淡水アクアリウムでの最大の敵…
それは、水槽内に発生するコケや藻の存在では無いでしょうか?
もちろん、他にもあるかと思いますが、私が最も難しいと思うのは水槽内にコケや藻が発生しないように管理する方法です。
水槽内にコケが生えてしまうと、水槽の美観がとても悪くなるだけでは無く、コケに覆われた水草達の育成にも悪影響が出始めます。そのため、コケは発生初期の段階で対策を行い、水槽内に増殖することを防ぐ手立てが必要になります。
淡水アクアリウムでは、水槽内に発生するコケを積極的に食べてくれる生体がおり、それらは「メンテナンスフィッシュ」と呼ばれています。有名なところでは、ヤマトヌマエビ、サイアミーズフライング、そして今回の記事で紹介するオトシンクルスです。
水槽内に発生するコケを除去してもらうためには、それらのメンテナンスフィッシュに水槽内を縦横無尽に泳いでもらい、コケの生えている場所を掃除してもらう必要があります。
しかし、環境や飼育方法によっては、コケ取り生体が隠れたままになり、水槽のガラス面のコケを掃除してくれないという場合もあります。
この記事では、水槽内の物陰に隠れがちだったオトシンクルスについて、水槽内の環境改善を行った結果、水槽の前面でコケ取りをするようになった例を紹介させていただきたいと思います。
オトシンクルスはナマズの仲間で臆病
オトシンクルスは、見た目には分かりにくいのですが、実はナマズの仲間です。
ナマズと聞くと、日本の河川や池に生息している黒色で髭の長い魚を想像されるかと思います。
オトシンは日本のナマズとは見た目は少し違いますが、ナマズの仲間なので、日本に住むナマズと同じような性格も持っています。
その性格の中でも、今回の記事に関連するのは「臆病な性格」であるということです。
小型で草食の魚になるので、どちらかと言うと弱肉強食の世界では弱者になります。そのため、仲間と一緒に群れて泳いでいたり、物陰に隠れて暮らしている場合が多いです。
同じく南米原産の小型ナマズにコリドラスがいますが、コリドラスも同じように臆病な性格を持ち、基本的には物陰に潜んで生活しています。
この臆病な性格が一つの原因となり、水槽の中で隠れて出て来なくなるという状態になることが多々あります。
オトシンクルスが隠れたままになった水槽の実例
私の管理している淡水水槽の多くにはオトシンクルスを導入しており、コケ取り生体として働いてもらっています。
サイアミーズフライングフォックスやヤマトヌマエビも同居させることで、水草や石、そして流木に発生する様々なコケを撃退してくれています。
オトシンクルスにも個体差はあり、コケ取りを頑張ってくれる個体もいれば、人口飼料を食べてコケ取りをしてくれない個体もいます。こればかりは、それぞれの魚の性格なのでどうしようもない所はありますが…。
そんな私の管理する水槽の中で、一つの60cm水槽だけオトシンクルスが水槽の前面に全く出て来ず、水槽の前面にコケがたくさん生えた状態の水槽がありました。
その水槽は水草をメインにした60cm水槽水槽なのですが、下の写真に示すように、水槽の後ろの面にあるフィルターやヒーターの陰に、全てのオトシンが隠れてしまっている状況です。黄色の矢印で示した部分にオトシンがいます。
そのため、水槽前面のガラス面には緑色の細長い糸状藻が生えてしまい、オトシン達がコケ取り生体としての役割をあまり果たしてくれないような状態でした。水槽前面の糸状藻は、定期的に自分でコケをスポンジで除去するしかありません。
言い換えると、オトシン達はコケ取り生体では無く、単純に水槽の中で暮らしている居候状態になってしまっているような感じです。それどころか、前面に出てきてくれないので鑑賞性もほとんど無いような状態です。
この状態を何とかしたいということで、下で紹介するような各種対策を考えて実施していきました。
オトシンクルスが隠れてしまう原因は様々
オトシンクルスに限ったことでは無いですが、水槽の中で魚たちが物陰に隠れてしまう原因は様々です。
下のリンクの記事で、水槽内で隠れてしまう魚の原因や対処方法などをまとめていますので、お時間あればこの記事も御参照ください。
魚が隠れてしまう原因を解決するためには、その魚の状態を観察することが最も大切な事です。
魚が隠れてしまった前後で水槽の環境に何があったのか?
いつから隠れてしまうようになったのか?
例えば、新しい熱帯魚を水槽に導入した直後に隠れてしまう事や、レイアウトを変更した時から隠れるようになるなど…そのきっかけは様々です。
隠れるようになってしまう原因は、そのような変化に起因していることも多々あるので、少しの変化も見落とさないようにすることが大切です。
その変化に気付いてあげられるのも、飼育者の皆さんになるので、普段から水槽内の観察は怠ることなく行ってあげて下さいね!
オトシンクルスを水槽前面に出すために行ったこと
上で紹介しましたが、私の管理している一つの60cm水槽では、3匹のオトシンクルスをコケ取りの生体として飼育をしています。
しかしながら、この3匹のオトシンクルスは、ヒーターやフィルターの取水口などの物陰に隠れてしまって、全く出てくる雰囲気がありませんでした。
この3匹のオトシンクルスは、この60cm水槽を立ち上げた当初から水槽内に導入していました。導入当初から少し隠れ気味だったのですが、最初の頃は昼間に出てきてくれることも頻繁にありました。
そのオトシン3匹が隠れてしまうようになったので、何かしら原因があるのではないかと考えるようになりました。
そこで、下で紹介する①②③の各対策を打って、様子を見ることにしました。その効果については、各項目内で記載しています。
① 水槽用ライトの調整
まず飼育環境の改善として行ったことは、水槽用ライトの光量の調整と時間調整です。
オトシンはナマズの仲間であり、少し暗いような場所を好む性質もあるので、ライトの調整は有効なのでは?と思ったのがきっかけでした。
光量に関しては、通常2つのLEDライトを使用しているところを、1つだけにしてみました。1つにしたとはいえ、鑑賞性は十分あるくらいに明るいので、魚にとっては昼間の様な状態になるかと思います。
しかし、1週間が経過しても、ライト数の制限については、全く効果はありませんでした。まぁ、何となくこの結果になる想像は付いたのですが…。
次に、ライトの点灯時間の調整です。
今回紹介しているオトシンを飼育ている水槽は、水草レイアウトの水槽のため、適切なLEDライトの点灯時間も必要になります。通常は1日12時間程度点灯させていましたが、これを7時間くらいまで下げてみました。
7時間の点灯時間に変更して1週間くらいすると、実は夜の時間帯に短時間だけ水槽の前面に出てきているのを見るようになりました。
水槽のライトが消え、暗い時間帯が長くなったことが理由なのかもしれません。少しの変化ではありましたが、ライトの点灯時間は効果があるのかもしれないです。
しかしながら、ライトを点灯している時に水槽前面に出てきてくれるような事はありませんでした…。
② 隠れ家のレイアウトを変更
水槽内でオトシンの隠れ家になっているのは、上でも紹介しましたが、フィルターの取水口と水槽用ヒーターの裏になります。
オトシンにストレスが加わることは分かっていましたが、この隠れ家を無くしてしまえば隠れることができなくなり、水槽前面に出てくるのではないか?と思いました。
そこで、ヒーターの位置を横置きから縦置きにして、場所を変更してみました。また、フィルターの取水口も少しだけ場所を移動させました。
しかし、このレイアウト変更は一時的には効果がありましたが、1日も経たないうちに効果が無くなりました…。
ヒーターの場所を移動させたのですが、移動させた先でヒーターの裏にオトシンが隠れてしまいました…。きっと、隠れ家であるヒーターの構造を覚えていたのでしょう…。
熱帯魚飼育水槽のためヒーターを無くすことはできないので、この方法も失敗ですね…。
③ オトシンクルスを追加導入 -これが決定打-
飼育しているオトシンクルスが水槽前面に出て来ず、コケ取りとしての役割をほとんど果たしていない状態なので、新しく追加でオトシンクルスを迎えることとしました。
既存の3匹に加えて、新たに5匹を水槽に導入しました。
既存のオトシンよりも少し小さめのものを5匹追加したのですが、このオトシンクルスの追加導入が思ってもみない方向に働きました。
なんと、新しく導入したオトシン達に誘われたのか、隠れていた3匹のオトシンが水槽の全面に出てくるようになったのです。
下の写真で、赤色の矢印が示している部分にいるのが隠れて出て来なかったオトシンです。写真に写っている他のオトシンは、全て新しく導入したオトシン達です。ずっと飼育していたオトシンは、新しく導入したオトシンよりも身体の大きさが大きいので、見間違えることはありません。
このオトシンがライト点灯中に水槽の前面に出てきたのは…いつぶりだろう?…と思うくらい久しぶりに見ました。
結果としては、新しい仲間が増えたことで、安心して一緒に行動するようになったということなのかもしれません。
この日を境にして、既存の3匹のオトシンのうち2匹は水槽前面に出てくるようになりました。しかし、残りの1匹がなかなか前に出てきません。
残りの1匹を水槽の前面に出すことを考えたいのですが、他の7匹のオトシンが水槽前面のガラス面を綺麗に処理してくれているので、そのままにしておこうかと思います。
この記事の終わりに
この記事では、水槽の中で隠れたままになったオトシンクルスを水槽の前面に誘い出すための方策を紹介させていただきました。
今回のオトシンの場合、新しく追加導入した同種のオトシンに誘われて、水槽の裏面から前面に出てくるようになりました。
この方策が皆さんの水槽にも適合するかはわかりませんが、御参考になれば幸いです。
熱帯魚が隠れてしまう原因は様々あるため、それぞれの水槽に適した方策を考えていく必要性があります。それを考えて実行するのは面倒な事なのですが、魚たちが水槽の前面に泳いできてくれた方が鑑賞性は上がりますので、隠れている魚と向き合うのもアリかと思います。