真を見せると、確実に「これはハゼですよね!?」と言われます。確かにハゼ科なのでハゼなのですが、渓流に住むのでハゼではなくヨシノボリという名前を使いたいところですね。
泳ぎ方もハゼにそっくりで、胸ビレで歩くように泳いだり、お腹の吸盤で水草や水槽のガラス面に吸い付いたりして泳いでいます。
ヨシノボリは大きさが小さく、最大でも10cmに届きません。多くの種類が5cmから8cmくらいまで成長しますので、水槽の中で存在を主張するような事もないです。
また、同じヨシノボリの種類でも住んでいる地域によって色が頃なっていたりします。例えば同じシマヨシノボリでも、茶色の魚体を持つ者もいれば別の地域では白や黒が濃いものもいます。水槽内での飼育環境によっても体の色が少し変化したりするので、そのような変化を楽しむことができる魚でもあります。
ヨシノボリの生息地域について
ヨシノボリは日本の広い地域に生息しています。北海道から九州、また小笠原諸島にもヨシノボリの仲間が生息しているので、日本全域で見ることができる魚と言えます。
ヨシノボリが住んでいるのは基本的に山の中の渓流から河川の中流域になります。基本的に綺麗な水の中でしか生きれない魚になるので、生活排水で汚れているような川や工場排水の流れる部分にではほとんど見ることができません。
そのため、お家の水槽で飼育される際にも、水質は綺麗な状態にしておく必要があります。以下でも紹介しますが、フィルターを使用した水槽でないと飼育する事は出来ないと言えます。
ヨシノボリは販売されていることが稀です
ヨシノボリは、アクアリウムショップでもペットショップでもほとんど販売されていません。
タナゴや金魚などの日本淡水魚は販売されていますが、ヨシノボリを販売しているお店を見たことがありません。
そのため、ヨシノボリを飼育するためには、自分で川に捕りに行かねばなりません。
ヨシノボリだけを狙って渓流に行くことは無いかと思いますので、お子さんと渓流に遊びに行って捕まえたものを持ち帰って飼育するというパターンが最も多いかと思います。
私自身はと言うと、ルリヨシノボリが欲しくて渓流に子供と捕まえに行ったことがあります。狙ったヨシノボリを捕まえて飼育すると、お店で購入するのとは少し違って、飼育する嬉しさが増しますよ。
下の写真は渓流で捕まえたヨシノボリの写真ですが、短時間でもかなり多くのヨシノボリに出会うことができます。
ヨシノボリの飼育環境について
飼育の前に必ずフィルターを立ち上げておきましょう
ヨシノボリを飼育する場合には、できればフィルターを立ち上げておくことが望ましいです。
ヨシノボリを捕まえて、いざ飼育しようとした時に新品の水槽に新品のフィルターであると生物濾過が十分に得られず、水質が安定しない場合が多いです。
ヨシノボリは綺麗な水の中で生活している魚になるので、糞や食べ残しの餌で汚れた水槽では生きていくことが難しくなります。
もし既に金魚などを飼育している水槽があれば、その水槽で混泳させることもできますので、できれば立ち上がっている飼育システムで飼育を始めてください。
飼育水槽は30cm以上を推奨します
ヨシノボリは体らは小さいのですが、結構水槽内を動き回ります。
複数匹を混泳させると追いかけっこの様な仕草をしたり、水槽のガラス面をよじ登ったりするので、小さな水槽だと飛び出してしまうこともあります。
また、大きな水槽の方が水質が安定しやすいので、水質を少し気にするヨシノボリには水量の多い水槽の方が適しています。
そのため、少なくとも30cm以上の水槽を用意しておいた方が安心です。私は60cm水槽で飼育をしていますが、飛び出したりするようなことは今のところありません。
おススメの水槽は、私も愛用していますが、GEXさんのグラステリアシリーズです。美しさとコストを両立した、誰にでも愛される水槽のシリーズです。
水温は20~25℃がベストです
ヨシノボリが住むのは河川ですので、水温が低い水が必要になります。
他の熱帯魚や金魚と混泳させる場合もあると思いますので、それを加味すると大体20℃~25℃くらいの水温が良いかと思います。
私の飼育環境では25℃で管理しています。
ヨシノボリは日本固有の魚になるので、冬の低水温でも生き抜く力があります。しかし、高温には弱いので30℃を上回るような水温の中では体調を崩してしまう可能性もあります。そのため、夏場はクーラーを使用したり、氷などで水温を下げてあげるなどの工夫をしてあげるようにしています。
他の魚との混泳も可能です
ヨシノボリの気性は温厚です。他の魚との混泳も可能です。
しかし、ヨシノボリは肉食になるので、グリーンネオンテトラ等の小さな熱帯魚やビーシュリンプ等の小さなエビとは混泳できません。
口に入ってしまうようなサイズの魚やエビは同居させないようにしてください。
自分より大きな体の魚を襲うことはありませんが、ヨシノボリの種類によっては縄張りを主張するようなものもいますので、威嚇する姿が見られる場合もあります。しかし、威嚇しても他の魚を傷つけるようなことは無いので、威嚇を気にしなければ混泳は可能であると言えます。
私自身はコリドラスやレインボーフィッシュの泳ぐ熱帯魚水槽の中で混泳させていますが、混泳による大きな問題は起きていません。
ヨシノボリの飼育前には水合わせをきちんと行いましょう
熱帯魚や金魚など、アクアリウムショップで購入した生体を自分の水槽に入れる時、必ず水合わせの作業があります。これは、アクアリウムを楽しむ方であればだれもが知っている基本的な作業になります。
しかし、ヨシノボリに限らず、渓流に住む川魚は水合わせは少し気を遣います。
渓流を流れる川の水は、自然のろ過システムが完全に確立されている綺麗な水になります。地下水が土壌や岩盤の中で濾過され湧き水となって湧き出し、川の中に存在する大量のバクテリアによって生物濾過も完璧に行われている状態です。
その清流の水に比べると水槽の中の水は汚い水になります。
そのため、ヨシノボリなどの川魚を飼育する前には時間をかけてじっくりと水合わせをしてあげて下さい。下手をするとpHショックなどで、水槽に入れた直後にヨシノボリが命を落としてしまう可能性もあります。
少なくとも30分、理想的には1時間くらいかけて水合わせをしてあげると安心して水槽の中に入れてあげることができます。
ヨシノボリ飼育は最初の餌やりが最も苦労する
ヨシノボリの飼育で最も苦労するのは餌やりだと思います。
ヨシノボリは上で記載したように店頭販売されている魚では無いので、多くの場合は自然の中の生態を捕まえてくることになります。
ヨシノボリは自然の中では、川の中に住む虫などを食べて暮らしていますので急に人口飼料を与えられても食べません。そのため、冷凍赤虫などの自然の食べ物に近いようなものから餌付けをしていかないといけません。
私の飼育しているヨシノボリは、沈下性の人口飼料を食べてくれるようになりましたが、最初のうちは何とか冷凍赤虫を食べさせていた状況でした。しかも、今では餌の時間になると、隠れているヨシノボリも餌に気付いて出てくるようになりました。ハゼの様なコミカルな動きで近づいてくるので、とても愛嬌があって可愛いですよ。
この最初の餌やりの大変さだけは、ヨシノボリ飼育で誰もが克服しなければならない課題だと思います。
筆者の飼育しているヨシノボリの紹介
さて、ここからは私の飼育しているヨシノボリを紹介させていただきます。
現在、熱帯魚と混泳させながら以下の3種類のヨシノボリを飼育しています。どのヨシノボリも元気に水槽の中を泳いでくれていますよ。
最も有名なシマヨシノボリ
このシマヨシノボリは日本に最も広く生息している一般的なヨシノボリです。私自身、川に魚捕りに行くと必ずと言っていいほど出会うことが出来ているヨシノボリです。
魚体の色は住んでいる地域によっても少しずつ異なりますが、模様の入り方などは概ね同じような模様です。
とても温厚な性格の持ち主で、他の魚に対して縄張りを主張したり、攻撃するような仕草は全くありません。
餌も人口飼料を食べてくれるようになるまでが早かったので、最も飼育しやすいヨシノボリかもしれません。
瑠璃色の魚体を持つルリヨシノボリ
私の個人的な意見ではありますが、ルリヨシノボリは住んでいる河川が限られているように思えます。日本全国に生息ているヨシノボリではあるのですが、シマヨシノボリはたくさんいるけどルリヨシノボリは全く見られないような川もあります。そのため、上の写真にあるルリヨシノボリを捕まえるのに少し苦労しました。
シマヨシノボリよりも体の模様が落ち着いており、まさに瑠璃色をした魚体を持つ綺麗なヨシノボリになります。
熱帯魚と混泳させても、熱帯魚に負けないような存在感を出してくれます。
少し餌にうるさく、飼育当初は全く餌に見向きもしてくれませんでしたので、最も餌やりに苦労しているヨシノボリです。
濃い魚体が美しいクロヨシノボリ
クロヨシノボリは、日本に広く分布するヨシノボリの中でも、水槽の中で最も美しさが映える種類だと思います。
濃い色の魚体に、背びれには綺麗な白いラインが入り、尾びれなどは赤く染まるものもいます。上の写真はまだ色が仕上がる前の写真ですが、仕上がるともっと鮮やかな色に変化していきます。
見た目を重視してヨシノボリを飼育するのであれば、クロヨシノボリが最もお勧めです。
熱帯魚の様な綺麗な魚体をしているので、熱帯魚水槽に入れて置くとクロヨシノボリが日本淡水魚であることを忘れてしまいます。
ただし、少し気の荒い種類でもあるので、たまに熱帯魚を追い払うような仕草も見せています。他の魚に怪我をさせてしまうことは無いですが、一応私の飼育経験として記載しておきます。
ヨシノボリも飼育すると体色が美しくなります
特にクロヨシノボリのような色の濃いヨシノボリに見られることですが、飼育すると飼育直後にくらべてどんどん身体の色が綺麗になっていきます。
下の写真はクロヨシノボリですが、左が飼育した当初の写真、右側が飼育開始後10日経った時の写真です。
ライトの当たり具合も影響はしますが、身体の色に赤みが出て、体側の模様もくっきりと浮かび上がってきていることが分かります。
餌は色揚げ効果のあるようなものを使っていないので、色揚げの効果ではなく、飼い込んだことによる色の変化だと思います。
この記事の終わりに
この記事では、日本の河川に広く生息している「ヨシノボリ」の飼育方法や特徴を詳しく紹介させていただきました。
ペットショップでは手に入らないので、自分で渓流で捕まえなければいけないという苦労、また最初の餌やりに苦労するというデメリットはありますが、日本の淡水魚の中でも美しい魚体を持つので、水槽の中で飼育してもとても映えてくれる魚です。もちろん、熱帯魚や金魚との混泳も可能になりますので、既存の水槽でも飼育は可能です。
夏の休日、御家族で渓流に遊びに行った際にヨシノボリに出会ったら、何匹か連れて帰ってきて飼育してみてはいかがでしょうか?
熱帯魚も良いですが、日本淡水魚には日本淡水魚の良さがありますよ。