熱帯魚のpHショックを防ぐための安全な水替え方法とは?

水槽の管理の中で、最も重労働な作業が「飼育水の入れ替え」だと思います。

水槽がリビングにある方は、バケツを使って換水をしなければなりませんし、90cm以上の巨大な水槽を所有されている方は、換水に長時間が必要になってくるかと思います。

その「換水」と言う作業ですが、一般的に考えると水がきれいになるので、魚にとっては良い事であるように思われがちです。

しかしながら、一歩間違うと「pHショック」と呼ばれる魚に取って致命的となるショック症状が発生してしまう可能性が出てきます。

この記事では、換水によるpHショックが起こる理由と、それを防ぐための方法について御紹介したいと思います。


Advertisement

熱帯魚のpHショックって何?

熱帯魚のpHショックとは、熱帯魚を飼育している飼育水のpH値が急激に変化したことによって、魚がpH値の変化に順応することが出来ず、命に関わるショック状態に陥ってしまう現象のことを指します。

例えば、pH=7.0の飼育水で飼育されている熱帯魚を、pH=5.0の飼育水に直接放り込むような場合に、pHの差が2.0あることになります。この差は、人間にとっては皮膚に甚大な影響を与えることは少ないですが、魚にとってはエラや粘膜などに非常に大きな刺激となってしまうのです。

例えば、アクアリウムショップで購入した魚を自分の水槽に移し替える時、水合わせと言う処理をするかと思います。これは、アクアリウムショップの飼育水のpHから、自分の水槽のpHに徐々に順応させていくために行う行為になります。

飼育水のpHの変化について

水槽内のpHが変化する原理について

水槽内の飼育水のpHは、経過日数により日々変化していきます。

熱帯魚の糞や食べ残しの餌は、バクテリアによって分解 (生物濾過) され、最終生成物として硝酸が生成されます。この硝酸は、高校の物理でも習ったかと思いますが、酸性を示す液体になります。

つまり、飼育水の換水をせずに同じ飼育水で飼育を続けていくと、生物濾過によって生成された硝酸の濃度がどんどん濃くなっていきます。これが硝酸によるpHの低下を起こす主な原因となります。

生体数が少なければ糞の量が減るので、生物濾過の最終生成物である硝酸の濃度は少なくなりますし、生体数が多くなれば逆に硝酸濃度はどんどん上昇していきます。

筆者が測定した水槽内のpHの推移を紹介

私自身、水槽内のpHの変化がどのくらいのものなのか気になり、換水をせずにpHの変化を記録したことがあります。

水槽は50cmクラスの水槽で、外部フィルター (エーハイム2213) を用いており、生体数としては小型カラシン15匹、コリドラス5匹、ラスボラ5匹を飼育していた水槽です。

換水を行った後、20日の間は換水をせずに、4日おきにpH測定をしていきました。使用したpH測定はTetraから発売されている「TetraTest Teststreifen PH」という商品です (下の写真参照)。この商品は紙でsのpHチェックなので少し制度は落ちますが、pHが0.5刻みで測定することができます。

そして、実際に20日間のph変化を測定した結果が次のグラフになます。水槽の水は減った分だけは継ぎ足していきました。それ以外は、大きな変更を加えていません。

換水直後にはpH=7.0で中性の飼育水でしたが、経過日数が8日を超えてくると徐々にpHが下がり始めて、20日の試験でpH=5.5まで酸性化が進んだことがわかります。

このpHの下がり具合は、飼育環境・飼育生体数にもよるので、あくまでも御参考例として紹介させていただきました。

普段は1週間に1度換水をしているのでpHの事はあまり気にしていなかったですが、20日 (約3週間) 放置するとpHが5.5という弱酸性状態まで下がっていくことが分かった事例です。


Advertisement

換水によってpHショックが起こる理由

さて、本題である換水によってpHショックが起こってしまう理由を説明したいと思います。

上で紹介した水槽の飼育水のpHについてですが、21日目に換水を行って水槽内の飼育水のpHが元々のpH=7.0に近づいたとしましょう (下図参照)。

いかがでしょうか?

確かに水槽内のpHの値は元の値に戻りました。しかし、20日目のpH=5.5の状態から比べると、pH=7.0まで変化するということは、pHが急激に1.5も変化していることになります。

先に記載の通り、魚にとってはpHの変化は、例え人間の殻に影響がないレベルであっても魚にとっては重大な問題を引き起こす可能性があります。

そのため、常にpHの変化を極力抑えられるような環境を維持していく必要があります。

pHショックを起こさないための換水方法

pHショックがpHの変化が急激に起こることで引き起こされることは分かりました。また、換水頻度が少ないことで飼育水の酸性化が進むため、換水時のpH変化が起こりやすいことも分かりました。

では、どうすればpHショックを起こさない換水が出来るのでしょうか?

簡単です。換水頻度を増やせば良いのです。例えば週に1度の換水です。

上で紹介しているpHの変化のグラフを週に1度換水する場合に置き換えて考えてみたグラフが次の図です。

青色の矢印の部分で1週間に1度の換水をすることにすると、その都度pHは元の7という値に戻ります。

つまり、pHの変化が0.5未満に抑えられていることになります。

一つ上の見出しで3週間に一度の換水ではpHが1.5くらい変化することを紹介しましたが、この例ではpHの変化を0.5にまで抑えることが出来ています。

この方法を使えば、常にpHの値を6.5~7.0に維持できることになります。

1週間に1度の換水を多いとみるか少ないとみるかは人によって異なりますが、少なくとも1週間に1度と言う頻度が、pH変化の観点でも意味のある頻度であることが分かるかと思います。


Advertisement

この記事の最後に

この記事では、換水によってpHショックが引き起こされる原因と、換水によるpHショックを起こさせないための換水方法の重要性について御紹介させていただきました。

換水と言う作業は、飼育水の交換と言う手まで面倒な作業になるので、少しサボり気味になってしまうことがあるかと思うのですが、換水頻度の低下は水槽内のpH変化の大きさに直結してしまいます。

常に同じ水質を維持するためには1週間に1度の換水が必要になるので、魚が住みやすい環境作りと言う観点でも、換水は怠らずに定期的に実施してあげて下さいね。