淡水アクアリウムでのコケ取り生体として、水槽内にヤマトヌマエビやミナミヌマエビを導入されている方は多いかと思います。
水槽の環境にも依存しますが、その働きぶりは本当に素晴らしく、60cm規格水槽であればヤマトヌマエビを5匹程入れておくだけで絶大な効果 (コケの抑制) が現れます。
私自身も現在管理している淡水水槽の全てにヤマトヌマエビとミナミヌマエビを導入して、コケを処理してもらっており、水槽内に目立ったコケが全く無い状況を実現できています。
しかし、2021年8月中旬になりますが、管理している一つの水槽でエビ達の大量死が発生するという事態になりました。
同一水槽で1年以上飼育していたエビ達であり、突然のことでかなり焦ったのですが、何が起こって今回の事態に至ったのかを自分なりに考えてみました。
自分の教訓として、そしてアクアリストの皆さんに少しでも御参考になればと思い、本記事でその詳細を記載しておきたいと思います。
エビの大量死が起きた水槽の管理状況
まず最初に、エビの大量死が発生した水槽の設備や管理状況をまとめておきます。
・水槽: 60cm規格水槽 (GEX製グラステリア)
・フィルター: エーハイム2213 (外部フィルター)
・エアレーション: フィルターの水流を使ってのエアレーションのみ
・飼育生体: 小型カラシン科 20匹、オトシンクルス 3匹、サイアミーズ・フライングフォックス 1匹、ヤマトヌマエビ4匹、ミナミヌマエビ 多数 (繁殖で正確な数が不明)
・水槽用LEDライト: Aqullo製Triangle LEDとGEX製 CLEAR LEDの2灯を使用
・二酸化炭素添加: 有り。ADA製アドバンスシステム・フォレスト (5秒~6秒に1滴)
・水草: ロタラ、クリプトコリネ、ショートヘアーグラス、プロセルピナカ・パルストリス、ルドヴィジア・グランデュローサ、ハイグロフィラ・ピンナティフィダ 等
・水温: 年間を通じて25℃から26℃で管理
この水槽は、立ち上げから1年以上が経過しておりますので、フィルターと水槽内のバクテリアは安定している状態です。
水質も安定しており、バクテリアのお陰で常にピカピカの水に保たれていました。
換水頻度は週に1回、1/2の水量を交換しており、定期的にpH検査もしてpH=6.5での管理となっていました。
また、換水と同時に水草用の液肥を少量だけ添加しています。
生体への餌やりは朝1回のみです。
LEDライトの点灯時間は1日7時間から8時間となっています。
上記が今回エビの大量死が起きてしまった水槽の詳細ですが、特筆することは特に無い一般的な管理方法かと思います。独自に行っている特別な事は一つも無いです。
エビの大量死が起きた日の状況について
エビの大量死が起きた日の状況ですが、発生日時は2021年8月16日の明け方です。
水槽の前を通りすがった時に、水槽の前面に真っ赤になったヤマトヌマエビが沈んでいました (下の写真参照) 。
ヤマトヌマエビは体格が大きなエビなので、お星様になった姿は見逃すことはほどんどないですよね…
そして、この一匹の突然死が気になり、水槽内を全て確認していくと、飼育していた4匹のヤマトヌマエビのうち3匹がお星様になっていることが確認されました。
次の写真もお星様になってしまったヤマトヌマエビですが、クリプトコリネの株元で真っ赤になっていました。分かりにくいかもしれませんが、中央に赤くなったヤマトヌマエビがいることがお分かりいただけるかと。
さらに、ヤマトヌマエビだけでは無く、ミナミヌマエビ達も大量に命を落としてしまっていることが判明。
水槽内をざっと確認していきましたが、少なくとも命を落とした10匹のミナミヌマエビが発見されました (次の写真参照) 。
今回、エビ達の命が大量に失われてしまったのですが、熱帯魚たちに関しては1匹も命を落としていない状況でした。
水質の悪化を防ぐため、命を落としてしまったエビ達は全て水槽から取り除きました。
エビの大量死が起きた直前での水槽管理の変化点
水槽の状態はかなり安定している状況ではありましたが、それでもエビの大量した起きたということは、その前に何かしらの変化点があったと言わざるを得ません。
あらてめて思い出してみると、関係ありそうな項目は2つありましたので、以下で記載します。
変化点① 水槽用LEDライトを2日間点灯しなかったこと
まず一つは、水槽用のLEDライトを2日間点灯しなかったことです。
通常はLEDライトを午前中に点灯して、夕方くらいに消灯するようにしています。
しかし、今回のエビの大量死が起きた前日、前々日は、私が体調不良を起こしてLEDライトを点灯することが出来ませんでした。
今回の水槽は、LEDライトを点灯して管理していると、多く水草達が光合成によって酸素の気泡を発生してくれます。
そのため、エアレーションに加えて植物の発生した酸素も水中に供給される様な状態でした。
しかし、LEDライトの点灯が無かった2日間は、水草達は光合成をすることが出来ず、逆に常に水中の酸素を使って呼吸を行うような状態になります。
これによって、水中の溶存酸素量が通常時よりも減っていき、水中の環境が大きく変わってしまったことが考えられます。
変化点② 気づいたらフィルターの流量が1/2に落ちていた…(フィルター詰まり)
もう一つの変化点はフィルターの目詰まりです…。
今回の事件が起こる3日前に確認した時点では、フィルターの流量は十分なものであることを確認していました。
しかし、エビが大量死した時にフィルターの水量を確認すると、通常の半分程度に落ちていました。
外部フィルターがタイミング悪く目詰まりを起こしてしまったのです。
今回の水槽はフィルターから供給される水でエアレーションしておりますので、フィルターが目詰まりを起こすとエアレーションの性能にダイレクトに影響がでます。
エアレーションが弱くなれば、空気中から水中へ供給される酸素量が減るので、これも溶存酸素量の低下の原因となります。
想定されるエビの大量死の原因は「酸欠」か?
今回のエビの大量死については、直前に上記の2つの環境変化が発生していました。
どちらも飼育者である私の管理不足が原因であると言わざるを得ません。
①LEDライトの点灯が無かったことによって、水草達が呼吸しかし無くなり、光合成による酸素供給がほとんど行われなかったこと。
②そして、フィルター目詰まりによるエアレーション効果の低下で、空気中から供給される酸素量が低下したこと。
この2つの点から、飼育水の中の溶存酸素量が極端に低下し酸欠状態となり、それがエビ達の耐えられない環境になってしまったのだと考えられます。
①については、LEDライトを自動点灯・消灯してくれるタイマー機能を追加すること、②については少しフィルターの清掃頻度を上げる事が解決策かと思います。
エビ達は水槽の環境に慣れても、水槽環境が変化すると命の危機に…
アクアリストの方であれば、初心者の方であっても「エビは水質の変化に弱い」ということは御存じかと思います。
ヤマトヌマエビやミナミヌマエビに限らず、ビーシュリンプ等を購入する時も、アクアリウムショップの店員さんからは「水合わせは慎重に行ってください」と伝えられると思います。
一度、水槽の環境・水質に慣れさせてあげれば、命を落とす危険性は低くなります。
しかし、今回の様に、同一水槽で1年以上飼育していたエビ達も、溶存酸素の量が変化してしまったことで命を落とす結果となってしまいました。
水質の変化は無かったのだと思いますが、酸素の量がトリガーになってしまったと言えます。
今回の様な悲しい結果にならないためにも、日々の設備の点検に加えて、設備の運用方法もなるべく一定の条件になるように、飼育環境を提供してあげてください。
エビの方が酸欠に弱いのか?
皆さんがこの記事をご覧になり疑問に思ったことがあるかと思います。
エビがお星様になる環境でも、熱帯魚は1匹も命を落としていないという事実。
では、「エビ達の方が魚に比べて酸欠に弱いのか?」という疑問です。
これについては、私が生物学者ではないので正確な事は言えないのですが、過去に以下で記載するような経験をしました。
私は河川での生体採集も好きで、夏には子供と一緒に川へ魚捕りに行ったりしています。
2020年の夏に訪れた一つの河川での話なのですが、雨がしばらく降っていなかったため、水量が無く所々に水たまりがあるような状態でした。
猛暑が続いたことも影響して、水たまりの水温は30℃付近まで上がっており、生物たちにとっては厳しい環境になっておりました。
その水たまりでは、大量の川エビ達が命を落としていましたが、その他の魚たち (カワムツ、ヨシノボリ、ハヤ、ムギツク 等) は元気に泳ぎ回っていました。
自然の中での一番面でのお話ですが、エビの方が高水温や酸欠の状態に弱いということが言えるのかもしれません。
もしかしたら、その水たまりでは高水温がエビ達の致命傷になった可能性がありますが、高水温になれば溶存酸素量は顕著に減っていくので、両方が影響した可能性も十分考えられます。
この記事の終わりに
この記事では、筆者の管理している水槽で起きたエビの大量死について、その直前に起きていた飼育環境の変化と、それによっておこった環境変化を考察させていただきました。
現時点での結論としては、LEDライトの点灯が無かったことによって水草の光合成がストップしたこと、そしてエアレーションの低下 (フィルターの目詰まり) の2つの原因で水槽内が酸欠になってしまったのだと思います。
僅か2日の間に起こった出来事だったのですが、これだけ短時間の環境変化であっても、エビ達はあっという間に命を落としてしまうくらいデリケートです。
エビを飼育されている方は、水質の観点だけでは無く、溶存酸素量の観点にも注意をしてあげて下さい。
フィルターの清掃を済ませ、LEDライトが確実に点灯できる状態を確保した上で、ヤマトヌマエビとミナミヌマエビを新たにお迎えしに行きたいと思います。
では!