アクアリウム用の水槽には、飼育水を濾過するためのフィルターが必要になりますが、60cm以上の大きな水槽を管理するとなると、外部フィルターと呼ばれる処理能力の大きなフィルターが必要になります。
その外部フィルターは飼育水の処理能力が高いために、フィルターから水槽に戻ってくる飼育水の量も多くなり、水槽内に強い水流を作るような勢いがあります。
熱帯魚によっては、その水流が苦手な魚もいるので、魚によって水流の制御をしてあげることが絶対に必要になります。
この記事では、水流を制御するための「ナチュラルフローパイプ」というアイテムの性能を詳しく紹介していきたいと思います。ナチュラルフローパイプを使えば、トップ画像の様にベタも安心して住める水槽になりますよ。
ナチュラルフローパイプとは?
ナチュラルフローパイプは、エーハイムという外部フィルターのメーカーから販売されている製品で、外部フィルターから供給される水流を制御するためのものになります。
下の写真が実際のナチュラルフローパイプの写真ですが、外部フィルターから給水されるホース部分に取り付けて、フィルターからの水の勢いを制御する部品になります。
この透明な部分の角度を自由に変えることができるので、その角度によって水流の強さを変化せることができます。この記事でも下で、角度を変えた場合の状態を紹介していきます。
外部フィルターは、浮遊物の除去だけではなくバクテリアによる生物濾過を行うためのフィルターですが、生物濾過の処理能力を上げるために、給水される水の勢いが結構強いです。
その水流の強さは、水槽と言う限られた空間に対してかなり強く、水槽の中に早い水流を生んでいます。
分かりやすいのは、餌を与えた時に、水流によって餌が水槽内に拡散していくことがあるかと思いますが、餌が容易に舞い上げられるくらいの水流が生まれていることになります。
熱帯魚によっては水流が苦手な魚もいるので、ナチュラルフローパイプのようなアイテムで水流を制御してあげることが必要になります。
水流の調整は熱帯魚の飼育で必須の環境作り
外部フィルターの作る水流は意外と強い
外部フィルターの処理能力ってご存じですか?
普段何気なく使っているフィルターですが、説明書を読むと「最大流量」という項目で、1時間あたりに何リットルを処理することが出来るか?が記されています。
例えば、アクアリウムの世界で最も有名な外部フィルターの一つである「エーハイム 2213」ですが、60Hzの周波数で約500L/hという記載があります。
1時間に500Lを処理するということは、1分間に8.3Lの処理、1秒間に0.14Lがフィルターによって濾過されていることになります。
1秒間に0.14Lですが、あまり想像が付きませんが…概ねコーヒーカップ1杯程度の処理になるんです。
この量の水が外部フィルターから毎秒戻ってくるとなると、ホースの太さも内径が12mmとなるので意外と早い水流を生みます。
そのため、外部フィルターから飼育水が戻るポイントでは、特に何も対策をしなけなければ、流れの速い小川のような水流になります。
水流が苦手な熱帯魚も多い
熱帯魚自身はアマゾン川住んでいるので、ある程度の水流がある場所に生息する魚もいます。しかし、水流が全くないワンドと呼ばれるような場所を好む熱帯魚もいます。
実際に水槽の中での生活を見ていると、泳ぎが得意か否かを概ね見分けることができます。
例えば、小型カラシン科のテトラやラスボラなどの比較的スマートで細長い体を持つ熱帯魚は、水流があっても水槽の中を縦横無尽に泳ぎ回っているかと思います。また、コリドラスも実は水流のある場所では水流に逆らって泳ぐようになります。それらの魚は水流が多少あっても問題なく生活をしていきます。
逆に、横から見た時に体側の面積が大きかったり、ヒレが長いような魚は、泳ぎが苦手な場合が多いです。例えばエンゼルフィッシュは、原産地でも水流の弱い場所に住んでいます。また、ベタやグッピーの様な品種改良されてヒレの大きくなった魚も水流が苦手です。また、子供にも人気のグラミーも泳ぎは得意な方では無いですね。
ナチュラルフローパイプを取り付けた例と適合魚種について
それでは、ここからは実際にナチュラルフローパイプを取り付けた時の状態、およびナチュラルフローパイプの角度を変えた状態を紹介していきます。
① 最も水流を抑えた状態
ナチュラルフローパイプの角度を最も上に装着した時の画像です。
パイプの口が上を向いているので、外部フィルターからの水がちょろちょろと流れるようになり、外部フィルターからの水流が最も抑制される様な状態になります。
この状態だと、ナチュラルフローパイプの直下には水流がありますが、水槽全体に強い水流が生まれるような状態は避けることができます。
上述のエンゼルフィッシュやベタ、またグラミー等の泳ぎが苦手な熱帯魚には、この角度がお勧めです。私もこの角度でベタを飼育しています。
② 水流を少し与える状態
少しだけ水流を与えたいような場合の角度が下の写真の角度です。
ナチュラルフローパイプの口を少し下げてあげて、水流が生まれるようにした状態です。
この状態だと水流が生まれてしまいますが、多くの熱帯魚に適した水流が自然に生まれるような状態になります。
特に水流が苦手な魚がいない場合には、このくらいの角度で管理すると適切かと思います。
③ 水流が最も強い状態
水流をあまり抑制したくない場合には下の様な状態に角度を調整します。
この角度ですと、外部フィルターからの水流を少し落とす程度の能力になります。
ナチュラルフローパイプが無い場合の水流を1とすると、0.7くらいに弱まるようなイメージです。
この角度は、泳ぎが得意な魚にしか適用できないかと思います。小型カラシン科の魚の泳ぐ水草水槽などが適しているかと思います。
ベタの泳ぐ水槽でこの角度で使用したことがありますが、ダブルテールのベタは流されてしまい、必死に泳いでいました…。
水槽の水流は最も泳ぎの下手な魚に合わせて決めることが大事
水槽を管理していると、多くの場合、一つの水槽に複数種類の魚が混泳されている状態になるかと思います。
マンションなどですと、水槽を大量に自宅に置くわけにもいかない場合が多いかと思うので、どうしても飼育したい熱帯魚が複数いる場合には混泳させるというチョイスしか無いです。
複数の魚種を混泳させる場合の水流調整の基本として、最も泳ぎが下手な魚に合わせて水流を決めることが必要です。
例えば、私が管理する一つの水槽では、ベタとカージナルテトラ、そしてコリドラスが混泳しているものがあります。この場合には、最も泳ぎの下手なベタに合わせて水流を制御してあげる必要があります。
もし、泳ぎの得意なテトラやコリドラスに合わせて水流を作ると、泳ぎの下手なベタは水槽内を自由に泳ぎ回ることが出来ません。また、最も水流が弱い場所を見つけて、その場所から動かなくなるという状態になってしまいます。
熱帯魚を混泳させる時には、泳ぎの下手な魚に合わせて水流を作ってあげることを忘れないでおきましょう。
ナチュラルフローパイプのデメリット
ナチュラルフローパイプは、サイズが大きいので取り付けると、下の写真に示すように水槽内で存在感が出てきます。
水槽内部に設置するパーツを減らしたい方や、あまりごちゃごちゃした水景にしたくないという方は、ちょっと抵抗があるアイテムかもしれません。
とはいえ、水流で魚にストレスを与えることの方が好ましくは無いので、その点は我慢が必要かもしれませんね。
この記事の最後に
この記事では、水槽内の水流の強さを弱めるパーツとして「ナチュラルフローパイプ」というアクセサリパーツを紹介させていただきました。
熱帯魚の種類に依っては、泳ぎが下手な熱帯魚もいるので、外部フィルターを用いてそのような魚を飼育する際には、水流の制御が必要になってきます。
「水槽内の水流管理が絶対に必要か?」言われると、絶対ではないかと思いますが、飼育している熱帯魚が水槽の中でストレスを感じることなく、水槽内を自由に泳ぎ回るためには必要な管理となります。
外部フィルターからの水流で熱帯魚が流されているような場面を頻繁に見る方は、ナチュラルフローパイプようなパーツで水流を制御してあげると良いかと思います。