【アクアリウム】コケ抑制剤により水草育成に弊害が出た実例

お家で金魚やメダカの水槽、そして熱帯魚の水槽を楽しんでいる皆様にとって、最も困ることの一つが「コケの発生」だと思います。

水槽のガラス面だけではなく、水槽内のレイアウト素材 (石や流木) にも緑色や黒色のコケが発生し、とても見栄えが悪くなってしまいます。

特にリビングやお部屋などに水槽を置かれている方は、インテリア性や鑑賞性も重要になりますので、コケの発生は可能な限り防ぎたいところだと思います。

コケを最も簡単に防止する方法の一つに「コケ抑制剤」の投入があります。

水槽立ち上げ当初から使用することで、コケの栄養素を吸着除去し、コケの発生を顕著に抑制することが可能な製品です。

しかし、コケ抑制剤には水草の育成に対してトレードオフの関係があるのを御存じですか?

私自身、その知識をあまり知らずに使用したため、水草の育成不良を経験することとなりました。

この記事では、コケ抑制剤の使用によって水草育成に発生する弊害を実例の紹介と共に説明していきたいと思います。


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コケ抑制剤の働きについて

コケ抑制剤は主に次の2つの形態の製品が販売されています。

①液体状で水槽の中に投入する商品

②濾材の中に入れて使う商品

初心者でも導入しやすい製品としては①の液体のタイプだと思います。

アクアリウムショップに行けば、必ずと言っていいほど販売されている商品ですので、一度は見たことがある製品かと思います。

多くのメーカーさんから様々なコケ抑制剤が発売されていることを考えると、それだけアクアリストの皆様がコケに悩まされているんだと思います。

そんなコケ抑制剤ですが、基本的には水槽の中にあるリン酸を吸着するという働きを持っている商品になります。

コケが発生する理由の一つが、水槽の飼育水中に含まれる「リン酸」です。

コケも植物の一種ですので、窒素、リン、カリウムの三大要素を肥料として育ちます。

その中のリンをコケ抑制剤で吸着してあげることで、コケが成長しないようにするというのが原理となります。三大栄養素の中の1つでも欠乏すると、コケは成長が出来なくなります。

私も実際にコケ抑制剤を使用していましたが、効果は抜群で本当にコケが全く生えなくなります。水槽のレイアウト素材も水槽の立ち上げ当初と同じ状況で、流木にも石にもコケが生えません。

コケ抑制剤で水草の育成に影響が出る理由

初心者の方は「コケ抑制剤を使えば、コケが出て来なくなる!」「水槽に入れるだけなら簡単だね!」と思い、規定使用量のコケ抑制剤を安易に水槽へ投入してしまうと思います。

しかし、コケ抑制剤は水草の育成にも影響が出てしまう事を忘れてはいけません。

淡水アクアリウムを楽しんでおられる方であれば、水槽に水草を複数種類入れていると思います。

その水草も、上でも紹介した通り「窒素」「リン」「カリウム」という三大肥料要素を吸収して成長をしています。

つまり、過剰に水槽内のリンを除去してしまったら、水草が根や葉から吸い上げるリンもなくなってしまう事になり、リンの欠乏状態に陥ります。

水草も三大要素が一つでも欠けると上手く育ちませんので、コケ抑制剤を使用するということは、水草の育成不良とトレードオフの関係を持っていることを忘れてはいけません。

実際、私もコケ抑制剤を使用していましたが、明らかに水草の成長が悪化するということを経験しました。

その内容を次に紹介していきたいと思います。


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コケ抑制剤の使用で水草育成に弊害が出た事例

では、ここからはコケ抑制剤の使用で実際に育成不良が生じた実例を見ていきたいと思います。

今回は私が管理している水槽で生じた例となりますが、グロッソスティグマ、ロタラ、ウィローモスについて記載します。

コケ抑制剤としては、下のリンクで紹介している「Bio コケクリア」を使用しました。

前景草のグロッソスティグマの例

まず最初は、前景草として有名なグロッソスティグマです。

組織培養で販売されているグロッソスティグマを、60cm水槽に敷いたソイルに植栽した時の例となります。

上の写真が植栽直後の様子、下の写真が20日後の様子となります。

約3週間が経過しているのですが、グロッソスティグマが新しいランナーを伸ばす様子が全くありませんでした。

グロッソスティグマは、3週間も経てば新しいランナーを伸ばして成長していく様子が目に見えて分かるのですが、全くその様子が見受けられません。

また、写真にはハイグロフィラ・ピンナティフィダも写っているのですが、こちらも育成があまり良くありませんでした。

グロッソスティグマについては、さらに1週間経過した1か月後に、新しいランナーを伸ばすことなく、葉が溶け始めてしまいました。

しがたって、グロッソスティグマにはコケ抑制剤の使用はNGであると言えます。また、ハイグロフィラについても、同じくコケ抑制剤の影響が出ていると言えます。

後景草のロタラの例

次の例は後景草としても人気のロタラです。

ロタラには多くの種類がありますが、ここで紹介するのは「ロタラ sp. Hra」という葉が赤く染まる品種となります。

こちらも組織培養で販売されているロタラとなりますが、上で紹介したグロッソスティグマと同じ水槽に植えていました。

次の写真が、植栽当初と20日後の比較したものになります。

ロタラは後景草として植栽したため、写真が分かりにくくて申し訳ないのですが、20日後も全く成長が見られませんでした。

ロタラが組織培養の若い状態であったので育成が悪いのかと思いましたが、実際にはコケ抑制剤によってリン不足になっている状況でした。

この後、ロタラをソイルから引き抜いてみたのですが、根もほとんど張っておらず、ソイルに埋めた部分は腐敗している状態でした。

何とか葉だけが残っている…そんな状態でした。

ウィローモスの例 (お試し実験)

最後の例は「ウィローモス」となります。

これは、試しに実験を行った結果です。

コケ抑制剤の注意書きには「ウィローモスやリシアは枯れてしまう場合があります」とあります。

上で紹介した通り、グロッソスティグマとロタラは育成不良になってしまったので、注意書きにあるウィローモスにも影響があるのかを試してみました。

アヌビアス・ナナを入れているコリドラス水槽にコケ抑制剤を投入し、そこにウィローモスを巻き付けた龍王石を入れてみました。

下の写真がその結果となります。

10日後の写真を見ていただくと、ウィローモスが溶けてなくなってしまっている様子が見て取れます。

コケ抑制剤の注意書きの通りですね…。

ウィローモスは相当影響を受けてしまうので、ウィローモスが入っている水槽にはコケ抑制剤を使用しない方が良いですね。

コケ抑制剤を使用しても育成できた水草とは?

では、コケ抑制剤を使用しても育成できた水草はあるのでしょうか?

私の管理している水槽では、以下の2つの水草はコケ抑制剤を使用しても育っていました。

ミクロソリウムの仲間

一つ目はミクロソリウム・プテロプスです。

ミクロソリウムは、コケ抑制剤を使用しても新しいランナーを伸ばしながら、新しい葉を展開してくれていました。

ミクロソリウムには、プテロプス以外にも種類が多くありますが、ナローリーフについても問題なさそうでした。

アヌビアスの仲間

もう一つはアヌビアス・ナナです。

コケ抑制剤を使用していた金魚水槽で栽培していたアヌビアス・ナナですが、特に問題は無く育ってくれてしました。

ミクロソリウムとアヌビアスに共通することは「耐陰性があり、成長速度が速くない」という点です。

成長速度が遅いということは、それほど養分の吸収が早くは無く、少ない肥料でも育つということなのかと推測できます。

そのため、コケ抑制剤によってリンが減ったとしても、育成に大きな影響が出なかったと思われます。

ただし、私の水槽での結果となりますので、アヌビアスやミクロソリウムについても、あくまでも参考事例となります。


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コケ抑制剤を上手く使う方法とは?

では、コケ抑制剤は水草水槽に絶対に使用してはいけないのでしょうか?

私の答えとしては「コケ抑制の主体としては使えないが、サポート役としては使える」です。

コケを抑制する基本は「水槽の環境整備」と「コケ取り生体の導入」が主体となります。

水草を育てたいからと言って、液体肥料をたくさん与えたり、LEDライトの使用時間を伸ばせばコケは発生します。

また、コケが大量に発生した後にコケ取り生体を入れても、コケを処理しきれない場合も多々あります。

そのため、水槽立ち上げ初期からミナミヌマエビ、ヤマトヌマエビ、サイアミーズ・フライングフォックスなどを導入することと、そのサポートとしてコケ抑制剤を規定量よりも少ない量で使う、という感じになるのかと思います。

そして、実際にコケ抑制剤を使用した後は、水槽内の水草の成長速度を見ながら使用量を調整していくという使用方法が安全です。

コケ抑制剤を使用量については、それぞれの水槽で適切な使用量は変わります。そのため、自分で最適な使用量を見つけていくことが、コケ抑制剤との良い付き合い方なのかと思います。

コケ抑制剤の説明書にある使用量をそのまま使ったら、確実に水草達の育成に悪影響が出ますよ!その点は、使用前に必ず把握しておいて下さい。

コケ抑制剤を使用する時は「少量ずつ滴加して、水草の成長を見ながら量を決める」が基本です。

この記事の終わりに

この記事では、コケ抑制剤を使用したことにより水草の育成に影響が出た実例として、グロッソスティグマ、ロタラ、ウィローモスを紹介させていただきました。

液体のコケ抑制剤は、水槽に入れるだけで容易に使用することができ、かつ確実にコケを抑制することができる便利な商品です。

しかし、その反面、飼育水中のリンが極端に減るため、水草によっては成長しなくなることがあります。

コケ抑制剤を使用する際には、必ず少しずつ使用していき、あくまでもコケ抑制のサポート役として導入することが求められます。

実際に経験した私の様に、大切な水草を枯らせてしまわないように、使用方法の基本は覚えておいてくださいね。