淡水アクアリウムのレイアウトに使用する水草に、輝くような鮮明な赤色の葉を持つ「ロタラ」という水草があります。
ロタラには緑色の葉の種類 (グリーン・ロタラなど) もありますが、「ロタラ・インディカ」や「ロタラ・ベトナム」等の品種は、強いLEDライトを照射すると葉が真っ赤に染まります。
赤色を綺麗に出すためには水槽の管理方法や設備の面で難易度が上がりますが、赤色の水草が水槽のレイアウトあると、それだけで少しレベルの高い水槽を演出することができます。
しかし、赤色系のロタラを育てたことがある方であれば、一度は経験したことがあるであろう「困り事」があります。
それは、葉が他の水草に比べて枯れやすいということです。
私自身、これまで何度も赤色系のロタラを水槽に取り入れて水草水槽を立ち上げてきましたが、このポイントだけはなかなか解決することができていません。
色々と理由を考えてみましたが、赤色系のロタラには葉が弱くなってしまう宿命があるのだと感じます。
この記事では、その理由について、私の考えを紹介させていただきたいと思います。
赤色系のロタラの葉が枯れた実例
では、まず最初に赤色系のロタラの葉が枯れてしまっている実例を紹介したいと思います。
下の写真は「ロタラ・ベトナム」で、葉が赤色になるロタラとして有名な品種の水草です。
ロタラは茎の頂点部分に成長点があり、その成長点から新しい葉が展開します。
そのため、枯れてしまっている葉は少し前に芽吹いてきた葉ということになります。
赤色系のロタラを育てたことがある方であれば、ロタラがこのような状態になったことを経験された方が多いのではないでしょうか?
上の方だけ赤い元気な葉が残り、下の方の葉は元気が無くなり、エビ達に食べられてしまうような場合も多々あります。
ロタラは成長が比較的早い水草になりますので、新しい葉が展開してくると、古い葉が少しずつ元気が無くなることがあります。
しかし、赤色系のロタラは、古い葉が枯れ落ちていくスピードがとても速い様に感じます。
その理由は何なのでしょうか?
以下では、ロタラが赤くなる理由について簡単に紹介し、赤くなることが枯れやすい原因になり得るということを説明していきたいと思います。
ロタラの葉が赤くなる理由を解説
赤色系のロタラの葉が枯れやすい理由を考えるためには、まず最初にロタラの葉が赤くなる理由を知らないといけないかと思います。
ここでは、紅葉が赤くなる原理を基にして、ロタラの葉が赤くなる理由を簡単に解説します。
まず紅葉が赤くなる現象を理解する
赤色系のロタラの葉が、枯れ落ちてしまう理由を説明する前に、事前の知識としてロタラの葉が赤くなる原理についても簡単に紹介したいと思います。
私の過去の記事で、ロタラの葉が赤くなる過程について詳細に紹介したものがあるので、より詳細なお話はそちらを御参照ください。
ロタラの葉が赤くなる理由は、秋に紅葉が赤く染まる理由と同じでは無いかと考えられます。
秋に紅葉が赤くなるのは、葉の中に「アントシアニン」と言う赤色の色素を持つ分子が形成されることに由来します。
秋に気温が低くなると木々の活動量が減るため、葉の中の光合成色素のクロロフィルが不要になり、それが分解されることでアントシアニンが生成されていきます。
秋から冬に向かうに連れて徐々に葉が赤くなるのは、葉の中でこの変化が起こっているためです。特に落葉寸前の葉は真っ赤に染まっていますが、葉の活動が終わりアントシアニンが沢山生成された結果となります。
また、葉の中のアントシアニンは、紫外線から葉を保護する能力もあることも知られています。落葉するとはいえ、秋に急激に葉が無くなてしまうと困るので、アントシアニンが紫外線から葉を保護していると考えられています。
以上の知識を知った上で、水槽の中のロタラについても同じように考えてみましょう。
ロタラの葉が赤くなる原理を考える
ロタラを赤く染めるためには強いLEDライトが必須となります。
私の経験上、強いLEDライトが無いと赤色に染まるロタラは赤く染まりません。
では、なぜ強いLEDライトが必要なのでしょうか?
この理由が分かればロタラが赤くなる原理が理解出るはずです。
強いLEDライトを葉に照射することで、ロタラに強い光 (紫外線) から葉を保護しようとする本能を働かせることができます。
その本能こそが、上でも紹介した「アントシアニンの生成」という現象だと考えられます。
アントシアニンが生成されるということは赤色の色素が葉の中に生成されることを意味しますので、ロタラの葉が赤く染まるということになります。
つまり、簡潔に述べると「秋に紅葉が赤くなるのと同じ現象を、強いライトの照射で実現している」ということになります。
実際にLEDライトの強度が弱いと、ロタラ・ベトナムは赤く染まりません。
下の写真は水槽の中でレイアウト素材の陰になっている部分にあるロタラ・ベトナムになりますが、黄色い矢印で示した部分の葉は、赤色では無く黄緑色をしていることが分かるかと思います。
つまり、水槽の中の赤色のロタラは、人工的に作り出されている色であると言っても過言では無いのです。
なぜ赤色系のロタラは葉が枯れやすいのか?
では、なぜ赤色系のロタラは葉が枯れやすいのでしょうか?
上で紹介したように、ロタラの葉が赤くなる機構は、紅葉が赤く染まるのと同じ原理であると考えられると紹介をさせていただきました。
紅葉が赤く染まるのは秋で、冬になると紅葉は木から枯れ落ちてしまいます。
光合成を担う緑色のクロロフィルが無くなると、葉は活動を止めアントシアニンの生成により赤く染まり、いずれ葉が枯れ落ちていきます。
つまり、ロタラの中でも同じことが起きているのであれば、赤くなった葉は枯れやすい状態になっていると言っても間違いでは無いのだと思います。
上で紹介したように、赤色のロタラは強いLEDライトの照射によって、アントシアニンが生成された結果であると考えられます。
その代償として、光合成色素であるクロロフィルが葉の中から無くなっていくのです。
それは、葉の活動が弱くなり、枯れやすくなることを意味していると言えます。
赤色のロタラは、葉が枯れゆく現象を利用して赤く染め上げられるので、古くなった下の方の葉から順に枯れていくのであると考えらえます。
赤色系のロタラの葉を長く楽しむための工夫とは?
少し下の方の葉が枯れやすいとは言え、赤色のロタラにはとても魅力があります。
あれだけ鮮明で透明感のある赤色を出してくれる水草は他には無いので、淡水アクアリウムの中でも唯一無二の存在だと思っています。
では、赤色系のロタラの葉をなるべく枯れさせないようにする工夫は無いものでしょうか?
以下では、私も実施している2つの対策をお伝えします。
光の強度を調整して赤くなるレベルを制御する
まず一つの目の方法ですが、光の強度を調整することです。
ロタラの葉はLEDライトの強度が強いほど、鮮明な赤色に染まりますが、長く赤い葉を楽しみたければ、LEDライトの強度を少し落とすということが有効です。
強いLEDライトを使えば、赤色系のロタラは簡単に赤く染まります。
しかし、長くロタラの赤い葉を楽しむためには、赤色の発色が少し悪くなってしまうことを許容して、ロタラの葉の寿命を長くしてあげることも必要だと思います。
私も高強度のLEDと一般的なLEDでロタラ・ベトナムを育てていますが、後者の方が確実に葉が弱る速度が遅いです。
トリミングで新芽を展開させる
もう一つの方法はトリミングを利用することです。
葉が枯れてしまった部分をトリミングして新しい葉の発生を促進してあげます。
少し手間はかかりますが、新しい葉が展開してくれば再び鮮やかな赤い葉が楽しめます。私も実際に行っている対策はトリミングによる方法です。
この記事の終わりに
この記事では赤色系のロタラの葉が少し枯れやすい現象について、ロタラの葉が赤くなる原理と共に理由を考えてみました。
ロタラの葉が赤くなるのは紅葉と同じ原理でアントシアニンが葉の中に生成されていることに由来すると考えられます。
しかし、紅葉はアントシアニンの生成が進むにつれて葉は枯れ落ちてしまうので、赤色のロタラも同じ理由で枯れ落ちてしまっているものと思われます。
つまり、強いライトを照射してロタラを赤くするという行為には、「美しさ」と「枯れやすさ」のトレードオフが存在することになります。
それを理解すると、長く赤い葉のロタラを保存するのは難しい事なのだと思います。
トリミングを利用することやLEDライトの強度制御で赤色の葉を維持できますが、赤色のロタラの葉を長く維持するのは難しい事であると認識しておいた方が良さそうですね。